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作り手がたくさんいる地域に拠点を。人っこひとり通らない場所に実店舗を構える『うなぎの寝床』

いつも画面越しに見ているネットショップのむこうには、想いのつまった“モノ”とそれを届ける“”たちがいます。このコーナーでは、知られざる商品開発ストーリーやお店の裏側に迫る現場レポートをお届けします。
今回ご紹介するショップ
福岡県八女市を拠点にショップ、問屋、メーカー、出版、ツーリズムなど、さまざまな役割を担う地域文化商社『うなぎの寝床』のネットショップ。今回は代表の白水 高広さんに実店舗とネットショップのお話や、文化や歴史を踏まえたブランディングデザインについて伺いました。

作り手がたくさんいる地域に拠点を

『うなぎの寝床』さんは、ネットショップだけでなく福岡県八女市に実店舗もありますよね。

実店舗は人っこひとり通らないような場所にあります。駄菓子屋さんと種屋さんくらいしかないし、観光客もいない。そんな場所で始めたのは、ネットショップありきで考えていたからです。

白水 高広さん

なぜ、そのような場所に実店舗を構えたんですか?

都市にお店を構える売り手はなかなか生産現場を見に行けません。とにかく話題になっている商品を仕入れて売りまくる。離れたところにいる作り手たちも、どういう人が使うのか想像できないまま商品を卸す。
僕たちはそうではなく、作り手がたくさんいる地域に拠点を作って、あいだに立ちたいと考えました。

作り手が直接納品にきてくれるし、僕らも工程を勉強しに行けます。直に見聞きしたことをお客さまに伝えられるので、物により思い入れをもってもらえますし、クレームや修理依頼もうちが受けて作り手にフィードバックすることでよりよい物になります。

ふむふむ。

作り手が多い地域で売るということは、買い手が少ないという課題もありますが、ネットショップやイベント、卸しでカバーしています。
あくまでも、この拠点は博物館的なものとして捉えているんです。掃除用品を探しにやってきたおばあちゃんが若い作家さんの器に興味をもってくれたり、もんぺを買いにきた若い人が人形を買って帰ったり…そういう発見と広がりがあるような場所になっています。

実は、販売よりも地域の物の調査・研究がしたいんですよ。

すごく学術的なお話ですね。

まだ実験中ですが、博物館の台帳と同じ方法で商品情報をまとめ始めています。博物館って展示品ごとに採取先とか素材特性とか技術とか…あらゆるデータを詳細にまとめていておもしろいんですよね。
同じように、地域の物を何十年経っても見たり比べたりできる状態にしておきたいんです。

売り方は作り手ごとに変わる

先ほど、博物館のようにと伺いましたが、やはり取り扱っている商品は幅広いのでしょうか?

生産量が少なくて価格が高い工芸品から、ムーンスターのような大中規模のメーカー品までさまざまです。それぞれの作り手のサイズ感に合わせて取引をしています。

例えば、お弁当箱を作っている関内さんとは「量産しますか?」という議論をしたんですけど、「僕は自分で作って丁寧に売りたい」と言われたので「では、商品のよさを伝えるお手伝いをしますね」というふうに売り方を考えたんです。

関内 潔さんのお弁当箱

反対に久留米絣は「布を買ってもらいたい」という課題があったから、もんぺという形で商品化して生産効率を上げるサイクルを作りました。

作り手ごとに理想の姿が異なるんですね。

そうそう。小さな作り手はたくさん売るよりも、丁寧に届けるっていうことが大事だったり、久留米絣の規模になると従業員もいるので、ある程度売れないと話にならなかったり。売り方はそれぞれの作り手との関係性の中で決めています。

久留米絣の工場

ランディングページを使ったSEO対策

ネットショップの方は何か集客の工夫ってされていますか?

実は昔、大手オンラインモールに出店したこともあるんです。でも、大手のモールでもんぺを探す人たちは商品を金額で比較する人たちなんですよね。求めているお客さんとはマッチしなかったので、今はカラーミーショップ一本です。

では、どこから訪れる人が多いですか?

もんぺ販売のイベントやSNSなど、口コミのきっかけが多いですね。テレビや新聞を見て訪れてくれる人もいます。

SEO対策もしていますか?

もんぺは「monpe.info」というドメインを取って特設サイトを作っています。このサイトにランディングして、ここからネットショップへの導線を作ってSEO対策をしています。

八女の「KATA(型)」づくり

今後、挑戦していきたいことはありますか?

今、八女のブランディングデザインにまつわる仕事をしていて、「KATA(型)」を作って発信していこうという話があるんです。KATA(型)は「フォーマット」「装飾」「スタイル」という3つの要素を掛け合わせたものです。
久留米絣のオリジナルもんぺを作ったときを例にすると、「フォーマット(履き心地や機能)」と「装飾(久留米絣の文様やカラーなど)」は実証されていましたが「スタイル(値段設定や見せ方、イメージ)」が問題で、そこを調整していったんです。

3つのうちのどこに問題があるかを調査研究していったということですね。

はい。物を売る・作るとなったときは、この3つをきちんと調査研究するのがよいと思っています。

フォーマットもしっかり調査できるのは、作り手さんに近い地域に拠点を構えているからこその強みですね。

そうです。ゆくゆくは「フォーマット」だけを売れるようにしていきたいんです。フォーマットをプレーンに作れば、アーティストや海外の方とコラボして装飾の部分をお願いできます。
この間コラボしたSTAR WARSもそのいい例じゃないかなと思っています。

KATA(型)からどんなものが登場するのか、楽しみにしています。今日はありがとうございました!