コロナ禍によりネットでの買い物が当たり前となったことで、EC業界は成長を続けています。ではそんなEC業界とはどのようなものなのでしょうか。
今回は、EC業界のビジネスモデルや仕事内容、将来性やトレンドまで、EC担当者なら知っておきたいことを解説します。
僕もEC業界で働いてみたいけど、働き始める前に詳しく知りたいな。
EC業界は、ネットショップを中心としたインターネット上での取引を行う業界を指します。スマートフォンの普及による利用者の増加などもあり、市場規模が拡大し続けている業界です。
目次
EC業界とは何?意味やビジネスモデルなどを解説
EC業界のECとは、「Electronic Commerce」を略した言葉で、日本語では電子商取引といい、「インターネット上で行われるさまざまな商取引」を意味しています。
ECは、ときどき「Eコマース」といわれることもありますが同じ意味です。
オンライン上で行われるすべての商取引はECに当たるので、サブスク制の音楽配信サイトや株の売買もECであるといえます。
ですが、日常的にはECといえばECサイト、つまりネットショッピングを意味する言葉として使われています。
そのためEC業界とは、ネットショップに関連することを行っている業界ということになるでしょう。
EC業界の主なビジネスモデル
EC業界とは、ネットショップ業界であることをお伝えしました。
そしてEC業界のビジネスモデルとしては、主に以下のようなものがあります。
- ・BtoB EC
- ・BtoC EC
- ・CtoC EC
- ・D2C
- ・越境EC
- ・卸売EC
- ・ギフトEC
それぞれのビジネスモデルを詳しく説明していきましょう。
BtoC EC
BtoC ECは「Business to Customer」を略した言葉で、企業が一般消費者向けに展開するEC事業を指します。
企業がECサイトで個人向けに販売し、個人が商品を購入する形態です。
そのため、私たちが日常的に利用する「Amazon」や「ユニクロ」などといったサイトは、このBtoC ECといえます。
一般的にECとはネットショップの意味であるとお伝えしましたが、「オンライン上で行われる企業から消費者に向けた商取引」という本来の定義では、音楽配信サービスの「Spotify」や課金制のスマートフォン用アプリもBtoC ECのビジネスモデルに該当します。
BtoB EC
BtoB ECは「Business to Business」の略語で、企業間での取引をECで行うビジネスモデルです。
BtoC向けサイトは、誰でも購入できるようにすべてがオープンになっていますが、企業間の取引では「企業によって価格が異なる」「購入するには資格が必要」など、全員が同じ条件で購入できるわけではありません。
そのため基本的に利用を会員(取引先)に限定しています。
ECサイトを閲覧するには会員登録が必要で、会員でなければ購入できないサイトも多いのがBtoB ECの特徴です。
代表的なものに、企業向けの事務用品などを展開する「アスクル」があります。
BtoB ECについて詳しくは「BtoB ECとは?」の記事で解説していますので、ぜひご覧ください。
CtoC EC
CtoC ECは「Cousumer to Consumer」の頭文字を取った言葉で、個人と個人がネット上で売買を行うビジネスモデルです。
例えば個人が不用品などを出品して販売できる「メルカリ」や、個人が作ったハンドメイド作品を販売できる「minnne」が代表的なCtoCサービスです。
CtoC ECサービスを展開する企業は、売買を行うプラットフォーム(アプリ)の提供と運営を行う代わりに、販売者側に売り上げに応じた手数料を支払ってもらうことで利益を出しています。
今やほとんどの人がスマートフォンを保有しており、誰でも手軽にインターネットを利用できる環境になったことで近年CtoCビジネス市場が盛んになっています。
D2C
D2Cは、「Direct to Consumer」を意味する言葉で、「ダイレクト」とあるように製造者であるメーカーが直接、一般消費者向けに商品を販売するビジネスモデルです。
企業から個人への販売のためBtoC ECの一種ですが、BtoCの場合は自社で作った製品ではなく、他社の商品を仕入れて販売する場合も含まれているので、「生産者から個人へ」の場合はD2Cといいます。
インターネットが発展するまでの流通は、メーカーが製作した商品を卸売業者・小売業者などの仲介者を通さないと消費者に届けられませんでした。
ですがECサイトでは企業が直接、消費者とつながれます。
D2Cは良い品を低価格で提供できるなどのメリットがあることから、自社ネットショップを展開するメーカーも増えています。
D2Cのビジネスモデルについては「D2Cとは?」の記事で詳しく紹介しています。
越境EC
越境ECとは国を超えたビジネスモデルのことで、日本国内から海外に向けて商品やサービスの販売を行います。
日本の人口が減少傾向にあるため、同じような販売戦略を続けていると売上がどんどん下がっていってしまう可能性があります。
そこで越境ECで販路を広げ、海外の顧客を獲得できれば事業拡大が望めるでしょう。
ただし海外向けであるため、対象となる国の法律や規則を理解した上で販売しなければなりません。
また、言語対応もある程度は必要です。
日本国内向けに展開するECと異なりハードルは高くなりますが、越境ECをサポートするサービスはさまざまあるので、以前と比べてチャレンジしやすい環境といえます。
越境ECを検討したい方はぜひ「越境ECとは?」の記事を見てみてください。
卸売EC
卸売ECとは、卸売業者が小売業者(スーパーやコンビニ)向けに、メーカーから仕入れた商品を販売するBtoB ECの一種です。
卸売業者と取引のある小売業者を専門としているため、会員制で、閲覧や購入が限定されているのが特徴です。
また大量注文や一括注文、取引業者ごとの割引設定などの機能も備わっています。
卸売業者から小売り店への卸売りが一般的なパターンですが、製造元であるメーカーが卸売業者にECを通じて商品を卸す場合もあります。
卸売ECについては「卸売ECとは?」の記事で詳しく解説しています。
ギフトEC
ギフトECとは、ギフト商品の販売に特化しているECです。
個人向けに展開するギフトECサイトのほか、法人向けのギフトを提案するECサイトもあります。
LINEギフトのように、相手の住所を知らなくてもSNS経由で送れるソーシャルギフトの利用も増えていることから、ギフトECの需要も高まっています。
ギフトECの場合、通常のECとしての機能に加えて、1つの商品に対して複数の送付先を選択できる機能や送り先に合わせてラッピングを選択できる機能などが必要でしょう。
ギフトECについて詳しくは「ギフトECとは?」の記事をチェックしてみてください。
EC業界の市場規模・今後の将来性はある?
EC業界の市場規模については数年間の推移を見ると成長率がわかります。
経済産業省(令和5年度 電子商取引に関する市場調査)より引用
経済産業省が発表した「令和5年度 電子商取引に関する市場調査」によると、BtoC ECは前年度から約9.23%、市場規模が拡大していることがわかりました。
BtoB ECも市場規模が前年比で約10.7%増加していることからも、EC市場は右肩上がりで拡大を続けており、今後も伸びる業界として将来性が期待されています。
EC業界が伸びる理由は?
新型コロナウイルス感染症の拡大の影響が後押しとなったといえ、EC業界の市場規模はなぜ拡大が続いているのでしょうか。
大きな理由のひとつとして考えられるのが、スマートフォンの普及とスマートフォン経由のECの利用です。
スマートフォン経由の市場規模の拡大
総務省が発表した「令和5年 通信利用動向調査」によると、スマートフォンの世帯保有率はついに9割を超えたとのことです。
このようにほとんどの人がスマートフォンを持つようになったことで、スマートフォン経由でのECサイトの利用が増え、EC市場の拡大につながったといえます。
下記は令和5年 電子商取引に関する市場調査の資料で公表されている、BtoC EC市場におけるスマートフォン経由での購入の割合の推移です。
経済産業省(令和5年度 電子商取引に関する市場調査)より引用
これを見るとスマートフォンの保有率に比例するように購入比率も増加し、2023年ではBtoC ECの約6割がスマートフォン経由で行われています。
スマホ経由での購入はこれからも増加すると予想されていますが、これはスマホの保有率だけでなくとスマホとECの相性が良いためとも考えられます。
ECサイトの多くは、スマホで気軽に利用できるようスマホアプリを導入しています。
利用者はアプリで簡単に商品やサービスを購入できますし、アプリならキャンペーン情報や再入荷情報をプッシュ通知でお知らせして、直接利用者とコミュニケーションがとれます。
また、スマートフォンであればLINEやInstagramなどでお得な情報を発信して、そのままアプリに遷移させることも可能です。
このようにパソコンでの購入より、利用者にとってもEC事業者にとってもメリットのあるスマホアプリは、スマホからのEC利用にも大きく影響を与えているのでしょう。
EC業界の仕事って何をするの?
EC業界の仕事といっても、会社の事業がECとどのように関わっているか業務内容は変わってきます。
そのためここではECサイトを展開する場合の仕事内容を例に紹介します。
ECサイト運営の仕事は2種類に分けられる
ECサイトを運営する場合、大きく分けると「フロント業務」と「バックエンド業務」の2種類の業務があります。
フロント業務はECサイトに訪れてもらうためにユーザーを集客するのが主な仕事です。
一方のバックエンド業務は、受注処理や在庫管理など顧客がスムーズな買い物を行うための事務的な仕事といえます。
ECサイト運営の具体的な8つの仕事
ECサイトを運営するための業務は大きく分けるとフロント業務とバッグエンド業務に分かれるとお伝えしましたが、さらに詳しく見てみると、以下の8つに分かれます。
ECサイトを始めるうえで何よりも重要なのが商品です。
どのような商品を扱うのか市場調査や競合分析を行うなどして決定したら、商品の仕入れ先や製造の方法(自社で作るかOEMで作るかなど)を決め、商品が形になってきたらECサイトの制作を行って…というような流れで業務を行っていきます。
そして、ユーザーが商品を購入すると、受注処理や配送などのバックエンド業務が発生します。
ECサイト運営の業務についてさらに詳しくは「ECサイト運営とは?」の記事で紹介しています。
押さえておきたい!EC業界のトレンドや今後の動向
EC業界も、その他の業界と同じように日々変化しています。
ここからは、知っておきたい業界のトレンドや今後の動向を紹介します。
ChatGPTなどのAIツールの普及
2023年3月、それまでのバージョンよりも高度な「GPT-4」がリリースされ、自然な会話ができることなどが話題を呼び、OpenAIの開発したAIチャットサービス「ChatGPT」が世界中で知られるようになりました。
このChatGPTの急速な広まりをきっかけに、積極的にAIを導入する企業も増えています。
もちろんEC業界も例外ではなく、AIを活用しようという動きが活発化しています。
例えばネットショップ作成サービスのカラーミーショップでは、AIによる自動生成機能が追加されました。
「カラーミーAIアシスタント(β)」は、ChatGPTを活用したAI機能の1つです。
商品の説明文や商品をSNSで宣伝するための投稿文章を自動で作成することが可能です。
さらに、商品のSEO設定も行うことができるAI機能です。
同じように、AIを活用して商品説明やメール件名の作成ができるShopifyの「Shopify Magic」、顧客向けのメールや商品説明を自動作成するBASEの「BASE AI アシスタント」などがあります。
AI技術はまだまだ発展途中のため、今後はさらにECの運営をサポートするようなツールが開発されるでしょう。
越境ECの市場規模拡大
海外向けに展開する越境ECも年々注目が集まっており、特に米国や中国向けのBtoC ECの市場規模が拡大中です。
経済産業省が公表している令和4年・令和5年度の電子商取引に関する市場調査によると、令和4年では日本からアメリカへの越境ECで1兆3,056億円、中国への越境ECで2兆2,569億円でしたが、令和5年はそれぞれ1兆4,798億円、2兆4,301億円と日本から購入される額が増えています。
インバウンドで日本へ観光に訪れた外国人が、自国へ帰った後にリピート購入するなどの影響もあり、越境EC市場は確実に成長しています。
2022年の時点で日本の人口は十年以上連続で減少を続けているため、事業者としては国内の顧客だけを対象にしていても事業成長が難しいと考えるでしょう。
そこで、海外市場を開拓しようと越境ECを始める企業が増えているといいます。
ID決済を始めとした決済方法の広がり
以前に比べてEC業界では、さまざまな決済方法が選べるようになりました。
Amazon PayやPayPayといったID決済を始め、スマートフォンの利用料と一緒に支払えるキャリア決済やBNPLともいわれる後払いなどが台頭してきたことが、ECサイトの決済方法が多様化した理由です。
多くの決済方法の中から自分が利用しやすい方法を選べることは、カゴ落ち防止にもつながるでしょう。
では、さまざまな決済方法の中でもどのような方法が人気なのでしょうか。
ECサイト構築サービスのカラーミーショップでも、どの決済方法がお客さまに使われているのか独自に調査をしてみました。
カラーミーショップでは、クレジットカード決済が最も多く利用されており、次いで銀行決済や代引き決済、ID決済の利用者が多いです。
ID決済は新しい決済方法ですが、各社がさまざまなキャンペーンを行うことで多くの利用者を獲得しています。
ECサイトで決済方法を選ぶ際はぜひ「ECサイトで顧客満足度の高い決済方法はどれ?」の記事を参考にしてみてください。
オムニチャネル化
オムニチャネルとは、実店舗やSNS、ECサイトなどのあらゆる販売チャネルで顧客とつながりを持ち、販売促進する戦略を指します。
EC業界では、オムニチャネル化が進んでいるといわれています。
理由の1つとしてスマートフォンを持つ人が増えたことです。
「スマートフォン経由の市場規模の拡大」の章でもお伝えしたように、スマートフォン経由での購入は約半数を占めてきており、各企業はSNSや自社アプリ、YouTubeといった動画プラットフォームなど顧客がスマホでアクセスできるさまざまなチャネルを開拓しているのです。
スマートフォンの保有率の高まりにより、スマホやアプリでの購入体験を意識したコンテンツやサービスが重要視されています。
また、コロナ禍をきっかけに改めて実店舗の存在意義が見直され、ECとの連携を強化する企業も増えていることから、EC業界のオムニチャネル化が進んでいます。
EC事業で今後の流れに乗るには、オムニチャネルを意識した戦略が重要でしょう。
オムニチャネルについてまだ詳しくない方は「オムニチャネルとは?」の記事で確認してみてください。
EC業界の大手企業は?
では最後に、EC業界で有名な大手企業をいくつか紹介します。
EC業界に詳しくなくても知っている人は多いはずです。
Amazon
Amazonはアメリカで始まったサービスで、日本国内でも多くの人が利用しているECモールです。
Amazonの特徴は、購入者が商品を見つけやすいこと。
何か商品を検索すると、同一商品の中の最安値が表示されることから、お得に商品を手に入れたい購入者にとっては使い勝手が良いといえます。
販売者側から見ると、Amazonは1品からでも商品が販売できるのでネット物販を始めやすいことが特徴として挙げられます。
ショップのデザインなどは無く、商品を出品するだけなのでショップとして認知されにくいデメリットはありますが、小口出品が可能で個人でも販売がしやすいのがメリットです。
Yahoo!ショッピング
Yahoo!ショッピングは、Amazonや楽天と並んで3大ECモールとして知られるECサイトで、出店数が多いのが大きな特徴です。
店舗数が多い理由は、Yahoo!ショッピングが他のECモールに比べて低コストで始められるからです。
ECモールに出店する場合、初期費用や出店費用のほか、ランニングコストとしてシステム利用料や売上の一部が成約手数料として差し引かれることが多いですが、Yahoo!ショッピングでは初期費用もシステム手数料も必要ありません。
ただし、完全無料な訳ではなくキャンペーン費用や決済手数料などは発生しますが、他のECモールと比べて低コストでショップを運営できます。
PayPayやLINEがグループ企業ということもありYahoo!ショッピングと連携しているため、利用者が増えてきているECモールです。
楽天市場
楽天市場は、ネットショッピング以外の楽天サービスの利用に応じてポイント倍率が増えるプログラムや、定期的なポイントアップキャンペーンを実施していることもあり、国内で最も取引額の多いECモールとして知られています。
楽天の特徴はその会員数の多さで、2022年度時点の会員数(アカウントID数)は1億以上とされています。
出店する側にとって販売コストがやや高めなのはネックですが、ユーザー数が多いので集客力がある点は魅力的です。
また、出店から販売まで専任のECコンサルタントが付くので手厚いサポートが受けられるのも大きな特徴といえます。
ZOZOTOWN
ZOZOTOWNは、Yahoo!ショッピングを運営しているZホールディングスグループである株式会社ZOZOが運営しています。
仕組みとしては、AmazonやYahoo!ショッピングと同じECモールですが、総合型のようにさまざまな商品を販売するのではなくアパレルやコスメ商品に特化しているのが特徴です。
洋服や靴など身に着けるものを販売しているだけあり、サイト上でのユーザービリティ(ユーザーの使いやすさ)や購入のしやすさを重視しています。
例えばミリ単位で足の大きさを測定してピッタリの靴を提案してくれる機能や、似たような形や色の服を検索できるような機能があります。
試着が前提のアパレル商品を、オンライン上でもスムーズに買えるような仕組み作りを日々行っているECモールでしょう。
メルカリ
個人が不用品を気軽に売買できることを可能にしたフリマアプリがメルカリです。
これまで紹介したECモールとは異なり、個人と個人による商取引であるため、CtoC型のECサイトになります。
パソコンが無くても、スマートフォンさえあれば出品できる手軽さが人気です。
匿名配送に対応したり、通常の送料よりも料金を抑えたメルカリ便が使えたりなど、個人間でのやり取りを促すような仕組みが整っています。
国内のフリマアプリの先駆け的な存在といえます。
まとめ:EC業界の今後は、将来性のあるまだまだ成長市場である
EC業界はスマートフォンの保有率が上がっていることなどもあり、今後も市場が拡大していくと予想されます。
近年では、国外向けに展開する越境ECも注目されてはいますが、まだ参入する企業は多くありません。
また、ECを行っている企業自体も全国にある店舗数と比べたら少ないといえます。
そのため、EC業界はこれからも伸び続ける将来性のある成長市場でしょう。
EC業界へまだ進出していない方はさまざまなサービスも充実してきているので、ぜひ挑戦してみてくださいね。
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