ECモールやECサイト作成サービスなどが充実したことで、個人でもECサイトを始めやすくなりました。
ですが、いざECサイトを開設しても思うように運営できず、失敗するショップが多いのも事実です。
そもそもECサイトの運営にはどのような人が向いているのか、特徴や身につけておくべき技能、資格などを紹介します。
ECサイト運営は、向いている人と向いていない人がいるの?
ECサイトの運営はさまざまな業務があるので、一部の作業が苦手に感じる人もいるかもしれません。どのような人なら向いているのか、ECサイト運営にはどのような能力が必要なのかなど、詳しく説明していきます。
ECサイト運営とは何をする?やることとは
そもそもECサイト運営とはどのようなことを行うのか、知らない人も多いと思います。
ECサイトの運営業務は、フロント業務とバックエンド業務の2つに大きく分けられます。それぞれどのような業務があるのか、見ていきましょう。
フロント業務
フロント業務とは、商品企画やECサイト制作など、ユーザーの目に触れる業務のことです。
下記では、フロント業務についてさらに詳しく紹介していきます。
商品企画
市場調査や時代のトレンド、シーズンイベントなどを踏まえて、どのような商品を販売するかを企画するのが商品企画です。
「ただ何となく売れそうだから」という理由で企画してしまうと、全く売れずに在庫を抱えるリスクが発生するので商品企画にはリサーチが必須でしょう。
商品企画の段階で、どのくらいの原価で、どのくらいの利益が見込まれそうかといったことも考えておくと、後から「商品化したものの利益率が低すぎる」といった事態を防げます。
商品の仕入れまたは製造
商品企画をもとに商品の仕入れ、または商品の製造に着手します。
自社製品の場合、もし自社に製造ラインが無かったとしても、ノウハウが豊富な他社に製造を委託できるOEMという方法もあります。
どれくらい仕入れるのか、どれくらい製造するのか事前に販売計画を立て、適量の在庫を確保するようにしましょう。
少なすぎると販売機会を逃してしまうことがありますし、反対に多すぎると在庫保管のコストが増えてしまうことがあります。
ECサイトの制作・更新
ECサイトといっても、ECモールやECサイト作成サービス(ASP)、ECパッケージなど制作方法はいくつかあります。
集客力を重視するならモール型、デザイン性を重視するなら自社サイト型など、制作後の運用をイメージして制作方法を選択するのがおすすめです。
また、ECサイトの目安年商や事業規模なども踏まえて制作方法を検討します。
ECサイトの制作方法はどのようなものがあるか、それぞれの違いについて「ECサイトを制作するには?」の記事で詳しく紹介していますので、ぜひ見てみてください。
さらに、ECサイトを制作したら更新作業も必要です。
「ささげ業務」といわれる、商品の写真撮影・サイズ測定・商品説明の作成といった登録作業もECサイト運営において欠かせない業務になります。
集客のための宣伝
ECサイトは自社で存在をアピールしていかない限り、ショップがオープンしたことに誰も気付けないので、多くの人にショップを宣伝する集客が必須です。
人が訪れないことには売上も上がらないため、ECサイトでは集客が重要な業務の1つといえます。
具体的な方法としては、広告やSNS運用、SEO対策(検索での上位表示させるための対策)があります。
すぐに効果が出なかったとしても、広告の打ち出し方を変えたりSNS投稿のコンセプトを考え直したりなど諦めずに試行錯誤すれば、だんだんと人が集まるECサイトになるでしょう。
ECサイトの集客方法について具体的には「ECサイトへの集客方法は?」の記事で紹介しています。
バッグエンド業務
バックエンド業務とは事務作業が中心の、いわゆる裏方の業務です。
受注や梱包・配送、顧客フォローなど、ECサイト運営を裏で支える業務のため、顧客満足度にもかかわってくるといえます。
顧客視点の対応や業務を円滑にするための仕組みの構築などが求められるでしょう。
注文の受付・処理
ユーザーからの注文を受け、在庫の確認や注文受付のメール送信、発送指示などを行います。
受注ミスはショップの信頼にも関わりますので、ミスが生じないようにできる限りシステム化することが大切です。
特にギフトの販売(ギフトEC)では、熨斗書きやラッピング方法、複数への配送など顧客ごとに注文内容が複雑なため、注文内容をきちんと確認して次の工程の担当者へ引き継ぐ必要があるでしょう。
なお注文のキャンセルや入金の問い合わせなども注文の受付・処理業務に含まれます。
商品の梱包・配送
出荷指示を受け、在庫から商品をピッキングして梱包し、配送会社に引き渡します。
梱包にどのような箱を使用するかや手書きのお礼状を同封するかなど、梱包作業でも他社と差別化して、顧客にショップを印象づけることもできます。
梱包が丁寧だったり、顧客のための気遣いがしてあったりすると購入者は「このショップでまた買いたい」と思うようになるため、自社らしいおもてなしを反映した梱包や配送を心がけましょう。
配送が完了したら、発送方法の種類(宅配便やメール便など)や宅配業者の送り状番号とともに発送が完了した旨を忘れずにユーザーへ送ります。
顧客フォロー(アフターフォロー)
商品は問題無く届いたかを確認したり、次回使えるクーポンをプレゼントしたりなど、主にメールで購入者のフォローを行います。
もし顧客から何らかのクレームや問い合わせを受けた場合は、内容に応じて対処するのも顧客フォローの役割です。
商品の不備などで顧客に迷惑をかけてしまっても、迅速に顧客対応を行えば「何かあったとしてもきちんと対応してくれるショップ」と、かえって好感を持たれるチャンスになるかもしれません。
顧客と直に接する顧客フォローも、ECサイト運営で力を入れるべき業務です。
在庫管理
在庫管理は、必要な時に適正な量を提供できるように管理することです。
少なすぎると販売機会を逃してしまうことになりますし、多すぎても商品劣化につながったり管理コストが増えすぎてしまったりなどのデメリットがありますので、適正量の維持を心がけましょう。
在庫管理を適切に行うことで商品の売れ行きも把握できるようになり、売れやすい時期に合わせて在庫量を増やすなど、対策も取りやすくなります。
なお、在庫管理についてさらに詳しく知りたい方は「在庫管理とは?」の記事で、在庫管理の意味や具体的な方法などについて紹介していますのでぜひご覧ください。
ECサイト運営には何人必要?1人でもできる?
ECサイトの開設が手軽にできるようになった今、副業として始めてみたい方も多いでしょう。
そこで気になるのは、ネットショップに必要な人数です。1人でも可能なのでしょうか?
結論としては、ECサイトの運営は1人でもできます。
ECサイトの運営に必要な人員は、サイトの規模で異なるので、例えば月収数万~数十万円程度の小規模なショップであれば1人で運営することも十分可能でしょう。
ですが、月商が数百~数千万円、注文数も数百件など規模が大きくなると1人でECサイトを運営するのはかなり無理があります。
大規模なECサイトでは商品企画部や在庫管理部、カスタマーサービスチームなど、業務ごとに部署やチームを作って対応しないと、業務がさばけません。
もし、人を雇わずにある程度の規模のECサイトを運営したい場合は、以下のような方法もあります。
- ・イラストや写真データなどの、発送作業が必要ないデジタルデータを販売する
- ・梱包や配送作業の対応が不要なドロップシッピング(メーカーなどから直送してもらう仕組み)を行う
イラスト、写真、動画、音楽ファイル、電子楽譜などデジタルデータのダウンロード販売であれば、在庫の仕入れや梱包・配送が不要なので、1人でも大規模なECサイトを運営することも可能でしょう。
また、自社のサイトでは販売のみを行い、メーカーがユーザーへ直接商品を配送してくれるドロップシッピングも、通常のECサイトより業務負担が少なく済みます。
ECサイト運営に向いている人とは?特徴を紹介
ECサイトの運営を始めてみたいけれど、自分に向いていないのではと不安になるかもしれません。
どのような人ならECサイトの運営に向いているのでしょうか。主な特徴を取り上げます。
自ら進んでいろいろと学べる
ここまで紹介したように、ECサイトを運営するにはさまざまな業務に取り組まなくてはなりません。
ほとんどの業務がこれまでやったことのない仕事である可能性が高いので、わからないことでも自ら積極的に学んで身に付ける姿勢が必要です。
また、EC業界はまだまだ発展途上の業界です。
EC業界関連の技術やトレンドが日々更新されていくため、変化に対応できるよう新しいことを学習していかなければなりません。
好奇心が強く、新しいことに取り組むのを楽しめる人はECサイトの運営に向いているでしょう。
コツコツと1つのことを継続していける
華やかそうなイメージのECサイト運営ですが、先ほど紹介したように業務の半分は運営を裏で支えるようなバックエンド業務です。
注文した商品を黙々と梱包したり、顧客からの問い合わせに何度も応対したり、ユーザーデータを分析したりなど、コツコツとひたすら1人で作業に向き合わなければなりません。
また、ECサイトは開設しても認知してもらうまでに時間がかかることから、開設直後はなかなか成果につながらないこともあります。
それでも売上アップの工夫をしながら運営を継続していけば、努力が実ってじょじょに売上が上がっていくでしょう。
コツコツと作業をして何かを積み上げていくことが得意で継続していける人であれば、無理なくECサイトを運営していけるはずです。
顧客目線に立てる・意見を聞ける
ECサイトは、サイトを訪問して商品やサービスを購入してくれるユーザーがいるからこそ成り立ちます。
そのため、運営者にとって魅力的な商品やサイトデザインであったとしても、ユーザーのニーズにマッチしていなければ売れません。
興味を持ってもらったり、実際に商品を購入してもらったりするには、ユーザー目線でのサイト作りや商品企画が何よりも重要です。
また、ECサイトを運営しているとクレームやネガティブな声を受け取ることもあります。
聞き流したくなりますが、お客様の声にはECサイトをより良くして売上げをアップするためのヒントが含まれていることもありますので、素直に聞く姿勢を持ちましょう。
顧客目線に立ってサイト設計や運営ができる人、顧客の声をしっかり聞いて改善のために取り組める人はECサイトの運営に適しています。
柔軟に対応できる
EC市場の動向やトレンド、ユーザーニーズは日々変わっていくものです。
売上にもかかわるため、変化を受け入れECサイトの運営をアップデートしていくことは必須といえます。
また、ECサイトの業務内容は多様ですので、新たに仕事が発生した場合に対応できる柔軟性も求められます。
さらに、顧客から思いもよらぬ要望をもらうこともありますが、臨機応変に対処することで好感をもたれ、自社のリピーターやファンになってくれるかもしれません。
このように、さまざまな事態に対して柔軟に対応できる人はECサイトの運営に向いているでしょう。
ECサイト運営に向いていない人とは?
ECサイトの運営は、Web上での作業が中心で、地味な作業をコツコツと積み重ねていくタイプの仕事です。以下に該当する場合は、ECサイトの運営には向いていないかもしれません。
- ・パソコンを使った作業が苦手な人
- ・単調で地味な作業の繰り返しが苦手な人
- ・複数の業務の管理を苦手に感じる人
- ・常にアンテナを張って情報をキャッチするのが苦手な人
- ・データ分析が苦手な人
現時点では不得意でも、スキルを身に付けたり、苦手な作業は外部の会社へ委託したりといった方法もあります。
上記に該当したとしても、ECサイト運営を行っている人も大勢いるので、ストレスなく行うにはどうすればよいのか工夫してみましょう。
ECサイト運用に必要な技能
絶対に無いといけないという訳ではありませんが、一般的にECサイト運営では以下のような能力(スキル)が必要といわれています。
- ・商品企画力
- ・マーケティング力
- ・クリエイティブ(制作)力
- ・データ分析力
- ・顧客対応(カスタマーサポート)力
どのような能力なのか、見ていきましょう。
商品企画力
商品企画力とは、ニーズのある魅力的な商品を企画開発する能力のことです。
単に思い付きで商品を企画するのではなく、市場調査や競合分析、トレンド把握などを行った上で、ターゲットを想定して売れそうな商品を企画しなければなりません。
他社と似たような商品ではニーズがあっても激しい販売競争に巻き込まれてしまうため、他社との差別化を図り、ユーザーに需要のあるオリジナル商品を企画します。
マーケティング力
そもそも「マーケティング」とは、商品を購入してもらうためのすべての活動を指します。
そしてECサイトのマーケティングでは、「集客」「購入率の向上」「リピーター獲得」「顧客・競合データ分析」の4つが重要なポイントです。
具体的には、ECサイトの訪問者を増やす集客では、広告の出稿やECサイトのSEO対策、SNS運用などの方法があります。
購入率を向上させるためには、ユーザー目線でのデザインの改善や接客ツールの導入、口コミの充実といった施策が挙げられます。
ECマーケティングには他にもさまざまな方法がありますので、詳しく知りたい方は「ECマーケティングとは?」の記事をぜひご覧ください。
クリエイティブ(制作)力
ユーザーに購入してもらえるかどうかは、ECサイトのデザインや商品写真など、視覚的要素の影響が大きいです。
また視覚的な要素だけでなく、ユーザーへ商品の詳細を伝えるための商品紹介文も必要になります。
そのため、商品を魅力的に思わせるためのサイトデザインを始めとしたクリエイティブ(制作)力もある程度は必要なスキルです。
ただし、クリエイティブに関しては外部へ委託しやすい部分です。
費用はかかりますが、ECサイトの制作実績が豊富なデザイン会社や商品撮影に慣れているカメラマンに委託することで、クオリティの高いサイトが目指せるでしょう。
カラーミーショップでは自社にピッタリの制作会社を紹介してもらえる制作代行サービスも行っていますので、気になる方はチェックしてみてくださいね。
データ分析力
ECサイトから得られるデータを分析すれば、どのような属性の利用者が多いのか、どの商品がよく見られているのか、どのページの離脱者が多いのかなど、ユーザーの行動や特徴を把握できます。
取得したユーザーデータは、売上を伸ばしたり、新商品を企画したりするのに役立つため、ECサイトを運営する上でデータ分析は欠かせません。
データを読み解く力や分析結果をECサイト運営の改善につなげられるスキルが必要でしょう。
顧客対応(カスタマーサポート)力
ECサイトの顧客対応は目に見えない業務ですが、実は売上を大きく左右するものです。
顧客対応をきちんと行わないと、顧客が不満を持ち二度と購入しなくなってしまいます。
「新規顧客を獲得すれば問題ない」と考えがちですが、新規顧客の獲得はリピーター獲得よりも何倍もコストがかかるため、集客費用を押さえて売上を上げていくためにはリピーターを増やすことは大切なのです。
また、口コミやSNSなどに自社へのネガティブな意見が書かれてしまうと、悪い評判が広まり新規顧客も訪れなくなってしまいます。
顧客対応力も、ECサイト運営に欠かせない能力です。
ECサイト運営に役立つ資格
資格・検定の中にはECサイト運営に関連するようなものもあります。
ここでは代表的なものとして2つの資格を紹介します。
ネットショップ実務士
ネットショップの制作や運用など、ネットショップを運営するための基礎知識や実務知識を問う資格です。
ネットショップ運営に必要な幅広い知識を身につけられることから、これからネットショップを開業しようと考えている人はチャレンジしてみるとネットショップの概要が理解できるでしょう。
ネットマーケティング検定
ブランディングや効果測定などのマーケティングやセキュリティ対策などのインターネット技術に関する知識を問う検定試験です。
売れるEC サイトにするためにもWebマーケティングは欠かせないので、取得することで、ECサイトの売上アップにつながる知識を得られるでしょう。
詳しくは、「ECサイトで役立つ資格・検定とは?」の記事で上記以外の資格や検定も紹介していますので、気になる方は見てみてください。
まとめ
ECサイト運営のためにはさまざまな業務に取り組む必要があります。人によっては向き不向きもあるでしょう。
ただし、苦手な業務は外部に委託するなど工夫することで、ECサイトを楽しく運営している人も多くいます。
また、自分で学んで知識を得ていけば、ECサイト運営に自信が持てます。
今回紹介したECサイトの運営に必要な技能や役立つ資格なども参考に、ECサイト開設の準備を進めていきましょう。
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