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おいしさ+物語でさらなる付加価値を。鹿児島の醤油蔵「サクラカネヨ」の実直な販売指針

いつも画面越しに見ているネットショップのむこうには、想いのつまった“モノ”とそれを届ける“”たちがいます。このコーナーでは、知られざる商品開発ストーリーやお店の裏側に迫る現場レポートをお届けします。
今回ご紹介するショップ
鹿児島県で90年以上の歴史をもつ醤油・味噌メーカー「サクラカネヨ」。地元の人々に古くから愛される甘みの強い醤油を中心に、バリエーション豊かな調味料を製造・販売しています。地域密着型の老舗メーカーがネットショップを開店したきっかけや、食文化の変容とともに見据えている未来などについて伺いました。

鹿児島県の西部、いちき串木野市にやってきました

常務取締役の小平 隆さんにお話を伺います

ふるさとの味を県内外へ届けつづける

まずはサクラカネヨさんの成り立ちについて教えてください。

私たち吉村醸造は昭和2年(1927年)に創業し、現社長で4代目となります。「サクラカネヨ」というのはいわゆる屋号ですね。初代は山口県の醤油蔵で修行をしていたと聞いています。

創業以来、県内のご家庭に醤油や味噌を届ける個人営業を中心に営んでおりましたが、次第に、鹿児島を出て都市部で暮らす方々へも商品をお送りするようになりました。鹿児島の人は高校・大学を卒業するとみんな県外へ出てしまうんで、人口の減少が続いていますからね。

鹿児島出身の方以外に向けては売り出さなかったのですか?

醤油や調味料は地域の食文化に強く根付いているものですからね。その土地独特のものなので、よその地域へ持っていって売れるかと言えばそうじゃないんです。

なにしろ、うちの醤油ってとても甘いんですよ。
ここ鹿児島はご存知のように温暖な土地ですので、江戸時代以前から砂糖の生産が非常に盛んでした。昔は貴重品だった砂糖もみんなが使っていたので、このあたりの食文化には本醸造に甘味を加えた醤油が馴染んでいます。

なるほど。九州全体で見ても、甘い醤油が多いですよね。

山口から西の醤油は甘く、岡山や広島より東へ行くと辛くなっていきますね。
特に海に面した地域ではより濃くて甘いものが好まれる傾向があるようで、同じ鹿児島の醸造元でも海に近いほど醤油が濃いように感じます。

サクラカネヨさんは、地元での需要と、地元を出られた方からの需要に支えられてきたんですね。

そうですね。とはいえ「このまま醤油だけ作っていてはだめだ」ということで、8年ほど前から新商品の開発に力を入れるようになりました。古い伝統の中に新しいアイデアを取り入れて、県外のお客さまにも楽しんでいただけるような新しい調味料を作っています。

工場併設の「サクラボ」では新商品の研究開発が行われている

価値観を伝えて、ファンをつくりたい

サクラカネヨさんがネットショップを始めたきっかけについて教えてください。

ネットショップを始めたのには大きく2つ理由があります。
一つは効率の問題ですね。それまで電話・FAX・はがきだけで受注していましたが、注文1件あたりにかかるスタッフの負担が大きいうえ、営業時間外は受け付けられないのが課題でした。

ネットショップなら無人でも24時間注文を受けられますね。

そうですね。それに、電話口だとどうしてもヒューマンエラーが起こってしまうのですが、ネットショップを始めてからはお届け時のミスもかなり少なくなりました。

もうひとつの開店理由は、お客さまの世代が変わってきたことですね。今でも電話やFAX注文のほうが多いんですが、電話注文の多くは高齢のお客さまなんですよ。
人の声による安心感も大切にしたいので今後も電話での受注をやめるつもりはないですが、かたや効率を上げるためにはネットでの展開も重要。若い方はみんな忙しいですからね。スマホからでも手軽に注文できるようにしないと。

カラーミーショップを選んだ決め手は何でしたか?

日頃から制作会社やデザイナーさんに細かく相談しながらホームページを制作しているのですが、なるべく手軽で始めやすいショッピングカートはないかと相談したところ、カラーミーショップを提案していただきました。

カラーミーは、売上を伸ばしながらどんどんショップのクオリティを上げていけるうえ、成長に合った機能が豊富に用意されています。少しずつステップを踏んでいって、いずれは大手メーカーさんにも引けを取らないくらいのショップにしていければと思いました。

ありがとうございます。実際にネットショップを始めてみて大変だったことはありますか?

そうですねえ…。
私を筆頭に、うちはアナログな人間が多いもんですから(笑)最初はみんな「できっこないですよ」とネガティブな反応から始まったんです。若い社員たちの力もあって円滑に回せるようになりましたが、理解して使いこなせる人が当初は少なかったのが大変でしたね。


モール出店ではなく独自ショップを作ろうとされたのはなぜでしたか?

私たちは商品を安売りしたくはないので、もともと割引や値引きをあまりやっていないんですよ。どこで買っても定価が基本です。……わかりやすく例えると、モールでは「10,000円の商品を7,000円にして、今100個ある売上を1,000個にしてみませんか」といったような提案をされるのですが、私たちとしてはこれに抵抗がある。

商品の価値は下げずに売りたい、と。

そのとおりです。10,000円は10,000円のまま、私たちの価値観や物語を付加価値として売っていきたいわけです。一見のお客さまだけでなく「サクラカネヨ」というブランド自体のファンになっていただけるお客さまを増やしていければという願いがありまして。

モールだとお店のストーリーを伝えるのはなかなか大変ですよね。

もちろん出店コストがかかるというのも本音なんですけど(笑)、そうやって考えるとモールはあまり合わないかな、と。
それよりは、物語をコツコツ伝えていくことでファンを増やし、きちんと利益を得て、それをまたファンの皆さんに還元できるようにしたほうがいい。そういう考え方ですね。

食生活の変化をとらえて次の未来へ

ネットショップでは調味料だけでなく、雑貨も展開しているんですね。

これはですね、工場のすぐ向かいに直売店を作ったのがきっかけなんですよ。
カフェメニューとイートインスペースが併設されていますんで、遊びに来られた方にも見ていっていただけるよう、いろんな商品や資料を展示しています。


オリジナルのトートバッグや手ぬぐい、醤油差しなどにはうちのロゴが入っています。やっぱり吉村醸造というよりも「サクラカネヨ」の名前で覚えていただきたいですからね。

シンプルながら洗練されていて、どのアイテムも素敵です。

他にも、地元の陶芸作家さんに桜色のうつわを作っていただいたり、全国から集めた発酵食品や、鹿児島の名物だとかも置いていたり……社長がね、どこからかいいものを見つけてくるんですよ。

ちゃんと商品を作っておいしさを守ることが私たちの使命でありベースですが、ブランドとしてのこういった展開は、商品の付加価値を高めるもう一つの車輪と言えるかもしれません。うちを知っていただきたい。いいものをお客さまに提供し、楽しんでいただきたい。ただ売れればいいというものを置くことはないですね。

サクラカネヨさんが今後、会社として目指す未来や目標について教えてください。

そうですねえ。うちの醤油や味噌が今後どのように変化していくかは、食生活・食文化の変化とも当然大きく関わる部分だと思うんですよ。それを見逃さずにお客さまに何を伝え、何を提供していくのか。先見の明やリサーチが必要なので、大きな会社さんに負けないくらいの速さでやっていかなくちゃいけません。

その上で、私が近頃注目しているのが「消費のコンパクト化」です。

消費のコンパクト化。

最近は食料品もインスタントや1人用のものが増えましたね。大きなものをたくさん作る時代ではなくなりました。先日もある百貨店の方と話したところ「昔はいろんなものをあれこれ詰め合わせにして出せば売れた。今はそれじゃもう売れない」と言うんですよ。

ふむふむ。

つまり、モノを売るためには日常的な生活必需品を作るか、もしくは「逸品」と呼ばれるようなとっておきのものを作るかになっていく……《コンパクト化》と《逸品》は、今後の展開において非常に重要なキーワードだと思います。

そこで今考えているのが「マイ醤油」という新しい醤油のありかたです。私だけの、あなただけの醤油があってもいいじゃないか、と。

自分だけの醤油……考えたこともなかったです。楽しそう!

楽しそうでしょう? 今まさに作ってるんですよ(笑)
そう遠くないうちに、ネットショップで皆さんのお目にかかれる日が来ると思います。

その日を楽しみにしています! 今日はありがとうございました。