ECサイトのリプレイスは、ビジネスの成長と顧客満足度の向上につながる大切な取り組みです。
ですが、十分に準備や計画をしなければ、スムーズにいかない可能性もあります。
そこでこの記事では、ECサイトのリプレイスに関する基礎知識や、成功させるためのコツなどをご紹介します。
ECサイトのリプレイスって引越しや乗り換えと違うの?
厳密には異なりますが、ほぼ同じ意味で使われますのでECサイトのリプレイス=引越しと考えて問題ありませんよ。
目次
ECサイトのリプレイスとは何?引越しとの違いは?
ECサイトのリプレイスとは、既存のECサイトを完全に新しいものに置き換えることを意味します。
具体的には、新しいECシステムを導入し、データや機能を移行させながら、デザインやUIなども一新してECサイトを再構築するのがリプレイスです。
一方、ECサイトの引越しは、既存のデータやコンテンツを同じプラットフォームや別のサービスに移行することです。
つまり引越しのほうが、「データ移行」という意味合いが強いといえます。
ですが、実際は引越しの際にUIやシステム、デザインなども一新してしまうことが多いので、リプレイスと引越しに明確な違いは無く、ほとんど同じ意味で使われています。
リプレイスと引越しを厳密に区別する必要はなく、どちらもサイトのプラットフォームやシステムを変更することを指すと考えて良いでしょう。
ECサイトのリプレイスを行うべきタイミングはいつ?
どのようなタイミングでECサイトのリプレイスをするべきか迷うと思いますが、ECサイト運営を行う中で以下のような課題を感じたら、ECサイトのリプレイスを検討したほうがいいかもしれません。
- ・機能が不十分に感じる
- ・事業規模とシステムのスペックが合わなくなってきた
- ・使いづらく業務効率が悪い
- ・運用コストが高すぎる
- ・サイトデザインが古くなった
- ・セキュリティに不安がある など
既存システムでは、新しい施策を始めたくても機能が不十分で実現できなかったり、機能追加したくてもカスタマイズに対応していなかったりする場合があります。
システムによる制約があると、事業が成長せず売上が上がらないままでしょう。
同様に、事業規模が大きくなったことによるアクセス数の増加や売上規模の拡大に、既存システムの処理能力が追いついていない場合は、ページ表示速度の低下やシステムダウンなどによる販売機会の喪失につながります。
システムが使いづらいせいで業務効率が悪かったり、運用コストが高すぎて経営を圧迫してしまったりする場合も、今後の運営を考えるとリプレイスするのが望ましいです。
また、ECサイトのデザインやセキュリティシステムをアップデートせずに既存のものをずっと使い続けていると、使い勝手の悪さなどの影響で顧客はじょじょに離れていってしまいます。
もちろん、ECサイトのリプレイスはコストも時間もかかる一大プロジェクトのため、簡単には決断できないかもしれませんが、上記のいずれかに当てはまる場合は、今後の事業計画と共に必要性を一度検討してみるのがおすすめです。
ECサイトのリプレイス前に必要な準備
スムーズにECサイトのリプレイスを進めるためには、事前の準備が欠かせません。
まずは下記の2点に取り組みましょう。
現状の課題を把握してリプレイスの目的・目標を決める
ECサイトのリプレイスではまず、目的や目標をきちんと定めることが大切です。
目的や目標が曖昧なまま進めてしまうと、効果を確認できないだけでなく、新たな問題が発生する可能性もあります。
まずは、現場の担当者同士で既存のECサイトの課題について話し合います。
例えば、「顧客におすすめ商品を表示する機能がなく、機会損失になっているかもしれない」「受注処理や在庫管理が手作業で行われておりミスも多く、非効率だと感じる」といったことが挙げられでしょう。
洗い出された課題は「売上を向上させる」「顧客満足度を向上させる」「業務を効率化する」「セキュリティ対策を強化する」とカテゴリごとに整理すれば、特に取り組まなければならない課題が具体的に見えてきます。
その後、アクセスログ分析ツールやヒートマップ分析ツールなどのツールを活用すれば、より客観的なデータに基づいた現状の課題がわかります。
現状のデータを把握したら、「リプレイス後は購入率を○%アップ」「問い合わせ数△△件を削減」など、具体的な目標を定めることでより正確な効果検証ができます。
予算やスケジュールを固める
コストやスケジュールをある程度決めて把握しておくことは、ECサイトのリプレイスプロジェクトを成功させる上で非常に重要です。
予算やスケジュールが明確でないまま進めてしまうと、想定外の費用が発生して経営を圧迫してしまったり、納期に間に合わなくなったりして売上機会を逃すなど、運営に支障をきたしてしまうでしょう。
ECサイトを構築する初期予算は数万~数億万円と、規模によって必要な費用が異なります。
また、同じ構築方法だったとしても、デザインの作り込み度合いや導入する機能によっても費用は変わります。
また、ECサイトのリプレイスは一般的には数ヵ月かかるケースが多く、場合によっては1年以上になることもあります。
余裕を持ったスケジュールを立て、関係者と綿密に連携を取りながら進めていきましょう。
ECサイトの構築費用については、「ECサイトの構築費用はいくら?」の記事で構築方法ごとの相場を紹介していますので、合わせてご覧ください。
ECサイトをリプレイスする手順・具体的な進め方
準備が整ったらいよいよECサイトのリプレイスを進めていきましょう。
ここからは大まかな手順・流れをご紹介します。
ステップ1:要件定義を行う
要件定義とは、リニューアルするECサイトの機能やデザインなど、システム開発の仕様を具体的に決めることです。
例えば、「商品が検索しづらく、離脱率が高い」という課題が上がったら、「商品を見つけやすくして、離脱率を下げる」という目的のため、要件定義では具体的にどのようにデザインを改善するのか、商品が見つけやすくなる機能などを検討していきます。
このように、現状の課題とリプレイスの目的を踏まえ、具体的な施策と必要な機能を明確化していくことで、システム開発の要件を定義していくのです。
要件定義をしっかり行わないと、「必要な機能が不足していた」「目的と異なるECサイトになってしまった」などの問題が発生する可能性がありますので、時間をかけて取り組みましょう。
ステップ2:リプレイスするシステム・サービスを選ぶ
要件が固まったら、新しいECサイトを支えるシステム・サービスを選びます。
一口にECサイト構築システムといっても、いくつか種類があります。
例えば、低コストで無料でも始められるASP(ECサイト作成サービス)や、機能面やデザイン面で自由度の高いカスタマイズが可能なパッケージシステム、大規模サイトに適したフルスクラッチ開発など、それぞれに特徴があります。
そのため、まずは要件定義で決めたECサイトの想定規模、予算、必要な機能、将来的な展望などを踏まえて、最適なシステムのタイプを絞り込むことから始めましょう。
詳しくは目安の年商別にECサイトの構築方法の特徴についてまとめた「ECサイトの構築方法の種類は?」の記事をご覧ください。
ステップ3:リプレイスするECサイトを制作する(システム開発)
リプレイスのサービスまたはシステムが決まったら、ECサイトを制作していきます。
ECモールやASPサービスを利用する場合、すでにシステム自体は完成しているので、ECサイトのデザインや商品登録をメインで行っていきます。
ECサイトのデザインは、顧客の購買意欲を高め、ブランドイメージを伝える上で重要な要素となります。
そのため、各社が提供しているテンプレートを使って作っていく方法もありますが、より顧客目線で使いやすく自社の世界観を表現するデザインを求める場合は、経験豊富なデザインの制作会社に依頼するのがおすすめです。
カラーミーショップでは、多くの中から最適な制作会社をご紹介する制作代行サービスを提供していますので、制作会社の選定にお悩みの方はぜひ、利用を検討してみてください。
一方、パッケージやスクラッチといった大規模なECサイトの場合は、一からシステムを作っていくのでシステム開発会社との連携がより一層重要となります。
単に自社の要望を伝えるだけでなく、システム開発会社と積極的に意見交換を行いながら、より良いECサイトを共に作り上げていくという姿勢が重要です。
また、開発途中の段階では定期的に動作確認を行い、疑問点や改善点があればその都度システム開発会社に伝えるようにしましょう。
ステップ4:データを移行する
新しいECサイトが完成したら、既存のECサイトのデータを移行していきます。
ここでの注意点は、移行できるデータとできないデータがあるということです。
一般的には、以下のデータは移行できるとされています。
- ・商品データ
- ・顧客データ
- ・受注データ
ただし、上記の全てのデータを移行するとなると、それだけコストや時間がかかります。
そのためデータの棚卸を行い、新しいシステムで本当に必要なデータを明確化しましょう。
顧客データについては特に、しばらく購入がない休眠顧客データを移行するのかどうかをきちんと決めておきます。
そして、下記のデータはほとんどの場合は移行できないとされています。
- ・クレジットカード情報
- ・会員パスワード
クレジットカード情報やパスワード情報は、個人情報保護の観点から移行できず、リプレイス後は再設定してもらう必要があるでしょう。
そのため、オープン後は再設定に関する案内を、ユーザーにわかりやすい形で掲載します。
ステップ5:テスト運用しサイトをオープンする
リプレイスがひとまず完了したら公開前にテスト運用を行い、問題がないかを必ずチェックしましょう。
まずECサイトとして一番重要な商品購入に関する一連の動作確認から始めます。
具体的には、以下のようなポイントです。
- ・会員登録
- ・商品の閲覧からカートへの追加
- ・注文手続き(オプション選択、送料の計算など)
- ・決済
- ・注文確認メールの送信 など
きちんと商品を注文できるか、ユーザー目線で検証していきます。
購入に関する動作確認が完了したら、問い合わせは正常にできるか、サイト内にリンク切れや誤字脱字がないか、画像や動画は正しく表示されるかなど、コンテンツを中心にその他の箇所もくまなくチェックします。
さらに、顧客データは移行できているか、新たにパスワードの設定はきちんとできるかなど、リプレイスだからこそ確認すべきポイントも忘れないようにしましょう。
ECサイトをリプレイスするシステム・サービスの選び方
どのようなシステム・サービスを選んでECサイトのリプレイスをするのかは、その後のECサイト運営にも深くかかわってきます。
ここではリプレイスにおけるECサイトのシステム・サービスの選び方を解説します。
必要機能があるか、カスタマイズ可能か各社を比較する
ECサイトのリプレイスは、現状の不便さや課題を解消し、より良いECサイトにするために行うものです。
そのため、リプレイス先のシステムを選ぶ際には、ECサイトを改善できるような必要機能が備わっているか、カスタマイズが可能なシステム・サービスかどうかをまず確認することが重要になります。
受注管理や在庫管理、商品登録、決済サービスとの連携など、基本的な機能があるかはもちろん、要件定義で定めた必要機能があるかどうかを重点的にチェックしましょう。
また、カスタマイズの柔軟性も重要なポイントです。
EC業界は変化が激しいため、ビジネスニーズの変化に合わせて機能を拡張したり、デザインを変えたりできる柔軟性があると安心です。
例えば、海外の販路拡大のために越境ECにチャレンジしようと思った際、カスタマイズ性が低く海外販売に対応できないサービスやシステムだと断念せざるを得ません。
各社の機能を表などにまとめると、より比較しやすいでしょう。
企業側の過去の実績を確認する
リプレイス先のサービス・システムを決める際、その企業が過去にどのような実績を残しているかは1つの判断材料となります。
ポイントとしてはまず、サービスやシステムの利用者数を確認します。
多くの利用者がいるサービスやシステムは、さまざまな企業に対応した経験とノウハウを持っており、自社のリプレイス時にも有益な情報を提供してくれるかもしれません。
また、自社と同じ業界や規模のECサイトの構築実績があるかどうかも重要なポイントです。
業界特有の商習慣やシステム要件を理解している企業であれば、よりスムーズなリプレイスが期待できます。
これらの情報は、企業のWebサイトやパンフレット、提案資料などで確認しましょう。
実績が多いだけでなく、自社と相性の良さそうな企業を選ぶことが、リプレイスの成功につながります。
サポート体制やセキュリティ対策をチェックする
ECサイトのリプレイスを行う上で、システム・サービスのサポート体制やセキュリティ対策もチェックしておきたいポイントです。
メールのみなのか、電話対応も可能なのかなど、企業によってサポート内容が異なります。
自社ではどのようなサポートが必要なのかを考え、各社の対応を把握しましょう。
また、セキュリティ対策もしっかり確認しておきます。
個人情報や決済情報など重要なデータの保護対策が万全か、不正アクセスやサイバー攻撃に対して適切な対策を行っているかなどが、具体的なチェック項目です。
自社のためにもショップの顧客のためにも、安心して利用できるシステム・サービスを選びましょう。
ECサイトのリプレイスを成功させるポイント
最後に、ECサイトのリプレイスを成功させるために意識したい3つのポイントをご紹介します。
具体的には、以下の3つのポイントを意識しましょう。
- ・データの移行を丁寧に進める
- ・情報共有とコミュニケーションを大切にする
- ・顧客への周知を徹底する
リプレイスする際、顧客情報や商品データなどたくさんのデータを新しいシステムに移す作業は、時間と手間がかかります。
都度確認しながら慎重に行うとともに、事前にデータを整理しておくことで、移行作業がスムーズに進むでしょう。
またECサイトのリプレイスは多くの人がかかわる一大プロジェクトです。
人が多くなればなるほど、情報の抜け漏れが発生しやすいといえます。
そのため関わる人たちと定期的に集まって、情報を共有したり進捗状況を報告し合ったりすることで、情報不足によるトラブルを防げるでしょう。
さらに、リプレイスすることで急にサイトのデザインや機能が変わると、顧客は戸惑ってしまいます
リプレイスにより使い方がわからなくなり離脱してしまう顧客が出ないように、事前に顧客への告知は徹底し、混乱を防ぐことが重要です。
ECサイト内やメルマガなどで、リプレイスの時期や変更点をわかりやすく伝えましょう。
まとめ
ECサイトのリプレイスは、ECサイトの引越しや移行、乗り換えとほぼ同じ意味です。
まずは現状の課題を明確にし、具体的な目標を設定しましょう。
予算とスケジュールを固めたら、要件定義、システム選定、データ移行、テスト運用と、段階的に進めていきます。
多くの人がかかわる一大プロジェクトのため、こまめに情報共有を行いながら進めることがスムーズにリプレイスするためのコツの1つです。
また、リプレイスの前後は混乱を招かないよう、忘れずに顧客へ周知しましょう。
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