飲食店では「店舗に来るお客さまへ料理を提供する」というやり方が一般的です。
しかし、インターネットの普及、新型コロナウイルス感染症拡大による営業自粛などの影響もあり、ネット通販で販路を広げる飲食店も増えています。
では飲食店がネット通販を始めるには、どのような手続きが必要なのでしょうか。
この記事では、飲食店がネット通販を始めるための許可、ネット通販を始めるための手順、事例、注意点などを紹介していきます。
販路が広がる分、飲食店のネット通販には夢があるね。ところで、ネット通販を始めるには何か許可がいるのかな?
飲食店がネット通販を始めるには、改めて許可が必要な場合もあります。さらに、始めるための準備も必要です。
目次
飲食店がネット通販を行うメリット
飲食店がネット通販を行うメリットは、どのようなものがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
営業制限や天候に左右されずに売上が安定する
店舗営業の場合、外出している人の数が売上に大きく影響します。
たとえば、大雨や台風などで天候が悪いと外に出る人は減るので、比例するように飲食店への来客数も減少します。
最近では、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、政府や自治体から営業時間の制限や自粛が求められ、営業したくてもできない状況が続いていました。
店舗営業の場合、外にいる人の数や営業制限が直に響きますが、ネット通販の売上は店舗の営業時間とは関係ありません。
いつでも注文しやすいこと、天気に関係なくどこからでも注文しやすいことから、外部要因に左右されずに、売上を安定させることができます。
全国を対象に販売することでファンの獲得にもつながる
ネット通販の強みは、店舗の近場に住む人や観光客に限らず、全国の人を対象に商品を販売できることです。
新たなファン獲得で売上アップになるほか、プロモーション次第ではこれまでとは違う客層を獲得できる可能性が広がります。
さらに、実店舗がローカルな場所にあっても、集客が成功すれば、全国で有名なお店になることも十分に可能です。
販路拡大や売上アップにつながるほか、全国的に名が知られるようになれば、新しい店舗を出店する際も、すでに知名度があるので集客に困らないでしょう。
飲食店がネット通販(ネットショップ)を行うのに必要な許可とは?
飲食店がネット通販を始めるには、必要に応じた営業許可が必要です。では、どのような許可なのか確認していきましょう。
販売する商品に応じた営業許可が必要
食品衛生法第35条の定めにより、下記の32業種のいずれかに該当する場合は、販売する商品に応じた営業許可が必要です。
調理業 |
1.飲食店営業 2.調理機能を有する自動販売機により食品を調理し、調理された食品を販売する営業 |
販売業 |
3.食肉販売業 4.魚介類販売業 5.魚介類競り売り営業 |
処理業 |
6.集乳業 7.乳処理業 8.特別牛乳搾取処理業 9.食肉処理業 10.食品の放射線照射業 |
製造業 |
11.菓子製造業 12.アイスクリーム類製造業 13.乳製品製造業 14.清涼飲料水製造業 15.食肉製品製造業 16.水産製品製造業 17.氷雪製造業 18.液卵製造業 19.食用油脂製造業 20.みそ又はしょうゆ製造業 21.酒類製造業 22.豆腐製造業 23.納豆製造業 24.麺類製造業 25.そうざい製造業(そうざい半製品を含む) 26.複合型そうざい製造業 27.冷凍食品製造業 28.複合型冷凍食品製造業 29.漬物製造業 30.密封包装食品製造業 31.食品の小分け業 32.添加物製造業 |
すでに飲食店の営業をしている場合は、必要な営業許可を受けているケースも多いかと思います。
しかし、店舗販売と同じように販売できない食品も存在します。
たとえば、缶詰や瓶詰の食品を新たに製造する場合(密封包装食品製造業)、製造した食品を小分けで販売する場合(食品の小分け業)は、新たに営業許可が必要になることもあります。
また、これまでのお店では売っていなかったお菓子を販売するなど、ネット販売用に新たに商品を作り、販売したいような場合も、改めて許可が必要になりますので注意が必要です。
表でも取り上げたように、営業許可は32に細かく分類されており、個々の営業状況で必要な許可が変わってきますので、管轄の保健所に必要な営業許可を相談するのが良いでしょう。
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飲食店がネット通販(ネットショップ)を始めるための6つの手順
営業許可を得たら、実際にネット通販を始めるための準備を進めていきましょう。
飲食店がネット通販を始める6つの手順を紹介します。
手順1.ネット通販用の商品を作る
ネット通販を始めるにあたって、どのような商品を販売するか考えていかなくてはなりません。
低リスクで始めるなら、既存の商品を通販用にパッケージにして売り出すのがおすすめです。
通販に向いている商品、向かない商品がありますので、低リスクで始めるなら品質が劣化しにくい商品を常温でパッケージにして販売するといいでしょう。
どうしても傷みやすいものは、冷凍や冷蔵にするなどして通販用に商品化します。
ほかにも既存の商品に加え、店舗で提供している出汁やソース、ドレッシングなどを販売してみるのも良いかもしれません。
さらに、食品を売るだけでなく、店のロゴをあしらったグッズを販売している飲食店もあります。
お店のブランディングも兼ねて、Tシャツや文具などのグッズを商品化して販売するのも1つの方法です。
手順2.商品に添付する食品表示(ラベル)を作成する
食品表示法により、食品製造者、加工者、輸入者、販売者は、食品表示基準を遵守した食品表示(ラベル付け)が義務付けられています。
食品表示法で定められているのは、名称、遺伝子組み換え情報、品質事項(原材料名、原産地、原産国、内容量など)、衛生事項(添加物、賞味期限または消費期限、アレルゲン、保存方法、製造所など)、保健事項(栄養成分表示など)です。
それぞれの食品別に消費者に誤解を与えない形で、明確に表示することが求められます。
ネット通販の際は、商品自体にはもちろん、販売サイト上でも確認できるようにしておくと良いでしょう。
手順3.ネットショップの出店方法を決める
ネット通販を始めるには、ネットショップの開設が必須です。
ネットショップの出店方法には、以下に紹介する3つの方法がありますので、自分に合った出店方法を検討してみてください。
Amazonや楽天などのECモールに出店する
ひとつは、Amazonや楽天市場などのECモールに出店する方法です。
実際の店舗でたとえると、お店がたくさん集まっているショッピングモールの一角に出店するようなイメージになります。
メリットは、自分で宣伝しなくてもECモール自体の集客力を活用できることです。
一方で、激しい価格競争にさらされる、出店料や利用料などのランニングコストが高額になってしまうというデメリットがあります。
ネットショップ作成サービスを利用する
独自性を出したいけれども、ネットショップの作成は難しそうという人には、ネットショップ作成サービスを利用した出店がおすすめです。
ネットショップ作成サービスなら、専門の知識がなくても簡単に作成できますし、独自性を出してブランディングもできます。
さらにカラーミーショップのフリープランを利用すれば初期費用・月額費用無料でネットショップを作れます。
売れたときにのみ決済手数料が発生するので、「始めたばかりで売上が立つか心配」という飲食店の方も低リスクでネット通販を始められるでしょう。
固定費がかからないので、「とりあえずネットショップを作ってみよう」という方にもおすすめです。ぜひチェックしてみてくださいね。
自分で1から作る
システムやプログラミングなどある程度の知識があれば、自分で一からネットショップを作成するという方法もあります。
自分で作成すればよりオリジナリティのあるサイトが作れますし、必要な機能や独自の販売システムを入れるなど自分の使い勝手の良いネットショップが作れます。
ただし、作り上げるだけの高度な知識が必要なほか、作成にはそれなりの時間がかかりますので、すぐにネット通販を始めたい人には向いていません。
手順4.ネットショップを作成する
ネットショップの出店方法が決まったら、作成を進めていきます。
ネットショップ作成時のデザインのポイントは、「見やすさ」や「わかりやすさ」を意識することです。
いくら見栄えが良くても、商品説明がわかりにくかったり、購入までの導線がわかりにくかったりすると、購入まで至らないこともあります。
デザインだけでなく、購入する人にとって親切なネットショップになるようにしましょう。
また、最近ではクレジットカードのほか、PayPayといったQRコード決済などの決済方法も人気です。
多様な決済手段を選択できるようにすることもネットショップを作成する上で重要でしょう。
手順5.商品写真を撮影して登録する
ネット通販で商品を販売するには、商品写真の撮影と登録が必要です。
ネットショップを訪れる人は、商品のイメージを写真で判断するしかなく、掲載する情報の中でも写真は特に重要なものになります。
おしゃれに撮ることばかりを意識するのではなく、どのくらいの大きさの商品か、どのくらいの量が入っているかなど、購入する人が知りたい情報を意識して写真を撮りましょう。
食品であれば、食品自体の写真だけでなく、食卓での盛り付け例などを掲載しても良さそうですね。
「おいしそう」「購入してみたい」と思えるような構図などを意識すると、魅力的な写真が撮れるでしょう。
商品の撮影方法について詳しくは、下記の記事も参考にしてください。
手順6.ネットショップができたことを告知(集客)する
ネットショップを立ち上げてネット通販を始めただけでは、なかなか訪問者は増えません。
ユーザーは、お店がネット通販を始めたことを知るすべがないためです。
そのためネット通販を始めたら、店舗内にネット通販を始めたことを告知する掲示物を貼ったり、自社のホームページでお知らせしたりしましょう。
アカウントを作成し、SNSで情報を発信するのもおすすめです。
ほかにも、SEO対策を行いネット検索での順位を上位にもっていき、訪問者を増やす方法もあります。
このようにさまざまな方法がありますので、自身にあった方法で集客を進めていきましょう。
ネットショップの集客については下記の記事でさらに詳しくご紹介しています。
料金を比較!飲食店のネット通販(ネットショップ)ではどの配送会社がお得?
ネットショップを始める際、やはり気になるのが配送料です。
冷凍や冷蔵の食品を送るとなると、通常よりもさらに料金がかかるので特に気になりますよね。
そこで各配送会社の配送料金を一部まとめましたので、配送会社を選ぶ際の参考にしてください。
通常配送の場合の比較表
下記は主要な配送会社の80サイズ(3辺の合計が80センチメートル)荷物の東京〜大阪間の配送料を比較した表です。
西濃運輸は80サイズでの配送を行っていないため、70サイズの配送料を記載しています。
配送会社名 | 重量 | 料金(税込) |
ヤマト運輸 | 5kg | 1,350円 |
佐川急便 | 5kg | 1,340円 |
日本郵政 | 25kg以下 | 1,310円 |
西濃運輸 | 5kg | 1,276円(70cmサイズ) |
福山通運 | 5kg | 1,350円(パーセルワン700円) |
法人の場合、80サイズも福山通運(パーセルワン)が最も安く配送を行えます。
個人では日本郵政が最も安く配送が可能です。
80サイズも5kgまでの重量制限がありますので、5kg以上は日本郵政のゆうパックでの配送か、100サイズでの配送を検討してみましょう。
クール便(冷蔵や冷凍)で配送する場合の比較表
下記は、冷凍や冷蔵で60サイズの荷物を東京〜関西間で配送した場合を比較した表です。
配送会社名 | 重量 | 料金(税込) | 温度 |
ヤマト運輸 | 2kg | 1,335円 | ・冷蔵:0℃~10℃・冷凍:-15℃以下 |
佐川急便 | 2kg | 1,315円 | ・冷蔵:2℃~10℃・冷凍:-18℃以下 |
日本郵政 | 25kg以下 | 1,215円 | 冷蔵:0℃~5℃ |
西濃運輸 | 2kg | 1,263円(冷蔵)1,993円(冷凍) | ・冷蔵:0℃~5℃・冷凍: -18℃以下 |
福山通運 | 2kg | 1,345円 | 冷蔵:5℃~10℃ |
冷凍品の配送料が最も安いのは佐川急便、冷蔵品は日本郵政での配送がお得です。
各社温度に違いがあり-18℃以下での配送が必要な場合は、佐川急便が最も安い配送料となります。
冷凍品を配送する際は、各社で微妙に温度が異なるため適した温度で配送を行う配送業者かを確認しましょう。
さらに詳しい配送料金の比較表は下記記事でまとめてありますので、ぜひご覧ください。
飲食店がネット通販(ネットショップ)を行う際の注意点
飲食店がネット通販を行う方法が分かったら、実際に行うときに注意しておきたいポイントも知っておきましょう。
冷凍して発送するにも許可が必要
食品が傷んでしまうなどの理由から、食品を冷凍して発送するケースもあるでしょう。
その場合「冷凍して発送するだけ」と考えがちですが実は、食品を冷凍して発送するには営業許可が必要です。
以前は、「食品の冷凍又は冷蔵業」という営業許可でしたが、2021年6月1日からは製造業と倉庫業の2つに再編されました。
冷凍食品を製造する製造業に該当する場合は、「冷凍食品製造業」(HACCPに基づいた衛生管理を行うときは複合型冷凍食品製造業も可)の営業許可が必要です。
倉庫業に該当する場合(冷凍食品を製造せず保管だけ行う)は許可が必要なく、「冷凍・冷蔵倉庫業」の届出のみになります。
冷蔵や冷凍で食品を発送したいと考えている場合は、許可関係を明確にするためにも管轄の保健所に相談することをおすすめします。
特定商取引法に基づく表示を行う
特定商取引法は、消費者の利益を守るため、消費者トラブルの起こりやすい取引を対象にした法律です。
ネットショップのような通信販売は、特定商取引法の対象になります。
特定商取引法では、事業者氏名や住所などの表示、誇大広告の禁止のほか、表示内容や通知に関して厳しい規制があります。
ただし最近では、個人でネットショップを始める方が増えていることから、個人の住所や電話番号を非公開にすることもできるようになりました。
カラーミーショップでもフリープランをお使いの個人・個人事業主の方は住所や電話番号を非公開にすることができます。
ネットショップを始める際は、自身が特定商取引法のどの部分を遵守しなければならないのか、確認しておくことが大切です。
詳細については、下記記事をぜひ読んでみてくださいね。
【事例】カラーミーショップでネット通販を行っている飲食店
按田餃子(あんだぎょうざ)
雑誌やSNSで話題の代々木上原にある按田餃子さん。一度食べたら忘れられない水餃子やコブラやキクラゲをつかったユニークなメニューがならびます。
樹苞(きぼう)
樹苞は、スープがあふれ出すうまみたっぷりな焼小籠包を販売している東京・足立区にあるお店です。ネットショップでは焼小籠包のほか、2種類の餃子も入ったギフトセットなども販売しています。
まとめ
飲食店がネット通販を行うことは、お店の営業状況に左右されずに安定した売上を上げられるなどのメリットがあります。
今はカラーミーショップのフリープランのように、月額費用・初期費用無料で簡単にネットショップを開設できるので、ネット通販に参入しやすくなっているでしょう。
売上があったときにのみ手数料がかかるので、「とりあえずネットショップをやってみたい」という人にもおすすめです。
ただ、ネット通販を始める場合、冷凍食品を販売するための許可など、販売するものに応じた許可が必要なので、何をどのように販売するかが決まったら管轄の保健所に相談しましょう。
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