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アクセス解析って重要?ネットショップ改善に必要なデータ分析方法を小川さんに聞いてみた。

「アクセス解析」と聞くと、専門用語も難解で、苦手意識を持っている方も多いかもしれません。しかし、アクセス解析をうまく取り入れれば、ネットショップの改善に役立つ情報を得ることができます。

そこで今回は、Webアナリストとして名高い、株式会社HAPPY ANALYTICS代表の小川卓さんに、初心者が知っておきたいアクセス解析の基本について伺いました。

株式会社HAPPY ANALYTICS 代表 及び、Faber Company 取締役 小川 卓さん
Webアナリストとしてリクルート、サイバーエージェント、アマゾンジャパン等で勤務後、独立。複数社の社外取締役、大学院の客員教授などを通じてWeb解析の啓蒙・浸透に従事。株式会社HAPPY ANALYTICS代表取締役。
主な著書に『ウェブ分析論』『ウェブ分析レポーティング講座』『マンガでわかるウェブ分析』『Webサイト分析・改善の教科書』『あなたのアクセスはいつも誰かに見られている』『「やりたいこと」からパッと引ける Google アナリティクス 分析・改善のすべてがわかる本』など。
Twitter:@ryuka01

小川さんの自己紹介

小川さんについておしえてください

「Webアナリスト」というWebサイトを分析する仕事をしています。新卒でMicrosoftに入社して以降、リクルートやサイバーエージェント、Amazonなど事業会社5社ほどで経験を積み、2015年に独立してHAPPY ANALYTICSという会社を立ち上げました。幅広い業種業界の企業に、Webサイトの分析やコンサルティングなどのサービスを提供しています。

2014年ころから、株式会社Faber Company(ファベルカンパニー)の取締役として参加していまして、今はチーフアナリティクスオフィサーの立場で社内アナリストの育成やGoogleアナリティクス4(GA4)の導入支援に勤しんでいます。

参考:Faber CompanyではGA4に関する解説コンテンツを公開中です。
Google Analytics 4(GA4)とは?
Googleアナリティクス4(GA4)への移行どうする?

そのほか、複数社の社外取締役や、社内外向けの講演・勉強会、過去には大学院の客員教授、書籍の執筆活動などを通じて、Web解析の啓蒙・浸透に力を注いでいます。

アクセス解析やWebの解析に興味を持ったきっかけはどういうものだったのですか?

イギリスの大学に在学中の1998年ころのお話ですが、当時はホームページにアクセスカウンターを設置することが流行っていたんですね。大学では数学や化学を専攻していたこともあり、「どの国から何人来ているかをデータで見られるなんておもしろい」と思って、Webのデータ解析に興味を持つようになりました。

また、インターネットの黎明期にMicrosoft社に入社し、「やはりこれからはITの時代だ」と確信したのをきっかけに、Web分析やWebマーケティングを極めるぞと決意しまして、以来、Webマーケティング解析一本でキャリアを積んでいます。

ホームページのカウンター!なつかしいです

アクセス解析とは「Webサイトの健康診断」

アクセス解析という言葉を聞いたことがある方も多いとはおもいますが、改めて“アクセス解析”がどういうものか教えていただけますか?

アクセス解析とは、アクセス解析ツールを使ってユーザー行動や特性を分析することを指します。アクセス解析ツールは、シンプルにいうとサイトに来た人の行動をデータで把握するためのツールで、「Webサイトの健康診断のためのツール」と捉えることもできます。

サイトの健康診断ですか?

私たちは年に一度、健康診断で体重や血圧測定、血液検査などをして、その数値から体に不調はないかチェックをしますよね。それと同じで、Webサイトでも、アクセス解析ツールで直期率やコンバージョン率、平均閲覧ページ数、滞在時間などのデータを集めて、問題はないかとチェックする必要があります。

Webサイトの担当者は、いわばWebサイト専門のお医者さんです。実際のお医者さんが健康診断の数値を見て生活指導や治療法を提示するように、Webサイトの担当者には、データを的確に読み取ってサイトの改善策を打ち出すという重要な役割があります。

なるほど、健康診断と考えると非常にわかりやすいですね!

もちろん、データだけを重視するのではなく、これまで培った経験、勘、発想力から生まれる視点も大切です。アクセス解析は改善策を出してくれるものではなくて、あくまで診断をするためのデータを集める道具です。Web担当者がそのデータをもとに、これまでの経験や勘、発想力を働かせれば、よりよい改善案や企画案を出せると思います。

アクセス解析をする目的はそういった改善ポイントに気が付くためのデータをみるということですね?

そうですね。アクセス解析は、Webサイトの現状把握やモニタリング、施策実施後の効果測定のために用いられます。その目的は、分析データから課題を見つけ、よりよい方向に改善して集客やコンバージョンにつなげることにあります。Webサイトの改善を前提とした場合、データによって、どこを改善すればより売上アップにつなげられるが鮮明になるので、効率的に改善できます。

ECサイトで買い物をする場合、気になるものがあればクリックするし、興味が失われれば離脱します。わざとF5を連打してリロードを繰り返すような人はまずいないので、単純にたくさん見られているページはやはりニーズのあるページですし、離脱する人が多いページは魅力に欠けるページということですよね。アクセス解析は、そういったユーザーの足跡の結果を見ることができるんです。

リアル店舗の場合、取得できるデータはレジの情報が中心になるので、性別や見た目年齢、買い物情報など、ある程度限られます。もしそこにアクセス解析があれば、お店に来た人たちは何をきっかけに来たのか、何回目の訪問か、お店の中をどう動いて買い物をしたのかといった詳細情報が得られます。

生鮮食品のところに行って、トマトを手に取ったけど元に戻して、次はお菓子売り場に行ったなど、お客さんの動きを知る事ができるので、店長さんはおそらく商品配置やレイアウト変更がしやすくなると思います。

ECでも同様に、ユーザーの行動を把握しておくと、ネットショップ内の導線やアクセシビリティーの改善などに役立つはずですよ。

アクセス解析にはどんなツールを使うのがよいですか?

Googleアナリティクス(GA)を使うのが一般的です。上場企業の約8割が導入しています。無償で使えるうえ利用者が多いので、関連する情報もたくさん発信されています。使い方がわからなければ、セミナーに参加したり、書籍を読んだり、周りに聞いたりできるので安心感があります。定番ツールなので、実際に使って知識を得ておくべきだと思います。

今年の6月末にGAが終了してGA4に移行しますが、移行後もやはりスタンダードなツールになっていくのかなと感じています。

GA以外では、ヒートマップツールを入れている会社さんも多いですね。どこまでスクロールしたか、どこを長く見たかなど、ユーザーの閲覧状況がサーモグラフィーのように色で可視化されるツールで、視覚的にわかりやすいので支持されています。

アクセス解析をするのに事前に準備するものはありますか?

上から順に全データを見るのではなく、必要な項目をしっかり見ることが大切なので、アクセス解析によってなにが知りたいか、なにを分析したいのか、事前に目的を明確にしておくべきです。目的が不明瞭だと、どの数字を見たらいいのかわからなくなってしまいます。

「自分たちのサイト内のどの特集ページが売上に貢献しているかを知りたい」というお題があれば、自ずと見るべき項目がわかると思います。

アクセス解析で絶対に見ておきたいポイントと、解析後にすべきアクションは?

アクセス解析でここは絶対に見るべきポイントなど代表的な指標を教えてください!

CVRやCTRなどさまざまな用語がありますが、これらを無理に覚える必要はなく、「ECサイトを分析してなにを知りたいか」という視点を持つだけでいいと思います。

健康診断でも基礎検診がありますよね。身長・体重・血圧・採血と言ったように基礎の診断項目が決まっています。それと同様に。アクセス解析でも、あらかじめ項目を決めておいて、定期的にチェックすることが重要です。項目数は10個くらいでいいので、少なくとも週に1回程度は確認するようにしてください。チェック時間も10分程度でOKです。

流入数はどれくらいか、そのうちの何パーセントが購入したか、1回の購入金額はいくらかの3つが売上の分解要素として挙げられます。また、流入元(検索やメルマガ、広告など)の内訳や、流入者が商品詳細ページに遷移する割合とアクセス数も確認しておいたほうがいいですね。商品が複数ある場合は一人当たりの商品閲覧数も大事です。

ユーザーは商品を比較しながら絞り込んでいくので、1人当たりの見ている商品数が多いほど購入率が上がります。このほか、カートへの投下率や、決済開始数および完了数なども見ておくべきです。

定期的にデータをチェックしていると、変化に気づきやすくなります。この気づくことが大切で、GAのサイトを開いて見る、GAのレポートをメールで自分宛に送って見るなど、どんな方法でも構いませんが、なんとなく見るクセをつけておくことをおすすめします。自社サイトの平均値を把握できていれば、施策や改善後の変化もわかりやすくなります。

アクセス解析では、見るべき項目を決めて定期的にチェックすること、そして変化に気づくことが大切ということがわかりましたが、変化に気がついた後のアクションはどんなことをすべきでしょうか。

変化の理由を調べることが重要です。売上が変わらなくても流入がかなり増えているなら、SNSでバズっているかもしれません。Twitterなどを確認してみて、やっぱりバズっていたとわかれば、リツイートしてコメントするなど、流入をさらに増やすための対策を取ることができます。変化の理由がわかれば次の行動に移りやすくなるので、きちんと調べるようにしてください。

また、なかには「チェックするデータは売上だけでいいのでは?」と思っている人もいるかもしれませんが、変化を見落とす可能性があるので推奨できません。毎月同じ売上が続いていたとしても、月によって流入数やコンバージョン率が違っていることはよくあります。

売上データに限った話ではありませんが、変化のないデータは興味を持たれにくく、「ずっと同じ状態なら、なにもいうことはない」となりがちです。とはいえ、実際はなにかしらの変化が起こっていて対策が必要なこともあります。最終的な結果だけではなく、その前段階のデータも含めて継続的に見ることが大切です。

アクセス解析をしよう!GAを見よう!と思っても、なんとなく苦手意識をもっている方も多いと思うんです。

苦手だな、大変そうだなという場合は、アクセス解析から入らなくても大丈夫です。特集などのコンテンツを作るとか、説明文をより充実させるとか、口コミを増やすための取り組みを頑張るとか、先に施策を打ってからGAで結果を確認するというパターンでもいいと思います。そのほうが、もしかすると取っつきやすいかもしれません。

たしかに!頑張って作ったコンテンツにどのくらいの人がどこから見に来てくれたんだろうという解析の仕方だと入りやすいですね。

ネットショップのゴールは売上を上げることで、売上を上げるには施策を打つ必要があります。究極的には、データ分析より施策を打つほうが大事です。

施策を実施するには目的がありますよね。何のために施策を実施するのか。その成果を施策実施後に測定する必要があるので、どの項目で評価するか、成果を見るかを決めておくことも大事です。ページビュー数や、遷移率、直帰率、コンバージョン率など、どの項目でも構いません。

決めた項目は、新規の特集ページを作ったときや、既存のページを修正したあとにチェックして記録しておいてください。データが蓄積されていれば、どの施策がよかったかと比較して評価できます。

データだけを見るのではなく、実際にユーザーに触ってもらいヒアリングすることで理解を深めることも重要

長年ネットショップを運営していてデータもみているけど、なかなか改善策が見つけられないという方はどのようなデータをみるといいですか?

データを見る前に、社外のどなたか、ご家族でもご友人でもよいのですがまだそのサイトをつかったことが無い方に、自社サイトを5分ほど利用してもらうという手があります。今ならオンラインで実施できますし、Zoomなどで全画面表示にしてもらって操作の様子を見る方法でもいと思います。そんなに短い時間でいいの?と思われるかもしれませんが、一般的なユーザーの滞在時間もそれくらいなので十分です。

サイトを使ってもらったあとには、買いたいと思えたかどうかを、理由とともにヒアリングします。相手が買いたくないと思ったのであれば、サイトの特徴がわからなかったのか、なんとなく高いと思ったのか、使いづらかったのかを確認して、買いたいと思ったのであれば、どのコンテンツに魅力を感じたかなどを聞いてみます。

私の場合は、サイトを使ってみて感じたことをメモしてもらうようにしています。トップページを見たときの第一印象や、一番に目に入ったものはなにか、スクロールしたかしていないか、どれをクリックしたか、なぜクリックしたのか。いずれも無意識でやっていることだと思いますが、5分くらいで考えながら振り返ってもらいます。

そうすると、「この商品を一瞬で気に入った」⇒「すごくよさそうな画像に惹かれてクリックしたけれど遷移しなかった」⇒「この商品はどこにあるんだろう」⇒「商品カテゴリ一覧をクリックしてみよう」⇒「ここから見られるかな」といった心の動きも把握できます。

5分程度の時間では4ページくらいしか見られませんが、一般的にユーザーはその間に買うかどうかを判断します。新規ユーザーには必ず1回目の訪問があり、最初の数分ですべてが決まるので、使ったことのない人に新鮮な目で試してもらって、どう感じてどう動いたかを知ることはとても重要なことです。

データはもちろんですが、こうした情報も集めておくと、ユーザーのことをより深く理解できるようになると思いますし、改善にも役立てられると思います。

この試してもらった人の行動や意見をそのまま真に受けて取り入れる必要はありませんが、こうしたら売上が上がりそうだと仮説を立てるきっかけにして、施策を実施、検証という流れで改善につなげられると思います。可能であれば複数人にモニターになっていただくとよいでしょう。

アクセス解析におけるPDCAの回し方

ユーザーテストはかなり発見がありそうですね。

サイトを利用する様子を観察していると、自分が想定していたものとは違う行動をされることがあります。この段階では、操作してくれた人が特殊な行動をしただけなのか、自分の感覚がずれているのかは判断できません。そういうときに、GAのアクセス解析レポートなどでデータを見れば、ユーザーの何割が同じような動きをしているのか、またはしていないのかがわかります。

データを見た結果、想定外の動きをした人と同じ行動をした人はほとんどおらず、特殊な動きだったとわかれば、それほど気にしなくていいかもしれません。逆に、4割くらいが同じ動きをしているなら、自分の感覚が間違っていた可能性があるということです。

であれば、その動きに合わせて変えてみようとか、こちらの意図するページを見てもらいたいからトップページで目立たせてみようなどと、なにかしらの改善策が浮かんでくると思います。さらに、改善した結果どう変化したのかをデータで確認して効果検証します。

あくまで一例ですが、この流れをワンセットとしてPDCAを回すことで、精度の高い改善ができるようになっていきます。

少し話は変わりますが、トップページの改善に力を入れている会社さんは多いです。トップページを改善するために何時間も会議で話し合いをするよりも、データを見て課題を抽出したほうが効率的に改善できます。

「特集ページは見てもらえているけれど、そこから商品詳細ページに遷移する人が少ないことがわかった」⇒「実際のページを見たら商品ページのリンクが張ってあるだけ」⇒「では、誘導するためにもっと魅力を打ち出してみよう」といった発想を得られます。

もちろん、ブランディングがしっかりできている大手の会社さんであれば、ブランド名で検索してトップページに来てくれるユーザーもいますが、そうではないなら、一覧とか詳細ページを充実させたほうがいいと思いますよ。

今日からアクセス解析をはじめるなら

この記事を読んで、よし!アクセス解析をやってみようと思った方に向けて、今日からはじめられる超簡単アクセス解析方法を教えてください

Web担当者がアクセス解析でやるべきことは、気になる項目を定期的に見ることと、仮説を立てて実施した施策の結果を確認すること、そもそもユーザーがどう動いているのかを知るために、データ全体を見て現状を把握しておくことのおもに3つです。

そのうえで、今日からアクセス解析に取り組むなら、まずやってほしいのがアクセス解析をするための健康診断表を作ることです。紹介した項目を参考にして、分析したいデータを見つけてみてください。

次に、過去データを参照して変化しているところを見つけ出し、その理由を探ってみてください。流入数が減っていたのであれば、どこからの流入が減ったのかを見る。売上げが減っていたのであれば、そもそもの流入が減ったのか、サイトからの離脱が増えたのかをチェックします。練習がてら2、3回繰り返せば勘所がつかめるはずです。

それから、誰かにサイトを見てもらって、使い勝手をヒアリングしましょう。ヒアリング結果をもとに仮説を立てて、分析をしてみましょう。

最後は、施策をやってその結果を検証しましょう。アクセス解析から入るのが苦手な方は、施策を実施してその振り返りとしてデータをみてみましょう。振り返りは次の施策の精度を高める目的があります。作りっぱなし、やりっぱなしで終わるケースが多いので、結果を振り返るクセを身につけてほしいです。

この4つのうち、なんとなく気が向いたものから気軽に始めてみてくださいね。