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職人、生産者の方が正当に評価される場所を。「かわしま屋」のこれまでとこれからの話

いつも画面越しに見ているネットショップのむこうには、想いのつまった“モノ”とそれを届ける“”たちがいます。このコーナーでは、知られざる商品開発ストーリーやお店の裏側に迫る現場レポートをお届けします。
今回ご紹介するショップ
全国から厳選したオーガニック食材、化粧品、キッチン用品を販売している『かわしま屋』さん。「カラーミーショップ大賞」では2年連続で優秀賞を受賞されています。
今回は、代表の河島酉里さんに、立ち上げから現在に至るまでのショップ運営について伺いました。

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おじいさん、おばあさんが作っている醤油

ネットショップを始めたきっかけを教えてください。

もともと僕は映像の勉強をしていて、初めに就職したのはテレビCMや会社のウェブサイトを作る会社でした。ある日、大手醤油メーカーの企画のために市場調査をしていて、総務省が出している全国の醤油蔵のデータを見たんですが、毎年すごい勢いで数が減っていたんです。

『かわしま屋』代表の河島酉里さん

なんと……。

休みの日に醤油蔵を廻ると、おじいさん、おばあさんが作っている醤油がありました。すっごいおいしいのに経営的にはカツカツで「我々が引退したらこの蔵は閉める」ということをおっしゃっていて。かたや、大手の醤油メーカーはバンバン儲かっているという状況でした。

小さな蔵は、販売先や後継者が不足しているんでしょうか?

そうなんです。もったいないな、もっとうまくやれるのではないかなと感じていました。
次に転職した会社では終電で帰って始発で来るような生活でした。

ものすごい激務だったんですね。

奴隷のように働いていましたね。2011年11月にその会社を突然辞めることになって、ネットショップで醤油を売ろうと決断しました。1週間前に1人目の子が生まれたばかりで、今思えばもうちょっと深刻になった方が良さそうなものですが、希望しかなかったのを憶えています。

素晴らしいですね!

ちょっと、どうかしてたんだと思います(笑)。
2012年の1月1日に自宅の冷蔵庫を倉庫にして商品の販売を開始しました。

退職からわずか2ヶ月でネットショップをオープンされたんですね。

カラーミーショップはテンプレートを買って、ロゴを入れたりして終わりなので、ぜんぜんスキルが必要ないほど簡単でした。

2012年のデザイン

それは嬉しいお言葉です。ショップはすぐに軌道に乗りましたか?

最初は月商100万円を目標にしました。100万売り上げれば粗利3割で、30万残って家族を食べさせていけるかなっていう、ざっくりレベルの計画でした。1本2,000円くらいのおいしい醤油があったので、2,000円だから月に500本。1日20本くらい売ればいけるでしょ、と。今思えば酷いですよね。

で、立ち上げから1年の2013年2月に月商100万円を達成しました。しかし、喜んだのもつかの間、銀行にお金がぜんぜん残らなくて、激しい徒労感に襲われました。

30万どころではなかった?

むしろ、ぎりぎりマイナスじゃないの?という状況です。
そこでようやく深刻な現実を見ました。やり方が下手くそだったんですよね。

激しい徒労感に襲われていた時期に娘さんと

その後、どうやってリカバリーされたんですか?

めげずに継続していくだけでしたね。
今は売上が伸びているので、お金を投資に回していろんな施策ができるんですけど、最初はとにかく継続することが大切だと思います。

諦めずにコツコツ改善を続けることで、2017年には優秀賞を受賞するまでに成長されたのですね。

カラーミーショップ大賞授賞式

生産者さんとの関係性

お取り扱い商品の選定で気をつけていることはありますか?

選定には以下の基準があります。

  1. 生産性や効率よりも、安全性や品質を優先してつくられている
  2. 生産者・製造者と顔の見える関係を築けている
  3. 自分たち(かわしま屋スタッフとその家族)が生活に取り入れたいと思える

この基準をベースに、スタッフみんなで話し合って選んでいます。生産者さんとの関係性はすごく重要だと思います。

河島さんのお人柄も大きいかと思いますが、生産者さんとはどんな風に関係を作られているのでしょうか?

はじめは紹介だったり、手紙や電話をしたりです。日本の生産者の方って、真摯に作っている方同士の横のつながりが広くて、他の方を紹介していただけるんですよね。本当にありがたいです。

そこから直接会いに行ってお話しする感じですか?

そうですね。みなさん、温かく迎えてくださって。
実際に話をさせていただいて、お互いに共感できるところがある方とお取引をしています。

徳之島の生産者の方々と

例えば、京都に漬物を作っているおじさんがいるんですけど、「30年、365日毎日漬けているけど、まだ35点くらい」とおっしゃっていて、心にズシンとくるものがありました。現場で取材をしたり、お酒をご一緒させてもらったりしてお話を聞いていると、己の言葉がいかに薄っぺらいかを痛感して、なにも喋れなくなることがよくあります。

長い年月をかけて作ってきたものがあっての言葉は重いですね。

そういう方の商品を届けるのだから、こちらも思わず襟を正すというか。我々はなにを作れるわけでもないので、生産者、職人の方には頭が下がります。

コンテンツ制作のこだわり

生産者の方との交流や取材のおかげで商品ページが充実しているんですね。見ていると欲しくなるというか、実際に私も梅肉エキスをを注文してしまいました。

これは和歌山県の龍神村というところで作っている商品なんですが、社長がやたらと元気なんです。この取材に行ったときに朝まで飲んだんですけど、翌日も元気いっぱいで「梅肉エキスを飲んでるんだよ」と言われました。
それ以来、僕も飲んでますね。すっごい酸っぱいですが元気が出ます。

届くのが楽しみです。他にも商品ページのこだわりはありますか?

写真はできるだけ自分たちで撮るようにしています。フリー素材で購入した写真を使ったら、まとめサイトと同じですよね。「それとは違うんだ、本気なんだ!」という姿勢で、撮影用のブースを社内に設けています。

そこまでされているんですね。確かに、フリー素材では購入意欲を削がれるときがあります。

萎えちゃいますよね。とはいえ、撮影の専門家がいるわけではないので、コンテンツチームで話し合いながら手探りでがんばっています。

現在、コンテンツチームは何人ですか?

6人いて半分が在宅勤務です。1人は産休、育休を経て自宅で勤務をしてくれています。
さらにもう1人は、産休に入る前から自宅勤務に切り替えて働いてくれています。
大阪のメンバーもいますね。京都の麹のワークショップで出会った方です。知識があって写真もすごくきれいに撮れる方なので、よみものコンテンツの記事をお願いしています。

Google Analyticsのデータや、メール・電話・リアルイベントでお会いした弊社のユーザーさんは、30~40代の女性がいちばん多いです。
コンテンツチームにも同世代の女性が多いので、作るものがうまく刺さるのかもしれませんね。

社内のコンテンツチーム

 

育児中の方が働きやすい環境

在宅勤務なら住んでいる地域に関係なく、優秀な方を雇用できるんですね。

そういう面でいうと、うちは育児中の方が働きやすいという特徴があるかもしれません。
僕自身が家事と育児を半分担当しているので、どんなに大変なことがあっても16時半には帰らないといけないんです。17時には会社に誰もいなくなります。

お迎えがあると遅くまで残れませんよね。

そうなんです。子育て中のそういった方を積極的に採用しています。
特に配送担当は主婦の方が多いので、「子どもが熱を出してどうしても行けない!」なんてことがあっても、会社のグループLINEで代わりに入れる人を呼びかけて助け合っています。

倉庫の様子

スタッフ、家族、友達たちとのバーべキュー

みなさん、仲が良さそうです。早くからYouTubeにも挑戦されていますが、こちらもコンテンツチームのアイデアですか?

YouTubeは納豆菌や麹などマニアックな商品が多いんで、使い方を説明するときに動画で撮っちゃった方が早いというのが始めたきっかけです。
納豆や麹の作り方は英語の字幕をつけているので、海外の方がけっこう見てくれますね。

字幕はYouTubeの翻訳機能を使って自動生成しているんですか?

自動で生成されるものは不思議な日本語になってしまうので、クラウドソーシングで依頼したものを使っています。

細部まで手を抜かずに作られているんですね。

そのおかげで、ドイツから「納豆菌売ってよ!」とか「これどうやるの?」っていうメッセージが来たときは嬉しかったです。

海外にも発送したんですか?

当時は要望があれば送っていました。今は越境ECのサービスを利用してグローバルサイトのベータ版を作ったので、そちらを見にくる方が多いですね。

かわしま屋さんの商品には好意的なレビューがたくさんついていてファンが多いように感じますが、リピーターを生む工夫はされていますか?

発送後にメールでレビューのお願いはしています。書いていただけて、ありがたいですよね。レビューをいただいた方にはショップポイントを贈呈しています。

梅肉エキスのレビューの一部

Amazon Pay」など決済手段が選べるのも、購入者の方にとっては魅力的ですよね。

Amazon Payはサービス開始のニュースを見て以来、ずっと注目していた決済手段です。カラーミーショップでも早く導入できるようになればいいなと切に願っていたのをよく覚えています。

興味を持たれたきっかけは何でしたか?

僕自身、かれこれ10年以上Amazonのヘビーユーザーなんです。
なのでAmazon以外のサイトで買い物をするとき、クレジットカード情報や住所、電話番号なんかをいちいち入れるのが面倒くさいなと常々感じてて…。かわしま屋を初めて訪れるお客さまにとってもそれは同じなので、カゴ落ちの大きな要因になっているだろうと推測していました。

でも、Amazon Payを導入すれば情報入力の手間がかなり省けるので、スムーズに買い物をしてもらえるんじゃないかと。カゴ落ち対策やCVR向上への大きな期待がありました。

導入してみて、効果は実感できましたか?

導入してすぐに利用者が増えましたね。想定していたよりもうんと早く、みなさんが使うようになって驚きました。今ではAmazon Payを利用される方がクレジットカードと同じか、それよりも多いぐらいの割合でいらっしゃいます。

そんなにたくさんいらっしゃるんですね!

かわしま屋のこれから

今後、挑戦したいことはありますか?

今年からイベントやワークショップを始めました。
今まではお客さまの顔を見る機会がなくて、たまに怒っている方の電話を受けることがあるくらいだったので、スタッフの認識が「お客さま=怖い」になっていたんです。
それが、今年くらいからちょこちょこイベントをやるようになって変わりました。本当にみなさん優しくて温かくて、お会いするのが楽しいんですよね。

わかります。カラーミーショップのスタッフも普段はお客さまの顔が見えないので、ショップ大賞で受賞ショップの方にお会いするのが楽しみです。スタッフの士気が上がりますよね。

ほんとそうなんです。

トークイベント「麹の勉強会~良い麹のつくりかた+活用方法~」

この間もコーヒーのワークショップをしたんですけど、生豆を焙煎するところからやりました。

同じ日にチョコレートも作ってらっしゃいましたよね。

カカオ豆から作るチョコレート、マニアックですよね(笑)
各分野に「その道の変態」みたいな人がいるので、マニアックなワークショップを今後も積極的にやっていきたいです。

あとは、海外への販売に力を入れていこうと思っています。eBayや個人サイトで、かわしま屋のオリジナル商品や取り扱い商品が10倍の価格で転売されているんです。画像もそのまま流用されて。

それはひどい。10倍でも売れてしまうんですね。

そこでしか手に入らないからですよね。一方、国内では職人や生産者の方々が卸の会社に渋い条件で取引させられていたりする。真摯に作っているものが労力にまったく見合わない価格で流通している状況が多くあります。

そういった消費者と生産者を繋ぐニーズがあるんですね。

そうです。世界中の人たちが適正な価格で購入できる場所、同時に国内の職人、生産者の方が正当に評価される場所が必要なんです。今、越境ECについて調べると屍の山がいろいろ出てきます。あまりうまくいく時期ではないのでしょうが、それでも挑戦していこうと思っています。

挑戦を楽しみにしています! 本日は貴重なお話をありがとうございました。

 

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