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「待つ時間をアトラクションに変える!」お客さまを離さない工夫とは?【さこっち先生のネットショップ診断(第5回)】

この記事は…
さこっち先生こと、ECコンサルタントの酒匂 雄二さんがショップオーナーさまのお悩みを聞いて、ネットショップの改善点やサイト最適化についてアドバイスをする連載です。
今回は、愛媛県内子町で農薬・化学肥料を使わずに栽培した生ブルーベリーや手作りのジャム、ジュースを販売している「髙山ガーデン」さまのからのご相談にお答えいただきました。

商品のイメージが実際のものと乖離しているときは?

最初のご質問は「お客さまが商品にもっているイメージが、実際のものと乖離しているときはどうすればよいか?」です。

ブルーベリーは「目にいい」というイメージがあり、そこから「目がよくなる」と連想されるお客さまがいらっしゃいます。「よくなる! 治る!」と表記はしていませんが、そう思って購入される方がいるかもしれません。さまざまな研究論文から機能改善の報告があるのは確かですし、実体験としても予防の効果は感じるのですが、ブルーベリーはあくまで食品です。薬のように治るものではないと承知いただいた上で購入してもらうには、どうしたらよいでしょうか?

とのこと。実物を手にして買い物をすることができないネットショップにおいて、「お客さまとショップのすれ違い」は永遠のテーマと言えます。商品を送ってから「思っていたものと違う」「思っていたより小さい」と言った意見やレビューをいただいたという話は私もよく見聞きしています。

『ブルーベリーは「目にいい」というイメージがあり、そこから「目がよくなる」と連想されるお客さまがいらっしゃいます。』というご相談は、少し違う角度からのすれ違いではありますが、こちらも実によくあるケースだと感じます。「よくなる! 治る!」と表記して販売することは薬機法に抵触しますし、高山ガーデンさんではそのような記載をしていないにも関わらず、他社の謳い文句などを誤解して購入されるお客さまがいるのかもしれません。

これは、Google検索品質評価ガイドライン(※)の「YMYL」にあたるトピックと考えられます。
検索品質評価ガイドライン…Googleの検索結果を評価する際に指針とされるマニュアル。

YMYLは「Your Money or Your Life」の略で、ユーザーの財産・お金や、健康・生命に影響を与える可能性があるジャンルを指す用語です。コンテンツの信頼性や正確性を担保するために、サイト運営者の情報、実績、評判など厳しい評価基準が適用されます。

まずは、YMYLを意識した「ブルーベリーに関する正しい情報を発信するコンテンツ」の制作をしてみてはどうでしょうか。「さまざまな研究論文から機能改善の報告があるのは確か」ということですので、一定の効果効能の根拠は示すことができそうです。

読み物として作成するなら、2021年11月21日に放送されたテレビ朝日系「ポツンと一軒家」に取り上げられた際のアナウンスページのように「フリーページ」に記載するのもよいですし、ブルーベリーの関連商品を紐付ける場合は「グループ」を作成し、「ブルーベリーに機能改善の効果があることは研究で報告されているが、直ちに目がよくなるものではない」ということをフリースペースに記載し、その研究成果や論文があるサイトにリンクを貼ることをおすすめします。厚生労働省、農林水産省など政府機関のページにそうした言及があればリンクが貼れますし、大学や研究機関、病院などのサイトでもよいでしょう。リンクを貼ることでエビデンスに基づいた情報を伝えられるだけでなく、YMYLと並んで検索品質で大切にされている「E-A-T」を担保することができます。

E-A-Tは、Expertise(専門性)、Authoritativeness(権威性)、Trustworthiness(信頼性)という3つの概念の略です。医療健康系の情報を掲載するサイトでは特に重要であり、信頼度が高いと思われるサイトにリンクを貼ることは、SEO面でもサイテーション(言及・参照)効果があると言われています。

実際に、私がお手伝いしているネットショップでもこの施策に取り組んでいます。因果か相関かは説明すると長くなるので割愛しますが、検索順位が上がり、コンテンツの増加とともに前年よりアクセス数が大きく増えています。以下がそのショップのブログ領域に限定した検索表示回数とクリック数の推移になります。

2019年8月21日と約1年後のクリック数を比較すると、350倍超になっています。
2019年は年に数回の更新頻度でしたが、2020年は「マスクの洗い方」や「外出から戻った際の衣服の手入れ方法」といったコロナ禍に関係する内容を主軸に発信頻度を重ねることで、大きくアクセス数を伸ばしました。
また、「コロナ禍における対ウイルスの洗濯方法」という記事では、洗剤やつけ置き時間によるウイルスの残存率などの文献にリンクを貼りました。これは、先述のサイテーションを踏襲した手法を取り入れた事例ですね。

高山ガーデンさんはブルーベリー農家という専門家ですので、その立場からの見解、公的機関などによる確証がある研究結果、検査データを元に、フリーページなどで解説コンテンツを作るのがおすすめです。
その際、高山ガーデンで栽培したブルーベリーの成分検査表を添え、「この栄養素が含まれていることから、一定の健康効果が見込めるのではないか」という表現を入れるとよいのではないかと思います。

ブランドイメージを構築する上で参考になるショップは?

続いてのご質問はこちらです。

ネットショップの統一感、ブランドイメージを構築する上で、気をつけることや参考になるショップはありますか?

これも、ネットショップのセミナーや講座をしていると非常に多くいただく質問です。
しかし、「参考になるショップ」の定義というのが、売上が高い、デザインがきれい、最新の技術を活かしている、実店舗連携が進んでいるなど、何を目指しているかによって異なるため、いつも答えあぐねるのが正直なところです。
私の友人がTwitterで「おすすめのお店はありますか?と聞いているのは、おいしいお店を知りたいのであって、仲がいいお店を聞いているわけではないんです」とつぶやいていましたが、いただいたご質問にも通じるものがあると感じました。何がおすすめかは、人によって解釈や価値観が異なるということですね。定義を「ネットショップの統一感、ブランドイメージを構築する上で参考になるもの」としても、その特徴は実にさまざまです。

一例ですが、名物店長の似顔絵アイコンやイラストがサイトに散りばめられ、発送ダンボールにも似顔絵テープが使われているショップがあります。ネットショップから梱包のテープまで店長の似顔絵を使うことで、統一感が出てブランドイメージの構築につながっていますね。さらに、ネットショップではコテコテの関西弁が駆使されており、受注・出荷メールは「まいどおおきに!」から始まります。そういったことも、お店の世界観を大切にしていると言えます。

また、これはWEB制作会社に勤める友人のエピソードですが、ネットショップのリニューアルの際、ショップオーナーさまに「好きな色は?」と質問し、お店の事務所に泊まり込んで好きな色を取り入れたネットショップに三日三晩でリニューアルしたそうです。もちろん、それまでにコミュニケーションを重ね、何を大切にしているか、どういうお店なのかというヒアリングも行ったと思いますが、最後に統一感を出すために聞いた質問が色だったのでしょう。ブランドイメージの構築には、商品を連想する色や好きなを効果的に使うことが大切です。

高山ガーデンさんのホームページは異なる複数の緑を基調として、文字の差し色としてブルーベリーを連想させる紫が使われています。その他にもブラウンゴールドの文字色や、左下にはいちごやりんごをイメージする赤系のメニューがあります。複数のフォントを使われているところも少し気になります。

紫はかなり主張が強い色ですので、少しトーンを落としたパステル調の紫や、果皮の色に近い紺青をベースカラーを試されるのはいかがでしょうか?

ブルーベリーは大手サプリメントメーカーも参入している商材です。ブルーベリーを看板商品とする企業もありますので、そういったネットショップを見るのはもちろん、お試しセットなどを購入してみて梱包資材や同梱物などを見てみるのも非常に参考になると思います。その上で、ご自身でも買いたいと感じたショップの見せ方、フォント、色、写真などを思い返し、なぜそれがよいと思ったのか?を掘り下げていくと、目指すべき方向性が自ずと見えてくるでしょう。
それと同時に、トップページの改修にも取り組んでいただければと思います。最もアクセスが多いと思われるホームページのトップページですが、スマートフォンからアクセスしてもパソコン版が表示されています。このままではスマートフォンでの操作閲覧性に問題がありますので、改修に着手されることをおすすめします。

興味をもっていただいたお客さまを離さないようにするには?

最後のご質問はこちらです。

テレビに取り上げられたことで、アクセス数や注文数が増えました。ありがたいことですが、お問い合わせ数に対して生産量が追いついていません。今後、時間が経てば経つほど興味が薄れて、購買意欲も減退していくと思います。今の事態が落ち着き再販できるようになるまで、興味をもっていただいたお客さまを離さないようにするには、どうしたらいいでしょうか?

私がお手伝いしているネットショップもテレビに登場することが増えていますので、この質問には当事者意識をもってお答えできるかと思います。

テレビを見た視聴者・お客さまは、番組名やショップ名、テロップのなかのキーワードなどで検索してネットショップに辿り着き、注文をしてくれます。この行動は、道すがら何気なく目に入ったお店に入ったりドライブスルーをする感覚に近く、お客さまの意識にショップが強く刻み込まれることは少ないと感じます。そのため、高山ガーデンさんがおっしゃる通り、商品の供給が間に合わない場合は再販までお客さまに待っていただく工夫が必要になります。

予約販売をする

放送の影響で生産が間に合わなかったあるショップでは、生産スケジュールから出荷できるおおよその数を算出し、以下のように一つの商品を在庫販売と予約販売に分けて登録することで対応していました。

登録パターンA:テレビで紹介されたブルーベリー 順次出荷:50個
登録パターンB:テレビで紹介されたブルーベリー 1月中旬出荷予定:50個
登録パターンC:テレビで紹介されたブルーベリー 2月上旬出荷予定:50個

※お届けまで期間が空く場合、カード決済の与信が取り消されることがありますので、ご契約のカード決済会社にお問い合わせください。

SKUを分けると、オンラインモールでは売上数ランキングやモール内の検索順位に大きく影響してしまいますが、そういったことを気にせず機会損失を防ぐことができるのは自社サイトの強みですね。

待つ時間をアトラクションに変える

商品到着までの待ち時間が長いと、キャンセルが生じかねません。その間の接客として、「待つ時間をアトラクションに変える」という方法があります。コロナ禍のある遊園地は入場制限で待ち時間が増え、行列中も会話を控える必要があったため、列にいる方々を対象にした抽選会を行って話題になりました。
こういったことは、ネットショップでも可能です。

発送や再販までの様子を伝えるニュースレター(メルマガ)を送る

原料を収穫した、搾汁した、加工した、など、工程ごとにニュースレターを送信しましょう。生産が順調であることが伝わりますし、「第2回の販売は予定通り○月ごろに開始予定です」といった目安を記載することで、安心感にもつながります。さらに、在庫がある商品を併せて紹介すれば、ショップの再訪率を上げることもできるでしょう。

InstagramなどSNSでの近況報告

SNSは写真や動画で訴求することができるので、より臨場感が伝わります。ショップからお客さまへの「もう少しお待ち下さい」と言ったメッセージを発信することで、人対人という心の通った接客ができますね。

ネットショップのトップページにお知らせを掲載する

生産に追われてネットショップの更新が滞りがちな期間にこそ、お知らせを更新してみてください。そうすることで、商品は売り切れていてもショップが動いていることが伝わります。現在の生産状況を掲載しておくのもおすすめです。

アフターフォローを大切にする

第1回で紹介したメルマガのステップ「はじめまして」「あらためまして」「そういえば」をご覧ください。

以下の図は、私が2019年からお手伝いしているショップのアクセス数のデータです。

コロナ禍でお取り寄せグルメの需要増加により、2020年は地上波のテレビ番組に10回ほど取り上げられました。コロナ特需を一過性のものにせず、テレビがきっかけで初めてご注文いただいたお客さまのアフターフォローに注力されたことで、2021年はさらに売上を伸ばしています。テレビに出た2020年より今年の方がアクセス数も増えていますね。

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おわりに

今回で本連載は最終回となりますが、2022年からはカラーミーショップの中の人たちと新たな取り組みが始まる予定です。そちらも、どうぞお楽しみに!

この記事が少しでもネットショップ運営のお役に立つことができれば幸いです。
それではまた、別のコンテンツでお会いしましょう!ありがとうございました。

この記事を書いた人
酒匂 雄二 (さこう ゆうじ)
株式会社ユウキノイン 代表取締役
D2CアパレルECの店長・生産管理・実店舗・卸売を統括。SNSを活用し、広告費をゼロにしながら自社店舗の売上を2年で400%に成長。セミナー講師、他社ECサイトの構築、企画・運営代行などを手掛けるように。ECサイト、コーポレートサイトのSEO、 コンテンツマーケティングやSNSの運用支援、社内のWEB担当者の育成、 クラウドファンディングによる資金調達の支援から売上計画の立案、戦略業務まで WEBを活用した総合的なコンサルティング業務を伴走型で支援。カラーミーカレッジの講師も務める。