今では個人で作ったさまざまな作品もネットで販売しやすくなりました。
自身で作ったアクセサリーやイラストといったものだけでなく、お菓子やパンなどの食品を売っているのも見かけます。
趣味で作った食べ物を販売して仕事になったら嬉しいですよね。
そこでこの記事では、店舗や個人がパンをネット販売する際に知っておきたい資格や許可、ネット販売の方法や注意点について紹介していきますね。
販路拡大のためにはネット販売が重要だと思うけど、個人でもパンをインターネット上で販売することはできるのかな?
パンは、必要な許可や資格さえもっていれば、個人でもネット販売できますよ。今回はそれについて詳しく解説します!
目次
個人がパンをネット販売することは可能?
ネット販売であれば、全国のさまざまな人を対象にパンを売ることができるため、販路拡大になります。
ですが大きい会社ならまだしも、個人でパンをネット販売できるのかと不安に思う人いるかもしれませんよね。
結論からいうと個人であっても、資格や許可があればパンのネット販売はできます。
以下に紹介するように、今ではパンを含めた商品をネットで販売できるサービスが充実してきていますので、個人でもネット販売に挑戦しやすくなっています。
ネット・店舗にかかわらずパンを販売するのに必要な許可・資格とは?
個人でも販売はできるものの、店舗販売かネット販売かの販売形態に関わらず、パンを作って販売するには資格や許可が必要です。
どのような資格や許可が必要になるかは届出を行う都道府県で多少異なりますが、主に以下のような許可や資格が必要だとされています。
- ・食品衛生責任者の資格
- ・菓子製造業の営業許可
- ・飲食店営業許可
それぞれ、どのような資格や許可なのか、1つずつ説明していきますね。
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食品衛生責任者
食品衛生責任者は、食品の製造や販売にかかわる資格です。
自治体で規定が異なることもありますが、食品衛生法の規定により、飲食物を提供する事業者は、少なくとも食品衛生責任者1人を配置しなくてはなりません。(規模により配置しなければならない食品衛生責任者の人数が変わることもあります)
食品衛生責任者に求められる役割は、設備の衛生確認と改善、従業員の健康管理、衛生管理表の作成、食材の管理などです。
食中毒などを出さないように、食材や設備、従業員の適切な管理が求められます。
食品衛生責任者については、店舗販売かネット販売かに関わらず、食品を扱う事業者であれば、基本的に資格の取得が義務付けられています。
食品衛生責任者の資格を取得する方法は?
食品衛生責任者は、都道府県の実施する特定の講習会に参加することで資格を取得できます。
ただし、一定の資格を持っている人は講習会に参加せずに資格を取得することが可能です。
以下で、詳しく説明していきますね。
講習を受ける
食品衛生責任者は、都道府県知事指定の養成講座を受講し保健所に申請することで、取得できます。
養成講座では、食品衛生学、衛生法規(食品衛生法)、公衆衛生学の計6時間ほどの講座を受講し、理解度を深めるための確認試験を受けます。
講座の開催時期は自治体で異なりますので、最寄りの保健所などで確認しましょう。
一定の資格を保持している
以下に挙げた一定の資格を保持している人は、すでに食品衛生責任者に関する知識があるとみなされ養成講座の受講が免除されます。
- ・調理師
- ・製菓衛生士
- ・栄養士
- ・船舶料理士
- ・と畜場法に規定する衛生管理責任者
- ・と畜場法に規定する作業衛生責任者
- ・食鳥処理衛生管理者
- ・食品衛生管理者又は食品衛生監視員の資格要件を満たす者
以上の資格をお持ちの方は、申請するだけで食品衛生責任者資格の取得ができます。
菓子製造業の営業許可
法律上、パンの製造は「菓子製造業」に分類されるため、パンを製造して販売する場合は「菓子製造業」の営業許可が必要です。
そして菓子製造業の許可を得るには自宅のキッチンのような設備では不十分です。
設備の広さ・区画や排水に関してなど、自治体の規定する基準を満たさなくてはなりません。
パンを製造・販売する場合は施設に関する基準などを細かくチェックしましょう。
菓子製造業の営業許可を得る流れ
菓子製造業の営業許可は、以下のような流れで取得します。
- 1.保健所に事前相談をし、事前準備を整える
- 2.営業許可申請書と必要な書類を添付し、保健所に申請する
- 3.申請受理後、保健所の設備や施設の確認検査が実施され
(共通基準と業種ごとの特定基準の両方を満たす必要がある) - 4.検査に問題がなければ、後日「営業許可書交付のお知らせ」が届く
- 5.営業許可書交付予定日以降に営業許可書を保健所で受け取る
営業許可書は永久的なものではなく、有効期限が定められています。
許可が下りた後も、有効期限前に更新手続きが必要になりますので、注意しましょう。
菓子製造業の営業許可について、下記の記事で詳しくご紹介しています。
飲食店営業許可は必要ないの?
以前は、サンドイッチなどの調理パンを販売する場合は、お弁当などの販売と同等とみなされていたため、菓子製造業の営業許可のほかに「飲食店営業許可」が必要でした。
ですが、令和3年6月1日以降は菓子製造業の許可があれば、サンドイッチを含む調理パンを製造することが可能になりました。
飲食店営業許可とは、食堂やレストラン、弁当屋、カフェなど、食品を調理して客に飲食物を提供するための営業許可のことです。
これまで複数の営業許可が必要な場合、新たに許可を取得しようとしたときに設備の変更を求められるなど、自治体や保健所で対応に統一性がないといった問題がありました。
これらの問題もあって、令和3年6月1日以降から施行された新たな営業許可・届出制度から、パン製造を含む菓子製造業などの一部の営業許可においては、取り扱い可能な食品の範囲が拡大したのです。
ただし引き続き、パン以外にも軽食を提供する場合などは飲食店営業許可が必要になりますので、必要な場合は合わせて許可を得ておきましょう。
パン販売には食品表示法によるラベルの貼付も必要
食品を販売する際にあたって、消費者が自主的に商品選択の機会を得られるようにすること、などを目的に「食品表示法」が定められています。
食品表示法は、パッケージされた加工食品を販売する場合に適用されるもので、パンを包装した状態で販売する場合は食品表示法に基づいたラベルの貼付が義務付けられます。
パンの店頭販売なら焼きたてのまま並べて、お客様に自由にバイキング方式でとってもらうこともできますが、ネット通販になるとパンの包装が必要になりますので注意しましょう。
ラベルに表示する項目は自由に決められるものではなく、食品表示法に定められたパン類の表示基準に従ってラベルを作成しなくてはなりません。
パン類なら、以下のような表示が必要でしょう。
- ・名称(食パン、菓子パン、など)
- ・原材料名
- ・添加物
- ・原料原産地名
- ・内容量
- ・消費期限/賞味期限
- ・保存方法
- ・製造者の名称や住所
- ・栄養成分表示
一例ですので、詳しくは管轄の保健所窓口で確認してくださいね。
パンをネット販売するために必要な許可とは?
ここまで、店舗かネットかにかかわらずパンを製造して販売する場合、共通で必要になる資格や許可について説明してきました。
それでは、ネット販売をする場合で、特別に必要になる許可などはあるのでしょうか。
パンをネット販売すること自体に関しては、食品衛生責任者の資格や菓子製造業の営業許可など、必要な資格や許可があれば、別に許可を得る必要はありません。
しかし、パンを冷蔵、または冷凍して商品を発送する場合は、「冷凍・冷蔵倉庫業」の届出が必要になることがあります。
「冷凍・冷蔵倉庫業」の届出が必要な場合も
以前は、パンなどの食品を冷蔵・冷凍する場合は別途、許可が必要でした。
ですが、法改正により令和3年6月1日以降は、パンの冷蔵・冷凍販売は、菓子製造業の許可があれば新たに冷凍食品製造業などの許可を得る必要はなくなりました。
そうざいや菓子などの冷凍・冷蔵は、それぞれの製造業の許可の範囲となっています。
ですが、温度管理などが必要な包装食品を販売するとき(製造はせずに保管だけ行う場合)は、許可ではなく「冷凍・冷蔵倉庫業」の届出が必要です。
自ら製造したパンを販売するのではなく、パンを別のところから仕入れて保管し、冷蔵や冷凍でネット販売する場合は確認しておきましょう。
パンをネット販売する3つの方法
パンをネット販売するために必要な許可や資格の準備が進んだら、具体的にどのようにネット販売するか、販売方法も検討していきましょう。
パンのネット販売の方法としては、以下の3つの方法があります。
- ・プラットフォームで販売する
- ・ECモールで販売する
- ・ネットショップを作成して販売する
ではそれぞれについて詳しく見ていきましょう。
プラットフォームで販売する
パンをネット販売するには、パンが販売できるプラットフォーム(Web上のサービス)を活用する方法があります。
プラットフォームは商品を販売したい事業者と消費者をつなぐサービスのことで、市場のように売り手と買い手を交わらせるWebサイトというイメージです。
プラットフォームの特徴は、簡単に始めやすいところといえます。
本格的にネット上で店を持つというよりは、プラットフォーム上にアカウントを作って、そこで販売するような形になります。
以下、パンの販売ができるプラットフォームをいくつかご紹介します。
いずれも、スマホアプリに対応しているので、スマホがあれば気軽に始められるサービスです。
minne(ミンネ)
minnneは、「ものづくり」が集まる、ハンドメイドマーケットです。
さまざまな作品が販売されており、パンを含む食べ物のカテゴリーもあります。
会員登録と販売者登録を行えば、簡単に販売を始められます。
月額使用料は0円、販売手数料は税込み10.56%。
利用者は、ものづくりに関心の高い20~40代の女性が中心ですので、その層をターゲットにしたパンを考えて販売を始めるのが良いでしょう。
食べチョク
食べチョクは「生産者から商品が直接届く」という、新鮮さを売りにしたプラットフォームです。
野菜などの生鮮食品だけでなく、パンの販売も行われています。
料金は初期登録費用0円、月額利用料0円、販売手数料は顧客支払額の8~18%です。
出品申請をして審査項目をクリアできれば、出品できるようになります。
食べチョクは産地直送ということが売りのため、たとえば「添加物不使用」など、健康面を気にしている人が注目しそうな商品だと人気が出るかもしれません。
rebake(リベイク)
rebakeは、全国のパン屋さんと消費者をつなぐプラットフォーム。
rebakeでは、このままでは廃棄処分になってしまうロスパンを積極的に取り扱っており、食品ロス削減にも貢献しているサービスです。
掲載料は無料で、販売手数料15%。発送ペースに合わせて、購入制限をすることも可能です。
ただし、出品者はパン屋さんに限定されますので、パン屋として営業していない場合は、サービスを利用できません。
ECモールで販売する
楽天市場やAmazonのような、ECモールで販売する方法もあります。
ECモールを利用するメリットは、サイトを利用する多くの人に商品を見てもらえる機会があることです。
一方で、ライバルも多く出品していますので、競争に勝てず、なかなかパンが売れないという可能性もあります。
また、ECモールはネームバリューがある分、手数料もやや高めに設定されています。
自身のネットショップを作成して販売する
自分でネットショップを作成してパンを販売する方法もあります。
ネットショップを作成するメリットは、プラットフォームやECモールを利用するときと比較して、独自性を打ち出せること。
お店のブランド力を高めたい、お店の魅力を知ってもらいなら、ネットショップを作成するのがおすすめです。
ネットショップ作成サービスのカラーミーショップを利用すれば、初期費用・月額利用料0円のフリープランでネットショップを簡単に作成できます。
テンプレートも充実していますので、Webデザインの知識などがなくてもOKです。
売れたときにのみ手数料がかかるので「とりあえず自分のネットショップを作ってみたい」という方でも、低リスクで始められます。
上記でお伝えしたプラットフォームと並行して、自身のネットショップを作ってみるのもいいかもしれませんね。
パンのネット販売で人気店になるための成功のコツ
ネット販売が初めてならなおさら、「本当に売れるのかな…」という不安も大きいかと思います。
ではネット販売で人気店になるにはどういった点を押さえておけば良いのでしょうか。
パンのネット販売で成功するためのコツを2つご紹介します。
パンのネット販売を始めたら集客する
ネットショップで売上を上げるには、まずはお店の存在、商品の存在を知ってもらうことが大切です。ホームページでの告知など、さまざまな宣伝方法を検討してみましょう。
すでにパンを店舗で販売している場合は、店舗に「ネット販売を始めました」とポスターなどを貼ってみるのも1つの集客手段です。
もしこれからネット販売だけでパンを販売する場合は、SNS発信による集客に力を入れてみましょう。SNS集客は、画像メインで掲載できるInstagramがおすすめです。
SNSに投稿した画像は集客の要になりますので、パンの大きさや見た目がはっきりわかるように撮影することはもちろん、思わずパンが購入したくなるシズル感のある写真の撮影方法も勉強しておくと良いでしょう。
競合のネットのパン販売店と差別化する
パンを販売するといっても、世の中にはパンをネット販売している競合は多いため、何らかの差別化を図っていかないと、思うように売れません。
はじめは売れていても、リピーターがなかなかつかない、どんどん売上が落ちていく、などの問題も起きてくるでしょう。
パンのネット販売で人気店になるには、競合に埋もれてしまわないように、販売の段階からしっかり差別化を図ることが重要です。
お店の強みを打ち出して販売すれば、印象に残りやすくなり、リピーターや優良顧客の獲得にもつながります。
差別化するためには、特定のニーズに対応してパンを販売するのも1つの方法です。
パンの販売なら、たとえば以下のようなニーズが考えられます。
- ・卵や乳製品アレルギーに対応したパン
- ・グルテンフリーのパン
- ・トランス脂肪酸不使用のパン
- ・添加物のないパン
- ・糖質オフ、糖質の少ないパン など
どんなパンを売るのか、どんなテーマで売っていくのか、まずはしっかりとターゲットを定めて商品企画などを行っていきましょう。
パンをネット販売する際の注意点
最後に、パンをネット販売するなら知っておきたい注意点を2つご紹介します。
許可を得ずに販売すると罰則がある
パンの製造など、食品衛生法上で営業許可が必要にもかかわらず許可を取得せず営業を行ったときは、2年以下の懲役、または200万円以下の罰金が課せられる可能性があります。
ネットショップでの小規模のパンの販売であっても許可が必要ですので、必ず許可を得てから販売するようにしましょう。
ほかにも衛生管理に不備があるなど、食品衛生法に違反した場合で改善指導後に改善が行われない場合などは罰則として3年以下の懲役または300万円以下の罰金が課せられる可能性があります。
パッケージする際に注意したい食品表示法にも罰則がありますので、法律に違反しないよう適切に管理を行うことも大切です。
パン以外のジャムなどの販売には別の許可が必要
パンを売るならせっかくだから…と、パンに付けるジャムやバターの販売を同時に行いたいと考える人もいるかもしれません。
ですが、ジャムを製造して販売したい場合は密封包装食品製造業の許可、パンに使うバターを製造したい場合は乳製品製造業の許可など、パン以外に商品を販売する場合は、菓子製造業以外の許可が必要になることがあります。
パン以外で販売を考えている商品があれば、具体的に取り扱う対象品を洗い出し、ほかに許可が必要ないか、管轄の保健所に相談されることをおすすめします。
パンのネット販売を始める際は開業届を出す
ネットショップを始めるなど新たに事業を開始するときは、管轄の税務署に「個人事業の開業・廃業等届出書」(開業届)を提出する必要があります。
実店舗でパン屋をすでに開業していて、販路を広げるためにネットショップを開設する場合は必要ありませんが、パンのネット販売で初めて事業を開始する場合は必要ですので、こちらも忘れずに手続きをしておきましょう。
開業届について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
まとめ
パンのネット販売を新たに始めるなら、資格や許可が必要です。
営業許可については、自治体によって許可の判断基準が異なることもありますので、スムーズに開業できるようにするためにも、まずは管轄の保健所に相談してみてください。
すぐに販売できるよう、あわせてネットショップの準備も進めておくと良いでしょう。
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