近年、競合が増えどんどん新規顧客獲得が難しくなっていくEC業界において、顧客ロイヤリティの向上は、顧客単価アップや新規顧客獲得コスト削減につながり、長期的な売上に貢献します。
この記事では、ECサイト運営者の方に向けて、顧客ロイヤリティ向上の重要性と具体的な施策について紹介していきます。
顧客ロイヤリティって何?カッコいい響きだね。
顧客ロイヤリティはECサイトにおいても重要な要素なんですよツクルくん!
ECサイトにおける顧客ロイヤリティとは?
顧客ロイヤリティとは、顧客が特定のブランドやサービス・商品に対して抱く愛着や信頼の度合いのことを指します。
これまで、特定のECサイトで繰り返し買い物をしたくなるような気持ちになったり、お気に入りのECサイトを見つけたら、友人や家族に教えてあげたくなる気持ちになったことはありませんか?
このような気持ちこそが、まさにECサイトにおける顧客ロイヤリティです。
顧客満足度が高い状態を超えて、そのECサイトでの買い物を継続したい、周りの人にも薦めたいと感じる状態を指します。
顧客ロイヤリティは、顧客の行動や心理状態に表れます。
例えば、繰り返し商品を購入したり、積極的にレビューを書いたり、友人にそのECサイトを勧めたりする行動は、顧客ロイヤリティが高い状態といえるでしょう。
顧客ロイヤリティは、大きく「心理的ロイヤリティ」と「行動的ロイヤリティ」の2つに分類できます。
分類 | 説明 | 例 |
心理的ロイヤリティ | 特定のECサイトに対する愛着や信頼の度合い | ・特定のブランドのECサイトで購入を決めている ・お気に入りのECサイトのポイントを貯めている ・ECサイトの会員限定コミュニティに参加している |
行動的ロイヤリティ | 顧客が実際にとる行動の頻度や金額 | ・購入頻度が高い ・購入金額が多い ・レビュー投稿やSNSシェアなど積極的な口コミ |
ECサイトにおける顧客ロイヤリティは、顧客の行動や心理に表れ、企業と顧客の関係性を深める上で重要な要素となります。
なぜ顧客ロイヤリティが重要なのか?
ECサイト運営において、顧客ロイヤリティの向上は非常に重要です。
なぜなら、顧客ロイヤリティは、LTVの向上や売上・収益の安定化、ひいては持続的なビジネス成長に直結するからです。
それぞれ詳しく解説していきましょう。
LTV(顧客生涯価値)向上に貢献する
顧客ロイヤリティは、ECサイトのLTV(顧客生涯価値)向上に大きく貢献します。
LTVとは、顧客1人ひとりが生涯にわたって企業にもたらす価値のことで、ECサイトの長期的な成長にとって重要な指標です。
顧客ロイヤリティとLTVには、以下の表のような関係性があります。
項目 | 説明 |
リピート率 | ロイヤルティの高い顧客は、そうでない顧客に比べてリピート購入する可能性が高くなる。 |
平均購入金額 | ロイヤルティの高い顧客は、高額商品や複数点購入など、1回あたりの購入金額が高くなる傾向がある。 |
平均顧客寿命(顧客維持期間) | ロイヤルティの高い顧客は、長期にわたって顧客であり続ける可能性が高くなる。 |
顧客ロイヤリティを高めることで、顧客のリピート率や平均購入金額が向上し、平均顧客寿命(顧客維持期間の平均)が長くなるため、結果としてLTVの向上につながります。
新規顧客の獲得には、既存顧客の維持よりも多くのコストがかかるため、LTV向上には既存顧客のロイヤルティを高めることが重要です。
顧客ロイヤリティ向上施策を通じて、顧客との長期的な関係を築き、安定した収益基盤を確立していくことが、ECサイトの成功には欠かせません。
収益・売上の安定化につながる
ECサイト運営において、安定した収益と売上を確保することは、事業を成功させるために非常に重要です。
新規顧客獲得にばかり注力してしまうと、どうしてもコストがかさみ、収益が不安定になってしまいます。
顧客ロイヤリティを高めることは、この課題を解決する上で大きな役割を果たします。
なぜなら、顧客ロイヤリティの高い顧客は継続的に商品やサービスを購入してくれるため、安定した売上と収益を見込めるからです。
顧客獲得と顧客維持 | コスト | 売上への影響 |
新規顧客獲得 | 比較的高い | 打ち手によって不安定になりやすい |
顧客維持(ロイヤリティ向上) | 比較的低い | 打ち手によって安定しやすい |
新規顧客を獲得しようとすると、広告やキャンペーンなど、どうしても多くの費用が発生します。
一方、既存顧客をロイヤルカスタマー化するためのコストは、新規顧客獲得に比べて低い傾向にあります。
これは、すでにブランドや商品に対する理解がある程度あり、購買意欲の高い顧客に対してアプローチするためです。
ポイントプログラムや会員限定イベントなど、比較的低コストな施策でも、効果的に顧客ロイヤリティを高めることができます。
ロイヤルカスタマーは、一度商品やサービスに満足すると、その後も継続的に購入してくれる可能性が高くなります。
新規顧客獲得に依存するよりも、安定した収益基盤を築きやすいため、長期的なビジネス成長にもつながります。
持続的なビジネス成長にも影響
新規顧客の獲得は、短期的な売上拡大には効果的ですが、長期的なビジネス成長には、既存顧客の維持・育成が欠かせません。
顧客ロイヤリティの向上は、まさにこの既存顧客との良好な関係構築を意味します。
ロイヤリティの高い顧客は、継続的な購買行動によって安定した収益をもたらすだけでなく、口コミやSNSでの拡散を通じて新規顧客獲得にも貢献してくれる可能性を秘めています。
また、変化の激しいEC業界において、顧客ロイヤリティは企業の競争優位性を築く上でも重要です。
顧客のニーズや購買行動は常に変化しており、企業はそれに柔軟に対応していく必要があります。
ロイヤリティの高い顧客は、企業にとって貴重な情報源となり、商品開発やサービス改善のヒントを与えてくれます。
顧客ロイヤリティ向上によって、企業は安定した収益基盤を築き、市場の変化にも柔軟に対応できる強靭なビジネスモデルを構築できます。
結果として、長期的な安定成長、ひいては企業価値の向上へとつながるのです。
顧客ロイヤリティ向上の具体的な施策
ここからは、顧客ロイヤリティを向上させるための具体的な方法をご紹介していきます。
ポイントプログラムの導入
ポイントプログラムは、顧客ロイヤリティ向上の施策として、ECサイトに限らず、幅広く導入されています。
顧客の購買行動に対してポイントを付与することで、再来訪や再購入を促進する効果が期待できます。
ポイントプログラムにはさまざまな種類があり、自社のECサイトの顧客層や販売戦略に合わせて適切なものを選ぶことが重要です。
プログラムの種類例 | 内容 |
購入金額比例型 | 購入金額に応じてポイント付与率が変動する |
一律付与型 | 購入金額に関わらず、一律のポイントを付与 |
会員ランク別付与型 | 会員ランクに応じてポイント付与率が変動する |
ポイントプログラムを導入するメリットとしては、顧客に商品・サービスだけでない体験・付加価値を提供できる点が挙げられます。
ポイントを貯めることで割引や特典を受けられるため、顧客はよりお得に買い物を楽しむことができます。
また、ポイントプログラムは、顧客データの取得・管理だけでなく、顧客の購買履歴やポイント利用状況を分析することで、顧客のニーズや行動パターンを把握することにも役立ちます。
参考:https://point-marketing.jp/4943
会員ランク制度による特典の差別化
ECサイトに会員ランク制度を取り入れることも、顧客のロイヤリティ向上の有効な施策として活用されています。
また、会員ランク制度を効果的に活用する上で重要なのが、ランクごとに特典を差別化することです。顧客はより高いランクを目指して購買意欲を高めるため、ランクに応じた魅力的な特典を用意する必要があります。
例えば、以下のようにランクを4段階に分け、それぞれのランクに応じた特典を設定します。
ランク名の例 | ランクアップ条件の例 | 特典例 |
ブロンズ | 会員登録 | ポイント還元率1%、誕生日月のポイントアップクーポン |
シルバー | 累計購入額が5,000円以上 | ポイント還元率2%、送料無料クーポン、会員限定セールへの招待 |
ゴールド | 累計購入額が30,000円以上、年間購入回数3回以上 | ポイント還元率3%、バースデークーポン、会員限定イベントへの招待、新商品の先行購入権 |
プラチナ | 累計購入額が100,000円以上、年間購入回数10回以上 | ポイント還元率5%、豪華なバースデープレゼント、会員限定イベントへの優先招待、専任担当によるサポート |
このように、ランクが上がるにつれて、より魅力的で特別な特典を提供することで、顧客の購買意欲を高め、ロイヤルティ向上につなげることができます。
ランクと特典を設定する際のコツは、各ランクの特典を段階的に魅力的なものにするだけでなく、顧客のニーズに合致した特典を設定することです。
例えば、送料無料やポイント還元率アップは多くの顧客にとって魅力的ですが、高額商品を扱うECサイトであれば、ランクの高い顧客には特別な割引や限定商品の販売も、特典として最適でしょう。
顧客の属性や購買履歴などを分析し、それぞれのランクに合った特典を検討することで、顧客満足度を高め、より効果的な会員ランク制度を構築できます。
限定セールやイベントへの招待
ECサイトでは、顧客の購買意欲を高めるため、限定セールやオフラインでのイベントへ招待することは有効な手段です。
顧客は特別感やお得感を感じるので、サイトへの訪問や購買につながりやすいでしょう。
ここでは、限定セールやイベントに招待する際のコツを紹介します。
項目 | コツ |
セールの内容 | 顧客の属性や購買履歴に基づいた魅力的な商品ラインナップや割引率を設定する。 |
イベント内容 | 顧客が楽しめるようなテーマや特典を設ける。 |
案内方法 | メールやSMSなどを活用し、顧客の目に止まりやすいように工夫する。 |
案内時期 | セールの開始時期やイベント開催時期を明確に伝える。 |
例えば、過去の購入履歴から特定のブランドや商品に興味関心の高い顧客に対して、そのブランドの新作発表会や限定セールへの招待状を送付します。
この際、会員ランクの高い顧客には、一般顧客よりも割引率の高いクーポンを発行したり、特別なノベルティをプレゼントしたりなど工夫をすることで、より一層の特別感を演出することができます。
顧客をセグメントし、それぞれの属性やニーズに合わせた限定セールやイベントへの招待は、顧客ロイヤリティの向上に大きく貢献します。
新商品・サービスの先行体験
ECサイトにおける顧客ロイヤリティ向上施策として、新商品やサービスの先行体験もあります。
この施策は、顧客に特別感や優越感を与えるだけでなく、ショップにとっても貴重なフィードバックを得る機会となります。
メリット | 企業側 | 顧客側 |
新商品・サービスの改善 | 顧客の意見を反映し、ローンチ前に改善できる | より良い商品・サービスを利用できる |
マーケティング効果 | 口コミ効果による認知度・購買意欲の向上 | いち早く新商品・サービスに触れられる |
顧客とのエンゲージメント強化 |
特別な体験の提供による顧客満足度向上 | ブランドへの愛着・信頼感の向上 |
例えば、コスメや食品業界などでは、新商品のサンプルを配布したり、オンライン上で試供できるサービスを提供したりすることで、顧客の購買意欲を高める施策が多く見られます。
また、ECサイトとは別ジャンルになりますが、ゲーム業界では新作ゲームの先行体験会などを実施することで、発売前の話題性を高め、コアなファンを獲得する施策などがよく行われています。
このように、新商品・サービスの先行体験は、ショップと顧客双方にとって大きなメリットがあります。
顧客を巻き込みながら商品開発やマーケティングを進めることで、より大きな成功へとつながるでしょう。
購入履歴に基づいたパーソナライズ化
ECサイトにおける「購入履歴に基づいたパーソナライズ化」も顧客のロイヤリティ向上の施策として有効です。
購入履歴に基づいたパーソナライズ化とは、顧客1人ひとりの過去の購買データに基づき、Webサイト上での表示内容を変化させる施策です。
顧客が過去に購入した商品や閲覧した商品と関連性の高い商品をおすすめ商品として表示したり、顧客の好みに合った広告を配信したりすることで、顧客の購買意欲を高め、売上アップにつなげることが目的です。
例えば、アパレルのECサイトで、ある顧客が過去にTシャツを購入した場合、その顧客が次にECサイトを訪れた際には、関連性の高い商品として、その商品に類似したデザインのTシャツや、合わせやすいボトムスやアクセサリー・シューズなどの商品をおすすめ商品として表示します。
ECサイト | おすすめ表示商品の例 |
アパレルECサイト | Tシャツを購入した顧客に似たデザインのTシャツ・合わせやすいボトムス・アクセサリー・シューズなどを提案 |
食品系ECサイト | パンを購入した顧客に、パンに合うおすすめのコーヒーや別のスイーツ、食器などを提案 |
このように、顧客の購買履歴に基づいてパーソナライズ化されたおすすめ商品を表示することで、顧客のニーズに合致した商品を効果的に提案することができます。
丁寧なカスタマーサポート
ECサイトにおける顧客ロイヤリティ向上には、丁寧なカスタマーサポートが欠かせません。
なぜなら、顧客は問題が発生した時こそ、企業の対応を通してその企業の姿勢を判断するからです。
顧客が「この企業は顧客を大切にしている」と実感できれば、ブランドへの信頼感や愛着が生まれ、その後の購買行動にも良い影響を与えます。
例えば、以下のような行動は顧客ロイヤリティの向上に結び付く可能性があります。
- ・問い合わせに対して迅速かつ的確な回答をする
- ・顧客の状況や気持ちを理解しようと努める
- ・顧客の立場に立って、柔軟な解決策を提案する
このように、顧客の状況や心情を理解した上で、丁寧な言葉遣いを心がけ、顧客に寄り添った対応をすることが重要です。
顧客とのやり取りは、企業の顔として認識されることを意識し、誠実で丁寧なカスタマーサポートを提供することで顧客満足度を高め、ロイヤリティ向上につなげましょう。
ブランドの世界観を発信するコンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングもロイヤリティ向上において効果的な施策といえます。
ECサイトでも実店舗と同じように、顧客との間に良好な関係性を築き、愛着を持ってもらうことが重要です。
ですがECサイトは実店舗と比較して顧客との接点が限られるため、ブランドの世界観を伝えるのが難しいといえます。
そこで重要なのが「コンテンツマーケティング」です。
ブログ記事や動画などを通して、商品やサービスに関連した有益な情報を発信したり、企業のストーリーを伝えたりすることで、ブランドへの共感や顧客との信頼関係が生まれるでしょう。
例えば、以下のようなコンテンツが考えられます。
コンテンツ例 | 内容 |
商品の製造工程や開発秘話 | 商品へのこだわりや想いを伝えることで、顧客の共感を得やすく、商品への愛着を高める効果が見込める。 |
スタッフによる商品紹介や使い方動画 | 親近感のあるスタッフ自らが登場することで、顧客との距離を縮め、商品の魅力をより具体的に伝えることができる。 |
ブランドの創業ストーリーや理念 | ブランドに込められた想いや価値観を共有することで、顧客の共感を生み出し、ブランドへの愛着を高めることができる。 |
これらのコンテンツを通して、顧客は商品だけでなく、ブランドそのものへの理解を深め、共感や信頼感を抱くようになります。
その結果、顧客はブランドのファンになり、リピーターや推奨者へと変わっていくのです。
ECサイトのコンテンツマーケティングの詳細はこちらの「ECサイトのコンテンツマーケティングとは?メリットや参考事例・具体的な方法」の記事で解説しているので、合わせてチェックしてみてください。
まとめ:ECサイトをさらに成功させるために顧客ロイヤリティ向上を意識することは大切
ECサイト運営において、新規顧客獲得は重要ですが、既存顧客を優良顧客へと育成していくことは同様に重要です。
顧客ロイヤリティが高い顧客は、商品やサービス、ひいては企業理念やブランドイメージに共感し、繰り返し商品を購入したり、積極的に口コミで情報発信したりするなど、企業にとって大きな利益をもたらします。
反対に、顧客ロイヤリティが低い状態では、価格や利便性のみで他社のECサイトと比較され、顧客が離れていく可能性も高まります。
顧客ロイヤリティを高めるためには、顧客の声に耳を傾け、ニーズに合った商品やサービスを提供し続けることが重要です。
また、ポイントプログラムや会員ランク制度など、顧客にとってメリットのある仕組みを導入することも効果的です。
ECサイトを成功させるためには、顧客との良好な関係を築き、顧客ロイヤリティを高めることを意識していく必要があります。
顧客1人ひとりと向き合い、長く愛されるECサイトを目指しましょう!
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