
化粧品のECサイトとは?市場規模や課題、成功事例も紹介!
化粧品のEC市場は年々成長を続けていますが、2024年の化粧品、医薬品市場のEC化率はまだ低く、今後も大きな伸びしろがある市場といえます。
この記事では、化粧品ECの市場規模や抱える課題、成功のポイントから実際の事例まで、これからEC参入を検討している法人向けに分かりやすく解説します。

化粧品のECって難しそうだなぁ。

確かに課題はありますが、オンラインならではの工夫で成功している企業もたくさんあるんですよ。具体的な課題と解決策を一緒に見ていきましょう!
目次
化粧品ECの市場規模は成長している?推移やEC化率も紹介

経済産業省の「令和6年度 電子商取引に関する市場調査報告書」によると、化粧品・医薬品分野のEC市場規模は2024年に1兆150億円となりました。
10年前の同資料と比較すると2014年の市場規模は4,415億円なので、10年で約2.2倍に成長しており、毎年確実に拡大を続けています。
一方、下記は他業界も含めた国内のEC化率の推移です。
2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | 2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | 2024年 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
食品・飲料等 | 1.89% | 2.03% | 2.25% | 2.41% | 2.64% | 2.89% | 3.31% | 3.77% | 4.16% | 4.29% | 4.52% |
生活家電・PC等 | 24.13% | 28.34% | 29.93% | 30.18% | 32.28% | 32.75% | 37.45% | 38.13% | 42.01% | 42.88% | 43.03% |
書籍・映像ソフト等 | 19.59% | 21.79% | 24.5% | 26.35% | 30.8% | 34.18% | 42.97% | 46.2% | 52.16% | 53.45% | 56.45% |
化粧品・医薬品 | 4.18% | 4.48% | 5.02% | 5.27% | 5.8% | 6.0% | 6.72% | 7.52% | 8.24% | 8.57% | 8.82% |
生活雑貨・家具等 | 15.49% | 16.74% | 18.66% | 20.40% | 22.51% | 23.32% | 26.03% | 28.25% | 29.59% | 31.54% | 32.58% |
衣類・服飾雑貨等 | 8.11% | 9.04% | 10.93% | 11.54% | 12.96% | 13.87% | 19.44% | 21.15% | 21.56% | 22.88% | 23.38% |
自動車・バイク等 | 1.98% | 2.51% | 2.77% | 3.02% | 2.76% | 2.88% | 3.23% | 3.86% | 3.98% | 3.64% | 4.16% |
事務用品・文房具 | 28.12% | 28.19% | 33.61% | 37.38% | 40.79% | 41.75% | – | – | – | – | – |
その他 | 0.56% | 0.63% | 0.75% | 0.80% | 0.85% | 0.92% | 1.85% | 1.96% | 1.89% | 1.91% | 2.08% |
毎年EC化が着実に進み、2024年の時点で化粧品・医薬品業界は8.82%となっています。
ですが似たようなジャンルの衣類・服装雑貨等のアパレルが23.38%であることを考えると、化粧品業界のEC化率は低く、まだ伸びしろが大きいといえるでしょう。
化粧品ECが伸び悩んでいる課題とは?

化粧品のEC化率が他の業界と比べて低い背景には、いくつかの理由があります。
実店舗での購入が根強く選ばれる要因やEC特有の課題について、ここでは3つのポイントから解説します。
実店舗で手軽に買える
化粧品業界でEC化があまり進まない大きな理由のひとつが、実店舗の利便性の高さです。
ドラッグストアは都心でも地方でも身近な場所にあり、日用品を買うついでに化粧品も手に取れます。 ECのように配送を待つ必要もなく、思い立った時にすぐ購入できるため、多くの消費者が実店舗を選んでいます。
さらに化粧品は、ドラッグストアだけでなく百貨店やバラエティショップなど販売チャネルが豊富です。
購入できる場所が多く、それぞれに魅力があるため、ユーザーはあえてECを選ぶ必要性を感じにくいといえます。
実際に試してから購入したい人が多い
化粧品EC最大の課題は、「実際に試せない」ことです。
化粧品は肌に直接触れるものなので、色味やテクスチャー(質感)、香りなどを確認してから買いたいと考える人が大多数を占めています。
特にファンデーションやリップなどメイクアップ商品は、自分の肌色に合うかどうかが重要なため、実物を見ずに購入することはハードルが高いです。
実店舗なら美容部員からアドバイスを受けたり、テスターで試したりできるため、安心して購入したいという気持ちから、ECではなく実店舗を選ぶ人が多いのです。
在庫管理や配送のコストが増えやすい
化粧品ECは事業者側にとっても、コスト面での課題があります。
化粧品は色や種類が豊富で、特にメイクアップ商品は同じアイテムでも、複数のカラーバリエーションを用意する必要があります。
そのため在庫のSKU数(商品の種類数)が膨らみやすく、在庫管理が複雑になりがちです。
また、高温や直射日光は品質劣化の原因となるため、保管倉庫や配送時の温度管理にコストがかかります。
さらに、ガラス容器を使った商品も多く、配送時に割れないよう緩衝材を多めに使った梱包などが必要になります。
このような丁寧な梱包と配送コストも利益を圧迫しやすいでしょう。
それでも化粧品ECに参入するメリット

ここまで課題をお伝えしましたが、化粧品EC市場は依然として魅力的な分野です。
EC化率がまだ低いということは、成長の余地が大きいということでもあります。
まず、実店舗を構える場合と比べて、賃料や内装費などの初期投資を大幅に抑え、低コストで事業を始められる点が大きなメリットです。
また、ECサイトを通じて直販で顧客と直接つながれることもポイントです。
購買データや顧客の声を直接収集でき、それをもとにした商品開発やマーケティング施策が可能になるでしょう。
さらに、定期購入との相性が良いことも化粧品ECの強みです。
スキンケア商品は消耗品なので、一度気に入ってもらえれば継続的な購入につながりやすく、安定した売上を見込めます。
このように化粧品ECは、工夫次第で課題を乗り越えて成功できる市場なのです。
化粧品ECを成功させるための6つのポイント

化粧品ECは課題もありますが、メリットも十分にあることがわかりました。
ここからは実際に成功するための具体的な施策を6つご紹介します。
以下の方法を参考に、ぜひ自社に合った戦略を考えてみてください。
1.オンラインで「試せる体験」を提供する
スマートフォンのカメラで自分の顔を映し、リップやアイシャドウなどの色味を試せる「バーチャルメイク」という機能があります。
この機能をECサイトに導入すればユーザーは実際の発色をイメージしやすくなるため、購入のハードルが大きく下がります。
また、初回限定でサンプルやトライアルセットを格安で提供する方法も効果的です。
少量を試してから本商品を購入できる仕組みにすることで、顧客の不安解消につながります。
さらに、オンライン接客ツールを導入して、チャットやビデオ通話でスタッフが直接相談に乗る体制を整えれば実店舗のような安心感をオンラインでも再現できるでしょう。
2.SNSやインフルエンサーを活用する
化粧品はビジュアルで魅力を伝えやすい商品なので、InstagramやTikTokなどのSNSと高相性です。
商品の使用感や仕上がりを写真や動画で発信することで、商品のイメージが伝わりやすくなります。
特に若い世代は、SNSで情報収集する傾向が強いため、SNS運用は必須といえます。
また、インフルエンサーとのコラボレーションも効果的な手法です。
信頼されているインフルエンサーが実際に商品を使ってレビューすることで、フォロワーからの信頼を得やすくなります。
インフルエンサーといっても、誰もが知る有名人ではなくても、フォロワー数が数千から数万人規模のマイクロインフルエンサーを活用することで、費用を抑えながらもターゲット層にピンポイントでリーチできるでしょう。
3.レビューと口コミを集める仕組みを作る
ECでは商品を購入する際、多くの人が他の購入者のレビューや口コミを参考にします。
実際に使った人の正直な感想は、商品を試せないECにおいて非常に重要な判断材料となります。
そのため、ECサイト内にレビュー機能を設置し、積極的に口コミを集める仕組みを作ることで、ユーザーの購入を後押しできるでしょう。
ただし、顧客が自発的にレビューを書くケースは少ないため、レビュー投稿を促す工夫が必要です。
例えば、レビューを書いてくれた人に次回使えるクーポンやポイントを提供する、抽選でプレゼントが当たるキャンペーンを実施するなどのインセンティブが効果的といえます。
また、良いレビューだけでなく、改善点を指摘する声も真摯に受け止めて対応することで、顧客からのショップへの信頼をアップできるでしょう。
なお、口コミ(お客様の声)については「お客様の声を載せるメリットは?」の記事で詳しく紹介していますので、ご覧ください。
4.定期購入で長期的な関係を築く
化粧品ECでは定期購入の導入がおすすめです。
化粧品が定期購入になることで顧客は買い忘れを防げますし、事業者側も安定した売上を見込めるというメリットがあります。
ただし定期購入は購入者にとってハードルが高いため、初回を割引価格で提供したり、定期購入者限定の特典を用意したりするなど促す工夫が必要です。
また、配送サイクルを柔軟に設定できるなど、顧客側の利便性を上げることで解約を防げるでしょう。
一方、解約方法がわかりづらかったり、解約の電話がつながりにくかったりすると、かえって不信感を招くため、簡単に解約できる体制を整えることもポイントです。
5.オンライン限定商品を販売する
ECサイトでしか買えないオンライン限定商品を用意することで、「わざわざECで買う理由」を作ることができます。
実店舗と同じ商品を扱っていると利便性の高い実店舗が選ばれがちですが、限定商品があればECサイトを訪れる動機になります。
例えば、ECサイト限定のリップカラーやお得な特別なセット、数量限定のコラボ商品などが考えられます。
「限定」という言葉には希少性を感じさせる力があり、購入意欲を高められるでしょう。
6.ECサイトのデータを分析し改善し続ける
ECサイトの大きな強みは、顧客の行動データを詳細に把握できることです。
どのページで離脱されているか、どの商品がよく見られているか、どの導線から購入につながっているかなど、実店舗では得られないデータを収集できます。
このデータを活用して継続的に改善していくことが、化粧品EC成功のカギです。
例えば、カートに商品を入れたまま購入に至らない「カゴ落ち」が多い場合は、送料が高いのか、決済方法が少ないのか、商品説明が不足しているのかを分析して改善します。
さらに、ツールを使って人気商品を把握したり購入データを分析したりすれば、商品開発にも生かせます。
ECサイトの蓄積するデータを活用することでサイト自体の売上を改善できるだけでなく、事業全体の戦略立案に役立てられるでしょう。
ECサイトのデータ分析についてさらに詳しく知りたい方は「ECサイト分析の手法解説!」の記事をぜひ読んでみてください。
化粧品ECサイトを始める方法は5パターン

化粧品のECサイトの構築方法にはいくつかあります。
それぞれ特徴が異なるので、自社の規模や目的、予算に合わせて最適な方法を選ぶことが大切です。ここでは代表的な5つのパターンをご紹介します。
1. ECモール(楽天・Amazon等)への出店
楽天市場やAmazonなどの大手ECモールに出店する方法です。
すでに多くの顧客が利用しているプラットフォームなので、集客力が高く、知名度が低い企業でも商品を見てもらいやすいメリットがあります。
ただし、モール内での価格競争に巻き込まれやすく、ブランド独自の世界観を表現しにくい点がデメリットです。
ECモールについては「ECモールとは?」の記事でさらに詳しく紹介しています。
2. ASPカート(カラーミーショップ等)の利用
カラーミーショップをはじめとする、ASPカートサービス(オンライン上で提供されるECサイト構築サービス)を利用して、自社ECを作成する方法です。
月額数千円程度から始められ、デザインテンプレートを利用すれば専門知識がなくても簡単にECサイトを構築できます。
ECサイトで顧客満足度の高い決済方法や在庫管理機能も標準装備されているため、初めてECに挑戦する企業に最適です。
ただし、ECモールと異なり自社で集客する必要があります。
ASPでのECサイト構築についてさらに詳しく知りたい方は、下記の記事もぜひご覧ください。
3. オープンソース(EC-CUBE等)での構築
WordPressなどのオープンソースを使って自社でECサイトを構築する方法です。
無料で利用でき、ソースコードを自由にカスタマイズできるため、独自の機能を追加しやすいメリットがあります。
ただし、構築や運用には専門的な知識が必要で、セキュリティ対策やシステムの保守も自社で行わなければならないため、ハードルが高い構築方法です。
4. ECパッケージ
ECサイト構築用のパッケージソフトを導入し、ECサイトを構築する方法です。
豊富な機能があらかじめ用意されており、自社の要件に合わせてカスタマイズできます。
初期費用は数百万円からと高額なため、大規模企業におすすめの方法といえます。
5. フルスクラッチ開発
ゼロからECサイトを設計し、構築する方法です。
デザインも機能も自由に設計できるため、自社だけの完全オリジナルなECサイトを構築できます。
ただし、開発費用は数億、開発期間が1年以上かかる場合もあるので、資金が豊富な大企業のみが選択可能でしょう。
なお、5つの方法を比較すると以下のような図になります。

5つのECサイトの構築方法については、下記の記事でより深く・詳しく紹介していますので、気になる方はチェックしてみてください。
化粧品ECサイトを行う際の注意点

化粧品ECを運営するうえで、注意すべきポイントがあります。
対応を誤ると大きな問題に発展する可能性があるため、事前にしっかり理解しておきましょう。
定期購入で誤解を与えないようにする
定期購入は化粧品ECにとって有効な施策ですが、表示方法を誤ると顧客とのトラブルにつながります。
例えば「初回実質0円」などのキャッチコピーで顧客を集め、2回目以降が高額な定期購入になることを小さな文字でしか記載していないケースが問題視されています。
消費者庁への相談件数も年々増加しており、誤解を招く表示は法律違反にもなりかねません。
定期購入を導入する際は、購入回数の縛りや解約条件、2回目以降の価格をわかりやすく明示することが重要です。
購入ボタンの近くに目立つように表示し、注文確定前の画面でも再度確認できるようにしましょう。
また、解約方法は電話だけでなく、オンラインからも簡単に手続きできる仕組みを用意することで、顧客の信頼を得られます。
透明性のある運営が、結局は長期的なブランド価値を守ることにつながります。
セキュリティ対策は必ず行う
ECサイトはクレジットカード番号や住所など多くの個人情報が蓄積されているため、サイバー攻撃の標的になりやすいです。
一般社団法人日本クレジット協会の発表によると、クレジットカードの不正利用被害額も2024年に555億円と過去最高を記録しました。
もし自社サイトで情報漏洩が発生すれば、企業としての信頼を損なうだけでなく、損害賠償責任や多額の費用負担が発生するおそれがあります。
そのため、ECサイトのセキュリティ対策はもはや当たり前なのです。
実際、全てのECサイトに対して不正利用を防ぐ仕組み「3Dセキュア2.0」を義務化するなど、国も対策強化を進めています。
なお、カラーミーショップを始めとする多くのASPカートサービスでは、こうしたセキュリティ対策をサービス側で行っているので、セキュリティ面を安心して任せられます。
自社でのセキュリティ対策が不安な方は、カラーミーショップでの化粧品ECの構築がおすすめです。
なお、ECサイトのセキュリティ対策はどのようなことを行うのかなどについては、下記の記事をご覧ください。
【事例】化粧品ECで成功したショップ

NPO法人桜島ミュージアムが展開する「SAKURAJIMA TSUBAKI」は、桜島発の椿油やハンドクリームといった化粧品を販売しているECサイトです。
ECサイトを制作する際は顧客が商品を探し、購入しやすいサイト構成を徹底しました。
その結果、多くの顧客を獲得し、越境ECも始めています。
日本の伝統オイルを世界へと発信する化粧品ECサイトの成功事例でしょう。
詳しくは下記のインタビューをチェックしてみてください。
まとめ
化粧品ECの市場は年々成長しており、EC化率の低さは反対の言い方をすれば「大きな伸びしろがある」ことを意味しています。
課題はありますが、上記で紹介したような成功のポイントを押さえることで、人気の化粧品ECサイトを目指せるでしょう。
なお、ECサイトの構築方法はいくつかありますが、カラーミーショップなどのASPカートなら初期費用を抑え、セキュリティ対策も任せられるため、これから化粧品ECに挑戦したい企業におすすめです。
>>>カラーミーショップを見てみる
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よくある質問
化粧品はドラッグストアといった実店舗で手軽に買える、実物を見て購入したい人が多いといった課題があります。詳しくはこちらの章をご覧ください。