農家の方や家庭菜園などで果物を作っている方の中には、「果物を使ってジャムを作って販売したい」と思う人もいるでしょう。
手作りジャム単体で販売するのも良いですが、パンやヨーグルトなどジャムをプラスして楽しめる食品とのセット、生の果物やドライフルーツ販売の延長としてなど、手作りジャムのネット販売を販促のアイディアとして考えている方もいるかもしれません。
では、手作りジャムをネットで販売するには、どのような資格や許可がいるのでしょうか。
資格・許可の面をはじめ、手作りジャムをネット販売するときに押さえておきたいポイントを解説します。
既製品じゃなくて、手作りのジャムをネットで販売することはできるのかな?パンやスイーツとのセット販売とか良さそうだよね。
手作りジャムもネットで販売できます。ですが、新たに手作りジャムを販売したい場合は資格や許可が必要です。
目次
ジャムを販売するのに許可・資格は必要?
ジャムをネットで販売する前に押さえておきたいのが、許可や資格の関係です。
ジャムを販売する場合、手作りジャムを販売するのか、既製品のジャムを販売するのかで必要な許可や資格が変わってきます。
手作りのジャムを販売する際に許可が必要
結論からお伝えすると、無許可でジャムを作って販売することはできません。
ジャムを自分で製造して販売するような場合は、食品衛生責任者の資格や密封包装食品製造業許可といった許可が必要です。
具体的な内容は後ほど解説しますので、ぜひそちらをご覧ください。
既製品を仕入れて販売する場合の許可は不要
一方、他の人が作った既製品のジャムを仕入れて販売する場合、基本的に許可は要りません。
食品衛生法の改正にともない2021年(令和3年)6月1日から新たな営業許可制度になり、許可が必要な業種、届出が必要な業種、届出が必要ない業種(許可も届出も不要な業種)に区分されました。
このうちの、許可も届出もいらない業種の条件の1つに、「常温で長期間保存しても品質の劣化による食品衛生上の問題がない包装食品や添加物の販売業」があります。
つまり、すでに包装された食品で常温の保存でも問題ないものは、許可や届出が要らないことになります。
ですが包装されたというのがどの範囲までなのか、どのような容器包装だと常温保存で問題ないと認められるのか、あいまいな部分もあります。
許可が必要か不要かの最終的な判断は各自治体で変わってきますので、既存のジャムを販売する場合でも、管轄の保健所に相談すると良いでしょう。
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ジャムを販売するのに必要な許可・資格
自治体や、製造するジャムの包装によってどの許可が必要か変わってくることもありますが、先ほどお伝えしたように、手作りジャムの販売では主に以下の資格や許可が必要です。
- ・食品衛生責任者
- ・密封包装食品製造業許可
ではそれぞれについて詳細を説明します。
食品衛生責任者
食品衛生責任者とは食品衛生に関係する資格で、食材の管理や設備の衛生管理、従業員の健康管理などの役割を担います。
食品を製造・販売する場合に必要な資格であり、食品営業を行う事業者は食品衛生責任者として、必ず有資格者を配置しなくてはなりません。
食品衛生責任者の資格を取得する方法
資格を取得するには、指定の養成講座を受講しその後、保健所に申請を行うことで食品衛生責任者になれます。
ただしすでに調理師や栄養士など、以下に挙げた特定の資格をもっている場合は、養成講座を受講しなくても保健所への申請だけで資格が取得できます。
- ・調理師
- ・製菓衛生士
- ・栄養士
- ・船舶料理士
- ・と畜場法に規定する衛生管理責任者
- ・と畜場法に規定する作業衛生責任者
- ・食鳥処理衛生管理者
- ・食品衛生管理者又は食品衛生監視員の資格要件を満たす者
密封包装食品製造業許可
密封包装食品製造業許可は、瓶詰や缶詰、レトルトパウチ食品など、包装容器で密封されていて常温保存ができるものを製造するときに必要な営業許可です。
ただし、はちみつや食酢など、食品衛生法施行規則第66条の10で規定された食品は届出の対象であるため、別途許可は必要ありません。
手作りジャムは、届出の対象にはなっていないことと、瓶詰など密封された状態で販売することが考えられますので、密封包装食品製造業許可が必要になる可能性が高いといえます。
こちらも詳しくは管轄の保健所で聞いてみましょう。
許可を得るには施設の整備も必要
衛生上の観点から、営業施設には構造上の基準や汚物処理の基準などが定められています。
そのため、一般的な家庭のキッチンを使ったジャムの製造・販売許可を得るのは難しく、基準に沿った施設になるように整備する必要があります。
スムーズに許可を得るためには、営業施設の工事着工前に図面や設備に問題ないか、管轄の保健所で事前に相談しましょう。
施設の構造や設備に問題がなければ、営業許可申請書、施設の構造や設備がわかる図面、食品衛生責任者の証明となるもの、許可申請手数料を用意して、営業許可の申請をします。(東京都の場合)
申請後は、基準が守られているか施設検査が行われ、問題がなければ許可書が交付されます。
もし検査で基準に適合しないとなったときは、不適合だった箇所を整備し直します。
以上のように、自宅のキッチンではなく製造に適した施設が必要ですので、その点も含めて販売計画を練るのがおすすめです。
ジャムの販売では食品表示法に基づくラベル貼付が必須
食品摂取の安全性と消費者の自主的な食品の選択のため、食品表示法という法律が定められており、食品を販売するときはその食品表示法の定めに従ったラベル付けが必須です。
たとえばジャム類を販売するときは、以下のような項目をラベルにして貼り付けます。
名称 | マーマレード |
原材料名 | ネーブルオレンジ(和歌山県産)、砂糖類(砂糖、ぶどう糖) |
添加物 | ゲル化剤(ペクチン)、酸味料 |
内容量 | 100グラム |
賞味期限 | 2025年10月10日 |
保存方法 | 直射日光を避け、常温で保存してください。 |
製造者 | ○○○○(※法人名や個人名) ○○県〇〇市○○町 1234番地 |
ジャム類の場合、糖度が60ブリックス度(※)以下のものは、「開封後は、10℃以下で保存」といった旨の枠外への表示、内面塗装缶以外の缶詰を使用したときは「開缶後は、ガラス等の容器に移し換えること」といった旨の枠外への表示が必要です。
また、表示禁止事項として、特級などの紛らわしい言葉、果実を多く含有する旨の表示など、消費者に誤解を与える表示は禁止されています。
表示が必要な項目の記載を守りつつ、誤解を与えるような表示は避けるようにしましょう。
ネットでジャムを販売する3つの方法
ジャムをネット販売するなら、どのようなルートで販売するかも考えておかなくてはなりません。
ネットでジャムを販売する方法としては、以下の3つが挙げられます。
- ・プラットフォームで販売する
- ・ECモールへ出店する
- ・ネットショップで販売する
産直サイトなどのプラットフォームで販売する
プラットフォームとは、産直サイトなど、生産者(販売者)と消費者をつなぐサイトのことです。
手作りジャムを扱っているプラットフォームには、産直サイトの「食べチョク」やハンドメイドマーケットの「minne」などがあります。
プラットフォームの特徴は、販売者へのサポートが充実しているものが多いこと。
たとえば、食べチョクならヤマト運輸との独自契約でお得な料金で利用できますし、minneなら、写真撮影やライティングの代行、紹介制で代理販売などのサービスが用意されています。
ただし、利用するプラットフォームによっては、手数料が大きな負担になってしまうこともあります。食べチョクの場合、手数料は販売価格の8~18%です。
手数料が高いほど長期的な販売ではマイナスになる可能性も高いので、手数料含めて利益が出せるか、試算しておくと良いでしょう。
ECモールに出店して販売する
オンライン上のショッピングモールのことを、ECモールといいます。
楽天市場やAmazon、Yahoo!ショッピングなどがECモールとしては有名です。
ジャムをネット販売するなら、ECモールにショップを出店して販売する方法もあります。
ECモールの特徴は、認知度が高く利用者も多いこと。
うまくアピールできれば、訪問客の流入や売上アップが期待できます。
一方、同じジャンルで出品している競合も多いことから、価格競争に巻き込まれて値段を下げた結果、利益率が低くなってしまうケースも見られます。
ECモールではいかに差別化を図っていくか、価格競争にどこまで対応するかのライン引きが重要です。
自社のネットショップを作成して販売する
オリジナリティを出したいなら、ネットショップを作成して自分のショップ上でジャムを販売する方法もあります。
ネットショップを新たに作成するメリットは、ショップデザインなどを自由に決められること。
自身のショップのコンセプトに合わせたデザインも、ネットショップなら実現しやすいです。
一方で、「ネットショップの自作は専門知識が必要で難しそう」「プロに頼んだら高額な料金がかかりそう」というイメージもあって、ハードルが高いと感じるかもしれません。
ですがカラーミーショップのフリープランなら、専門知識のない初心者の方でも簡単にショップが作成でき、初期費用・月額費用も無料です。
売れたときにのみ決済手数料がかかるので、「売れるかどうか分からないけれど、まずはネット販売してみたい」というスモールビジネスでジャムを販売したい方も低リスクで始められます。
また、カラーミーショップは、住所やカード情報が不要で購入率アップにも効果的な人気の決済方法・Amazon Payの導入と利用が無料なのが大きなメリットです。
他サービスでは、利用に費用がかかる場合が多いのでお得にネットショップ運営を行いたい方は、ぜひカラーミーショップをご検討ください。
ジャムの販売を成功させるポイント
ジャムはスーパーやコンビニなどで手に入りやすい商品ですので、あえてジャムをネットで購入してもらうためには魅力のある商品にしていく必要があります。
ここでは、ジャムのネット販売を成功させるために押さえておきたいポイントを3つ紹介していきますね。
興味を引くような商品名にする
いちごのジャムを購入するとき、「いちごジャム」という商品名と、「○○県産の○○を使ったいちごジャム」という商品名では、どちらに魅力を感じるでしょうか。
多くの人は後者の「○○県産の○○を使ったいちごジャム」と答えるのではないかと思います。
商品ラベルについては基準がありますのでシンプルに記載する必要がありますが、ネットショップなどで表示する商品名はさまざまな工夫ができます。
ブランドものの果実を使用しているならその点をアピール材料にできますし、触感や香りに特徴があるならその点をアピールしてみるのもおすすめです。
買い手の興味が湧くような商品名を付けてみましょう。
商品名の付け方について、こちらの記事もご参考ください。
「その季節ならでは」のジャムを売る
マーマーレードやいちごジャムなど、定番のジャムはスーパーでも売られていますが、季節ならではの果物を使用したジャムはいつでも売られている訳ではありません。
そのため定番のジャムだけでなく、レア度に目を付けて季節ならではのジャムを取り扱うのもおすすめです。
たとえば、びわジャム、あんずジャム、ぶどうジャム、柿ジャム、ゆずジャムなどがあります。
定番の商品でも、「夏みかん使用のマーマーレード」のように、使用する果実を季節に合わせて変えてみるのも、商品の差別化につながるでしょう。
商品説明で作り手の想いを伝える
ネットショッピングでは実際に商品の現物を確認したり、試食したりができないからこそ、写真や商品説明が重要になってきます。
商品説明では、どんな想いで商品を作ったのか、材料など何にこだわったのかなど、ぜひ作り手の想いを言葉にしてみましょう。
作り手のストーリーや商品ができるまでのストーリーに共感して、商品を買ってみたいと感じるユーザーも多いです。
ジャムの販売なら、パンやヨーグルトに添える以外にどんな使い方があるか、どんなレシピがあるかも合わせて説明があると購入率アップにつながるでしょう。
ジャムを販売する際の注意点
最後に、ジャムを販売するときの注意点を2つ紹介します。
必ず管轄の自治体(保健所)に確認する
食品衛生法の改正により営業許可制度が見直され、2021年(令和3年)6月から新たな制度に移行しました。
これまでは、許可や届出が必要な業種について都道府県ごとに大きな違いがありましたが、改正により届出が必要な業種が整備されたことで、全国で統一化が行われたのです。
しかし、ジャムの販売については、まだ十分に整備されていない状況です。
また、全国で基準の統一化が行われましたが、地域の特性や合理的な理由が存在する場合は、自治体の条例で基準を補えます。
梱包や販売方法によって、自治体で必要な許可が異なることがありますので、許可関係については必ず販売する前に自治体の窓口や保健所で確認しておきましょう。
新しく事業を始める場合は開業届を提出する
ジャムの販売に限らず個人が新たに事業を始めるときは、開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)を管轄の税務署に提出する必要があります。提出時期は、事業開始から1カ月以内です。
開業届を提出しないと、さまざまな特典を利用できる青色申告を選択できない、確定申告の書類が届かないなど、さまざまなデメリットがあります。
そのため販売の準備ができたら、必ず提出しておきましょう。
開業届についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
まとめ
既製品のジャムも手作りジャムも、ネットで販売できます。
ただし、自分でジャムを作って販売するようなケースでは、営業許可や食品衛生責任者などの資格が必要になりますので、事前に管轄の自治体(保健所)に相談しましょう。
ネット販売についても、どの手段で販売するかなど同時に準備を進めておくと、スムーズに販売が始められますよ。
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