目次
会社勤めと両立しながらECサイトの運営をスタート

お二人が「ミクロアパートメント」を立ち上げたきっかけを教えてください。
真由美さん:
私たち夫婦はとにかくファッションが大好きで。長女を授かってからいろいろ調べていくうちに、それまで一切無縁だった子ども服の世界にどっぷりハマってしまったんですよね。
潮人さん:
「こんな仕事にいつか就いてみたい」という気持ちが心の中でずっとくすぶっていて。当時はまだ会社勤めをしていましたが、ある時「いつかじゃなくて今やらないと」と思い切って、妻に「洋服屋さんを始めたい」と伝えたんです。
そのときの真由美さんの心境はいかがでしたか。
真由美さん:
「来たか」と思いましたね。でも、「なんでそう思ったの?」と詳しく話を聞いてみたら、私もどこか納得する部分があって。
当時、長女は小学3年生、次女はまだ2歳くらい。夫には「今まで以上に頑張ってくれるよね?」という前置きをした上で、家にいながらできることを考えた結果、ECサイトなら空いた時間に作業できるという結論に至りました。

潮人さん:
当時は僕もまだサラリーマンなので、日中はずっと会社勤め。今の立場で生計を立てながら新しく洋服屋さんを始める方法をいろいろ考えた結果、ECサイトなら空いた時間に作業できるよねっていう結論に至りました。
平日の夜や休日を使って梱包し、翌日に集荷してもらえばできるかもしれない、と。
真由美さん:
次にレディース、メンズ、もしくは子ども服、どこに絞ろうか?を考えたとき、主人も私も一番好きなのは子ども服だったので、子ども服のECサイトをやろう!という感じで決まっていきましたね。
潮人さん:
本屋さんで『洋服屋さんを始めるには』とか『今日から始めるホームページ』みたいな本を買ってきて、ゴールデンウィーク中にお店を完成させました。
海外商品の仕入れにはインスタDMを積極活用
最初はどんなECサイトでしたか?
真由美さん:
当初は大手モールしか思い浮かばなかったんですよ。
私自身も洋服・雑貨はいつもモールで買ってるし、当時は「ネットで販売=モール」だとばかり思ってたので。マニュアル研修付きのプランで出店契約して、同時並行で商品の仕入れもしながら開店準備をしてました。
最初の仕入れはどのようにして行いましたか?
潮人さん:
初めては大阪の展示会だったかな。洋服の展示会をネットでいろいろ調べて足を運んでみたんですよ。まだお店もない、ホームページもない、別の会社のサラリーマンが何しに来たんだ?って感じですけど(笑)。

膨大な量の服の中から自分たちの店に合うものを選んでオーダーするっていう流れをこのとき初めて知りました。色もサイズも種類豊富すぎて、とてもじゃないけど選びきれなくて。何時間も会場で過ごして、結局Tシャツのような定番アイテムだけをセレクトして帰りました。
真由美さん:
そんな中、初めて私たちのことを受け入れて、一緒にやりましょうと言ってくださった方がいて。
偶然にもその方はこれからブランドを立ち上げる、私たちはこれからショップを立ち上げるっていうタイミングだったんです。商品のテイストも女児向けのキレイめなお洋服だったので、まずはそれをメインに仕入れました。
ECサイトは始めてもすぐに売れるわけではないと思うのですが、ミクロアパートメントさんが売れるようになるにはどれくらいかかりましたか。
潮人さん:
商品をアップして2週間くらいは、全然売れなかったですね。
初めて売れたときのことは今でも覚えてます。深夜2時くらいにピコンと通知が入って、最初にお取り扱いしたブランドのスカートが1着だけ売れてたんですよ。僕たち発送の仕方も全然知らないし、まだまだ売れると思ってなくて配送会社すら決めてなかったんですけど、そのスカートを発送したのが最初です。
真由美さん:
その2カ月後くらいから「木のおもちゃ」が突然売れだしました。
当時、木のおもちゃは高価なうえデザインの優れたものがほとんどなかったんですが、そんな中で私たちが扱い始めたブランドが次第に売れてきたんですよね。

当時は海外風のインテリアがブームだったこともあり、その後もヨーロッパのガーランドや室内に飾れる鯉のぼりが立て続けによく売れて……お洋服もそれに合わせて少しずつ売れるようになっていったかな。
お洋服ではなく雑貨が最初のきっかけでしたが、当面の運転資金を得て取扱ブランドを増やす流れには繋がりました。
海外ブランドの仕入れはどのようにして進めていますか?
真由美さん:
インポーターといって、海外のお洋服を専門に取り扱う代理店があるんです。代理店が日本国内にないブランドは、直接やりとりしないといけないんですけど。
そのやりとりは英語で行うんですか?
潮人さん:
もちろん英語です。僕ら英語はできないので、翻訳機能を使って何回もやりとりしてます。なかなか意図が伝わらないと急に電話がきたりするんですよ、スペインとかから。
真由美さん:
突然の電話がいちばん困っちゃいますね! スペイン語なんてまったくわからないので「ソーリー、メール プリーズ! メール プリーズ!」って(笑)。
潮人さん:
海外のブランドはまず連絡してみて返信が来たらラッキーですね。まったく返ってこないところもたくさんあります。仲良くなるとサンプルを送ってくれるので、実物の生地感などを見てオーダーする感じです。
これからECサイトを始めてみたい方にとって、海外からの仕入れは非常に難しい挑戦になるかと思いますが、多田さんもやはり苦労されているんですね。
潮人さん:
昔はメールだけだったけど、今はInstagramがあるので海外ブランドさんとの距離は近くなりましたよ。インスタで直接DMを送れるぶんショップの状況や雰囲気もわかってもらいやすくて、話が早くなったと感じます。
真由美さん:
インスタはお客さまとだけでなく、ブランドさんとのやりとりにも便利ですね。最近は逆にブランドさんのほうから「うちのブランドはどうですか」とDMでお声掛けいただくこともあります。
国内外の商品をセレクトする上で、こだわっているポイントは何でしょうか。
潮人さん:
僕はいつも「自分の娘に着せたいもの」を仕入れる気持ちで想像してます。
あとは単純に自分たちの好きなデザイン、好きなテキスタイルであること。逆に言うと、そのときすごく流行っているものでも自分たちが好きじゃなければ絶対に仕入れません。
真由美さん:
そのほうが、私たちも熱を持ってお客さんにおすすめできるんですよね。

会社勤めと二足のわらじ! ポップアップショップ出店秘話
ネット販売から始まったミクロアパートメントさんが実店舗をオープンしたのには、どういった経緯があったのでしょうか。
潮人さん:
モールで販売を続けながらサラリーマン生活を続けていたとき、天神にあるイムズという商業施設からお声掛けいただいて、ポップアップショップを展開することになったんですよ。
真由美さん:
もともとは1~2カ月の期間限定だったのを、結局半年近くやってましたね。
ECサイトで告知したら、普段利用してくれている全国のお客さまがポップアップショップを訪ねてくれたんです。たまたま福岡に遊びに来ていた関東の方とか、九州の南のほうの方とか。「いつも利用してます」「実際に手に取って見れて嬉しいです」って皆さんに言っていただけて。
潮人さん:
そう、それで路面店をやってみたい気持ちがふつふつとね。
当時の潮人さんは、ポップアップショップを運営しながら会社勤めを……?
潮人さん:
そうです。テナント出店する上で「店頭に誰もいない時間を作らない」っていうルールがあったので、妻の友達3人にパートとして来てもらい、5人体制でシフトを組んでました。

ポップアップショップを運営していた頃の一枚
毎朝、僕がスーツ姿でイムズに行ってレジを開け、パートの方が出勤したら入れ替わりで会社へ。
営業時間中は妻とパートの方が交代で勤務し、僕は仕事終わりの20時にレジ締めに向かう。それが終わったら倉庫兼事務所に移動してECサイトの発送作業。遅くまで梱包やメール作業をこなして家に帰る日々でした。
当時は発送作業がとにかく間に合わなくて、深夜の営業所にもよく持ち込んでましたね。
真由美さん:
本当、あのときが一番忙しかったよね。
潮人さん:
それで、二人とも体を壊した(笑)。
壮絶な忙しさですね……。
真由美さん:
商業施設ってほとんど休みがないですからね。
パートで入ってくれるお友達も土日はなかなか出られないから私がずっと店頭に立つんですけど、子どもを預けられるところがなくて、お店の隅で一緒にいて遊ばせたりして。
お二人ともすごすぎます……! ポップアップ出店から実店舗オープンまではどれくらいかかりましたか。
潮人さん:
2015年の3~8月がポップアップで、その年の11月に実店舗オープンですね。実店舗を持つことを決めたタイミングで、僕も会社をやめました。

実店舗の一角に設けられたキッズスペース、Instagramで見るたびに心が和みます。これはポップアップショップを運営したときのご経験によるものでしょうか?
潮人さん:
かなり影響を受けたと思います。
真由美さん:
うちの店って家族連れのお客さんがたくさん来られるんですよ。
子どもがリラックスできる空間があれば、お父さんお母さんが交代で子どもと遊びながら服を探せますからね。寝てる子はここでゴロンと休ませてあげられますし、皆さん楽しんでくれるので私たちもすごく心地よくて。
いつも来てくれるお子さんでも遊び方の変化で成長を感じられて、それがまたお客さんとの会話に繋がるので、そんなスペースを持てて本当によかったと思います。

ECサイトでも、店頭接客に近い雰囲気を
実店舗をオープンされた頃に、ECサイトをモールからカラーミーショップへお引越しされたそうですが、独自ショップに切り替えようと思ったのはなぜですか。
潮人さん:
モールでやってると、お客さまはどうしても「モールで買い物をした」って感覚になってしまうんですよね。どこまで頑張っても「ミクロで買い物をした」とは思ってもらえなくて、それが自分たちの中では悔しかったんです。
真由美さん:
私たちの周りには自分たちでお店をやっている友達が多いんですけど、何人かにカラーミーショップを勧めてもらいました。最初の立ち上げも商品掲載もスムーズだと聞いたので、周りの信頼できる人たちが勧めてくれるなら間違いないなと。
潮人さん:
最初のサポートだけは前からカラーミーを使ってる友達にお願いして、今はもう僕らだけでやってます。
実店舗とECサイトの運営を両立する中で、心がけている点はありますか。
真由美さん:
遠くの方にもネット上で実店舗と同じような接客ができればいいなとは常々思ってます。
商品を紹介するにしても、ちょっとしたお問い合わせメールの返信も、店頭での会話に近い雰囲気で。そうすると、福岡旅行のついでに立ち寄って「行きたいと思ってたんです」と言ってくださる方もいたりして、実店舗にもいい意味で作用するんですよね。
Instagramでも、店頭のあたたかい雰囲気がよく伝わってきますよね。日頃の更新でこだわっているポイントがあれば教えてください。
真由美さん:
自分自身、いろんな人やお店を見ていて「いいな」とか「取り入れたいな」と思う部分もありますけど、他と似たものではなくオリジナリティをどう出せるかですよね。
私たちの扱うベビー・キッズのアイテムは単純にかわいらしいけど、より綺麗に、よりかわいいと思ってもらえるよう、映り込み方には一枚一枚こだわって撮影しています。

それから、ECサイトのお客さまに喜ばれるのってやっぱり着画なんですよね。
着たときの雰囲気が伝わったらいいなと思うので、実店舗に来てくれたお客さまが試着したときは可能な限り撮影させてもらって、掲載可否を確認した上でSNSでご紹介させていただいてます。
いろんなお子さんが着ているだけで、日々の投稿にも動きが出ますよね。
真由美さん:
お店に来られない方もたくさんいらっしゃるので、商品紹介だけでなく私自身の気持ちや、今日こんなことがありましたとかも書いたりしてます。
誰に伝えるわけでもないんですけど、どこかで共感してもらって、いつかお店に行ってみたいなと思ってくださる方もいらっしゃるので。
インスタはとにかく「リアル」ですね。
私たちの子どもはもう大きくなりましたが、子育てをしている立場はどこも同じ。何かあったら相談できる一家族であり、ショップオーナーでもあるという気持ちで全てをさらけ出して、共感を持ってもらえたらいいなと思います。
始めるより続けるほうが難しい、それでも始めてみて
今後のミクロアパートメントの目標を教えてください。
潮人さん:
いい意味であまり変わりたくないんですよね。夫婦2人だけのお店なので、お客さまとの距離は今と変わらずずっと近いままで。
うちは子ども服のお店なので、10年前のお客さまたちは早ければもう成人してるんです。あと数年もすればその子たちにも子どもができて、ミクロのお洋服を着てくれる「2代目」のお客さまが生まれるかもしれない。今はそれを目標にしてます。

真由美さん:
なので私たちは、変わらないスタンスでお迎えできる状態をずっと作っていたいですね。実店舗も一つ、ECサイトも一つ。同じ場所をずっと温めていきたいから、多店舗展開をするつもりはありません。
いつか「2代目」のお客さまが来る日が楽しみですね。
最後に、今後ネットでセレクトショップを始めてみたいと考えている方、好きなことを仕事にしたい方に向けてお二人からぜひメッセージをお願いします。
潮人さん:
やりたいことを始めるまでは悩むと思いますが、意外と始めればどうにかなると思います。やるまでには勇気がいるかもしれないけど、継続していくことのほうが100倍難しいので。
真由美さん:
まずは悩まずにやってみることですよね。
悩む時間はもったいないからまずは始めてみて、一日一つずつでもいいから続けてほしいです。パッと始めてパッと成果なんて絶対出ないですからね。続けることさえできれば、何年後かには自分のしたかったことが形になったと思えるんじゃないかな。
ありがとうございます。正直お二人は「やめようかな」と思ったことはありますか。
潮人さん:
ないです。
真由美さん:
うん。「今日めちゃくちゃ発送多いな……」とか「あれだけ頑張ったのにどうして反応がないの?」と思うことはありますけど(笑)、やめたいと思ったことはないですね。
潮人さん:
やっぱり一度きりの人生、やりたいと思うことは一つずつクリアしていけるほうが、より豊かな人生になるんじゃないかなと思います。
今日は素敵なお話をありがとうございました!

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