何か事業を始める場合、初期費用などはできるだけ抑えたいですよね。ですが賃貸事務所を借りるとなると、それなりのコストがかかってしまいます。そのような場合におすすめなのが「バーチャルオフィス」の利用です。
この記事では、バーチャルオフィスとはどのようなものか、そのサービス内容や費用、メリットやデメリットなどについて解説していきます。
起業を考えている僕の友達もオフィスは必要だから、初期費用を抑える良い方法を探しているみたいなんだ。
ツクルくんのお友達におすすめなのがバーチャルオフィスの利用です。プランによっては格安でオフィスを構えることができますよ。
目次
バーチャルオフィスとは?レンタルオフィスとの違い
バーチャルオフィス(virtual office)とは「仮想の事務所」を指し、実際に事務所で仕事をしない人たちに対して、会社の住所や電話番号などを提供するサービスです。
「バーチャル(仮想)」というだけあり、その住所に行っても実際の会社事務所はありません。
クラウドサービスなどの進化により、会社に行かなくても仕事ができる時代となっていますが、事業を展開していく上で住所を持つことは非常に重要なため、ここ数年、人気となっています。
仕事のための作業スペースはないものの、バーチャルオフィスでは住所の提供だけでなく、郵便物の転送サービスなど実際のオフィスのようなサービスを行っているところも多いです。
一方、同じような存在にレンタルオフィスがありますが、バーチャルオフィスとは根本的に異なります。
レンタルオフィスには通信環境や備品が整備されており、賃貸事務所と同じレベルの機能があります。またレンタルオフィスの住所を利用して登記することも可能です。
つまり、バーチャルオフィスは基本的に住所や電話番号の貸し出しのみで作業スペースがなく、レンタルオフィスは実際の事務所のように利用して仕事ができるという、作業スペースの有無が大きな違いといえるでしょう。
バーチャルオフィスのサービス内容
バーチャルオフィスでは、住所の貸し出しをはじめ、さまざまなサービスを展開しているところが多いです。ここからは、基本的なサービスと有料オプションのサービスに分けてご紹介していきます。
基本的なサービス
バーチャルオフィスが提供する基本的なサービスには、主に下記の4つがあります。
- ・住所の貸し出し
- ・郵便物の受け取りと転送
- ・電話・FAX番号の利用
- ・会議スペースの貸し出し
では、それぞれについて具体的に見ていきましょう。
住所の貸し出し
住所の貸し出しは、バーチャルオフィスの最も基本のサービスです。実際に事務所や店舗を持つことなく、住所を借りることができます。
バーチャルオフィスから提供された住所は、ホームページや名刺に記載したり登記の際に利用することも可能です。
郵便物の受け取りと転送
事業をスタートさせると、いろいろと郵便物が届くようになります。
バーチャルオフィスとして借りた住所宛に届く郵便物は、実際にバーチャルオフィスが受け取ってくれることが多いです。
ただし、本人限定の郵便物や食品などは受け取ってくれないため、注意が必要です。
また、受け取った郵便物を指定した住所に転送してくれるサービスを展開している企業もあります。
ですが、転送してくれる頻度や無料か有料かなどはバーチャルオフィスによって異なるため、事前に確認する必要があるでしょう。
電話・FAX番号の利用
電話やFAXも事業を展開する上では重要です。特に固定電話の電話番号があることは会社の信用度にも大きく影響してきます。
そのため、多くのバーチャルオフィスでは、電話転送サービスやFAX転送サービスを提供しています。
電話番号を自身で持ち込めるのかどうかなどは、各バーチャルオフィスのサービスによって異なるため、郵便物と同様、事前にチェックが必要です。
会議スペースの貸し出し
新型コロナウイルス感染拡大を契機にオンラインでのミーティングが一般化しつつありますが、業種によっては会議室での対面の打ち合わせが必要な場合もあります。
そのような場合に備えて、多くのバーチャルオフィスでは会議室の貸し出しを行っています。
初めて会議室を利用する場合、会議室のサイズや雰囲気などをあらかじめ下見した方がよいでしょう。
有料オプションのサービス
バーチャルオフィスでは基本料に加えて有料オプションを追加すると、さまざまなサービスが受けられます。
提供されている有料オプションサービスの例として下記の4つがあります。
- ・経理・労務などに関するサポート
- ・法人登記の代行
- ・ホームページの作成
- ・秘書業務の代行
では、それぞれについて具体的に見ていきましょう。
経理・労務などに関するサポート
1人で起業する人はやるべきことが多岐にわたり、バックオフィス業務まで手が回らないことも多いです。
バーチャルオフィスでは、経理や労務などに関するサポートを有料で実施しています。多くの場合、バーチャルオフィスと提携している税理士と顧問契約を結ぶ形となります。
一般的には、個人で税理士と契約する場合に比べて、オプションサービスを利用する方が探す手間や費用を抑えられるでしょう。
法人登記の代行
バーチャルオフィスの利用者には起業して法人登記を行う人も多いため、借りた住所で登記を希望する人に向けた法人登記の代行がオプションサービスで提供されています。
一度登記すると継続してサービスを利用するケースが多いため、そこから得られる利益を見越して、設立のための手数料を低価格に抑えているバーチャルオフィスもあります。
ホームページの作成
起業するにあたって、ホームページがあることでビジネス上の信頼感も高まり、営業ツールとして使うこともできます。そのため、ホームページの作成をオプションサービスとして提供しているバーチャルオフィスも多いです。
秘書業務の代行
秘書業務の代行とは、バーチャルオフィスのコールセンターにかかってきたお問い合わせの電話やFAXなどに対応してくれるサービスです。
起業したばかりの多忙な時期は打ち合わせなども重なるため、必ずしも電話に出られるとは限りません。
サービスを利用することで、ビジネスチャンスを逃すこともなくなると同時に、営業電話などへの対応もできます。
上記に4つほど上げましたが、この他にも、書類保管サービスや助成金サポートサービスなど、有料オプションは各バーチャルオフィスでさまざまです。利用する際は、希望するサービスの有無を事前に確認しておきましょう。
バーチャルオフィスを利用する5つのメリット
バーチャルオフィスを利用することにより、初期費用が抑えられるなどさまざまなメリットがあります。
ここからは、バーチャルオフィスを利用した場合のメリットを5つのポイントに分けて解説していきます。
1.事務所を借りるより初期費用・ランニングコストが抑えられる
一般的な事務所を借りる場合、敷金や礼金、保証金を準備する必要がありますが、バーチャルオフィスの場合、そのような多額の初期費用はかかりません。
契約金などの初期費用は抑えられることが多く、毎月数千円から利用できるので月額費用も少額で済みます。
また、資料を印刷したい場合はプリンターを借りる、取引先が増えた場合は秘書業務の代行サービスを利用する、といったように状況に応じてサービスを追加することが可能です。
創業当初から備品や人件費などのランニングコストが必要ないのも、大きなメリットでしょう。
2.短期間で導入できる
事務所物件を借りる場合は、複数の物件を見て回り比較検討する必要があるため、賃貸契約するまでに時間がかかることが多いです。
一方、バーチャルオフィスの場合は、そのような手間はなく、簡単な手続きだけで利用を開始することができます。
利用開始の手続きは、バーチャルオフィスが提供する住所一覧から希望する場所を選択し、必要な場合は追加で有料オプションサービスに申し込むだけです。手続きはインターネット上で完結するところもあるため、非常に便利です。
手続き完了後、すぐに住所を利用できるのも大きな魅力の1つでしょう。
3.信用度の高い一等地を住所にできる
バーチャルオフィスの住所は、都心の一等地や有名な高層オフィスビルであることが一般的です。
そのため、設立したばかりの会社では事務所を構えることが難しい場所をホームページや名刺に記載することができます。例えば、東京に住所がある会社と地方の会社とでは問い合わせや発注に差が出るでしょう。
このようにバーチャルオフィスを利用することで、会社の信用度も高くなります。
4.自宅の住所を公開せずに済む
自宅の住所とビジネスの住所は、分けておいた方がプライバシー保護の観点からも安心ですよね。
会社を設立する場合は、登記簿に住所を記載しなければなりませんが、登記簿は手数料を支払って申請したり、法務局に行って開示請求をしたりすれば第三者でも閲覧ができてしまうのです。
また、ネットショップなどを運営する場合は特定商取引法表示に基づき、住所などをサイト上に表示することが義務づけられています。(ただし、個人・個人事業主の方の場合カラーミーショップのフリープランなど、サービスによっては個人情報の非公開設定が可能です)
登記する場合もネットショップを開業する場合もバーチャルオフィスの住所が使用可能なため、個人情報を開示するリスクを避けられるでしょう。
5.テレワークもしやすい
新型コロナウイルス感染拡大の影響で急増したテレワーク。バーチャルオフィスが提供する郵便物の受け取りや転送、電話転送サービスは、テレワークで事務所に行けない場合にも大きな強みとなります。
また、長期出張で遠方に行く場合にも、住所を指定すれば郵便物の転送が可能であるため、非常に便利です。
このように、実際の事務所を構えていない分、いつどこにいても事業を継続できることはバーチャルオフィスの大きな魅力といえるでしょう。
バーチャルオフィスのデメリット
バーチャルオフィスを利用することでさまざまなメリットがある一方、もちろんデメリットもあります。ここからは、バーチャルオフィスを利用した場合のデメリットについて解説していきます。
実際に仕事をする場所を確保する必要がある
前述の通り、バーチャルオフィスはレンタルオフィスと違い、実際に働く場所が提供されるわけではありません。
そのため、自宅やカフェなど働く場所を自分で確保する必要があります。
カフェなど外で仕事をする場合は、通信環境が整った場所を選ぶ必要があり、仕事に必要な荷物も持ち歩かなければいけません。
ただ、対面での打ち合わせには、多くのバーチャルオフィスが備えている会議室が利用できます。
また、バーチャルオフィスの中にはコワーキングスペースを提供しているところもあるため、さまざまな状況を想定してサービス内容を事前に把握しておくとよいでしょう。
他社と同じ住所になることがある
バーチャルオフィスでは、1つの住所を複数の会社で共有しているため、人気のある住所の場合は他社と住所が重複することがあります。
そのため、インターネットで住所を検索すると、他社のホームページがヒットすることも。
このようなことが起こると、住所がバーチャルオフィスのものであることがわかり、実際に事務所を構えていないことから、会社の信用度が低下する可能性がある点にも留意しなければならないでしょう。
利用できない業種がある
バーチャルオフィスの住所は、独立した事務所が必要な一部業種などでは利用することができません。バーチャルオフィスを利用できない主な業種は、下記の表の通りです。
不動産業 |
宅建業免許を取得するためには、機能を備えた個別スペースのある事務所が必要 |
建設業 |
請負契約の見積もりや契約締結の際に、実体のある事務所がなければ許認可を受けることができない |
士業 |
税理士であれば税理士会、弁護士であれば弁護士会に登録するにあたり、実体のある事務所が必要 |
人材派遣業 |
一般労働者派遣業の許認可を受けるために、20平米以上の事務所と賃貸契約書の提出が必要 |
職業紹介業 |
厚生労働大臣の許認可を申請する際に、求職者と個別で面談する場所を設けなければならないため、実際の事務所が必須 |
古物商 |
古物商許可を受けるためには、商品などを置いて取引できる場所が必要 |
探偵業 |
実体のある事務所がないと、探偵業届出証明書を取得できない |
バーチャルオフィスに向いている人とは?
上述のように、バーチャルオフィスが利用できない業種もある一方、バーチャルオフィスを利用することにより多くのメリットがある人もいます。
では、バーチャルオフィスに向いている人はどんな人なのでしょうか。
ネットショップを運営する人
最近は副業でネットショップを始める人も多いですが、ネックになるのが特定商取引法表示により自分の住所をサイト上に掲載しなければいけないことです。
ですが、先ほどお伝えしたように、条件を満たせばネットショップのサイトにバーチャルオフィスの住所を記載できます。
自宅の住所を記載する必要がないためプライバシーが守られますし、実店舗を構える必要もないため、ネットショップを運営する方はバーチャルオフィスの利用が向いているでしょう。
ネットショップを開業する場合、カラーミーショップなら初期費用・月額費用が無料のフリープランで始められるので、より初期費用を抑えたい方はおすすめです。
起業を考えている・起業した人
起業を考えている人や起業した人は、なるべく初期費用やランニングコストを抑えたいでしょう。
そのような場合、実際に事務所物件を借りるより費用を抑えることができるため、バーチャルオフィスの利用に向いているといえます。
また、起業したばかりでも都心の一等地などに住所を持つことができるため、信用度も高まり、ビジネスには有利でしょう。
講師やコンサルタントなど出張型ビジネスの人
一定の事務所を構えず、常に出先で仕事を行う人にとってもバーチャルオフィスが提供する郵便物の受け取りや転送、電話転送サービスは非常に利便性が高いです。
例えば、コンサルタントなどの訪問型ビジネスを展開している人や、スタイリスト、インストラクターなどの職種は利用して得られるメリットが大きいでしょう。
費用はいくらから?バーチャルオフィスサービスを比較
では、バーチャルオフィスの費用はどれくらいかかるのでしょうか。主なサービスの初期費用と最低価格(月額費用)、特徴を下記の表にまとめました。
自身に合ったバーチャルオフィスを選ぶときの参考にしてくださいね。
サービス名 | 初期費用 (入会金) |
最低価格/月 | 特徴 |
レゾナンス | 5,500円 | 1,650円 | ・業界でも格安の料金プラン ・都内一等地の住所が使用できる ・貸し会議室あり |
DMMバーチャルオフィス | 5,500円 | 2,530円 | ・IT大手のDMMが運営 ・スマートフォンで完結するサービスあり ・渋谷や銀座の一等地の住所が使用可能 |
Karigo | 5,500円 | 3,300円 | ・全国に50拠点あるバーチャルオフィス ・貸し会議室やレンタルスペースあり ・地方に住所を持ちたい方におすすめ |
ワンストップビジネスセンター | 10,780円 | 5,280円 | ・全国主要都市の駅近に35拠点を構える ・30日間完全返金制度あり ・6名程入れる貸し会議室あり |
サーブコープ | 月額費用の1か月分 (クレジットカードでの支払いの場合無料) |
7,920円 | ・有名オフィスビルやシンボルタワーの住所が登記可能 ・バイリンガルの電話秘書が対応 ・高級感のあるビジネスラウンジや広い貸し会議室あり |
※価格は2021年8月時点の税込み価格
バーチャルオフィスのよくある疑問
バーチャルオフィスを初めて利用する人は多くの疑問があると思います。ここでは、よくある疑問についてまとめました。
新規で法人の銀行口座は開設できる?
バーチャルオフィスを利用している場合でも、もちろん審査で信用できると総合的に判断されれば銀行口座の開設は可能です。
ただし、会社や事業内容によって状況が異なるため、必ず開設できるとは断言できません。
本人確認書類や事業内容を説明できる資料など、銀行口座開設に必要な書類をしっかりと準備しておく必要があるでしょう。
社会保険や雇用保険に加入できない?
バーチャルオフィスを利用していても、社会保険や雇用保険に加入できます。
個人事業主であれば常時5人以上従業員がいる場合、法人であれば従業員数にかかわらず、社会保険に加入することが義務づけられています。
また、雇用保険は一部の例外を除いて、法人個人問わず、従業員がいる場合は加入が義務づけられています。
バーチャルオフィスを申し込む際の注意点
東京都心を中心に全国に数多くあるバーチャルオフィス。
自身に合ったバーチャルオフィスを選ぶためには、いくつかポイントを押さえておくことが大切です。
最後に、バーチャルオフィスを申し込む際の注意点を3つご紹介します。
過去に犯罪に使われていないか確認する
利用するバーチャルオフィスの住所で過去に犯罪が起きていた場合、ビジネスに大きな不利益をもたらします。
例えば、銀行口座開設の審査で所在地を調べられた際に自身に落ち度がない場合でも、審査に通らず口座開設ができない可能性があります。
申し込みの前に、インターネットで住所などを検索して、犯罪歴などがないかどうかしっかりと調べておきましょう。
駅や自宅からアクセスの良い場所にする
バーチャルオフィスは実際に仕事をする場所ではないため、「都心の一等地」などが優先されてしまい、駅や自宅からのアクセスの良さは見落とされがちです。
しかし、想定していなかった対面での打ち合わせが発生した場合は、バーチャルオフィスにある会議室などを利用することもあるため、駅や自宅から遠いと利用しづらくなるでしょう。
利便性も考え、自宅に近く、最寄り駅からも徒歩で数分の場所を選ぶことをおすすめします。
値段で決めずに自社に合ったプランにする
バーチャルオフィスのサービス内容は各社で異なり、プランも多種多様です。
「安いから」と値段だけ見て決めてしまうと、いざ利用するときに求めているサービスが含まれていないこともあります。
そのため、値段の安さだけでなく実際の業務に必要なサービスがきちんと含まれているか確認し、自身に合ったプランを選びましょう。
まとめ
今回は、バーチャルオフィスがどのようなものなのか、その詳細について解説しました。
一般の事務所物件と比較して、初期費用やランニングコストが抑えられるバーチャルオフィスは、起業したばかりの人やネットショップを運営する人などにとって大きなメリットがあります。
また、昨今増えているテレワークなどで事務所に行けない人にとっても、郵便物の受け取りや転送、電話転送サービスは大きな魅力でしょう。
バーチャルオフィスは全国的に広がりを見せており、そのサービス内容もさまざまです。この記事を参考に、自身に合った最適なプランを見つけてくださいね。
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よくある質問
バーチャルオフィスとは「仮想の事務所」を指し、実際に事務所で仕事をしない人たちに対して、会社の住所や電話番号などを提供するサービスです。起業を目指している方やネットショップを運営する方に利用されています。「バーチャル」というだけあり、その住所に行っても実際の会社事務所はありません。
さらに詳しくこちらの章で解説しています。
バーチャルオフィスの主なメリットとしては、以下が挙げられます。
・初期費用・ランニングコストが抑えられる
・都心の一等地を格安で自社の住所にできる
・自宅の住所を公開しなくて済む
その他にもバーチャルオフィスにはメリットが多いです。
メリットについてさらに知りたい方はこちらの章をご確認ください。