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わざわざのネットショップの裏側、全て見せてもらいました

長野県東御市にあるパンと日用品の店「わざわざ」。ネットショップNo.1を決めるコンテスト「カラーミーショップ大賞2018」で大賞を受賞されたほか、noteの記事「山の上のパン屋に人が集まるわけ」をはじめ、経営面からも注目を集めている話題のお店です。今回はネットショップ運営の裏側に迫るべく、1日平均150件の発送を行う倉庫を中心に、仕事現場を見学させてもらいました。

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わざわざの組織体制

朝7時、東御市にある店舗に到着

厨房で代表の平田はる香さんにお話を伺います

商品はどれくらいありますか?

わざわざは、実店舗とネットストアの掲載商品は同じで、1000アイテム、2400SKU、オリジナル商品は20種類ほどあります。ちなみに2017年の売上の25%が実店舗、75%がネットショップでした。

厨房では、ちょうどカンパーニュが焼きあがりました

毎日どれくらいパンを焼いているんですか?

2種類のパンを製造していて、毎朝カンパーニュを約37個と角食を約84本分(1.5斤が40本+1斤が24本)、今はそれに加えて、シュトレンを週に400本焼いています。

薪窯からパンを出しているのは…

あれ。カメラマンさんでは…?

カメラマンのワカナンさん

そうです。ワカナンはカメラマンだけどパンを焼きますし、奥にいるコースケくんはLINE@を担当しながらパン生地作りをしています。

兼任されているんですね。

はい! わざわざには部署が7つあって、専任でやっている人もいるけど、ほぼ全員、業務は掛け持ちです。会社としては、かなり特殊な働き方かもしれないですね。

部署は全部で7つ
「パンづくり部」「おみせ部」「おとどけ部」「ものづくり部」「おしなもの部」「おまつり部」「つうしん部」

わざわざのスタッフは何人ですか?

現在は14人で、常時12人働いています。店舗と倉庫が離れているので、全体ミーティングはSkype(スカイプ)で行なっていて、各部からの日報や月報はLINEで共有されます。

日報に月報ですか?

みんなが自発的に作ってくれたんです。日報は、出荷件数・入荷情報などをまとめたものですね。月報は、出荷件数・クレーム発生率・クレーム詳細・改善案とか。

平田さんも繁忙期はパンの製造をお手伝い

ネットショップの運営は何人で行なっているんですか?

ネットショップを運営する「つうしん部」のメンバーは3人です。全体のディレクションやInstagramを担当している私+キナリノモール更新担当1人+カラーミーショップ更新担当1人です。

「わざわざ」には、カラーミーのフルタイム専任はいません。カラーミー更新担当のマドカちゃんは週2日だけの出勤です。LINE@担当のコースケくん(週2、3時間)+カメラマンとしてワカナン(週1.5日)なのでみんなの工数をあわせてやっと1人分くらいのイメージです。

少人数で更新されているんですね。驚きました。

そうなんですよ。では、カラーミーの更新や発送作業を行なっている倉庫を案内しますね。

倉庫と発送業務

店舗から車で3分、倉庫に到着

昨年まではこの建物の向かいにある小さな建物が倉庫だったんですけど、今はこの大きな建物が倉庫になっています。
ここにはネットショップの在庫商品とそれを梱包する作業台、ネットショップ更新のための作業デスク、撮影スペース、食堂などがあります。

倉庫の全体図

毎日どれくらいの件数を、何人で発送するんですか?

「おとどけ部」のメンバーは5人です。1日平均150件を、2、3人で対応します。繁忙期だと1日最大450件にもなるので、そういうときは、お手伝いが入ります。

発送業務の1日の流れを教えてください。

朝の8時から始まって、まずは納品書を印刷していきます。印刷した納品書をもとに商品を棚からピックアップして、作業台で梱包。配送は郵便局とヤマト運輸の2つを使っていて、ヤマトの集荷が14時16時、郵便局が17時にあるので、その3回に合わせて作業を進めていきます。この発送業務のほか、商品の入荷があると検品作業も行います。検品と受注〜発送までの一連の流れを、説明しますね。

納品書印刷

毎朝の作業は、納品書の印刷から始まります。

手前にあるプリンターで納品書を印刷

受注を確認してまとめて印刷したら、受注伝票+納品書で1セットにしていきます。基本的にカラーミーで受注したものは即日発送にしているので、雑貨のみの注文の場合は、すぐに商品のピックアップに移ります。

ずらりと並ぶ棚から商品を探し出す

一方、注文にパンやシュトレンが含まれる場合、焼成日が決まっているので、雑貨の同梱ありなしでパターンごとにクリアファイルに振り分けていきます。

納品書をパターンごとにファイルで仕分け

同梱雑貨は、空いている時間にピックアップしておいて、パターンごとの箱の中に入れておきます

パターンごとの雑貨を仕分ける箱

あとは焼成日にパターンごとの箱から雑貨を取り出して、組み合わせていくだけ。これだけでかなり効率がよくなりました。

商品ピックアップ

ピックアップは、印刷した受注伝票をもとに行います。在庫商品はメーカーごとに分類してありますが、梱包する作業台の近くにその時期の一番売れているものを置いています。今だと、靴下や腹巻きなどの季節商品ですね。作業台から遠くなるほど、出荷頻度が低いものを置いています。

季節ものは作業台の近くで管理

それから食器類は、1点ずつ梱包した状態で倉庫に格納しています。こうすることで、梱包の手間を大きく省けます。

1点ずつ梱包された器

ミスしやすいものは商品の再確認を促す付箋がついている

梱包

この作業台で、商品を梱包していきます。

ピックアップと梱包はミスがあってはならない作業なので、それぞれ別の人が担当するようにして、徹底してダブルチェックします。

梱包作業を外注することは考えていますか?

人の気持ちが伝わるような梱包をしたいので、外注するのがむずかしいんです。それに地域で雇用を増やしていきたいので、外注は考えていません。

梱包の工夫があれば、ぜひ教えてください。

【ポイント1】 10種類のダンボール

最初はガムテープで底をとめるタイプだったんですが、作業効率を上げるために1タッチで完成するものに変えました。

ダンボールのサイズも3種類から10種類に増やしました。最適サイズを見繕う力が必要ですけど、これで緩衝材を減らせるようになりました。

【ポイント2】 必要な情報だけを案内

注文ごとに異なる情報を同梱するようにしています。たとえば、雑貨だけ注文された場合は、雑貨専用のフライヤー。パンの注文の場合は、パンの保存方法が書かれたフライヤー。ギフトの場合は「わざわざ」の店舗紹介カードを同梱しています。

雑貨であれば、さらに各メーカーごとの説明書やカードなどを同梱しています。昔は全て一律だったのですが、注文する人の必要に合わせて変えていきました。こういった作業は商品理解がないと、なかなかできないことですね。

【ポイント3】 がっかりさせない緩衝材

緩衝材の新聞紙、多くのお店ではグチャっと丸めたものを入れるんですけど「わざわざ」では、それをさらに新聞紙でキレイにくるんで、整然と詰めます。

なのでダンボールを開けた瞬間、新聞紙だけど、がっかりしない。ていねいな梱包ですね、と褒められることもあります。

棚卸しについて

昔は年に1回しかしていなかったけど、今は1カ月に1回棚卸ししています。在庫のズレによるストレスは最終的にお客様にかかってくるので、ズレをなくすために毎月やっています。在庫はバーコードで管理していて、スマレジを使って棚卸し作業を進めます。

検品作業

仕入れ商品もオリジナル商品もパンも、入荷があると全てこの部屋で検品して、それから棚へ入れていきます。

この作業でもパソコンは使いません。発注書と納品書、現物を照らし合わせていきます。オリジナル商品の場合は、パッケージングも合わせて行います。

発注書の特徴でいうと、「わざわざ」には、実店舗・キナリノモール・カラーミーショップと3つのショップがあって、発注時に各ショップにいくつ納品するか決めているんですが、倉庫ではキナリノとカラーミーの在庫を一括で管理しています。

今は手動で各ショップの管理画面から在庫数を変更しているんですが、今後はネクストエンジンを導入して、一元管理していく予定です。

こういった倉庫のシステムは、どこかをお手本にされたんですか?

特にないです。完璧なシステムではないので「なんで間違えたんだっけ?」「ここをこうしたほうがいいよね!」を、日々みんなで話しあっています。最近始めた細かい工夫でいうと、レターパックには品名を書かなくちゃいけないんですが注文のほとんどが衣類のため「衣類」と印刷したタックシールを貼るように変えました。こんな感じで、あくまで毎日の改善の積み重ねなんです。

【まとめ】 倉庫・発送業務の工夫

■ 倉庫にあるネットショップの在庫は、キナリノ・カラーミー2つを合わせて管理。
■ 配送業者は2つ利用、集荷は14時、16時、17時の3回。
■ 注文パターンで納品書を仕分けし、パターンごとで雑貨をピックアップ。
■ 割れ物はあらかじめ1点ずつ梱包した状態で入庫。
■ 作業台近くに注文頻度の高い商品。基本はブランドごとの管理。
■ ダンボールは1タッチ式、サイズは10種類、最適サイズを選ぶことで緩衝材を減らせる。
■ むやみにインフォメーションを同梱しない。必要な情報だけを案内する。
■ ダンボールを開けたときの印象は大事。新聞紙の梱包もていねいに。
■ 棚卸しは月に1回。バーコード・スマレジ管理。

カラーミーの更新作業

SNSとメルマガの管理

カラーミー担当のマドカさんに、気になったことを質問

このホワイドボードは何ですか?

マドカさん: SNSとメルマガの配信スケジュールを管理する表です。週1回の「つうしん部会議」で、新入荷・再入荷情報をもとに、みんなでスケジュールを組んでいきます。通常ならLINE@を週3回配信するんですが、最近は繁忙期なので週1回にしたら週末の売上が下がってしまったんですよね。今週はそれを挽回するためにメルマガを2本配信します。そういうことがこのボードを見るとパッと分かるようになっています。

週2日で必ずやること

マドカさんは、週2日の稼働でどんな作業をしているんですか?

マドカさん: 毎週火曜日と金曜日、出勤したらまずTOPページの写真とその下のパワープッシュ(おすすめ商品)の内容を変更します。そのあとは、メルマガを書いたり新商品のページ作成や再入荷の更新をかけていきます。

ネットショップの更新において工夫されている点を教えてください。

マドカさん: 毎日お客さんが見に来ても新鮮な印象を受けるように、TOPページと新入荷・再入荷のページの写真を変更して、ネットショップに動きを出す工夫をしています。写真だけでなく「麺特集」や「体を温める特集」などコンテンツを編集してグループページを作って、TOPページから誘導することもあります。あとは、商品のサイズをきっちり測ってから出すようにしていますね。

推しメンによる推し麺特集もマドカさんが作った

商品のサイズは、なぜ測るんですか?

マドカさん: お問い合わせで「どれくらいの大きさですか」のような抽象的な質問が必ずあるので、計測してテキストや写真で具体的に説明するようにしているんです。

「鉄のフライパン」の一度に焼ける目玉焼きの数を写真で説明

マドカさん、ありがとうございました!

商品紹介のセオリー

メルマガや商品紹介は平田さんも書かれているんですか?

平田さん: いいえ、今は全てマドカちゃんが書いています。ライティングは未経験だったので、スパルタ教育です。(笑) 何度も手直しして覚えてもらいました。ただ、セオリーさえおさえれば、ライティングは簡単です。

【ポイント1】 個人の主観で書く

とにかく主観で書くこと。会社規模で運営しているネットショップの多くは、より一般的な解釈、フラットな文を書いています。書き手自身の主観がないから、どこも同じような内容なんですよ。

でも「わざわざ」は私ひとりで始めたお店で、ひとりの人格とイコールの状態からスタートしているんです。なぜ「わざわざ」がここまで支持されて成長できたかというと、書き手である私への共感があったんですよね。それが会社になった途端、視点がフラットになってしまうと、違和感が生まれてしまう。自分の主観で書いて成長してきたからこそ、組織になってもそれぞれの主観で書くことを徹底しています。

たとえば「こんにちは、今日は寒いですね」の挨拶に始まり商品情報が整然と書かれているようなメルマガ、あるじゃないですか。ありがちな挨拶なんていらない。「誰も聞いてないよ!」って。(笑) 誰が書いてもいい情報じゃないですか。そうじゃなくて「私はこんな場所でこんなふうに暮らしている人です」「子どもがいて旦那さんがいて、旦那さんが帰ってくるのが遅いから、こんな料理を作っていて…」そうやって、自分の日常を書いてほしいと伝えています。

マドカさんの書くメルマガ

【ポイント2】 具体的に書く

抽象的な情報もいらないです。商品説明も「爽やかな風が吹くような〜」とか、抽象的な表現じゃ全くイメージがつかない。こういった形容詞は使いがちだけど、心には響かないんですよ。だとしたら、あなたがどう感じたか体験に文字数を使って欲しい。「〜みたいな味でおいしかった」じゃなくて「子どもがおかわりしてくれた」のような、具体的な体験が読みたい。

つまり、毎週読むのが楽しみになるような内容ってどんなものかって考えると、手紙に書くような個人の体験談なんです。LINE@を担当しているコースケくんにも同じことを伝えています。迎合しなくていいから、コースケくんが食べた商品の感想とか、ごく個人的なことを書いて欲しい。最初はすごくダメ出ししました。「この文、コースケがどこにもいない」って。(笑) 今はふたりとも、全くチェックしてないです。マドカちゃんもコースケくんも、すごく上手なので安心して任せています。

コースケさんの書くLINE@

【ポイント3】 検討させるページ構成

商品ページの構成に関してもルールがあります。会社説明→商品説明→書き手の主観の3段階が基本です。これに加えて、レシピや経年変化について説明することはありますが、3段階を省くことはありません。ふつうのネットショップは、購入率を上げるためにカートがページの途中にもついているんですけど、うちではあえて最下部につけています。だから長い商品ページを全て読まないと、商品をカートにいれられないんです。

これはお客さんに感覚で買わせないためにやっていることです。「きっちり商品のことを読み込んで、比較検討してから買ってくれ!」と。価格での比較だけで直感的に購入する人は少ないので、クレームもおさえられていると思いますし、売上を下げることはあるかもしれないけど、かんたんに購入させないことが、売り手と買い手双方にとって良い結果になっているんじゃないかと思います。

写真のこだわり

商品写真はどこで誰が撮影を?

倉庫の奥にある撮影スペースで撮影しています。撮影は、ワカナンと私の担当です。

倉庫の奥にある小さな撮影スペース

撮影ルールはありますか?

ないです。あえていうなら、商品単体の写真はワカナンにおまかせするけど、メインになるイメージ写真のスタイリングは私がやります。撮影に使っている小道具類も、だいたい私物です。

ほとんど平田さんの私物

今はアクセサリーの撮影をしているんですけど、私が趣味で10年かけて集めた石コレクションを使っています。(笑) こういうスタイリングは、なかなか他のお店は真似できないんじゃないですか? 私の収集グセが生きているから。(笑)

でも今回の商品写真は、撮ったあと「もっと発注すればよかった!」って後悔したんですよね。アクセサリーは初めての入荷だし、商品の発注数を少なめにしたんです。

写真を撮って「売れる!」って分かるものですか?

分かりますね。撮ったあとの手応えというか。イメージどおりできたときは「いける!」と思いますね。もちろん、手応えあったのになかなか売れないケースもあるんですけど。たとえば『KLIPPAN(クリッパン)』のブランケットは、去年たくさん売れたので、今年は1.5倍仕入れたんです。イメージ写真も、すごくいいものが撮れたから「いけるんじゃないか!」と思ったんだけど、意外と売れなくて。

KLIPPANの今年のイメージ写真。スタイリングは平田さん

初速がイマイチだったので、2弾目として、展示会のときの風景写真を追加しました。それでも売り切れなかったので、3弾目としてとして利用方法を追加しました。読書とか車の中とかいろいろなシチュエーション写真です。さらに4弾目としてお手入れ方法の写真を追加して…そんなかんじで5弾くらい写真を追加しましたね。

あとはシュトレンの商品写真の背景にも入れました。これもよく撮影するパターンです。背景は、お客さんにとっては残像ですけど、潜在的に欲しくなるかもしれないから、積極的に他の商品を取り入れています。そう考えると「わざわざ」は、1つのイメージ写真を作るのに、めちゃくちゃこだわって情報を入れ込んでいますね。だからこそスタイリングは全て私がディレクションしています。

背景にKLIPPANのブランケットが見える

再入荷の商品でも、新しく写真を撮り直すんですか?

必ず撮ります。取り扱い期間が長く、多いものだと1商品あたり100枚以上写真があるものもあります。絶対に1日だけで撮れない、使い続けているからこそ撮影できる量です。全く違うイメージのパターンをいくつも持っているから、他のところとは違いますよね。これは真似できないはず。どんどん撮ってどんどん更新をかけるので、同じ商品でも何度もページが変わります。なので、「わざわざ」には放置されたページがありません。これはわたしたちの努力の蓄積です。だから「そりゃー売れるよ!」って思っちゃいます。(笑)

【まとめ】 更新の工夫とこだわり

■ SNSとメルマガの配信スケジュールは、週1回の会議で組む。ホワイトボードで管理。
■ LINE@は週3回、メルマガは週1本。
■ 火曜日と金曜日にTOPページの写真とおすすめ商品を変更。
■ 商品のサイズを計測して、テキストや写真で説明する。
■ 書き手個人の主観で商品を紹介する。
■ 挨拶や抽象的な形容詞よりも具体的な体験を大切にする。
■ 商品ページの構成は「会社説明→商品説明→書き手の主観」の3段階が基本。
■ 感覚で買わせないためにあえてカートをページの下に設置。
■ スタイリングと小道具類は平田さんが全て担当。
■ 売れなかったらすぐに次の手。写真とメッセージを変える。
■ 写真を何度も撮影して、何度も更新をかける。ページを放置しない。
■ 再入荷であっても写真は撮り直す。

わざわざと平田さんのこれから

倉庫の食堂でまかないランチをいただくことに

「わざわざ」は、昔と変わりましたか?

変わりました。LINE@もメルマガもネットショップの更新も発送も、これまでは「わざわざ」=私だったけど今はそうじゃない。みんなが会社を短期的な視点で考えて動かしてくれているから、そのぶん私は、5年10年の長期的な視点で、会社のことを考えられるようになりました。

組織に感じている課題は?

ひとつはイメージの言語化です。私が現場から完全に離れると、アートディレクションできる人が急激に減ってしまう。結局まだ全体イメージを作っているのは、私なんですね。アートディレクターがいなくなると、クリエイティブの質はどうしても下がってしまう。商品紹介のようなセオリーと違って、センスやイメージを共有していくことについては、課題に感じています。

ふたつめは幹部層の長期的な経営視点の育成です。これから「わざわざ」を引っ張っていく人たちにもう少し経営的な視点を持って欲しい。そこまでパスできるようになると、私がもっと先を見られるようになるので。

「わざわざ」の目標はありますか?

会社を100億円規模にしたい!従業員を数千人雇いたい!みたいなガンガン業績を伸ばすことには興味ないです。実際、目標数字もないです。そういうのでは、がんばれないんですよね。

目標数字、ないんですね。

予想は立てていますよ。「わざわざ」は、5年で10億円は達成できると思います。そういう計算はしていますけど、目標ではないです。たぶん到達するだろうなというレベル。だからそれが目標にはなりません。私自身、お金儲けにそんなに興味がないというか。

平田さん個人としては、これから何をしていきたいですか?

もう40歳を過ぎているので、引退ですよ。(笑) 私が80歳まで生きられるとしたら、もう人生半分通り過ぎているわけですよね。仕事は今いちばんやるべきことだと思っているので、がんばっていますけど、70歳まで仕事に費やしていたら、残りの人生は、たった10年になるじゃないですか。でも個人としてやりたいことも持っているので、30年は「わざわざ」じゃなくて「平田はる香」として生きたいです。そのために「わざわざ」をあと10年くらいで、しっかり軌道に乗せる。

ピンボールのゴムを引っ張って、ピュンッと弾くと方向性を保ったまま進んで、慣性がなくなった瞬間に止まるじゃないですか。最初の力が強ければ強いほど良いというのは会社も同じで、方向性が決まっていればいるほどずっと先まで進むし、あとは誰かがときどき釘になって方向性を定めていけばいい。だから私は、バネを引っ張るところまでを、きちんとやり遂げたいです。

わざわざと平田さんのこれからが、とても楽しみです。今日は貴重な現場を見せてくださり、ありがとうございました。

 ※わざわざさんはカラーミーショップを卒業されました

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