近年、簡単にネットショップを作成したりオンラインモールへ出店ができるWebサービスが増えたことに伴い、食品を仕入れて販売するお店や手作りの食品を販売する個人も増えてきました。
そんななかで、
お店を開設してみたいけど、食品を売る場合はネットショップを作るだけじゃなく何か手続きや許可をとる必要ってあるの? それってどこに聞けばいいの? 具体的にどんなことをしていいか分からないからちょっと不安…!
という方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、仕入れた食品や手作りした食品を販売する際に必要な許可の違いや、そもそもどんな種類の許可があるのか、販売で気をつけることなど、ネットショップ(ECサイト)を開設して食品を販売したい人が知っておきたい情報をまとめました!
※この記事は、東京都内で開設したい方向けの内容が主になります。
各都道府県や地域によって条例や必要な条件が異なる可能性がありますので、ネットショップを始める前は必ず所管の各保健所に問い合わせて詳細をご確認ください。
目次
食品をインターネットで販売するにはどんな許可・手続きが必要なの?
インターネットで食品販売を行うには、実店舗で販売する場合と同じく許可と資格が必要になります。
手順通りに手続きを行えば難なく取得できます。
必要な許可と資格は以下の2つです。
許可…食品衛生法に基づく営業許可
資格…食品衛生責任者
※開設する地域によって必要な条件が異なることがありますので、各地域の保健所に確認しておきましょう。
- ・東京都の問い合わせ先➜営業許可に関する問い合わせ
- ・全国の保健所情報➜保健所管轄区域案内
ここからは、必要な許可「食品衛生法に基づく営業許可」と資格の「食品衛生責任者」について解説していきます。
食品衛生法とは?
食品衛生法とは、食品関連の衛生管理や食中毒などを防止して、安全性を確保するために1947年に施行されて2018年に改正された法律です。
食品の安全性確保や、衛生上の危害発生を防止するために必要なものとなっています。
この法律は、食品を取り扱う全事業者が対象になり、店舗だけでなく食品の容器包装を扱う企業も遵守する必要があります。
食品衛生法に基づく営業許可って何? 対象業種は?
食品衛生法に基づく営業許可とは、都道府県別に定められた業種別の公衆衛生基準です。
以下のようなケースでは、食品衛生法に基づく営業許可が必要です。
- ・食品を生産して販売したい
- ・食品に関する事業(容器製造含む)を新たに始めたい
- ・仕入れた食品をインターネットや店舗で販売したい
- ・学校、病院など多数の人に食品を提供する
※農業および水産業のみの場合は、現在は必要ありません。
食品衛生法に基づく営業許可の対象業種一覧
調理業 |
1.飲食店営業 2.調理機能を有する自動販売機により食品を調理し、調理された食品を販売する営業 |
販売業 |
3.食肉販売業 4.魚介類販売業 5.魚介類競り売り営業 |
処理業 |
6.集乳業 7.乳処理業 8.特別牛乳搾取処理業 9.食肉処理業 10.食品の放射線照射業 |
製造業 |
11.菓子製造業 12.アイスクリーム類製造業 13.乳製品製造業 14.清涼飲料水製造業 15.食肉製品製造業 16.水産製品製造業 17.氷雪製造業 18.液卵製造業 19.食用油脂製造業 20.みそ又はしょうゆ製造業 21.酒類製造業 22.豆腐製造業 23.納豆製造業 24.麺類製造業 25.そうざい製造業(そうざい半製品を含む) 26.複合型そうざい製造業 27.冷凍食品製造業 28.複合型冷凍食品製造業 29.漬物製造業 30.密封包装食品製造業 31.食品の小分け業 32.添加物製造業 |
このような食品を取り扱う業種では、「食品衛生法に基づく営業許可」を保健所でもらう必要があります。
なお、令和3年6月より「営業届出制度」がスタートしたことにより、上記の32業種に当てはまらなくても、届出対象外の業種とされていない場合は、届出を提出しなければならなくなりました。
営業届出制度について詳しくは、厚生労働省の営業許可・届出に関する情報にてご確認ください。
続いて、必要な資格である「食品衛生責任者」について解説します。
食品衛生責任者って何? 食品衛生管理者との違いは?
食品衛生責任者とは、食中毒や食品衛生法の違反にならないように、食品衛生上の管理を行う資格を有した者のことです。
店舗や施設ごとに1名以上の食品衛生責任者が必要です。
食品衛生責任者の主な役割として以下の内容が挙げられます。
- ・食品や食品に関する店舗や備品の衛生管理
- ・食品を取り扱う人への改善措置の提言
- ・食品を取り扱う人への衛生教育
- ・保健所が実施する講習会の受講
食品衛生責任者になるためには、「公衆衛生学」「衛生法規」「食品衛生学」の養成講習会を受講しなくてはなりません。
しかし、次の資格をもっている場合は、受講せずに食品衛生責任者になることができます。
栄養士 | 製菓衛生師 | と畜場法に規定する衛生管理責任者 | 船舶料理士 |
調理師 | 食鳥処理衛生管理者 | と畜場法に規定する作業衛生責任者 | 食品衛生管理者、食品衛生監視員の資格を有する者 |
食品衛生責任者は、お客さまに食品を安全に届けられるように手助けしてくれるプロです。販売する食品が健康被害を生む可能性を低くするためにも必ず必要な資格です。
食品衛生管理者との違い
食品衛生責任者と類似しているものとして、食品衛生管理者というものがあります。食品衛生管理者は、製造または加工の過程において衛生的に管理されているか監督する人で、添加物の製造または加工を行う各施設に1人は必要です。
食品衛生責任者と食品衛生管理者との違いはこのようになります。
食品衛生管理者 | 全粉乳、乳製品、食肉製品、食用油脂、添加物などの特定食品を製造等する施設に1名置く必要がある |
食品衛生責任者 | 飲食店や販売店、食品製造施設などに1名置く必要がある。 |
製造施設には食品衛生管理者が必要になり、販売する場合は食品衛生責任者が必要になります。
ここまで紹介した「食品衛生法に基づく営業許可」「食品衛生責任者」が食品を販売するために必要なものとなります。
ここからは、食品を作ったり仕入れたりしてネットショップで販売するまでの具体的な流れや営業許可に必要な資格、条件について詳しく解説していきます。
食品を作ってネットショップ(ECサイト)で販売したい場合
ネットショップでも施設で販売を行う場合と同様、食品を作って販売するには「食品衛生責任者」「食品衛生法に基づく営業許可」が必要です。
食品の販売が初めての人の多くは、何から手を付けていいか分からないかと思います。
ここでは、これから資格や許可を取得する方に向けて、食品を作って販売する際のポイントや営業許可を取得するまでの基本的な流れを紹介します。
食品を作って販売する際に押さえておきたいポイント
まず押さえておきたいポイントはこちらの4つです。
- ①自宅など他の用途に使用する場所では、食品を作り販売するときに異物混入の可能性があるので別部屋が必要
- ②作る食品に応じた保健所の営業許可が必要
- ③営業許可を受けるためには、食品衛生責任者と営業施設の構造などを満たす必要がある
⇒営業施設の構造などに関して詳しくはこちらへ - ④食品表示法などの法令に適合する表示が必要
⇒食品表示の(食品の表示制度)に関して詳しくはこちらへ
このように、自宅と食品を取り扱う場所を分け、資格や食品表示に関する知識が必要になります。
以上のように実店舗をもたずインターネットのみで販売する場合も、すぐ販売を開始できるわけではありません。
場所や知識の確保に合わせて、以下の流れで営業許可を取得していきましょう。
営業許可を取得するまでの基本的な流れ
以下の1〜6の流れで取得を目指します。
1.保健所へ事前相談に行く | 施設の工事着工前に図面等を持参の上、必ず保健所へご相談ください。 |
2.営業許可申請を行う | 営業許可に必要書類は、営業許可申請書・営業設備の大要・配置図・許可申請手数料・登記事項証明書・水質検査成績書・食品衛生責任者手帳です。 |
3.施設検査の日程調整 | 保健所の担当者と施設の確認検査の日程等について相談する。 |
4.施設の確認検査 | 施設基準に合致しているかを保健所の担当者が確認します。施設基準に適合しない場合は許可がおりません。 |
5.営業許可書の交付 | 施設基準に合致していることが確認できたら、営業許可書交付予定日のお知らせが交付されます。営業許可書交付予定日のお知らせおよび認印を持参して、保健所で営業許可書の交付を受けてください。 |
6.営業開始 |
営業許可書交付前に施設を使用して食事の提供などはできません。
また、施設等に変更が生じたり廃業した際は、保健所への届け出が必要です。
※上記は東京都福祉保健局の流れを前提にしているので、詳細は各都道府県の保健所に問い合わせてください。
営業許可を取得するためには、他にも必要な要件があります。
営業許可を取得するために必要な要件
営業許可を取得するために「食品衛生責任者の資格取得」と「施設基準」を満たす必要があります。
食品衛生責任者の資格取得について
まず、食品衛生責任者の資格を取得するために「食品衛生責任者養成講習会」を受ける必要があります。
食品衛生責任者養成講習会は、東京都内の場合、一般社団法人東京都食品衛生協会が実施しています。日程、受講方法などは、一般社団法人東京都食品衛生協会を参考にしてください。
※平成9年4月1日以降、東京都以外で受講された食品衛生責任者養成講習会の修了証書は、東京都内でも有効です。
講習内容は、「衛生法規(1時間)」「公衆衛生学(1時間)」「食品衛生学(3時間)」の午前9時45分〜午後4時30分の6時間となっています。
費用として、10,000円(教材費含む)が受講当日に必要です。
2つの施設基準「共通基準」「特定基準」について
営業許可を受けるために、2つの施設基準「共通基準」「特定基準」を満たす必要があります。
共通基準には、営業施設の構造と食品取扱設備、汚物処理が含まれます。
十分な耐久性があり、排水がよく床から1メートルまで耐水性で清掃しやすい構造などが基準になります。
食品取扱設備や汚物処理は、衛生的な対応を行えるかという点を見られます。
特定基準では、業種により規定内容に違いがあります。
飲食店は、冷蔵設備・洗浄設備・客席・給湯設備・客用便所などに合わせた規定を満たす必要があります。
「共通基準」「特定基準」について、詳しくはこちらで解説されていますので詳細な規定を確認しましょう。
食品を仕入れてネットショップ(ECサイト)で販売したい場合
こちらでは、食品を仕入れて販売する場合の流れについて解説します。作って販売するパターン同様、「食品を仕入れて販売する際にまず押さえておきたいポイント」・「営業許可を取得するまでの基本的な流れ」・「営業許可を取得するために必要な要件」の3つについて紹介していきます。
食品を仕入れて販売する際に押さえておきたいポイント
食品を仕入れてネットショップで販売するには、この3つのポイントを押さえておきましょう。
- ①食中毒や異物混入などを起こさないために、食品衛生に関する知識と設備が必要
- ②仕入れた食品に応じた、保健所の営業許可が必要
⇒東京の地域別保健所の連絡先はこちらへ - ③営業許可を受けるためには、人的・設備要件を満たす必要がある
仕入れた商品を販売するときも、保健所の許可や食品衛生に関する知識が必要になります。また、仕入れた食品を小分けにしたり詰めなおすには、販売のための許可とは別の種類の営業許可が必要になることがありますので、保健所に確認しておきましょう。
次に保健所で営業許可を受ける流れについて解説していきます。
営業許可を取得するまでの基本的な流れ
基本的に以下の流れで取得します。
【事前相談➜営業許可申請➜施設検査の打合せ➜施設の確認検査➜営業許可書の交付➜営業開始】
施設ごとに営業許可を取得する必要があり、施設ごとに食品衛生責任者を置く必要があります。
営業許可を取得するために必要な要件
営業許可を取得するには「食品衛生責任者の資格」と「施設基準」を満たす必要があります。
包装食品のみを販売する場合は、食品を扱う施設の所在地を所管する保健所等にご相談ください。
所管する保健所に関する問い合わせ先は、こちらから確認できます。
【食品EC】売れるショップを作るには?
食品のECを成功させるには、食品販売ならではのネットショップの作り方があります。
15年以上もネットショップ作成を支援してきたカラーミーショップが、「売れる食品ECサイトの共通点」をまとめた資料を無料で提供中です。
ネットで食品販売をする上で、知っておくべき食品表示に関する法律や条例とは
ここからは、食品をネットショップで販売するときに押さえておくべき法律などを紹介していきます。
※こちらは東京都内での食品販売を例にしているので他の地域での法律や条例に関しては別途問い合わせてください。
食品表示法
2015年まで食品の表示は「商品衛生法」「JAS法」「健康増進法」という3つの法律で規制されており、事業者にとっても消費者にとって分かりにくいものでした。
その複雑化された食品表示の基準が一つの法律にまとめられ、分かりやすくなったものが「食品表示法」です。
容器包装に入れられた加工食品では食品に関する表示が義務付けられており、その表示のことを「食品表示」と言います。食品表示では、以下が基本の表示事項となっています。
名称 | 原材料名 | 添加物 | 内容量 |
栄養成分 | 消費期限または賞味期限 | 保存方法 | 製造者等の名称及び住所 |
特に重いアレルギー症状を発症させる「特定原材料」が含まれている場合は、すべてを表示しなくてはいけません。「添加物」を使用している場合は、添加物を分けて表示する必要があります。
食品表示法の詳細を知りたい方は東京都の公式youtubeで解説されているのでぜひ見てみてください。
➜大切です!食品表示 理解(わか)って作ろう新表示編2 食品表示法前半
➜大切です!食品表示 理解(わか)って作ろう新表示編3 食品表示法後半
米トレーサビリティ法
米トレーサビリティ法では、米穀事業者に対して下記の2点を義務付けています。
- ・お米を含む加工品に問題が発生したときに流通経路を特定するために、生産から販売・提供までの各段階を通じて取引の記録を作成・保存
- ・お米の産地情報を取引先や消費者に伝える
対象事業者は、対象品目の販売、輸入、加工、製造や提供を行うすべての方となっています。
対象品目は「もみ・玄米・精米・砕米」やお米を使って作られた弁当やお酒、お餅などです。
米トレーサビリティ法の詳細を知りたい方は、東京都の公式youtubeにて動画で解説されているので見てみてください。
➜大切です!食品表示 理解(わか)って作ろう新表示編4 米トレーサビリティ法
景品表示法
景品表示法は、商品やサービスの品質、内容、価格等を偽った表示の規制により、消費者の利益を保護する法律です。主に下記の表示などがポイントになります。
優良誤認表示 | 商品のサービスや品質について、実際よりも著しく優良であると示す表示と内容物に違いがある場合が対象です。 |
有利誤認表示 | 価格や取引条件に関して、実際よりも有利であると誤認させる。 |
そのほか、誤認される表示 | そのほか、内閣総理大臣が指定する紛らわしい表示をいいます。 |
テレビや広告、口頭でのサービスも含まれます。
不当な表示があると消費者庁や都知事から措置命令が発令されます。
措置命令を受けた事業者には、課徴金が課せられることもあります。
景品表示法の詳細を知りたい方は、東京都の公式youtubeで解説されているので見てみてください。
➜大切です!食品表示 理解(わか)って作ろう新表示編5 景品表示法
計量法
計量法では、表記量と実際の量の誤差を一定範囲にすることを義務づけています。
表示の内容よりも多くても、正確な計量と表示が異なるので対象になります。
乾燥による自然減少でも計量に差が生まれるので、注意が必要です。
密閉した時に内容量として、特定物象量を表記することも義務づけられています。
以下の特定物象量の表記が必要です。
名称 | 原材料名 | 添加物 | 原料原産地名 |
内容量 | 固形量 | 内容総量 | 消費期限 |
保存方法 | 原産国名 | 製造者 | 栄養成分表示 |
計量法の詳細を知りたい方は東京都の公式youtubeで解説されているので見てみてください。
➜大切です!食品表示 理解(わか)って作ろう新表示編6 計量法
健康増進法(誇大表示の禁止)
健康増進法では「著しく事実に相違する」「著しく人を誤認させる」内容の表示が禁止の対象となります。
食品の製造業者、販売業者のみでなく、新聞社、雑誌社、放送事業者、インターネット媒体社等の広告媒体事業者による誇大表示が対象となります。
「食べると病気が治る」など虚偽誇大であると疑わしいものは、表示内容に関与した広告媒体事業者等にも健康増進法に基づく措置をとることがあります。
健康増進法(誇大表示の禁止)の詳細を知りたい方はこちらを見てみてください。
➜食品の虚偽誇大表示の禁止
東京都消費生活条例
東京都消費生活条例では、法令で規定のない品目について表示をするよう事業者に義務付けています。
現在、東京都が義務付けている食品表示は以下の4品目です。
調理冷凍食品 | 原材料配合割合、原料原産地名 |
かまぼこ類 | でん粉含有率、原材料配合割合 |
はちみつ類 | 品名、原材料の割合又は重量 |
カット野菜及びカットフルーツ | 加工年月日 |
東京都消費生活条例の詳細はこちらをご確認ください。
東京都以外の地域の方は、各都道府県のホームページでの食品表示をご確認ください。
ネットで販売するなら取り扱う食品の衛生管理も非常に重要
ネットショップやテイクアウトは作ってから食べるまでの時間が長くなりますので、衛生管理は非常に重要です。
季節を考慮したお届方法や食中毒リスクも加味する必要があるでしょう。
食品は温度管理をしっかり行い、保管・配送などに適したメニューで菌の増殖を防ぎましょう。
調理をする際は、手を清潔に保ち、器具等は使用用途で使い分け、洗浄消毒したものを使用することも大切です。
実店舗にないメニューをネットショップで販売するときや、店内メニューでも販売の方法・規模が変わるときは新たな許可が必要になることもありますので、ご不明な点がありましたら最寄りの保健所にお問合せください。
食品の衛生管理の詳細はこちらをご確認ください。
まとめ
ネットショップで食品を販売するには以下の許可や資格が必ず必要です。
1.食品衛生法に基づく営業許可
2.営業許可のために「食品衛生責任者」の資格
地域によってはさらに必要なものがあることもあるので、まずは開店する場所を管轄している各保健所に事前に相談しましょう。