豆のように小さい理由は…
さっき工房で見せてもらった小さなろうそくは…?
2017年12月に発売開始した「米ぬかろうそく まめ」っていう新商品です。
小さいのは、何か理由があるんですか?
あります。今って大型の仏壇よりも棚の上に置ける小型のものが主流になってきていて、大きなろうそくは使いづらくなるんですよね。それで短いのを作ってみようってなったんですけど、どうせ作るならほんまに短いのにしよう!と思ってめちゃくちゃ短くしてみました。
なるほど。カラーアソートは2種類あるんですね。
スタンダードに使えるのはもちろん、現代の祈りの形と仏壇の多様化に合わせて自由に使っていただけるよう、カラフルなのを揃えてます。
宗教用だけじゃなくて日常的にも使えそう。
そうですね。生活道具としては、例えばお休みになる前の15分間だけ灯してもらうとか。今って電気のオンオフで、明るくも暗くもできますよね。つまり昼と夜を一瞬で変えられてしまいます。
だけど、自然はそうじゃない。昼と夜の間には、夕方っていう時間があって、グラデーションがありますよね。そういう時間を短時間燃焼のろうそくで作れないだろうか…っていうように、大與の商品はすべてにストーリーがあるんです。
商品自体はもちろん、パッケージに対してもしっかりと中身を詰めることにこだわっています。
どれくらいかかったんですか?
8カ月くらいですね。
商品開発するとき、どこに一番時間かけるんですか?
やっぱりパッケージのデザイン。売れ行きが全然変わりますからね。特に最近はギフトの需要が高いから、パッケージも重要です。貰った人が喜んでくれるのはもちろんだけど、選ぶ人のセンスを問われる部分になるから、手は抜けない。商品背景をきちんと盛り込んだものにしています。
猫とねずみとろうそく屋の関係
今回の「米ぬかろうそく まめ」はパッケージに猫が描かれていますね。これにも理由が?
ありますよ。和ろうそくの原料は植物性だから、放って置くとねずみが食べに来るんです。ねずみがいるから、ろうそく屋の周りには昔から猫がうろうろしてるし、猫を飼ってるところもあったんです。だから猫とねずみがいるんです。
へぇ〜!
で、箱を開けると…こんなかんじ。
おお! 猫がねずみを捕まえようとしてる!
ろうそく屋にとっては昔からよくある風景なんですけどね。このデザインが、「動物が食べても大丈夫な材料でつくられている」っていう植物素材100%の安全性を表してるんです。
なるほど。単に猫とねずみを選んだというわけではなく。
はい、ちゃんと理由があるんです。ろうそくは僕らにとってもご飯の種ですからね。そのご飯の種を猫がねずみから守ってくれてるっていうおもしろいストーリーもある。こっちから積極的に説明はしないけど、「なんで猫が描かれているんですか?」って聞かれときに「ほらきた!」ってなります(笑)
知らなかったことを知ったときの感動ってありますよね?その感動って絶対忘れないんです。例えばギフトとして贈られたときに、受け取った人は「なんで猫?」って感じると思う。そしたら、あげた人は「ほらきた!」ってなって、嬉々としてこのストーリーを話してくれると思うんです。(笑)
わざと、そういうトリビアというか、うんちくを忍ばせています。「なんで?」「これなに?」という「?」はフックになるので。
なるほど。とても深い意味のこめられたデザインなんですね。
Fireでくくられた火のイメージを変える
今後の目標はありますか?
火と人の関係性を変えていきたい、って考えてます。
関係性…?
今って「火は怖い」「危ない」とか言われて、どんどん家の中からなくなってますよね。
コンロもIHとかになってますもんね。
手のつけられない火も、ちゃんと道具になる火も全部「Fire」で一括りにしてしまったことが、火と人の関係を悪化させてしまっています。暮らしから火が消えていってるけど、僕は火を扱えるということは、人としてのアイデンティティであり、暮らしになくてはならない存在と考えてる。自然と上手に付き合っていくための必要な道具だと思うんです。
さっきの「米ぬかろうそく まめ」も「色ろうそく」も、単純に今ある需要に合わせただけじゃなくて、日常使いできる・日常使いしたいなっていうデザインを通してもっと生きやすい社会にするために何を選んでいったらよいか?を発信しています。これからも和ろうそくを通じて「ほんまに暮らしの中から火がなくなってもいいん?一瞬立ち止まって考えてみいひん?」って投げかけていきたいですね。
今後の商品も楽しみにしています!今日はありがとうございました。