インターネット上で取引が完結するEC業界、いわゆるネットショップは、スマートフォンなどからでも簡単に利用できるようになったこともあり、年々取引額が増えています。さまざまなブランドがある化粧品も伸びている分野の1つです。
今回は、個人で化粧品のネット販売を始めたいと考えている人向けに、化粧品の販売に許可が必要なのはどんなときか、どんな許可が必要か、開業するにはどうすれば良いかをわかりやすくご紹介します。
実は僕もスキンケアしてるんだ!副業で化粧品のネット販売をするのは面白そう。でも、ネットショップで販売するには許可が必要って聞いたけど、本当?
ネットショップでの化粧品の販売は、どのような化粧品を販売するかで許可の必要性は変わってきます。これから説明していきますね。
目次
化粧品をネット販売するのに許可は必要?
店舗販売でもネット販売でも、販売する商品によっては許可が必要になることがあります。
たとえば医薬品の販売です。医薬品については、許可を受けた店舗でしか販売できません。
それでは化粧品はどうでしょうか。
化粧品をネットで販売するのに許可は必要ないのでしょうか?
ここでは化粧品のネット販売で許可が必要なのかどうかについてご紹介します。
そもそも化粧品の定義とは?石けんも対象?
コスメ・化粧品と一口にいっても膨大な種類があり、何が化粧品にあたるのか明確にいうのは難しいですよね。
では法律ではどのように定義されているのでしょうか。
法律上の化粧品の定義は、医薬品医療機器等法に定められています。
法律によると化粧品は、「身体に散布、または塗るもので、身体への作用が緩やかなもののうち以下に該当するもの」です。
- ・身体を清潔にするもの
- ・身体を美化するもの
- ・身体の魅力を増すもの
- ・身体の容貌を変えるもの
法律上の定義で見ると、化粧品やパック、ファンデーション、口紅のほか、香水や石けん、シャンプー、歯磨き粉なども化粧品に含まれます。
一般的な化粧品とは少し定義が違いますね。
ほかに、化粧品に類似するものとして「医薬部外品」の記載がある商品もあります。
店舗では化粧品コーナーに置かれることも多いです。
ただし、医薬部外品は作用が緩やかな有効成分が含まれているもので、医薬品に準じるものとされていることから、法律上は化粧品には含まれません。
化粧品の販売を始める際は、自分で判断せずにその商品が法律上の化粧品に当てはまるのかどうか調べることが大切です。
販売の許可が必要な場合と不要な場合がある
化粧品の販売で許可が必要かどうかは、店舗で販売するか、ネットで販売するか、販売形態によって変わりません。
店舗でもネット販売でも、化粧品の販売は薬機法(旧薬事法)と関連があり、許可が必要なケースと、許可が必要でないケースがあります。
薬機法の正式名称は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」。医薬品や医薬機器の製造や販売などをはじめ、化粧品や医薬部外品についても定義した法律です。
化粧品の販売に関する許可は2種類ある
許可が必要かどうかを知る前にまず、化粧品の販売に関連する許可にはどのようなものがあるかを知っておきましょう。
化粧品製造業許可
「化粧品製造業許可」は、その名の通り化粧品を製造するための許可です。
化粧品製造業許可には、製造のすべての工程を許可するものと、包装・表示・保管のみを許可するものがあります。
包装・表示・保管のみの許可は、たとえば輸入化粧品に日本語でラベルを付けたいときなどに必要です。
いずれのケースであっても、化粧品製造業許可は製造のみを許可するものですので、これだけでは製造した商品を販売できません。
化粧品製造販売業許可
化粧品製造販売業許可は、化粧品を流通させるのに必要な許可です。
自社で製造した化粧品を販売したり、他社に製造を委託した化粧品を自社名で販売したり、輸入した商品を販売したりする場合に必要な許可になります。
この化粧品製造販売業許可は、販売はできますがラベルの変更などはできないため、新たにラベルを付けたいときは、化粧品製造業許可の包装・表示・保管の許可が合わせて必要です。
自分で製造した化粧品を販売するときは、化粧品製造販売業許可と化粧品製造業許可(一般)の両方の許可をもらわなければなりません。
化粧品をネット販売するのに許可が必要なパターン
ここまで、化粧品の販売に許可が必要か、関連する許可には何があるか説明してきました。
それでは具体的にはどのようなケースで許可が必要なのでしょうか。
ここでは許可がいるケースについて紹介します。
化粧品を自分で製造・販売する
化粧品を自分で製造し販売するようなケースでは、化粧品製造業許可、化粧品製造販売業許可、の2つの許可が必要です。
化粧品の製造については、自分で化粧品を製造するための工場をもつ場合だけでなく、添加物を抑えた手作りコスメなども製造に該当しますので注意しましょう。
手作りコスメを販売するときも、両方の許可が必要です。
なお、化粧品は個人でも製造できますが、規模によっては大量生産が難しく、販売状況によっては供給が追い付かなくなるときもあります。
そのため化粧品の製造は、化粧品の製造に特化したOEM製造業者に委託するケースも多いです。
自分で企画した化粧品をOEM製造業者に委託した場合、自社でラベルの貼り付けなどを行わない場合は化粧品製造販売業許可のみが必要になります。
自分で輸入した化粧品を販売する
流通の発達によって、海外コスメも取り寄せやすくなりました。
ネットショップで海外コスメを扱いたいと考えている人もいるかもしれませんね。
海外コスメに関して、輸入した化粧品を販売する場合は、化粧品製造販売業許可が必要です。
さらに輸入した海外の化粧品を国内で販売するには、成分などが日本語表記になっているラベルを貼り付けなければなりませんので、加えて化粧品製造業許可の包装・表示・保管の許可が必要でしょう。
ただし、ラベルの貼り付けや保管を他社に委託する場合は、販売するための化粧品製造販売業許可の取得のみで問題ない場合もあります。
また、海外から直接輸入する化粧品は、薬機法(旧・薬事法)の規制対象です。
個人輸入した化粧品は、輸入者個人の使用に限定され、販売できません。
販売目的で海外コスメを輸入する場合は、許可とは別に届出が必要です。
加えて、日本と外国では化粧品の範囲が異なるため、日本で化粧品として販売できるかも確認しなければなりません(海外では化粧品の分類でも、日本では医薬品などに該当することがあります)。
国内の化粧品を扱うのと比べ、輸入化粧品はさまざまな規制があるので、化粧品をはじめて販売するのにはハードルが高いかもしれませんね。
化粧品をネット販売するのに許可が不要なパターン
化粧品の製造や流通には許可が要りますが、販売のみであれば許可が必要ないこともあります。
他社が作った化粧品を販売する
化粧品の販売で許可が必要ないのは、化粧品製造業者の国内メーカーが製造した化粧品を仕入れて販売する場合、化粧品製造販売業者から仕入れた化粧品を販売する場合です。
また、許可が必要なケースとしてOEM製造業者に依頼するケースを前項で取り上げましたが、ラベルに委託先の社名を載せる場合は許可が必要ありません。
他社が輸入した化粧品を販売する
販売を目的に自分で化粧品を輸入して販売するときは許可が必要ですが、同じ輸入品であっても国内にある他社が輸入した化粧品を仕入れて販売するときは、許可が要りません。
仕入価格は少し高くなってしまいますが、自分で輸入するより他社が輸入した商品を取り扱う方がハードルは低めです。
海外コスメをはじめて取り扱うなら、仕入経路も検討していきたいですね。
化粧品のネット販売に薬機法(旧・薬事法)の知識は必要?
化粧品のネット販売には、薬機法(旧・薬事法)が深く関わってきます。
販売するのに必須とまではいいませんが、販売にあたって誤った表示をしないためにも、薬機法の知識は持っておいた方が良いでしょう。
化粧品のネットショップを開業するための4つの手順
化粧品販売の許可について把握できたら、実際に化粧品のネットショップの開業を進めていきましょう。
ネットショップの開業について、4つの手順に分けて紹介していきます。
1.商品を準備する
化粧品の販売にあたっては、どのように商品を準備するか決めていく必要があります。
自分で化粧品を作るのか、自分で企画したものを他社に依頼して製造してもらうのか、業者から仕入れるのか、海外から取り寄せるのか、販売したいコスメやコンセプトを意識して決定していきましょう。
必要な場合は許可を取得する
商品の仕入れ方法が決まったら、必要に応じて化粧品製造業許可や化粧品製造販売業許可について許可を取得します。
いずれも業者コードの取得が必要です。e-Gov電子申請サービスを使ってインターネット上で登録を行い取得します(電子申請サービスを利用できないときは、ファクシミリで登録を行います)。
業者コードを取得したら申請書と添付書類を準備して、書類を提出します。
東京都の場合、提出先は東京都健康安全研究センターです。
書類が受理されたら、適合条件に適っているか実地調査を経て、許可するかどうか判断されます。
2.ネットショップの出店方法を決める
許可関係が整理できたら、ネットショップでの出店方法を決めます。
出店方法には、以下の3つが挙げられます。
- ・ECモールに出店する
- ・ネットショップ作成サービスを利用する
- ・自分で作成する
Amazonや楽天など、大手のECモールに出店する場合はモール自体に集客力があるので、開店して間もなくてもユーザーが訪れてくれる可能性があります。
ですが集客できる分、費用が高いことがネックです。
自作の場合は自由度がありますが、高度な知識と多くの時間が必要でしょう。
おすすめはカラーミーショップをはじめとする、ネットショップ作成サービスです。
フリープランを利用すれば、月額費用・初期費用が無料でお店を作れますし、商品が売れた時にだけ決済手数料が発生するので、固定費がかかる心配はありません。
スモールスタートで考えるなら、初期費用や運用にかかるコストを抑えてネットショップを開業できるカラーミーショップがおすすめです。
3.ネットショップを作成する
ネットショップの出店方法を決めたら、実際にネットショップを作成していきます。
ネットショップで重要なのは、レイアウト(デザイン)です。
レイアウトを一から作成すると時間もコストもかかるため、テンプレートを利用するのがおすすめです。
先ほどお伝えしたカラーミーショップのフリープランには、無料で利用できるデザインテンプレートがそろっているので安心です。
レイアウトが決定したら販売する商品を登録し、導入する決済方法を決定し、特定商取引法のページを作成しましょう。
4.集客する
ネットショップの準備ができたら、集客を行っていきます。
特にコスメは商品のイメージやデザインが重視されるので、SNSの中でも写真がメインコンテンツであるInstagramを活用した集客がおすすめです。
定期的に投稿して自社ブランドの世界観を作れば、ブランディングにも役立ちます。
また、化粧品を使った実際のメイク動画をインスタライブ配信することで、商品の魅力を具体的に伝えることもできるでしょう。
化粧品をネット販売する際の注意点
ここでは、化粧品をネット販売するときの注意点を紹介します。
許可が必要かどうかは所轄の都道府県に確認する
ここまでで化粧品の販売に関連する許可について説明してきましたが、許可は国が行うものではなく、都道府県ごとに行われるものです。
販売が違法と判断されないためにも、自分の仕入れルートではどのような許可が必要になるのか、念のために確認しておくことをおすすめします。
また自分で化粧品を輸入して販売するときは、化粧品製造販売業許可などのほかに届出が必要になりますので、合わせて確認しておくと安心です。
窓口に確認して許可が必要となった場合、申請書のほか、いくつもの添付書類が必要になります。
すべて自分でそろえて申請することも可能ですが、細かな規定がありますので、スムーズに手続きを完了させたいなら、行政書士などの専門家に依頼するのも1つの方法です。
ネットショップを作ったら開業届も提出する
ネットショップを個人で開業するときは、法人のように登記手続きは必要ありません。
ですが、開業したことを申告するために、税務署への開業届の提出、都道府県への事業開始等申告書の提出を行わなければなりません。
開業届や事業開始等申告書は、ネットショップを開設する場合に限らず、どの事業の開業でも必要な手続きです。
特に、税務署への開業届は青色申告(所得控除などのさまざまな特典がある確定申告方法)を選択したい人には必須の手続きになりますので、ネットショップを作ったら忘れずに提出するようにしましょう。
【事例】化粧品を販売しているカラーミーショップのお店
ここでは実際に、カラーミーショップを利用して化粧品をネット販売されているお店をご紹介します。
伊勢半本店
紅花からとれる天然成分「紅」(口紅)を江戸時代から製造・販売している「伊勢半本店」さま。
集客やPRに動画やSNSを活用するなど、化粧品販売ならではのネットショップ運営のコツなどを教えていただきました。
SAVON de SIESTA
地元北海道の厳選された自然素材を使い、昔ながらの製法で石けんやスキンケアアイテムなどを製造、販売しています。
今のようにネットで買い物をすることがまだ当たり前ではなかった2005年からネットショップを運営されています。なぜ石けんのネットショップを始めたのかや、これまでことなど、16年間の想いを伺いました。
まとめ
化粧品のネット販売では、許可が必要なケースと必要でないケースがあります。
許可の中でも、販売をする場合は「化粧品製造販売業許可」、製造もする場合は「化粧品製造業許可」の申請が必要です。
仕入れ方法などにより必要な許可が異なりますので、ご自身の都道府県の窓口にたずねてみましょう。
また、ネットショップを作成しても許可が下りないと販売できませんので、許可の申請は時間に余裕を持って準備することをおすすめします。
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