和ろうそくの製造工程
和ろうそくってどうやって作るんですか?
スタンダードな櫨(はぜ)ろうそくは基本的にすべて手作業で作ってます。
手作業なんですか。
はい。工程をざっくり説明すると、3つに分かれてます。灯芯づくり・手掛け・色付け。
灯芯…? 手掛け…?
「手掛け」っていうのは、ろうそくの胴体部分をつくっていく作業。「灯芯」っていうのは火をつけるこの部分のことです。
和ろうそくの灯芯って、太いから、燃え尽きないんです。だから芯が長くなったら切ってメンテナンスする必要があるんです。それを「芯切り」って言うんですけど…やってみます?
いいんですか。難しそう…。
全然難しくないですよ〜。上1cmくらい残して、ピンセットでつまんで、ピッ!と。
ピッ…!
どうですか? 芯が伸びてたらそこが影になって照度が落ちるんですけど、切ることで明るくなったでしょ。
たしかに、ほんのり明るくなった気がする!
こうやって灯の「おもり」をすることで、ものに対して手をかけることが生活を豊かにしてくれるんじゃないか?というのを伝えたいんです。放っておいていいもんばっかりですからね、今の世の中は。たしかにすごく便利なんだけど、便利と引き換えになくなるものもいっぱいあると思っています。
なるほど。
それじゃ、工房を案内していきますね。
女性職人が丁寧につくりあげる「灯芯」
ここで作業されてるんですか。
そうです。
これが灯芯です。ちょっと持ってみてください。
わ、軽いんですね。
和紙で軸を作って、畳とかで使う「い草」の髄を巻きつけてるからめっちゃ軽いんですよ。
なるほど。灯芯づくりはどれくらい時間がかかるんですか?
やったことないし、わからないですね…。
やったことないんですか!
灯芯づくりは、昔から女性の方が作ってくれているので。…どれくらいかかるか、彼女らに聞いてみるといいですよ。
聞いてみます。
お仕事中すみません。灯芯を1本つくるのにどれくらい時間がかかるんですか?
お母さん: 5分くらいかねぇ。
すごく緻密な作業なんですね。お母さんみたいに一人前になるにはどれくらいかかるんですか?
お母さん: 一人前? そりゃいつまでも無理や!あの太い灯芯つくったのは、92歳のおばあちゃん。彼女なんか70年くらいやってるよ。
ええっ!(笑)
お母さん: 私なんて最初作ったときなんか、難しすぎてギブアップしたよ。三日間やって「もうやりたくない!」って。(笑)
す、すごい…!
絶妙な温度管理が肝心な「手掛け」
工程でいうと次は「手掛け」ですね。
はい。僕がろうそくの胴体部分をつくります。
この串に灯芯を差して、40~50度くらいに温めたろうを掛けて、冷やし固めて、塗り重ねるのを繰り返してバウムクーヘンみたいにつくっていく。
この作業のむずかしいところは?
原料の櫨(はぜ)の特徴で、ろうが固まりだす温度が早いんです。だから温度調整が大変です。冷えてきたら、この小さい釜に鍋で熱したロウを少しずつ足して、調整していきます。
原料の櫨ってどこで採れるものなんですか?
今はもう、九州で3社しかつくっていないですね。
すごく貴重なものなんですね。
櫨は高価だから時代とともに安価な材料に流れていってしまってるんですよ。でも、さっき見てもらったとおり、櫨ろうそくは灯の質が全然ちがう。この高品質な櫨ろうそくを作り続けることに僕らは誇りを持っているし、こだわり続けています。
繊細な違いも表現する「色付け」
米ぬかろうそくは、最後に色付けの作業があります。これも女性たちのお仕事です。
やっぱり手作業なんですね。
色をつけたら最後に検品して、箱に詰めたら出荷できる状態になります。
あっ、こんなに小さなろうそくもあるんですね。
そうそう!これ、新商品なんですけど、パッケージにもすごくこだわってて…。
小さなろうそくに込められたメッセージとは…?
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