ネットショップを運営していると、顧客が商品を購入した際に領収証の発行をお願いされるケースもしばしばあると思います。
そもそもネットショップでも領収書を発行しなければならないのでしょうか。
この記事では、ネットショップの領収証の発行義務の有無や領収書に記載すべき内容、決済方法別の領収書発行時の注意点などについて詳しく説明していきます。
ネットショップでも領収書をお願いすれば発行してくれるイメージがあるけど、お店側は断ってもいいものなのかな?
実はネットショップ側に領収書の発行義務はありません。
なぜなのかをこれから詳しく説明していきますね。
目次
そもそも領収書とは?定義や役割を解説
ネットショップでの領収書の扱いを確認する前に、そもそも「領収書」とは何かの定義を確認しておきましょう。
領収書とは、商品やサービスを提供する事業者が、対価として現金を受け取ったことを証明する書類です。
商品やサービスの引き渡しに伴い対価を確実に受け取ったことを、支払った顧客にも示すことができます。
領収書ではなく「領収証」という言葉が使われることがありますが、両者に大きな違いはありません。
領収証は公的機関などが発行する書類の名称として使われることが多いため、一般的には「領収書」の名称が使われます。
領収書とレシートは何が違うの?
領収書と同じように、商品やサービスの対価を受領したことを証明するものにレシートがあります。
この二つは何が違うのでしょうか。
両者の違いは「詳細さ」と「宛て先」の有無です。
レシートには、一つ一つの商品名やサービス名、単価など取引の詳細が事細かに印字されますが、領収書には商品に関して「何の費用として」「いくら支払われた」という情報のみ書かれていることが多いです。
また領収書には必ず記載される宛名(支払い主)がレシートには記載されていません。
両者にはこのような違いがありますが、実はレシートも証拠書類としては有効です。
日本語では、「レシート」「領収書」という言葉も、英語ではどちらも「Receipt」ということからも、記載内容に多少の違いはあるものの、領収書もレシートも取引の証拠書類としては変わりないことがわかります。
ネットショップからの領収書は必要?発行義務はある?
実店舗ではお願いすれば領収書を発行してもらえますが、ネットショップ側も求められたら必ず発行しなければいけないのでしょうか。
結論からお伝えすると、ネットショップは必ず領収書を発行しなければいけないという義務はありません。
領収書の発行は、原則として「対価の支払いが行われると同時」に行われるものです。
ですがネットショップでは、コンビニ払いや後払い、代引き決済などの決済方法があり、顧客側の商品受け取りとお店側への支払いタイミングが基本ずれています。
また、ネットショップで決済代行会社を利用している場合、ショップ側が顧客から直接的に代金を受け取るわけではないため、法的に領収書の発行義務があるのは決済業者です。
このことから、決済方法や支払いタイミングによって異なるものの、基本的にネットショップ側は領収書の発行義務を負っていないといえます。
ですが多くの顧客は「領収書はお店側が必ず発行してくれるもの」と思っているため、実際には次のような事柄が生じることがあります。
- ・顧客側の事情で、どうしても店名が入った領収書の発行が必要
- ・領収書の発行を拒否すると「サービスが悪い」と良くない印象を持たれてリピートしてもらえなくなる
このように、原則として領収書の発行義務はないものの、顧客に気持ちよく買い物をしてもらい次回購入に結び付けるためにも、領収書発行に対応したほうが良いケースもあります。
領収書の代わりになる書類とは?
顧客へ領収書を発行したほうがいい場合もありますが、すべてに対応してしまうと負担も大きくなってしまいます。
実は、決済方法ごとにネットショップの領収書の代わりになる書類が存在します。
顧客側にまずは下記の書類を案内することで、発行が不要となることも多いでしょう。
下記は決済方法ごとに領収書の代わりになる書類の一覧です。
決済方法 | 領収書の代わりになる書類 |
クレジットカード | クレジットカード会社発行の利用明細書 |
代金引換 | 配送業者発行の代引金額領収書 |
コンビニ払い | コンビニ発行の領収書(レシート) |
銀行振り込み | 通帳、払込明細書 |
後払い決済 | 後払い事業者発行の払込受領書 |
上記の書類が領収書の代わりにできると知らない顧客も多いと思いますので、まずは伝えてみましょう。
ネットショップの領収書による二重発行に注意
先ほど、顧客側に満足してもらうためにも、状況に応じてネットショップ側で領収書を発行してたほうがいい場合もあるとお伝えしました。
ですが注意しなければならないのが、「二重発行」です。
領収書は支払いを証明する書類のため、本来は1回の購入に対して1枚だけのはずですが、たとえばネットショップと決済代行会社がそれぞれ発行してしまうと、二重発行になってしまいます。
二重発行は、顧客側の領収書の不正使用(経費の水増しなど)にもつながる恐れがあることから禁止されています。
もし、領収書の不正使用があった場合などには、顧客の不正行為に加担するつもりがなくても、ネットショップ側も罪に問われる可能性がありますので注意が必要です。
二重発行を防ぐ対策については、この後の支払方法別の領収書発行のポイントで詳しく説明していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
ネットショップの領収書に記載すべき内容
では、実際にネットショップで領収書を発行することになったとしたら、どのような内容を書けば良いのでしょうか。
ここでは一般的に、領収書に記載すべき要素を紹介します。
日付
対価として金銭を受領した日を示す「日付」は重要な要素です。
領収書には年月日(和暦と西暦いずれも可)を正確に記載します。
ネットショップの場合、代金を受領してから商品を発送するパターン、入金を確認してから商品を発送するパターンなど、さまざまな引き渡しのケースがあるかと思います。
いずれの場合でも、必ず金銭を受領した年月日を記載するようにしましょう。
宛名
宛名とは、顧客の名前や名称のことです。不正防止のため、宛名は領収書を発行する側が記載することになっています。
領収書の宛名では「上様」が使われることがありますが、少額でお互いに同意がない限り、できるだけ使用を避けるようにしましょう。
上様と記載すると誰が金銭を支払ったのかわからなくなり、領収書としての信頼性が落ちてしまいます。
また、宛名を記載する際は正式名称で記載するようにしましょう。
相手先が会社の場合も(株)などの略称は使用せず、「株式会社」としっかり記載します。
金額
領収書には、受領した全額の税込み価格を書きます。
領収書の改ざんを防ぐ意味で3桁ごとにカンマを打ち、数字の頭には「¥」、数字の終わりには「※(または「-」)」を付けることを徹底しましょう。(※数字の頭に「金」を使ったときは数字の終わりに「也」と記載します)
税率ごとの消費税額や税抜価格を記載するときは、領収書の内訳の部分に記載します。
但し書き
但し書きは、商品の内容を示す項目で、「但し◯◯として」と記載するのが一般的です。
◯◯の部分には「書籍代として」など商品の内容がイメージできるように、詳細を書くようにしましょう。
さまざまな商品を同時に購入した場合、書けるスペースに限りがあるので「事務用品」「調理品」などカテゴリとしてまとめて書きます。
但し書きだけで表現が難しい場合は、納品書も添付するとより親切です。
発行者
誰がこの領収書を発行したかのかがわかるように、領収書を発行した側、つまりネットショップの情報の記載も必須です。
発行者としてネットショップの名前と住所を記載しましょう。
印鑑は押さなくても税務上は問題ない
発行者を書くスペースに、お店の印鑑が押してあることもありますよね。
慣習として、領収書には印鑑が押されることが多いです。
ですが税務上は印鑑の押印は必須ではないため、印鑑が押されていなくても、受領した顧客は正式な書類として経費精算や経費計上ができます。
一方で、領収書への押印には領収書の偽造防止という意味もあります。
発行者側が発行した本物の領収書であることを証明するためにも、印鑑は押印しておいたほうが無難でしょう。
【決済方法別】ネットショップが領収書を発行する際のポイント
ネットショップが領収書を発行する場合、書く内容やポイントが決済方法で多少異なります。
二重発行の対策も、決済方法ごとに異なりますのであわせてご紹介します。
クレジットカード決済
クレジットカード決済の場合、クレジットカード会社の利用明細書が領収書として代用できますが、顧客から領収書の発行を求められることもあります。
ネットショップ側で領収書を発行する場合は、但し書きにクレジットカードで払われたことを明記するようにしましょう。
クレジットカード払いであることが明記されることで、二重発行を回避できます。
また、後ほど詳しく説明しますが、代金が5万円以上になると領収書へ収入印紙を貼付しなければならないルールがあります。
ですが、ネットショップの場合は領収書の発行が義務となっていないことからも、クレジットカード払いでのネットショップの領収書へは、収入印紙の貼付が不要です。
代引き決済
代金引換決済の場合、配送業者の代引金額領収書が領収書として代用できます。
顧客からネットショップの領収書を発行してほしいと依頼されたときは、まずは代引金額領収書を代用できる旨を伝えましょう。
それでも発行が必要な場合は、顧客から代引金額領収書を送ってもらいます。
ネットショップ側は、配送業者側が発行した代引金額領収書と引き換えにネットショップの領収書を発行することで、領収書の二重発行を防げます。
適格請求書として領収書を交付する場合
2023年10月から開始されたインボイス制度に伴い、適格請求書発行事業者は課税事業者から求められた場合は、適格請求書を交付する必要があります。
必要事項が記載されていれば書類の種類を問わず適格請求書とすることができます。
そのため、領収書を適格請求書として交付することも可能です。
領収書を適格請求書とする場合は、領収書の二重発行には当たらないと考えられます。
銀行振り込み
銀行振り込みについては、振込明細書や通帳の明細が領収書として代用できます。
まずは振込明細書などで代用できる旨を顧客に伝えるのがおすすめです。
領収書発行がどうしても必要になった場合は、二重発行とならないよう、領収書の但し書きに、銀行振り込みの旨と、銀行振り込みのあった年月日を明記します。
ネットショップが領収書を発行する際の注意点
最後に、ネットショップ側が領収書を発行することになった際の3つの注意点について紹介します。ネットショップの領収書を正しく取り扱うため、領収書発行の前によく確認しておきましょう。
5万円以上の紙の領収書は収入印紙が必要
一般的な領収書は、印紙税の対象となる第17号文書「売上代金に係る金銭または有価証券の受取書」というものに該当します。
そのため、受取金額(領収書に記載の金額)が5万円以上のときは、領収書の発行者が領収書に収入印紙を貼付して、印紙税を納めなくてはなりません。
領収書に貼付する収入印紙の額は、以下の表のように領収書に記載された受取金額で異なります。
ただし、印紙税は「書類」を対象にしたもののため、電子取引でPDFで発行する領収書には必要ありません。
また、先述したようにクレジットカード払いの領収書にも不要です。
【受取代金に係る金銭または有価証券の受取書の印紙税額(一部抜粋)】
領収書記載の受取金額 | 印紙税額 |
5万円未満 | 非課税 |
5万円以上100万円以下 | 200円 |
100万円超200万円以下 | 400円 |
200万円超300万円以下 | 600円 |
300万円超500万円以下 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 2,000円 |
参考:「No.7141 印紙税額の一覧表(その2)第5号文書から第20号文書まで」(国税庁)をもとに作成
ポイント・クーポンの分は差し引く
領収書に記載する金額は、顧客が購入した商品やサービスの価格ではありません。
あくまでも、ネットショップ側が顧客から受領した対価の額になります。
つまり顧客がポイントやクーポンを使用した場合は、最終的に支払われた金額を記載するということです。
1万円の商品で2,000ポイント使用し、実際は8,000円が支払われたとしたら、領収書にはポイント分を差し引いた8,000円と記載します。
もし全額ポイントで支払いが行われた場合はそもそも料金を受け取っていないため、領収書を発行しないという対応を取ることもできます。
どうしても領収書が必要だと依頼された場合は、全額ポイントで支払われた旨を明記して領収書を発行しましょう。
領収書の再発行は原則断る
紛失などで顧客から領収書の再発行を求められることもあります。
しかしショップ側では、本当に紛失したのか、不正利用のために再発行を要求しているのか判断できません。
繰り返しになりますが、安易に再発行に応じてしまうとネットショップ側も罪に問われる可能性もあります。
領収書の再発行義務もないため、あらかじめ領収書の再発行は行っていない旨を伝えつつ、原則は再発行を断る方向で案内することをおすすめします。
「不正利用を防ぐため」など理由を伝えれば、大抵の顧客は理解してくれるでしょう。
どうしても再発行が必要ということであれば、領収書ではなく支払証明書を発行するという手段もあります。
支払証明書は、基本的に領収証の発行がない対象に対し支払いを証明する書類です。
カラーミーショップならネットショップの領収書の自動発行が可能
手作業で領収書の発行に対応しているとミスが起きたり繁忙期には手が回らなかったりなど、ネットショップ側の負担が増えてしまいます。
そんなときにおすすめなのが、カラーミーショップに追加できるアプリ「インボイスくだサイ for カラーミーショップ」です。
このアプリでは購入者側がセルフで領収書をダウンロードできるので、ネットショップ側の領収書に関する作業がほとんど無くなり、手動によるミスも防げます。
また、2023年10月からスタートしたインボイス制度の適格請求書にも対応しているので安心です。
毎月1,100円~利用できるので、小規模なネットショップにもおすすめです。
利用お試し期間もあるので、気になる方はぜひ「インボイスくだサイ for カラーミーショップ」を使ってみてくださいね。
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まとめ
ネットショップの場合、決済業者に領収書の発行義務があること、領収書の代用となる書類があることから、基本的に領収書を発行する義務はありません。
ですが、顧客から依頼されて領収書の発行するケースも多いでしょう。
ネットショップ側で領収書を発行する場合、二重発行とならないように必要事項を明記して領収書を発行するようにしましょう。
また、領収書の発行にその都度対応するのは大きな負担になります。
領収書発行の依頼が頻繁にある場合は、領収書発行の効率化についても考えると良いでしょう。
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