
ECサイトのささげ業務とは?効率化するテクニックや内製・外注のポイントを解説
EC運営に関わっていると、一度は耳にする「ささげ」という言葉。
ささげとは撮影・採寸・原稿、この3つの業務をまとめて、頭文字をとった呼び名です。
商品を実際に手に取れないネットショップでは、写真・サイズ情報・説明文こそが顧客の“購入判断材料”。
売れる商品ページの裏には、いつも丁寧な「ささげ業務」が存在しています。
とはいえ、毎日の運用に追われながら毎回すべてを完璧に整えるのは難しいもの。
そこで本記事では、ささげ業務の基本から、実践ポイント・外注の判断軸・効率化のコツまでを分かりやすく解説します。

ECのささげ業務って初めて聞いたんだけど、重要なの?

ささげ業務はECサイト運営において非常に重要な作業です!しっかり覚えておいてくださいね!
目次
ECサイトのささげ業務とは?撮影・採寸・原稿の頭文字をとった総称

「ささげ業務」とは、撮影・採寸・原稿という3つの作業の頭文字をとり、総称したEC業界の言葉です。
「撮る・測る・書く」といった、商品をオンラインで販売するために欠かせない情報を整える作業といえばイメージしやすいかもしれません。
たとえば、撮影では商品の写真を撮り、サイズ感や素材感を視覚で伝えます。
採寸では、肩幅や着丈といった詳細なサイズを数値で提示し、顧客がサイズ感を判断できるようにします。
原稿では、商品の魅力や特徴、使い方のポイントなどを説明文として言語化。検索にも引っかかりやすくなるよう意識して書かれます。
ちなみに、「ささげ」という言葉はアパレルECを中心に広がった用語ですが、今では雑貨やコスメ、家電など多くのジャンルでも当たり前のように使われています。
それだけ“売れるページづくり”には欠かせない重要な仕事とも言えます。
なんとなく商品登録の延長に見えるかもしれませんが、実は売上や返品率にも大きく関わる、ECにおける根幹業務のひとつ。
それ以外のECサイト業務に興味がある方は、こちらの「ECサイト運営とは?必要スキルや仕事内容を解説」の記事も合わせてご覧ください。
次の章からは、それぞれの業務内容について、実務ベースで詳しく見ていきましょう。
他にもECサイトの運営
ECサイトのささげ業務の内容と実践ポイント

ECに必要な「ささげ業務」の中身を、なんとなく“写真撮る・サイズ測る・説明文を書く”とざっくり捉えていないでしょうか。
もちろんその認識は間違っていませんが、実際の現場では「どう撮るか」「どこまで測るか」「どんな言葉で伝えるか」といった細部の判断が、売上や返品率に直結します。
この章では、ささげ業務を構成する3つの作業である撮影・採寸・原稿について、EC運営者として押さえておきたい基本と、実務で使えるポイントをご紹介します。
撮影|商品の魅力を伝えるための写真とは
商品写真は、顧客にとって最初の接点。
たとえ価格や機能がよくても、写真がイマイチだと「なんとなく不安」で離脱されてしまいます。
撮影では、主に以下のような工夫が求められます。
- ・正面・背面・横・斜めなど、複数角度からの撮影で全体像を伝える
- ・ディテールや素材感が伝わる寄りカットを用意する
- ・白背景だけでなく、使用シーンが想像できる写真(モデル着用・使用例)を入れる
- ・ライティングで色味や質感を正しく再現する
また、ネットで買う顧客は「実物と色が違った」「サイズ感が想像と違った」といった理由で返品することも。写真の色味調整(いわゆる“色合わせ”)や、背景の統一、画像サイズのルールなども意識しておくと、クレーム防止にもつながります。
静止画と動画、どう使い分ける?
最近では、静止画だけでなく動画を使うECサイトも増えてきました。
特にアパレル・雑貨・食品といった商材では、動きや使用感、質感の伝わり方が購入判断を左右することもあります。
たとえばアパレルなら「着たときの揺れ感」や「着脱のしやすさ」、雑貨であれば「手に持ったときのサイズ感」や「使い方のイメージ」。食品なら「とろみ」「食感」「湯気」など、写真では伝わりにくい情報が動画なら一目で伝わります。
短い動画でも、実際に使う・食べる・着る姿が想像できれば、購入を後押しする力は十分。すべての商品で導入する必要はありませんが、主力アイテムや差別化したい商品から試してみる価値はあります。
レタッチ・色合わせで失敗しないポイント
商品画像の色味や明るさが実物と違うと、顧客にとっては「想像と違った」という落差になりがち。
そこで重要になるのが、撮影後のレタッチ作業です。
- ・実物に近い色味に補正する
- ・不要な影やホコリを取り除く
- ・背景を白に統一する(モールやプラットフォームのルールに準拠)
こうした処理によって、写真全体のクオリティが上がるだけでなく、サイト全体の統一感も保たれます。商品ページの“見た目の安心感”は、意外と侮れません。
採寸|返品を防ぐサイズ情報の整え方
「サイズが合わなかったので返品したい」。ECでありがちな問い合わせですが、これは採寸情報の出し方次第で大きく減らすことができます。
採寸は、ただメジャーを当てて数字を測るだけの作業ではありません。顧客が“自分に合いそうか”をイメージできるよう、「どの部位をどう測ったのか」まで伝える設計力が求められます。
特にアパレルなら、肩幅・身幅・袖丈・着丈といった基本の項目はもちろん、伸縮性や裏地の有無、素材の厚みなどもサイズ感に影響するポイント。
雑貨やインテリアなら、使用時と収納時のサイズの違いや、持ったときの印象も大切です。
また、商品によって採寸方法が微妙に異なると、顧客が商品のサイズを比較しにくくなってしまいます。そのため、表記ルールの統一や、サイズ表に注釈をつけるといった工夫が重要です。
返品率を下げるという意味でも、採寸は“地味だけど効く”業務のひとつ。
業務効率ばかりを追わず、丁寧に数値を測ることが、信頼性のある商品ページづくりにつながります。
原稿|検索と購入を促す商品説明の書き方
商品説明文は、顧客の「これ欲しいかも」を「よし、買おう」に変える最後のひと押し。
一方で、ただのスペック列挙や定型文では、読み飛ばされることもしばしばです。
まず意識したいのは、「誰に・何を・どう伝えるか」を明確にすること。たとえばアパレルなら、「オン・オフ兼用で着られる服を探しているビジネスマン」なのか、「週末にラフに過ごしたい20代男性」なのかで、刺さる言葉はまったく変わってきます。
そして、商品の特徴を「どう良いのか」に変換して書くこともポイントです。
- ・「シンプルなデザイン」ではなく「一枚で着ても、重ね着してもサマになる万能デザイン」
- ・「軽量素材」ではなく「出張や移動でもストレスを感じない軽さ」
といった機能や形状の紹介にとどまらず、“使う人にとってどう便利か”を添えるだけで、購入意欲をぐっと引き上げられます。
さらに、検索流入を意識するなら、顧客が検索しそうなキーワードもさりげなく盛り込みましょう。
「黒 パンツ メンズ 細身」「Tシャツ 無地 大きめ」などの複合キーワードや、「シワになりにくい」「洗濯機OK」「オールシーズン対応」など、使用シーンに直結する言葉が効果的です。
ただし、SEOばかりを意識してキーワードを詰め込むと、読みにくさや違和感の原因になります。説明文はあくまで“読む相手の視点”に立ち、自然で説得力ある文章を意識しましょう。
商品説明の書き方については、こちらの「売れる商品説明の書き方とは?魅力を伝えるコツ6つ」の記事も合わせて参考にしてみてください。
ささげ業務を内製する?外注する?判断ポイントと委託先を解説

ささげ業務は、すべてを自社で完結させることもできますし、部分的または全面的に外部へ委託することも可能です。
「どこまで自社でやるべきか?」「どこからプロに任せたほうがよいか?」といった判断も、業務量・スキル・ブランド方針によって異なります。
ここでは、それぞれのメリット・デメリットや委託先の特徴、そして現場でよくある“分担のコツ”を整理します。
自社対応のメリット・デメリット
内製の最大のメリットは、コストと表現の自由度のコントロールが効くことです。
特にブランドイメージに強いこだわりがある場合、自社で撮影や原稿まで手がけることで、細かなニュアンスも表現できます。
一方で、すべての商品に対してささげを行うには、社内のリソースと時間を相当割く必要があるのが現実。
スタッフのスキル差によってクオリティにばらつきが出たり、繁忙期に対応が回らなくなったりと、長期的には負担が蓄積しがちです。
「低コストだから内製」という考え方だけでは立ち行かなくなるフェーズも出てくるため、“運用負荷と費用対効果のバランス”で判断するのが現実的です。
外注の選択肢と費用相場
「代行は高そう」と感じる方も多いかもしれませんが、実際には依頼先によって価格帯も内容も大きく異なります。
ここでは主な外注先3タイプについて簡単に整理します。
ささげ専門の代行会社に依頼する場合
撮影・採寸・原稿までをワンストップで委託できるのが大きな特徴。
スピード・品質・業務量のバランスをとる必要がある事業者に人気です。
- ・対応範囲:撮影(モデル含む)/採寸/原稿作成/画像加工など
- ・得意ジャンル:アパレル、雑貨、コスメなどビジュアル要素の強い商材が多め
- ・納期感:商品到着後、通常3〜7営業日
- ・相場:1SKUあたり1,500〜3,000円前後(点数や内容により変動)
実績のある会社なら、フォーマット提案やディレクションも含めて任せられる安心感があります。
物流サービス会社にささげ業務を依頼する場合
物流サービスの会社に撮影や採寸作業といったささげ業務を、入荷〜出荷のオペレーションと一体化して代行依頼をするケースです。
保管・ピッキング・出荷といった倉庫業務の中に、撮影ブースや採寸ラインを組み込むイメージになります。
- ・メリット:オペレーション効率化/転送・再梱包の手間が減る
- ・デメリット:表現や演出の自由度はやや制限される場合も
- ・向いているケース:SKU数が多く、安定供給型の商材を扱うショップ
- ・相場:物流倉庫会社によって変動
とくに「回転率を重視したい」事業者には、撮影の自動化やフローを一括管理が可能になるサービスがおすすめです。
フリーランスに依頼する場合
撮影だけ、原稿だけといったピンポイントの対応や、ブランド寄りの表現を重視したい時に適しています。
- ・対応範囲:内容によりけり(撮影のみ/コピーのみ等)
- ・メリット:柔軟な表現、ブランドらしさを反映しやすい
- ・デメリット:進行管理の難易度が上がる/品質のばらつきリスクあり
- ・相場:カメラマン1日2〜5万円、ライター1案件3,000〜1万円前後
単発でのコストを抑えたい時や、少量で丁寧なアウトプットを目指したい時に有効です。
部分外注のおすすめパターン
すべてを外注するのではなく、社内でできる工程は行い、負荷の大きい部分だけ外注するというハイブリッド運用もおすすめです。
たとえば以下のような組み合わせがよく見られます
社内対応 | 外注対応 | 向いているケース |
---|---|---|
原稿作成 | 撮影+採寸 | 世界観は維持しつつ、手間の大きい撮影を任せたいとき |
採寸 | 撮影+原稿 | 商品の情報は社内でしっかり確認しつつ、ビジュアルや説明をプロに任せたいとき |
撮影 | 採寸+原稿 | 独自の写真テイストを維持しつつ、他は外注して工数を削減したいとき |
自社の強み・弱みを見極めながら、“部分外注”をうまく取り入れていくことが、現実的な運用継続につながります。
現場で実践したい!ささげ業務を効率化するテクニック

商品数が増えれば増えるほど、ささげ業務は手間も時間もかかるもの。
特に繁忙期や新商品ラッシュの時期は「終わりの見えない地味な作業」に、つい後回しになることも多いのではないでしょうか。
ここでは、すぐ現場で取り入れられる効率化の工夫と、作業負担を軽くする便利ツールをご紹介します。
撮影・採寸を効率化する現場テクニック
ささげ業務の中でも特に時間と体力を消耗するのが、撮影と採寸。
手順を少し工夫するだけでも、現場の負担は大きく変わります。以下、今日から実践できる効率化アイデアを紹介します。
撮影の工数を減らすコツ
まずおすすめなのが、似たカテゴリをまとめて撮影する「ロット撮影」。
トップスだけで20型あるなら、同じカット順(例:ハンガー→トルソー→平置き)で連続撮影することで、撮影準備や片付けの手間を一括で済ませられます。
また、機材やライティングのセッティングを固定化しておくのも時短には効果的です。「白背景+自然光」など一定のルールを設ければ、都度調整が不要になり、作業効率と写真の統一感もアップします。
採寸・原稿を仕組み化する
採寸業務では、採寸ルール表や作業マニュアルの整備が不可欠。
たとえばアパレルなら、「肩幅・身幅・袖丈・着丈」など測定ポイントを明確にし、表記もテンプレート化しておくとスピードと正確性が両立します。
原稿については、テンプレートベースで微調整する運用が有効です。「素材」「特徴」「おすすめの使い方」「注意点」といった骨組みをテンプレ化し、ブランドらしさは語尾やトーンで調整すれば、執筆の負荷が軽くなります。
撮影と採寸を並行作業にする
SKU数が多くなると、1SKUを複数人で同時進行するチーム体制が効果的です。
たとえば、Aさんが撮影している間に、Bさんが採寸や素材表記の確認を行う流れ。この横で進めるやり方は、倉庫での一括リプレース撮影やシーズン立ち上げ時の大量処理に特に向いています。
事前に役割分担と作業の流れを共有しておくことで、滞りなくスピーディに進行できます。
スマホやモバイル向けの画像・テキスト設定をする
ささげ業務の効率化とは、単に作業時間を短縮することだけではありません。「最初から売れる形で作る」ことも、後から手直しを減らすという意味で、大きな効率化につながります。
なかでも重要なのが、スマホ閲覧を前提とした画像設計とテキスト設計。
スマホでの閲覧割合は業種によっては7〜9割にも及ぶため、PCベースで整えた商品ページでは、画像が小さく読めない、テキストが詰まりすぎて読み飛ばされる…といった見落としが頻発します。
以下のようなポイントを押さえておけば、後から撮り直しや文章調整をする手間を減らすことが可能です。
- ・画像は「1カット=1情報」で構成(例:素材感/使用シーン/サイズ比較)
- ・画像にテキストを詰め込みすぎない
- ・文字サイズはスマホ基準(16px前後)を想定
- ・画像の比率はスクエア〜縦長がベター(画面内に納まりやすく、視認性が高い)
最初からスマホ目線で作ることで、再調整・再撮影・誤解による返品といったムダを防げます。これは立派な「ささげ業務の最適化」と言えるでしょう。
商品情報のミスを防ぐチェック体制
どんなに手際よく作業しても、スペックの誤記や画像の取り違いなど、ヒューマンエラーのリスクは常にあります。
だからこそ、チェック体制の構築が効率化と品質保持の両立に欠かせません。
まず基本は、Wチェック(ダブルチェック)体制の導入。1人目が登録作業、2人目が確認・修正を行う流れを確保すれば、初歩的なミスをかなり減らせます。
また、商品ジャンルごとにチェックリストを設けておくのも有効です。
たとえばアパレルなら「裏地表記あり?/伸縮性記載あり?/洗濯表示明記?」など、定型チェック項目をルール化しておくと、経験値に左右されにくくなります。
さらに、進行管理表(Googleスプレッドシートなど)で各工程のステータスを可視化することで、タスクの抜け漏れ防止にもつながります。
無料・有料の効率化ツール一覧
最後に、日々のささげ業務をサポートしてくれる便利なツール例をご紹介します。
有料/無料を問わず、状況や規模に応じて使い分けることで、作業負担がぐっと軽くなります。
ツール例 | 主な用途 | 特徴 |
---|---|---|
Googleスプレッドシート | 進行管理・チェックリスト | 無料・複数人でのリアルタイム共有が可能 |
Canva / Adobe Express | 簡易レタッチ・画像加工 | テンプレ活用でSNS用画像も素早く作成 |
Notion | 原稿テンプレ・作業フローの集約 | マニュアルや文面管理に便利 |
ChatGPTなどのAIツール | 商品説明の叩き台作成 | テンプレ+入力で時短に貢献 |
ツールを使いこなすことで、人力では追いつきにくい業務も一定水準で効率化できます。
ただし導入前には、「誰が使うか?」「どこまで自動化できるか?」を見極めておくことが重要です。
まとめ
ECサイトの「ささげ業務」とは、撮影・採寸・原稿の3つの工程を指し、ECサイトにおいて顧客に商品を正しく魅力的に伝えるための基盤となる業務です。
今回ご紹介したように、ただ作業をこなすだけではなく「どんな情報があれば、安心して買えるのか?」という視点を持つことで、商品ページの説得力は大きく変わります。
また、毎日の業務を回し続けるには、効率化や外注化の視点も欠かせません。
すべてを完璧にやろうとせず、ルール化・仕組み化・分担といった工夫を取り入れていくことが、結果的にブランドの価値や売上につながっていきます。
ささげ業務に「正解」はありませんが、現場に合った最適なかたちは必ず見つかるはずです。
今日からできる工夫から、まずはひとつずつ試してみましょう。
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ささげに関するよくある質問
「ささげ業務」とは、撮影・採寸・原稿という3つの作業の頭文字をとり、総称したEC業界の言葉を指します。