音楽が好きな方であれば、楽譜を自身で作成することもあるでしょう。
自分に著作権があるオリジナルの曲や著作権の期限が切れた曲、楽譜の出版許可を得た既存の曲の楽譜であれば、個人でも販売することが可能です。
今回は、個人でも販売可能な楽譜についてや、楽譜をネットで販売する方法、ネット販売する際のおすすめサイト5選をご紹介するとともに、販売する際のコツや注意点について解説していきます。
趣味で作った楽譜を個人でネット販売することはできるのかな?
楽譜は個人でも紙はもちろん、データとしてダウンロード販売することができます。この記事では、個人で楽譜をネット販売する方法や著作権について説明します。
目次
個人でも楽譜を販売できる?販売可能な楽譜とは
楽譜と一言でいっても個人で販売できる楽譜という点では、下記の3種類に分けられます。
- ・自分で作曲したオリジナルの曲の楽譜(著作権を自分で保有している曲)
- ・著作権の保護期間が過ぎた曲の楽譜
- ・楽譜の出版許可を得た既存の曲の楽譜(著作権を他人が保有している曲)
自身が作ったオリジナルの曲であれば著作権は自身が保有しているため、自由に楽譜を販売することができます。
他人が作った曲で元々は著作権があった曲でも、著作権の保護期間が過ぎていれば、誰でも自由にその曲の楽譜販売ができます。
著作権の保護期間は、原則として曲などを創作した時点から著作者の死後70年までです。
また、他人が創作した曲でも、著作権の権利者に申請して販売許可を得て使用料を支払えば、楽譜を販売することができるのです。
既存曲の楽譜販売に必要な許可を得る方法・手順
上述の通り、販売する楽譜は3種類に分けられます。
自分の曲や著作権で保護されていない楽譜は簡単に販売できますが、他人に著作権がある既存の曲の楽譜はいくつか手続きが必要です。
そこではここからは、他の人が著作権を保有している既存曲の楽譜を販売する際の方法・手順について解説していきます。
楽曲の管理状況を確認する
他の人が著作権を保有している既存曲の楽譜を販売する際、まず日本音楽著作権協会(JASRAC)やNexToneといった著作権管理団体について理解する必要があります。
JASRACやNexToneは音楽の著作権を管理している団体で、管理している楽曲をデータベース化し、演奏や放送、ネット配信などで音楽を利用したい場合の著作権の窓口となっています。
既存曲の楽譜を販売する場合、まずはJASRACなどの著作権管理団体の作品検索データベースで、楽譜を販売したい曲の管理状況を確認しましょう。
データベースを検索することで、どの団体がその楽曲を管理しているのか、配信の許可がおりているかどうかなどのステータスがわかります。
配信の管理条件を満たしていない楽曲を利用すると、著作権侵害などのトラブル発生につながるため、十分に注意してチェックしましょう。
管理状況がわかったら権利者へ出版許可の申請をする
作品検索データベースの管理状況で、楽譜として販売できるかの確認が取れたら、次は権利者に出版許可の申請を行います。
JASRACに登録されている楽曲の場合、手続きの流れは下記の通りです。
- ① ログインIDを取得してオンライン申請または申請書をダウンロードして郵送
- ② JASRACより許諾番号の通知
- ③ 販売する楽譜に許諾番号を表示
- ④ JASRACから、権利関係に基づき算出された使用料の請求
- ⑤ 請求された使用料の支払い
もし、JASRACが管理していない楽曲や一部しか管理していない楽曲の場合はJASRACへの申請ではなく、権利者に直接出版許可の申請をする必要があります。
また、外国の曲の楽譜を販売する場合はJASRACに申請する前に、サブパブリッシャーと呼ばれる著作権を保有する外国の音楽出版者に連絡して利用の許諾を得るなど、国内の曲とは手続きが異なります。
JASRACに登録されている外国作品について、詳しくはこちらをご確認ください。
アレンジ(編曲)した曲の楽譜販売は別途許可が必要
既存曲をそのままではなく、アレンジ(編曲)した楽譜を販売する場合、JASRACでは管理していないため、別途権利者に許可を得る必要があります。
たとえば、楽譜通りに演奏したピアノ用の楽譜を販売する場合は、著作権に対する使用料を支払えば問題ありません。
ですが、独自の編曲や替え歌など、原曲に何かしら変化を加えた楽譜を販売する場合は、権利者に直接楽譜の販売が可能かどうか問い合わせる必要があります。
アレンジした曲の場合には、JASRACなどの著作権管理団体への申請では使用できないことに注意しましょう。
楽譜のネット販売は2パターン
ここまでは楽譜を販売する前に必要な手続きや下準備についてご説明しました。
では実際に楽譜を販売する場合、どのようなパターンがあるのでしょうか。
楽譜をネット販売する際には、下記の2パターンが挙げられます。
- ・紙の楽譜を販売する
- ・電子楽譜(楽譜データ)をダウンロード販売する
では、それぞれについて具体的に見ていきましょう。
【パターン1】紙の楽譜を販売する
まず挙げられるのが、楽譜をいわゆる紙に印刷してネット販売する方法です。
販売時に紙媒体の楽譜と明記し、購入されたら楽譜を印刷し、購入者宛に発送します。
大量に発注が来た場合などは、紙や印刷代などがかかるとともに、発送の手間がかかるのが大きなデメリットだといえます。
ただし書籍と同様、楽譜も電子データではなく昔ながらの紙がいいという人は一定数いるため、需要はあるでしょう。
【パターン2】電子楽譜(楽譜データ)をダウンロード販売する
次に、楽譜をデジタルデータの電子楽譜として楽譜専門の販売サイトやネットショップなどで販売する方法です。
実は電子楽譜には以下のようなメリットがあります。
- ・紙の楽譜のように劣化しない
- ・大量の楽譜を持ち運びできる
- ・印刷すれば紙の楽譜としても利用可能
- ・演奏現場で照明を落としてもタブレット型端末であれば楽譜が見やすい
上記のように、電子楽譜は利用者にとって多くのメリットがあるため、紙媒体での販売よりも需要が高く、個人でネット販売すると収入が得られる可能性が高いでしょう。
楽譜をデータでネット販売するメリット・デメリット
購入側にメリットの多い電子楽譜ですが、販売側にはどのようなメリットがあるのでしょうか。電子楽譜のメリットとデメリットを考えてみましょう。
メリット
楽譜を電子データとしてネット販売するメリットは、下記の通りです。
- ・楽譜の印刷や配送をする手間がない
- ・海外向けにも簡単に販売できる
- ・劣化せず、販売の際の保管スペースがいらない
- ・印刷すれば紙の楽譜としても販売できる
紙の楽譜であれば紙代や印刷代がかかりますし、印刷した楽譜を購入者へ送らなければなりませんが、電子楽譜のダウンロード販売ではそのような手間は一切かかりません。
また、インターネット上で購入とダウンロードが完了するので、海外向けにも販売できるのは大きな魅力の一つです。
紙の楽譜のように劣化せず、販売する際の保管スペースがいらないのもメリットといえるでしょう。
さらには、必要であれば、データを印刷すると紙の楽譜としても販売できる点もメリットです。
デメリット
楽譜を電子データとして販売することは上記のようにさまざまなメリットがありますが、もちろん下記のようなデメリットもあります。
- ・購入する人が限られる
- ・紙媒体に一定の支持層がいる
- ・セキュリティ面をしっかりしないと、データを複製される可能性がある
たとえば、高齢者のようにインターネットの使い方に慣れていないユーザーには、楽譜の電子データは購入されにくいでしょう。
ただし、現在ではインターネットは広く普及しており、高齢者でもその子どもが購入するケースがあるため、必ずしも購入する人が限定されるとはいえません。
また、書籍と同様、紙媒体の楽譜がいいという人が一定数は存在し、根強い支持層がいることもデメリットの一つとして挙げられます。
さらには、販売の際に万全のセキュリティ対策をとらないと、データを複製されるリスクがある点にも注意が必要です。
楽譜データをネットで販売する方法
どのような形で楽譜を販売するのか決めたら、次は実際にどの方法でネット販売するのかを考えます。
楽譜データをネットで販売する主な方法は、下記の3つです。
- ・楽譜専門の販売プラットフォームを利用する
- ・クラウドソーシングサイトで販売する
- ・自分のネットショップを作成して販売する
ここからは、それぞれの方法について具体的に説明します。
楽譜専門の販売プラットフォームを利用する
楽譜データを販売するには、楽譜専門の販売プラットフォーム(ECサイト・アプリ)を利用する方法があります。
楽譜専門の販売プラットフォームでは、著作権の権利者に使用許可を得たり、使用料を支払ったりするのを代行してくれます。
自身で著作権の権利者を調べ、必要項目を連絡して使用許可を得るのは負担であるため、その代行を引き受けてくれるのは大きなメリットでしょう。
楽譜が売れたときにかかる販売手数料は、楽譜の販売価格の30%前後となっています。
販売価格は自由に設定できますが、初心者の場合1,000円以下が相場です。
販売価格から手数料を差し引くとあまり利益がない場合もあり、いきなり大きく稼ぐことは難しいのでコツコツ続けることが大切でしょう。
クラウドソーシングサイトで販売する
楽譜の電子データの作成をクラウドソーシングサイトで受注販売することも可能です。
販売時には、手数料としておおよそ20%差し引かれます。
クラウドソーシングサイトの場合、依頼された曲を楽譜に起こす作業であるため、楽譜専用のプラットフォームで販売するよりは高い単価が設定できます。
ただし、自身で自由に楽譜を作るのではなく依頼内容に沿って楽譜の制作をするので、「自分で自由に作る楽しみ」といった面の制約があるのがデメリットです。
また、作業内容は依頼によって異なるので、価格もまちまちです。
受注価格からサイトの手数料が差し引かれることも考慮した上で、かかった時間や手間などのコストを案件ごとにきちんと計算し、利益が出る価格を設定しましょう。
自分のネットショップを作成して販売する
カラーミーショップなどのネットショップ作成サービスで自身のネットショップを立ち上げ、楽譜を電子楽譜としてデータ販売する方法もあります。
ネットショップでの電子楽譜販売は、ユーザーが購入後に自分でダウンロードする流れです。
無料のサービスを利用すれば、ネットショップを作成して販売すること自体は初期費用や月額利用料がかからず行え、売れたときにのみ手数料が差し引かれるので、初めて楽譜を販売する場合も安心でしょう。
自身のネットショップを立ち上げて販売する大きなメリットは、自由にショップをカスタマイズできることです。
また、売れたときの手数料も5%程度とその他のサービスと比較すると安いため、利益が出やすいといえるでしょう。
ただし、ネットショップを立ち上げただけでは楽譜を購入してもらえないため、SNSを活用して自ら情報を発信するなどの集客が必要です。
ネットでの楽譜販売におすすめのサービス5選
上記ではネットで楽譜を販売する3つの方法を解説しました。
以下で、楽譜の販売におすすめのサービス5選を紹介していきますので、それぞれの特徴や手数料などを参考に、自分に合った方法を見つけてくださいね。
Piascore(ピアスコア)
Piascore(ピアスコア)とは、楽譜専門の販売プラットフォームで、1曲120円(税込)から販売することができます。
Piascoreでは、JASRACやNextoneなどの著作権団体と契約しているため、販売側が個別に契約を結ぶ必要がなく、使用料の支払いも代行してくれます。
ただし、他人が著作権を有している曲を編曲する場合などは、自身で使用許可を得なければならないため、注意が必要です。
収益は著作権の有無によって変動しますが、自身が著作権を持つオリジナルの楽譜の場合は、販売価格の最大90%が収益となります。
簡単に楽譜データを販売することができるのが大きなメリットですが、自身で確認しなければいけないこともあるため、利用規約などを事前にしっかり読みましょう。
mucome(ミューカム)
mucomeは、楽譜データをはじめとするデジタル音楽作品をダウンロード販売できるプラットフォームです。
Piascoreと同様、JASRACなどへの著作権処理や使用料の支払いを代行してくれるため、非常に便利です。
収益は販売価格の70%となっており、楽譜は1曲160円(税別)から販売することができます。
また楽譜データだけでなく、YouTube用の音楽素材などさまざまな音楽作品を販売できるため、多くの音楽データを販売したい場合はおすすめです。
オケ専(アンサンブルの楽譜マーケット)
「オケ専♪」とは、日本最大級の楽器演奏情報サイトで、その中の「アンサンブルの楽譜マーケット」で楽譜を販売することができます。
アンサンブルの楽譜マーケットは、少人数で楽器演奏をするアンサンブルを対象とした楽譜のダウンロード販売サイトです。
オリジナル曲や著作権保護期間が過ぎた曲、権利者の許可が得られた曲の楽譜販売ができます。
初期費用や月額利用料は無料で、楽譜が売れた場合にのみ販売価格の40%の手数料が発生する仕組みです。
楽譜の価格は300円(税別)から自由に設定できますが、他のサービスと比較してやや手数料が高いといえるでしょう。
ココナラ
ココナラは、日本最大級のスキル販売サイト(クラウドソーシングサイト)で知名度も高く、ユーザー数も多いのが大きな特徴です。
ココナラでは、楽譜が作れるという「スキル」を販売するため、受注販売が中心になります。
最低出品価格は500円で、販売手数料は販売価格の22%です。
依頼者の意図を汲んで楽譜を作る必要があるため、オンラインなどで事前に打ち合わせするケースも多いです。
サービス内容欄に、自身の得意分野の音楽、対応可能な範囲、納期などについて明記しておくと発注側も依頼しやすく、受注が増える可能性があるでしょう。
カラーミーショップ
カラーミーショップは国内最大級のネットショップ作成サービスで、自身でネットショップを開設し、楽譜をデジタルデータとしてダウンロード販売することができます。
一度登録しておけば、その後の運営はスマホからもできるため非常に便利です。
自身のネットショップなので、その他のサービス(プラットホーム)のように料金規定がなく、価格を自由に設定できたり、デザインを自分でカスタマイズしたり自由度が高いサイトが作れます。
また、フリープランは初期費用、月額利用料が無料で利用でき、売れたときも1回の注文ごとの決済手数料が6.6%+30円(Amazon Payは6.5%+30円)と安いので、低リスクで始められ利益が出やすいことがメリットでしょう。
ネットショップ作成サービスの中でもとくにカラーミーショップがおすすめなのは、複数のデータの同時購入が可能なことです。
ネットショップ作成サービスは数多く存在しますが、「複数の電子データを同時購入できない」というサービスも中にはあります。
そのサービスを利用した場合、ユーザーによっては購入自体をあきらめてしまうかもしれません。
ですがカラーミーショップでは、複数の電子楽譜を一緒に購入できるので購入の離脱を防ぎ、客単価アップも期待できるでしょう。
また、ネットショップを開設する場合は「特定商取引法」という法律により、個人の住所や電話番号などをサイト上に表示しなければなりませんが、カラーミーショップのフリープランであれば非公開設定にできます。(個人・個人事業主の方のみ)
個人の住所や電話番号といった個人情報をできれば表示したくないという人は、カラーミーショップのフリープランがおすすめです。
ネットで楽譜を販売する際のコツや注意点
楽譜のネット販売自体は手軽にできますが、売上をあげるためにはいくつかのサイトで並行して売ったり、販売を始めたら宣伝・集客をしたりする必要があります。
最後に、楽譜のネット販売を成功させるためのコツや注意点について解説していきます。
いくつかのサイトで並行して売る
先述の通り、ネットで楽譜を販売する方法はさまざまですが、一つに絞るのではなく、いくつかのサイトで並行して販売することをおすすめします。
複数のサイトで販売すれば、より多くの人の目に留まり、売上アップにつながるからです。
また、サイトによって利用者層が異なるため、一つのサイトでは人気が出ずに売れなくても、別のサイトでは購入してもらえるケースもあります。
楽譜販売を始めたらまずは複数のサイトに登録し、自身の楽譜がどのサイトのユーザーに好まれるのか見定めた上で、販売するサイトを一つに絞っていくと良いでしょう。
販売を始めたら宣伝・集客をする
楽譜のネット販売を始めた直後は認知度が低く、なかなか購入してもらえないことが多いです。
そのため、販売を始めたらYouTubeやTwitterなどを活用し、宣伝・集客することをおすすめします。
たとえば、YouTubeで楽譜の曲を演奏して配信すれば、その曲を気に入った人が楽譜を購入してくれることもあるでしょう。
ただし、他人に著作権がある曲の場合、演奏による動画配信についても許可を得なければならないケースがあるため注意が必要です。
また、楽譜をネット販売していることを拡散力のあるTwitterで告知することで、より多くの人の目に留まる可能性があるでしょう。
年間で20万円以上の所得になったら確定申告する
個人で楽譜をネット販売する場合、年間の所得が20万円を超えると確定申告をする必要があります。
この20万円とは、楽譜のネット販売で得た収入から紙代や印刷代などの必要経費を差し引いた額です。
必要経費の金額によっては所得が20万円に満たなくなり、確定申告が不要になることもあるので印刷代などの領収書は必ず保管しておきましょう。
確定申告はいくらからなのかや、やり方・何が経費になるのかなどについて、詳しくは下記の記事をご覧ください。
まとめ
今回は、楽譜をネットで販売する場合の方法やおすすめサイトなどについて詳しく解説しました。
オリジナルの楽曲ではなく、既存の曲の楽譜を販売する際には、著作権について十分な理解が必要です。
また、インターネットが広く普及している昨今、紙ではなく電子楽譜のダウンロード販売をおすすめします。
楽譜を電子データとして販売するサイトはいくつかありますが、販売価格を自由に設定でき、手数料が安いネットショップ作成サービスでダウンロード販売するのも方法の一つです。
ネットショップを立ち上げ、楽譜の電子データを販売する際は、初期費用・月額利用料無料で住所や電話番号といった個人情報を非公開にできるカラーミーショップのフリープランをぜひご利用ください。
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