日本人の食卓に欠かせない醤油をネット販売したいと考える方もいるでしょう。
そこで今回は、醤油を製造・販売する場合に必要となる許可や許可の取得方法、醤油をネット販売する際の注意点やポイントについて解説していきます。
醤油を実店舗だけじゃなく、ネット販売するときは何か許可がいるのかな?
ネット販売をするための特別な許可は不要ですが、醤油を製造して販売する場合は営業許可が必須です。
今回は、製造・販売する際に必要な許可や注意点について詳しく説明していきます!
目次
醤油のネット販売には2パターンある
醤油をネット販売するという場合、下記の2つの方法があります。
- ・醤油を自社で製造して販売する
- ・メーカーから醤油を仕入れて販売する
醤油のネット販売を行う場合、すでに製造工場があり実店舗を構えているケースがほとんどでしょう。
ですが自社で製造をしなくてもメーカーに直接交渉したり、問屋や卸業者を通して購入したりすることで、醤油を仕入れ販売することもできます。
最近では、ネット上で調味料を専門で取り扱う卸・仕入れサイトがあるため、誰でも簡単に仕入れて販売することが可能です。
醤油を製造・販売する場合は営業許可が必要
先ほど醤油を販売する2つのパターンを紹介しました。
そして1つ目の、自分で醤油を製造して販売する場合には、「みそ又はしょうゆ製造業」の営業許可が必要です。
以前は「みそ製造業」と「しょうゆ製造業」は分かれていましたが、2018(平成30)年6月に食品衛生法が一部改正されたことによって、営業許可の対象業種が34業種から32業種に変更となり、みそ又はしょうゆ製造業に統合されました。
後ほど詳しくご紹介しますが、みそ又はしょうゆ製造業の許可を取得するためには、「食品衛生責任者」の資格が必要になります。
また、醤油を製造・販売する際には、定められた基準を満たした施設を整備し、そこで醤油の製造・管理をしなければなりません。
醤油の仕入れ販売は許可が不要
醤油を製造して販売する場合、営業許可が必要なことがわかりました。
では、醤油をメーカーなどから仕入れて販売する場合も許可は必要なのでしょうか。
その話をする前に、そもそも食品の営業(製造や販売)を行う際の許可は、下記の3パターンに分かれることを知っておきましょう。
- 1.「営業許可も届出も不要」なパターン
- 2. 販売や製造にあたり「営業許可が必要」なパターン
- 3. 営業許可の代わりに「届出が必要」な食品
まず、1の許可も届出も不要なパターンというのは、食品衛生法上リスクが低いとされるものの場合で、「常温で長期保存しても食品衛生上問題のない包装食品や添加物の販売業」が該当します。
具体的にいうと、包装されたスナック菓子やペットボトル飲料、インスタント食品などを仕入れて販売する場合、何の申請もせずに営業できます。
ですが、仕入れ販売のみ可能なのでスナック菓子や飲料の製造は行えません。
そして先ほどお伝えしたように醤油を製造して販売する場合には、2の「営業許可が必要なパターン」に該当します。
醤油の製造だけでなく、飲食店営業、めん類やお菓子の製造、食肉の処理業など法律で定められた32業種に該当する場合、保健所に申請して営業許可を得る必要があります。
さらに1にも2にも該当しない場合は、3の「届出が必要な食品」に分類されます。
たとえばコーヒーの製造業や、野菜や果物の販売業などは届け出制です。
では、実際に醤油の仕入れ販売の場合、どのパターンに該当するのでしょうか?
上記の条件からすると、醤油は常温で長期保存可能な密閉されたものであるため、1の「営業許可も届出も不要な食品」だと考えられます。
ただし自治体によって制度が異なるため、届出などが必要な可能性もあります。
仕入れ販売を始める前に、まずは管轄の保健所に必ず問い合わせましょう。
なお、食品営業の許可については、「営業許可のいらない食品とは?」の記事を参考にしてください。
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醤油を製造する際の営業許可の取り方・流れ
みそ又はしょうゆ製造業の営業許可を取得するためには、先述の通り食品衛生責任者の資格が必要です。
また、定められた基準に沿った製造施設・設備を準備しなければいけません。
ここからは、醤油を製造・販売する際の営業許可の取り方と流れについて概要を解説していきます。
食品衛生責任者の資格を取得する
みそ又は醤油製造業など、法律で定められた32業種の食品営業を行う場合、許可を得るために、食品衛生責任者の資格を取得する必要があります。
食品衛生責任者とは、食品を扱う営業を行う中で衛生管理を行う責任者のことです。
食品衛生責任者は、食品を取り扱うすべての事業所で配置が義務づけられています。
個人事業主の場合は自らが食品衛生責任者にならざるを得ませんが、従業員を雇っている企業の場合、従業員の誰かが食品衛生責任者の資格を取れば許可の申請ができます。
食品衛生責任者の資格は、東京都の場合6時間程度の養成講習会を受講すれば取得できます。
講習会受講後に、修了証書を営業許可申請書とともに管轄の保健所に提出しましょう。
ただし、栄養士や調理師などの免許を保持している場合はすでに食品衛生に関する知識を持っているとみなされるので、講習会を受講する必要はありません。
食品の製造や販売など食品営業に関わる場合は食品衛生責任者の資格は必須となるため、必ず取得してください。
基準に沿った製造施設・設備を準備する
食品衛生責任者の資格の取得だけでなく、みそ又はしょうゆ製造業の営業許可を申請する際には、定められた基準を満たした施設を整備しなければなりません。
施設や設備で満たすべき基準は多数ありますが、例として下記のようなものがあります。
- 【業種別の基準】
- ・施設には、原材料保管庫や製造室、器具取扱場所、充てん室などを設け、アミノ酸醤油を製造する場合は、別に原料分解場所などを設けること
- ・器具取扱場所は、製造室に設けること
- 【製造室の基準】
- ・製造室は、他の場所と壁、窓または戸によって区切られていること
- ・製造室の内壁は、床面から1mまでは耐水性材料で、清掃や洗浄をしやすい構造であること
上記の他にもさまざまな基準があり、基準は各自治体や営業形態ごとに異なるため、申請を考え始めた段階で管轄の保健所に相談しましょう。
食品の営業を行うためにどのような施設の整備が必要なのか、教えてくれます。
営業許可取得の流れ
では、実際にみそ又はしょうゆ製造業の営業許可を取得する流れを、新宿区の場合を例に
見ていきましょう。
事前相談
まずは、醤油を製造するのにどのような施設の整備が必要なのか、工事を行う前に設計図などを持って管轄の保健所に相談に行きます。
醤油を製造する際に井戸水などを使用する場合は、水道法の基準を満たした水質検査成績書が必要となることもあります。
そのため営業開始したい日から逆算し、早めに保健所に足を運びましょう。
営業許可申請書類の提出
みそ又はしょうゆ製造業の営業許可書類は、施設工事が完成する10日前を目処に提出します。
申請の際に必要となる書類は、下記の通りです。
- ・営業許可申請書
- ・施設の構造および設備を示す図面(平面図)
- ・食品衛生管理者の資格を証明するもの
- ・水質検査成績書
- ・登記事項証明書(法人の場合)
また、後ほど説明しますが、上記に加えて営業許可申請手数料が必要となります。
施設完成の確認検査
保健所の相談を元に営業施設を整えた後、その施設や設備がきちんと定められた基準を満たしているか保健所が確認の検査に入ります。
この際、できる限り営業を行う本人が立ち会うこととなっているため、保健所と日程を調整しましょう。
施設適合基準を満たしていない場合、再検査となり営業開始が遅れてしまいます。
事前相談の際にしっかりと内容を把握することが大切です。
営業許可書の交付
施設の適合基準をすべて満たしていた場合、みそ又はしょうゆ製造業の営業許可書が交付されます。
営業許可書の交付は約1週間かかり、保健所の食品衛生窓口で受け取ります。
検査実施日に交付予定日が伝えられるため、営業を開始できる目安がわかるでしょう。
HACCPに基づいた衛生管理も必要
食品衛生法が改正され、食品衛生責任者の資格と基準に沿った施設整備に加え、2020(令和2)年6月から食品を取り扱うすべての事業者に、HACCP(ハサップ)に基づいた衛生管理の義務化がスタートしました。
HACCPとは、食品の衛生管理の手法です。
食品を取り扱う事業者が食中毒などの危害を予測して、製造・加工工程におけるリスクを低減し、製品の安全性を確保することを指します。
国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格委員会から発表され、各国が採用している国際的な手法です。
そして、みそ又はしょうゆ製造業の営業許可を受けるためには、HACCPに沿った衛生管理も求められます。
HACCPに基づいた衛生管理では、検査や監視、記録するための計画書の作成や管理が必要となるため、醤油を製造・販売する際には内容を正確に理解しましょう。
醤油の製造に関するHACCPの詳細については、厚生労働省のサイトに掲載されている「しょうゆ製造におけるHACCP の考え方を取り入れた衛生管理のための手引書 」という資料を参考にしてください。
醤油製造の営業許可の申請にはいくらかかる?
みそ又はしょうゆ製造業の営業許可申請の際には、先述の通り申請手数料が発生します。
たとえば、新宿区の場合19,200円、横浜市の場合16,000円かかります。
上記のように各自治体によって申請手数料は異なりますが、おおよそ15,000円~20,000円ほどかかると想定しておくとよいでしょう。
申請の際には事前に必ず自治体のホームページをチェックしてください。
醤油をネット販売する際の注意点・ポイント
醤油をネット販売する際は、食品表示法にのっとったラベル貼付が必須となります。
また、営業許可には有効期限があるため、一定期間経つと更新しなければなりません。
最後に、醤油をネット販売する際の注意点・ポイントをご紹介します。
販売時には食品表示法によるラベル貼付も行う
醤油を仕入れて販売する場合は、ラベルはすでに貼付されているため問題ありませんが、自社で製造して販売する場合は、食品表示法によって商品へのラベル貼付が義務づけられています。
食品表示法とは、消費者が食品を摂取する際の安全性や自主的で合理的な食品選択の機会の確保を目的とした法律です。
食品衛生法、JAS法、健康増進法の食品の表示に関する規定が2015(平成23)年6月に食品表示法に一元化されました。
食品表示法では、食品の表示方法の基準や遵守、表示事項の指示や命令、罰則などが定められています。
醤油を製造・販売する場合は食品表示法にのっとり、下記の項目などを消費者にわかりやすい日本語で、容器包装の見やすい場所に表示する必要があります。
- ・名称
- ・原材料名
- ・内容量
- ・賞味期限
- ・保存方法
- ・製造者
名称では、醤油の種類を「こいくちしょうゆ」「うすくちしょうゆ」などとひらがなで明記します。
内容量は、500mLや1Lのように体積で表示し、保存方法は開栓前の方法を記載します。
本醸造であり、酵素などにより発酵を促進させたものでなく、規定の添加物を使用していない場合は「天然醸造」と表示できます。
そのほかにも特定用語の使用基準があるため、不明点は自治体の相談窓口に問い合わせましょう。
営業許可は数年に一度、更新が必要
営業許可は一度取ればずっと営業を続けられるものではなく、定期的な更新が必要です。
営業する業種によっても異なりますが、有効期間は一般的には5~8年くらいです。
更新期限は、交付された営業許可書に記載されているため、必ず確認しておきましょう。
更新の手続きの流れは、下記の通りです。
- ・申請書類の提出
- ・施設検査日の日程調整
- ・保健所による施設検査
- ・許可書の交付
営業許可は期限満了の1か月前までに更新する必要があり、期限を過ぎると無許可営業ということで罰則が科せられるため十分に注意しましょう。
【事例】醤油をネットで販売しているカラーミーショップのお店
カラーミーショップでも、醤油を販売しているショップさんがあります。
ネット販売を始める際の参考にしてみてくださいね。
サクラカネヨ
鹿児島県で90年以上の歴史をもつ醤油・味噌メーカー「サクラカネヨ」。
地元の人々に古くから愛される甘みの強い醤油を中心に、バリエーション豊かな調味料を製造・販売しています。
インタビューではネットショップを始めたきっかけなどを伺いました。
職人醤油
職人醤油は醤油を製造するメーカーではなく、日本全国から独自にセレクトした醤油をすべて100mlの小瓶で販売している醤油のセレクトショップ。
全国の蔵を渡り歩いて醤油販売のネットショップを立ち上げたエピソードや今後の戦略など、参考になるお話が盛りだくさんです。
まとめ
今回は、醤油をネット販売する際に必要な許可やネット販売の際の注意点・ポイントについて解説しました。
醤油を仕入れて販売する場合は許可や届出は不要ですが、醤油を製造して販売する場合はみそ又はしょうゆ製造業の営業許可を取得する必要があります。
コロナ禍においてますますニーズが高まるネット販売。
この記事を参考に、醤油を製造・販売する場合は、必ず許可を取得しましょう。
その際は、各自治体によって制度が異なるため、まずは管轄の保健所に相談することが大切です。
なお、醤油のネット販売を始める場合は、初期費用・月額利用料無料のカラーミーショップのフリープランをぜひご活用ください。
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