新型コロナウイルス感染症の拡大の影響により、自宅で楽しめるお取り寄せグルメの需要が増えました。
そのため、ラーメンを店舗だけでなくネットでも販売したいと考えるラーメン店の方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、ラーメンをネットで販売する際に必要な許可・資格、ネット販売における注意点や運営のポイントを解説していきます。
おうち時間が増えたことがきっかけで、美味しいラーメンを家で食べたいと思う人も増えているよね。
最近ではさまざまなラーメンがネット販売されていますよね。今回は、ラーメンのネット販売について解説します。
ラーメンのネット販売に許可・資格は必要?
ラーメンをネットで販売すると考えた場合、下記の2つの方法があります。
- ・ラーメンを自身で製造して販売する
- ・ラーメンを仕入れて販売する
ネットでラーメンを販売するというときは、自身ですでにラーメン店をやっている事業者が、その一環としてネット販売を始めようとする場合が多いでしょう。
ただしネット販売する場合は、実店舗でラーメンを提供する場合と異なり、食品表示法に基づいたラベルの貼付や、冷凍または冷蔵でお店の味を再現できるようにするなど、さまざまな注意点があります。
また、自分でラーメン屋を開業していなくてもラーメン店の許可を得て仕入れ、ネット販売をするという方法もあります。
国内最大級のラーメン通販サイト「宅麺.com」や2020年のコロナ禍で立ち上げられた「RAMEN STOCK」が、この方法の代表例です。
ラーメンを製造・販売するには許可が必要
「ラーメン店をやっているのだから、ネット販売といっても新たに許可は不要だろう」と考えがちですが、実は注意が必要です。
実店舗でラーメンを提供する際に必要なのは「飲食店営業」という営業許可ですが、ネットで販売する場合は主たる事業が製造業となり「めん類製造業」の許可が必要になります。
めん類製造業の許可を得るには、飲食店営業の許可とはまた別の施設基準が適用されるため、もしかすると厨房の設備を改築する必要が出てくるかもしれません。
なお、めん類製造業の許可を取得するためには「食品衛生責任者」の資格取得が必須ですが、すでにラーメン店を開業している方はお持ちかと思いますので、とくに再申請は不要です。
これらの条件ですが、実は地域によって基準は異なります。
もしかするとラーメン店でも、もっと簡単にネット販売を始められる可能性もあるので、必ず事前に管轄の保健所に確認するのがおすすめです。
ラーメンを仕入れて販売するには届出が必要なことも
一方、ラーメンを他から仕入れて販売する場合にも許可は必要なのでしょうか。
そもそも食品の営業(製造や販売)を行う際の許可は、下記の3パターンに分かれます。
- 1.「営業許可も届出も不要」なパターン
- 2. 販売・製造にあたり「営業許可が必要」なパターン
- 3. 営業許可の代わりに「届出が必要」なパターン
1のパターンは、常温で長期保存できる食品を仕入れて販売する場合です。
たとえば、包装されたスナック菓子やカップ麺、ペットボトル飲料は衛生面に細心の注意を払わなくても保管が可能なので、営業許可や届出不要で仕入れ販売できます。
ただし販売のみなので、先ほど例に挙げた食品の製造はできません。
2のパターンは、先ほども少しお伝えしたように飲食店営業やめん製造業など、国の基準に沿った施設の整備や、食品衛生責任者の資格がないと営業(製造・販売)の許可が下りません。
肉や魚、そうざい製造業など32の営業形態が許可制になっています。
そして、1にも2にも該当しない食品(営業形態)はすべて3 の「営業許可の代わりに届出が必要なパターン」に分類されます。
そのため、3に該当するパターンは非常に多いです。
冷蔵や冷凍のラーメンを他社から仕入れて販売する場合も、この3のパターンのように届出が必要だと考えられます。
自治体によっても制度が多少異なるので、冷蔵や冷凍のラーメンを仕入れて販売する場合はどのような届出(手続き)が必要になるのか、必ず管轄の保健所に相談しましょう。
食品の営業許可について詳しくは「営業許可のいらない食品とは?」の記事をご参考ください。
【食品EC】売れるショップを作るには?
食品のECを成功させるには、食品販売ならではのネットショップの作り方があります。
15年以上もネットショップ作成を支援してきたカラーミーショップが、「売れる食品ECサイトの共通点」をまとめた資料を無料で提供中です。
ラーメンを製造・販売するのに必要な許可や資格・規制
先述の通り、ラーメンを製造してネット販売する際には、めん類製造業の許可が必要です。
また、めん類製造業の許可を取得するためには、食品衛生管理者の資格などが求められます。
ここからは、ラーメンを製造・販売するのに必要な許可や資格、規制について詳しく解説していきます。
めん類製造業の許可
めん類製造業とは、生麺やゆで麺、乾麺、冷凍麺などを製造する営業を指します。
実店舗でラーメンを提供する場合には「飲食店営業」の許可が必要となり、めん類製造業の許可は必要ありません。
ただし、同じ施設で麺を包装して販売する場合は、めん類製造業の許可が必須となります。
そしてめん類製造業の許可取得の流れは、下記の通りです。
- 1.管轄の保健所に事前相談
- 2.営業許可の書類を申請
- 3.保健所と施設検査日程を調整
- 4.施設検査
- 5.営業許可書の交付
- 6.営業スタート
営業許可の申請書を提出した後に、営業施設が基準を満たしているかどうかの検査があります。
検査の際に要件を満たしていない部分があると、再度工事をしなければいけない場合もあり、コストや時間がかかるため、着工前に必ず保健所に相談しましょう。
また、場合によっては、めん類製造業だけでなく、「そうざい製造業」(具材やスープ)や「食肉製品製造業」(チャーシュー)の許可が必要となるケースもあるため、こちらもあわせて事前に保健所に確認することをおすすめします。
食品衛生責任者の資格
上記でご説明した、めん類製造業の許可を取得するためには、食品衛生責任者の資格が必要になります。
食品衛生責任者とは、食品や添加物を採取・製造・輸入・加工・調理・貯蔵・運搬・販売、容器包装の製造・輸入・販売を行う施設において、食品の衛生を管理する国家資格です。
指定の食品や添加物を扱う場合は、食品衛生責任者を選任し、設置することが義務づけられています。
食品衛生責任者の資格を取得するためには、通常6時間ほどの養成講習を受講し、管轄の保健所に届け出なければなりません。
ただし、栄養士や調理師などの資格をすでに持っている場合は、講習を受講しなくても食品衛生管理者になることができます。
食品衛生責任者の資格は、飲食店営業の許可を取る際にも必要なものなので、ラーメン店を開業している場合、新たに取得する必要はありません。
ですが、ラーメンを仕入れて販売する人で食品衛生責任者の資格が無い場合、営業の届出を行う際に提出を求められる可能性もあります。
仕入れ販売の届出にどのような手続きや資格が必要なのかも、管轄の保健所にたずねれば教えてくれます。
基準を満たしている施設・設備
ラーメン店(飲食店)の開業と同様、事業としてラーメンを製造・販売する場合は、自宅のキッチンではなく、基準に沿った施設を用意しないと許可が下りません。
そのため、飲食店営業の許可を受けた設備があったとしても、めん類製造業の基準を満たした施設に改装しなければならない可能性もあります。
ほかの営業許可と同様、めん類製造業の施設基準は、共通施設基準と営業別施設基準の大きく2つに分かれています。
前者は食品の営業許可(全32業種)に共通の基準で、後者はそれぞれの業種だけに求められる基準です。
そのどちらの基準も、すべて満たした施設にしなければなりません。
めん製造業の施設基準は都道府県の条例によって異なりますが、下記は愛媛県の例です。
- (共通施設基準の例)
- ・施設は、清潔で衛生的な場所に位置すること。ただし、衛生上必要な措置を講じている施設については、この限りでない。
- ・施設は、家族及び従業員の住居等と壁等で区画していること
- (営業別施設基準の例)
- ・製造場には、原料倉庫、製造室及び製品置場があり、それぞれ区画されていること
- ・乾めん製造の場合は、別に乾燥室及び包装室を設けていること など
詳細については、各自治体のホームページや保健所で確認してください。
HACCPに準じた衛生管理
食品の製造・流通のグローバル化を受け、2021年6月からはHACCP完全義務化がすべての食品等事業者に求められています。
HACCP(ハサップ)とは世界基準の衛生管理方法のことで、食品等事業者が食中毒や異物混入の危険を予測し、製造・加工工程において継続的な監視・記録により、リスクを低減し、製品の安全性を確保することを指します。
国連食糧農業機関(FAO)と世界保健機関(WHO)の合同機関である食品規格委員会から発表され、各国が採用しています。
ラーメンの製造・販売において、営業許可を得るためにはHACCPに沿った衛生管理が求められるため、事前に必ずチェックしましょう。
めん類製造におけるHACCPの取り組み方については、厚生労働省が発表している「食品製造におけるHACCP入門のための手引書(麺類編)」という資料をご参考ください。
なお、ラーメンの仕入れ販売の届出を行う際も、HACCPの考え方を取り入れた簡易的なアプローチによる衛生管理が求められる可能性があります。
食品表示法に基づいたラベル貼付も
ラーメンを製造・販売するには営業許可や届出の手続きを踏みますが、それだけでなく商品自体には食品表示法によるラベル貼付が必須です。
食品表示法とは、消費者が食品を摂取する際の安全性や自主的で合理的な食品選択の機会の確保を目的とした法律で、食品衛生法、JAS法、健康増進法の食品の表示に関する規定を一元化したものです。
コンビニやスーパーで販売されている食品の裏面には必ず、食品の成分や製造場所、保存方法などが書かれていますよね。
きちんと表示されていない場合、罰則なども定められています。
ラーメンを製造・販売する際は、一例になりますが下記の項目を消費者にわかりやすい日本語で、容器包装の見やすい場所に表示する必要があります。
- ・名称
- ・原材料名
- ・添加物
- ・内容量
- ・賞味期限
- ・保存方法
- ・製造者
さらに生麺を製造・販売する場合は上記に加えて、「使用上の注意」として「賞味期限(又は消費期限)内にお召し上がりください」「開封後はお早めにお召し上がりください」などと表示しなければいけません。
また、麺の状態(なま、ゆで、むし、半なま)を名称に記載する必要もあります。
自治体によっては事業者向けの相談窓口を設けているところもあるため、不明点などがあれば問い合わせましょう。
ラーメンをネット販売する際の注意点・ポイント
ラーメンをネット販売する際に、許可を得ずに行うと罰金などが科せられるため注意が必要です。
また、販売をスタートしたらホームページで告知するなど集客も不可欠です。
最後に、ラーメンをネット販売する際の注意点とポイントをご紹介します。
許可を得ずに製造・販売を行うと罰則がある
めん類製造業の許可を得ずにラーメンの製造・販売を行うと、食品衛生法に抵触し、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科せられます。
さらには上記の罰則が科せられると、営業を停止しなければいけないだけでなく、2年間は許可が取得できなくなるため、注意が必要です。
たとえ許可が必要だったと認識していない場合でも、無許可での営業が発覚した場合は同様の罰則が科せられる可能性があります。
無許可での食品営業に対する厳しい罰則は、社会的にも経済的にも影響が大きいため、必ず許可を得てからラーメンの製造・販売を開始しましょう。
販売を始めたら集客する
ラーメンのネット販売を始めた当初は認知度も低く、サイトを訪れるユーザーも少ないといえます。
そのため、ネット販売を始めたら、実店舗の店内にポスターを貼ったりチラシを配ったり、自社のホームページでお知らせなどをしましょう。
また、お店の公式アカウントを作ってInstagramやTwitterなどのSNSを活用し、情報発信するのもおすすめです。
サイトがGoogleなどの検索エンジンで上位に表示されるためのSEO対策を行うのも効果的ですが、上位になるには知識や時間的なコストがかかるため、まずはSNS発信から始めてみましょう。
ほかにも広告を出すなど、いくつかの集客方法があるため、自社に合った方法を探ってみてくださいね。
調理方法について詳しい説明を書く
消費者の自宅にラーメンが届いた際、お店のラーメンのように美味しく味わえるよう、調理方法についての詳しい説明を記載しておきましょう。
リアルにお店の味を再現できるように、麺の好みの硬さに応じた茹で時間などを書くことをおすすめします。
また、トッピング用のチャーシューやメンマ、追加用の生麺を販売するとより消費者のニーズに応えられるでしょう。
さらには、店舗オリジナルのラーメン用の器やレンゲなどを販売することで売上アップにつながる可能性があります。
消費者が実際に自宅でラーメンを食べるシーンをイメージし、商品を展開しましょう。
まとめ
今回は、ラーメンをネットで販売する際に必要な許可や届出、販売における注意点やポイントについて詳しく解説しました。
コロナ禍において、自宅で本格的なラーメンを食べたいというニーズは増えており、今後もその傾向は続くと考えられます。
この記事を参考に、ラーメンを製造・販売する場合は、必ず許可や資格を取得したり、届出を提出したりしましょう。
各自治体で要件などが異なるため、ラーメンのネット販売を始める前にまずは管轄の保健所に相談することをおすすめします。
ネットショップを立ち上げる際は、初期費用・月額利用料無料のカラーミーショップのフリープランをぜひご利用ください。
▼こちらの記事も読まれています▼