ECサイトの分析というと難しそうなイメージですが、運営するためには必ず行ったほうがいいといえます。
なぜなら、ECサイトを分析することでショップの改善点や顧客の動向などが把握できるからです。
この記事では、ECサイト分析は何なのかやツールなど、基本をご紹介します。
ECサイトで成功するにはECサイトの分析が重要だと聞いたけど、どうやって進めていけばいいんだろう?
初めての場合はどこから手を付けていいのか、わからないですよね。今回はやり方の手順や取り組みやすくなるポイントなどをご紹介します。
目次
ECサイトの分析とは何?
ECサイトの分析とは、ECサイトにアクセスした人数や訪れたユーザーのデータを収集して、現状を把握することです。
分析したデータを見ればECサイトの課題が明確になり、改善することで顧客満足度の向上や売上アップを目指せます。
ECサイトの分析でわかること
ECサイトを分析すると、アクセス数やユーザーデータなどが把握できるとお伝えしましたが、詳しくは以下のような情報が得られます。
- ・どのような経路でECサイトに辿りついたユーザーが多いか
- ・ECサイト内のページが平均でユーザーに何ページ見られているか
- ・ECサイトのどのページを訪問するユーザーが多いか
- ・性別・年齢・居住地など、どのような属性のユーザーが多いか
- ・商品購入など行動に至ったユーザーがどのくらいいるか
- ・顧客の平均単価はどれくらいか など
実店舗だと、顧客がどのような行動を取っているのかや顧客の属性までは把握できませんが、ECサイト(Webサイト)ではさまざまなデータが取得できるので、ECサイトの分析をきちんと行うことは重要です。
ECサイトの分析を行う目的・メリット
ECサイト分析はどのような目的を持ち、行うことでどんなメリットがあるのでしょうか。
1つずつご紹介します。
ECサイトの改善点がわかる
ECサイトの売上につながるポイントは数多く存在します。
そのため売上を上げようと思った際、手あたり次第に改善すべき部分をピックアップしていくのは大変ですし、効率が悪いです。
ですがECサイトを分析すれば、数値として現状を把握できるようになるので、アクセス数や購入率、顧客単価など、どの部分に問題があるのかすぐにわかります。
データを数値化できることから、ECサイトの状況を客観的に捉えやすいでしょう。
ECサイトの現状を測定し分析することによって、課題や改善点を特定しやすくなるのが大きなメリットです。
ECサイトの売上アップにつながる
ECサイトの分析により改善点が明確になるので、「集客が足りていない」「商品ページをわかりやすくする必要がある」など、具体的な対策を打ちやすくなります。
浮き彫りになった課題を改善していけば、売上アップも期待できるでしょう。
また、ECサイトの分析は、過去の施策の効果を測るのにも有効です。
特別セールやキャンペーンなど過去の施策を分析することによって、効果が現れている施策と、あまり効果のない施策を把握できるので、次回からさらに有効な施策が打てるようになります。
業務の効率化やコスト削減に役立つ
ECサイトのデータ分析は業務効率化にも役立ちます。
例えば、顧客の行動を分析することで、運営側が行っている業務において購入に結びつくものと結びつかないものが明確になり、無駄な作業を洗い出せます。
重要でない業務は自動化することなどにより、業務効率化を実現できるでしょう。
ECサイトは少人数で運営するケースも多いと思います。
限られた人的リソースを効果的に配置して運用するためにも、データ分析を元に業務を見直し、効率化やコスト削減を目指しましょう。
ECサイトの分析のやり方・手順
ECサイトを分析することの重要性やメリットを把握したところで、ここからは実際にどのように分析を行っていくのかをご紹介します。
初めての方は、以下の手順に従って分析に取り組んでみてください。
分析する目的や課題を決める
目的や課題が曖昧なままECサイトの分析を始めると、どのような数値を見ればいいのかが定まりません。
そのため「ECサイトの売上を上げたい」「広告を打っているので、効果を確かめたい」など、何らかの目的や課題を持っておくと分析の方向性が決まるでしょう。
ただし、先ほどお伝えしたように「分析することで自社のECサイトの課題が見つかる」という側面もあるため、最初から課題がわからない方も多いと思います。
その場合はまず、ユーザーの「購入に至るまでの一連の行動」を分析してみるのがおすすめです。
集客(流入経路)→TOPページ→商品ページ→カートへの保存→購入という流れを見れば、「そもそも集客が足りていなかった」「商品ページでの離脱が高い」など、売上につながらない理由が見えてくるでしょう。
分析する指標を設定する
ECサイトを分析する目的やサイトが抱える課題がおおよそ決まったら、それに基づき分析する指標を設定していきます。
例えば集客力アップを目的にするのであれば、まずはどの経路からどれくらいの流入があるのかを調べてみましょう。
この後、分析すべき指標(ECサイトのKPI)の具体例も紹介するので参考にしてみてください。
指標は数多く存在するため、分析の目的と関連性の高い指標を設定することが重要です。
分析ツールを選ぶ
分析ツールには、ユーザーの行動分析に強いツール、ヒートマップなど視覚的な分析が得意なツール、AIを活用したツールなどさまざまなタイプがあります。
ツールごとに特徴が異なりますので、比較検討したうえで分析したい指標を効果的に測定できるツールを選択することが、ECサイトの分析をスムーズに行うコツです。
無料のツールと有料のツールがあるため、費用や機能も踏まえながら自社に適したツールを選択しましょう。
ECサイトのデータを収集・分析する
準備が整ったら設定した指標のデータを集めた後、導入したツールでデータを分析します。
当初設定した指標以外でも、もし可能であれば関連しそうなデータを収集しておくと、分析する際に役立つかもしれません。
また、関連する指標やデータを取ってみると意外な発見をすることもあるでしょう。
ツールを使えばさまざまなデータを把握できますので、目的や課題に関連しそうな指標は計測しておくことをおすすめします。
データを元に改善案を考える
分析ツールの分析結果から、なぜその値なのか(なぜ値が高いのか、あるいは低いのか)仮説を立て、改善のための施策を考えます。
例えば、サイトの回遊率が低く販売機会の損失が起きていると考えられる場合は、サイトの使い勝手の改善などが検討できるでしょう。
分析したことで複数の課題が浮かび上がった場合、いきなり全てに着手するのではなく優先順位を決めて取り組みましょう。
改善することで、より売上に効果が現れそうな施策から優先して実行していきます。
効果検証を行う
分析を元に改善を行ったらそれで完了ではありません。
改善の内容が正しかったのを確かめるためにも、一定期間経ったら効果検証を行いましょう。
改善後にデータ分析を行い、施策の実行前と実行後でどのような変化があったのか、あるいは変化がなかったのか測定し、改善策が有効だったのか検証します。
改善したにもかかわらず思うような結果が得られない時は、場合によっては効果が現れるまでに時間がかかるため、時間をおいて改めて測定してみても良いかもしれません。
ですがしばらくしても結果を得られない場合は、まだまだ改善の余地があると考えられるため、「課題に対して新たな改善策を実施し、しばらくしてから効果検証を行う」を繰り返します。
初めから改善がうまくいかなくても、トライ&エラーを繰り返すうちに正しい改善の方向がわかり、課題を解決できるでしょう。
無料で使えるおすすめのECサイト分析ツール
ECサイト分析のツールは、無料・有料含めて数多くあるので、どれを使っていいか迷ってしまいますよね。
まずはECサイト分析がどのようなものか試してみたい方向けに、ここでは無料で使えるおすすめの基本ツールを3つご紹介します。
Googleアナリティクス
Googleアナリティクスはアクセス状況の分析ツールで、ECサイトの分析ツールの中で最も有名です。
ECサイト(Webサイト)の訪問者数やユーザー行動などが把握でき、具体的には流入経路、アクセス数、アクセスしたユーザーの属性、CV数などがわかります。
Googleアナリティクスの使い方に関する書籍やブログ記事なども多数ありますので、初めての方でも学びやすいツールでしょう。
Google サーチコンソール
Google サーチコンソールも無料で使える分析ツールです。
Googleアナリティクスは主にWebサイトに訪れた後のユーザー行動を分析するのに対し、Googleサーチコンソールはサイトの表示順位、サイトが表示された際の検索キーワードなど、ユーザーがWebサイトに流入する前のデータを取得・分析できるツールです。
自社製品のニーズがあるユーザーに検索結果からサイトへ訪れてもらうためのSEO対策で、Googleサーチコンソールは活用できるでしょう。
Microsoft Clarity(ヒートマップ)
ヒートマップとは、Webサイトのとあるページを読んだユーザーの行動を可視化できるものです。
一般的なヒートマップでは、ユーザーが熟読している部分は色が濃くなり、あまり読まれていない部分は色が薄くなったり、ユーザーが読むのを止めてしまった部分やクリックされた部分がわかったります。
Microsoft Clarityは、Microsoftが提供する無料のECサイト分析ツールです。
ヒートマップ機能以外にも、アクセスしてきたユーザーに関する情報をまとめて閲覧できるダッシュボード機能などもあります。
完全に無料で使えるツールのため、ヒートマップ機能を試してみたい場合は、まずはMicrosoft Clarityがおすすめでしょう。
ECサイト分析で見るべき項目や指標(KPI)
ECサイトを分析する際に見たほうが良い主な指標をご紹介します。
ECサイト運営を行っている方なら、聞いたことがある言葉も多いと思います。どのような意図で計測するべきかも確認しましょう。
アクセス数
アクセス数とは、一定の期間にユーザーがサイトを訪問した回数を表します。
一定期間に訪れたユーザー数のみを表す「ユニークユーザー数」、ページが表示された回数を示す「PV数」のように、アクセス数は厳密には複数に分類できます。
誰かに訪れてもらわなければ売上は立たないため、アクセス数は売上を構成する重要な要素です。
ショップのアクセス数が低い場合は、まず集客に取り組むことをおすすめします。
流入経路
流入経路とは、ユーザーがどのような経路でサイトに訪れたのかを示す項目です。
Webサイトの流入経路は一般的に、Googleなどの検索結果からの流入、検索エンジンに表示される広告からの流入、SNSからの流入などがあります。
広告を打った後やオウンドメディアを立ち上げた後など、集客施策の効果を検証する際に流入経路を調べることが多いでしょう。
利益率
利益率は、ECサイトの売上に対する利益の割合のことです。
利益率の計算に必要な利益は、ECサイトの売上高から経費を差し引いて計算します。
商品に同梱するチラシなどは見落としやすい経費のため、計算する際に注意しましょう。
ECサイトの運営は利益を出さないと継続できないため、どれくらいの期間でいくらの利益が出ているか把握し、利益が少ない場合は各部門のコストを見直して、利益率の改善をすすめます。
コンバージョン率(CVR)
コンバージョン率は、サイト側が設定したユーザー行動の最終的な成果(コンバージョン)がどのくらいの割合で達成されたかを示す項目です。
ECサイトにおけるコンバージョンは商品の購入とされることが多いですが、企業対企業のBtoB ECサイトの場合は即時購入がほとんど無いので、「商品への問い合わせ」「製品資料のダウンロード」などもコンバージョンとして設定されます。
なお、ECサイトのコンバージョン率は、購入率にも置き換えられるでしょう。
コンバージョン率はアクセス数と同様、売上を構成する重要な指標です。
顧客単価
顧客単価とは、顧客1人あたりの平均的な購入金額のことです。
売上高を購入者数で割ると、顧客単価が算出できます。
ECサイトの売上を構成するのは、アクセス数とコンバージョン率、そして顧客単価の3つの要因です。
アクセス数やコンバージョン率が良くても、顧客単価が低いとなかなか売上がアップしませんので、顧客単価を上げる工夫を行いましょう。
例えば、同じカテゴリのより高額な商品の提案(アップセル)や、関連商品の提案(クロスセル)などは顧客単価を上げるのに有効とされています。
アップセルやクロスセルについて詳しくは「アップセル・クロスセルとは?」の記事で概要や方法を紹介していますのでご覧ください。
リピート率
リピート率とは、一定の期間における新規顧客のうちリピートしてくれた人の割合です。
ECサイトの売上を伸ばすには新規顧客の開拓が重視されがちですが、獲得のハードルが高く獲得単価も高いです。
一方、リピーターのほうが新規顧客に比べ低コストで獲得できるため、安定的な収益を得るためにはリピーターを増やすことも大切でしょう。
リピーターになってもらうには、初回の購入時に次回使えるクーポンを発行したり、メルマガに登録してもらったりといった方法があります。
リピート率についてやリピーターの増やし方について詳しくは「リピート率とは?」の記事をご覧ください。
離脱率
離脱率は、ユーザーが特定のページ(画面)を最後に見て、離脱してしまった割合を示します。
もしユーザーが訪れて1ページ目で離脱してしまった場合は、直帰率とも言い換えられます。
離脱率が高かったとしても、そのページが購入完了ページであれば、購入が終わったらサイトを閉じるのは当たり前なので問題はありません。
ですが、もし商品ページで離脱率が高かったとすると、「商品が気になって見たが商品の詳細がわかりにくかったため購入をあきらめた」「購入ボタンがわかりづらいので、購入を止めた」といった問題が考えられます。
ページごとの離脱率を測定することによって改善すべきページが把握できるので、売上が伸び悩んでいる場合、どのページでの離脱されやすいのかを調べればECサイトの課題が見えてくるでしょう。
【有識者からアドバイス】ECサイト分析に取り組みやすくなるポイント
ECサイトの分析を始めようと思っても、難しそうでなかなか取り組みづらいですよね。
そのためここでは、Web分析のプロであるWebアナリストの小川卓さんのインタビューを元に、ECサイトの分析が取り組みやすくなるポイントをご紹介します。
1.施策を行ってから効果検証のために分析する
データの分析を行ったことが無いので、なかなかECサイトの分析に手が出せないという人も多いでしょう。
そのような場合、いきなり分析を始める必要はありません。
まずは、「サイトの商品ページを充実させて改善を図る」「口コミを集める取り組みを行う」など、何らかの施策を打ってから効果を検証するために分析をやってみるという、パターンでも大丈夫です。
施策をベースに分析するので、コンバージョン率やアクセス数などの指標で評価するのかが決めやすいでしょう。
チェックしたデータが蓄積したら見返すことで、その施策がうまくいったか評価することができます。
2.身近な人に使用感をヒアリングする
ECサイトの分析といっても、難しく考える必要はありません。
例えば、身近な人にECサイトを利用した感想をヒアリングすることも分析の一環になります。
分析したいECサイトの利用が初めての人に使ってもらい、商品を購入したいと思えたか、購入したいと思わなかった場合は「サイトのどこがわかりづらかったか」「値段が高いと感じたか」など、その理由を詳しくヒアリングします。
ECサイトを知らない人に新鮮な目で試してもらい、感じたことを素直に話してもらうことも、ユーザー心理の理解につながります。
ユーザーの気持ちが把握できれば、サイトの改善にも役立てられるでしょう。
なお、見てもらう時間はユーザーの平均的な滞在時間である5分程度がおすすめです。
小川さんのインタビュー記事を読めばさらにECサイトの分析について理解が深まるため、下記の記事も合わせて読んでみてくださいね。
まとめ
ECサイトの分析は、ECサイトを改善して売上を伸ばしていくために重要です。
分析と聞くと難しいと感じる方もいるかもしれませんが、さまざまな方法があり、身近な人からのヒアリングが改善のヒントになることもあるでしょう。
難しく考えすぎず、取り組みやすい方法から始めるのがおすすめです。
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