ECの集客に利用されているGoogleショッピング。少ない予算で高い効果を見込めると評判ですが、EC事業者は必ず取り組んだほうがいいのでしょうか?
今回は、Googleショッピングを利用するメリットや活用方法などについて、Yuwai株式会社の田中さんに詳しく伺いました。
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目次
田中さんについて教えてください。
最初に、田中さんの自己紹介をおねがいします。
デジタルやインターネットを駆使して企業と消費者をつなぐことを目的に、2023年にYuwai株式会社を立ち上げました。
当社の主要事業は、デジタルマーケティングやインターネット広告、Google ショッピング等のコンサルティングや、人材育成サポートなどで、おもにインハウスで広告運用を行なうEC事業者さんや広告代理店を支援しています。
じつは私自身は最初からマーケティング畑ではなく、「高専ロボコン」でおなじみの工業高専出身でもともとは理系畑。社会に出て1社目のNHK(日本放送協会)では、9年ほど放送エンジニアや営業に従事していました。
キャリアチェンジを決意したのは、地上派テレビ放送がアナログからデジタルに変わるタイミングで、このままだとやりたい仕事ができなくなりそうな状況になったからです。この先何十年もやりたいと思っていないことをやるのもつらいので転職を考えるようになり、転職エージェントに運用型広告の広告代理店を紹介されたのがきっかけで、運用型広告に従事するようになりました。
その後、縁あって運用型広告専門のコンサルティング会社、アナグラムに転職。理系の知識を活かしてアドテク(アドテクノロジー)の活用やレポートの作成、さらにはGoogleからローンチされたショッピング広告にも注力するようになりました。
とくに、Googleショッピング広告の黎明期からノウハウを積み上げてきたことが功を奏して、相談やセミナー登壇、インタビュー依頼が舞い込むようになり、今の幅広い活動につながっています。
Googleショッピングについて教えてください。具体的にどのようなサービスですか?
早速本題ですが、Googleショッピングがどういうものかおしえていただけますか?
Googleは、ECの商品情報などを集約した、「ショッピンググラフ」と呼ばれるデータベース(データセット)を持っています。そのデータを活用して、商品を見つけやすくする仕組みがGoogleショッピングです。
Googleマーチャントセンターに商品情報を登録して広告の設定をすると、Googleの広告枠に商品情報が画像付きで表示されるようになります。これがショッピング広告です。メインの表示場所は、Googleのキーワード検索結果の最上部。検索窓直下にあるショッピングタブをクリックした先にも、キーワードに関連する商品の広告が表示されます。
ほかにも、Webサイト内やYouTube視聴時の画面下など、Googleが提供しているサービスのあらゆるところに商品の広告が表示されます。
Googleショッピングを利用する主なメリットを教えてください
最大のメリットは、ユーザーに商品情報を見てもらえる機会が圧倒的に多いこと。
iPhoneでもAndroidでも、スマホの検索エンジンのデフォルトはGoogleですよね。検索全体の半数以上がモバイル経由なので、ほとんどのトラフィックがGoogleに集まるのは大きなアドバンテージです。
Google検索結果には検索キーワードに関連した商品が表示されるので、新しいトラフィック、つまり新しいお客さんを獲得しやすくなります。
他の広告プラットフォームと比較するとどんな点が違うのでしょうか?Google ショッピングの特徴や利点を教えてください。
Yahoo!やMicrosoftのBing、MetaのFacebookなどでもショッピング広告に似た商品の広告を表示するサービスを展開していますが、いちばん歴史が古いGoogleには、「クリックされやすい商品の見せ方」などの知見が豊富に蓄積されています。検索キーワードに基づいて、ユーザーと商品がもっともマッチされやすい媒体も、おそらくGoogleでしょう。
ショッピング広告の先行企業として、Googleが他媒体に与える影響は大きいですし、じつはどの商品広告サービスでもでも、広告配信に不可欠な商品フィードにGoogleの仕様を採用しています。なので、これから始めるならやはりGoogleショッピングがおすすめです。
小規模なECサイトでもGoogle ショッピングを活用できますか?また、取り組むべきでしょうか?理由もあれば教えてください。
Web集客には、攻めの集客と守りの集客があります。
Googleではショッピング広告が最上部に表示されるとお話しましたが、広告費をかけたほうが、より目立つ位置に表示されやすくなります。つまり、積極的にトラフィックを積みたい場合は、攻めの集客が有効だといえます。
一方、競合が広告費をかけて攻めの集客に取り組んでいる場合、何も対策しないとトラフィックを奪われる恐れがあります。自社のトラフィックを守るためにも、ショッピング広告を活用すべきです。
大手でも小規模なECサイトでも、ショッピング広告をやらない手はありません。1日いくらまでと予算設定もできるので、まだ利用していない事業者さんは、小額からでも試してみることをおすすめします。
ちなみに、Googleマーチャントセンターで広告の設定をしなければ、Googleショッピングを無料で利用できます。広告設定をすると広告枠と無料枠の両方に表示されるのが利点ですが、広告の利用をせず、まずは無料で始めても大丈夫。
ただし、私の経験上、検索結果に表示される割合は有料広告のそれに大きく劣るので、効果を感じにくいかもしれません。
Googleショッピングを利用したECサイトの成功事例
Googleショッピングを利用したECサイトの成功事例があれば教えてください。
利用企業の多くが成功していて、あるスポーツ系アパレルショップの例では、コンバージョン全体の4~5割がGoogleショッピング広告経由でした。それまでテキストを使った検索広告やディスプレイ広告中心だったので、ショッピング広告に出稿するだけで全体の底上げになったんですね。
ショッピング広告からの新規流入の割合は、少なくて2~3割、多いところで5割にのぼり、新規トラフィックの獲得にも貢献しています。
ショッピング広告は、通常の検索広告よりもクリック単価が安くて費用対効果が高いのが魅力です。当社が支援する企業さんも、ほとんどが広告費の大半をショッピング広告に割いています。
どのような商品やサービスがGoogleショッピングで特に成果を上げやすいと思いますか?逆に成果を上げにくいものもあれば教えてください。
とくに相性がいいのは、アパレルなど見た目で判断されやすい商品です。
反対に、相性があまりよくないのは衝動買いされなさそうな商品。ショッピング広告にはポリシー上、長文のランディングページは利用できません。なので、サプリやコスメなど、商品説明をじっくり読んで納得したうえで購入されるような商品は、Googleショッピングを利用するよりも、モールなどで使われているような丁寧に作り込んだランディングページを用意してショッピング広告以外の広告手法を採ったほうが効果的です。
また、お米やペットボトル飲料のまとめ買いなど玄関先までに届けてもらった方が楽な商品を除いては、生活用品など身近で安く手に入る商品もあまり向いていません。
押さえておくべき、Googleショッピングで商品登録する際のコツ
ECサイト運営者がGoogleショッピングを最大限に活用するためのコツやポイントなどはありますか?まずはこれだけをやってみた方がいいなどあったら教えてください。
Googleショッピング広告では、いちばん左上がトップポジションになり、表示順位は商品データの質(1商品に対して登録されている情報の種類の網羅性や値の正確性)や1クリックにかけられる上限の広告費などで判断されます。
Googleが求める情報をいかに適切かつ網羅的に登録しているかが重要なので、Googleマーチャントセンターには、価格やサイズ、色、GTIN(JANやEANやISBNコード)など、Googleが求める商品の情報たちに対してできるだけ詳細に入力しておくことをおすすめします。とくに、JANコードがある商品で空欄のままだと減点されるため、忘れずに入力してください。
商品画像も大切です。最初のうちは画像の準備に苦労するかもしれませんが、迷ったときは、Amazonさんが提供する学習コンテンツ「Amazon出品大学」が参考になります。グローバルに膨大な商品を扱うAmazonが推奨するメソッドがまとめてあり、商品画像についてもレクチャーしているので、それに従うのも賢い方法です。
Googleショッピングでは、一部の商品だけ広告を出すことも可能です。最初から全商品を登録する必要はなく、売上が大きいジャンルの上位商品をいくつか登録して様子見するのもアリです。高単価の商品や特定の注力したい商品だけなど、優先順位をつけて取り組んでもいいと思います。
なお、デフォルトのままだと全登録商品が広告として表示されてしまうので、Google広告の管理画面でどの商品を広告として表示させるかの設定変更が必要です。
他にも何か取り組んだ方がよいことはありますか?
Googleショッピングには編集基準などが設けられていて、商品情報の登録時には、広告ポリシーに合わせて商品のタイトルや表現を最適化する必要があります。ECサイトでは送料無料や20%OFFの表示などは引きになると思いますが、Googleショッピングではタイトルや説明文に送料無料やセールなどの文言を使うことは認められていません。
最適化する際に使えるのが、Googleマーチャントセンターの補助フィード。ECサイトから送られてきたデータの一部を上書きできる機能で、商品のタイトルなどを上書きで変更することができます。これによって、ECサイト上の商品名には送料無料や20%OFFなどの訴求を残しつつ、広告ではポリシー違反になるような表現を避けることが可能です。
タイトル修正のコツもお伝えすると、Googleの検索結果にタイトルは全表示されないので、商品選びの決め手になる文言をなるべく先頭に置くことが大切です。液晶テレビならメーカー名やサイズ、アパレルならブランド名など、商品を買う人がどんな検索をするのかと想像をめぐらし、最初におくべき大事な要素を探してみてください。
実際に検索して、検索結果の上位に表示されたショップの商品のタイトルを参考にしてもいいと思います。コツをつかんでしまえば、あとは機械的に作業するだけ。社内でタイトル編集のルールなど決めておけばメンテナンスの工数も減っていきますよ。
Googleショッピングの広告予算を設定する際のポイントは?
Googleショッピングの広告予算を設定する際のポイントはありますか?
事前に決めておいた個数や売上などの目標を念頭に置いて予算を考えることが重要です。
これはかなりざっくりとした計算で、本来はもっと色々な要素を加味する必要はありますが、例えば1つの商品を売るのに広告費を1,000円までかけてOKで、その商品が1カ月に10個売れば売上の目標を達成するなら、広告費は1万円となります。
売上目標が10万円で、目標とするROAS(広告費用対効果)を損益分岐点の200%に設定する場合、ROASの計算式「売上÷広告費×100(%)」にあてはめると、広告費の上限は5万円と導き出されます。
顧客単価が平均5,000円だとすれば5万円で20件のコンバージョンを獲得できれば売り上げ目標の10万円に達するので目標とするコンバージョン単価は2,500円くらいを目指せば良いことになりますね。
事前に目標を立てるのが難しい場合は、1カ月いくらと決めてテスト的に始めてもいいと思います。1カ月の予算が3万円なら、1日に使える予算を1,000円に設定。ROASの目標を300%にするなら、Google広告の入札設定で目標値を300%と設定します。
Google広告は目標とするROASを設定すれば、その目標を達成するよう自動的に入札を行い、広告の表示機会を調整してくれます。最近はほとんどが自動入札で、昔よりラクになりました。
ショッピング広告では、1クリックあたりにかけることができる上限金額や商品データの質、検索キーワードと商品の関連性の高さなどが点数化されて、総合点が高い順に左上から表示されるようになっています。
またGoogle広告の自動入札を利用すると、購入に至る可能性が高いユーザーには上位に、購入に至る可能性が低いユーザーには順位を下げて表示してくれます。たまに、「自社の商品が出てこない」と相談を受けることもありますが、自分に表示されないからといって、他の人にも表示されていないわけではありません。
単純にターゲットではないと判断された場合もありますし、時間帯に偏りが出ないように表示させているため、予算が小さい場合は何回かに1回しか出てこないこともあります。Google広告の表示回数は、Google広告の管理画面で見ることができるので、実際の数値はそちらで確認してみてください。
ちなみに、左上の1番目に表示されている商品でも、低い入札金額ながら総合点が高くて選ばれたものもあれば、商品データの品質が低いために入札単価を高めて総合点を底上げして表示させているものもあり、費用対効果が異なる場合があります。
また、表示順位は1番目がベストであるとは限らず、戦略によっては3番目くらいがいちばん費用対効果が良いというケースもあります。
Googleショッピングの運用で注意すべき点があれば教えてください。
商品データの質が低いと、上位掲載に必要なクリック単価が高くなります。
広告を上位に表示させるための総合点を得るために、許容するクリック単価の金額を高くすることで広告費を圧迫せざるを得なくなると広告費用対効果も悪くなるので、商品情報はきちんと登録するようにしましょう。その際、担当者それぞれのマイルールではなく、社内で決めた統一ルールに沿って入力するようにすると質をキープできます。
利益率を見て、どの商品を広告に出すのかをしっかり検討することも大切です。粗利率が低いものばかりが売れても赤字になる可能性があり、効果をあまり感じられなくなってしまうので、高単価の商品などに絞ってもいいと思います。
また、Googleショッピングだけで売上が上がるわけではないことも、心に留めておいていただきたいです。広告はあくまで集客の手段。購入見込みの高い顧客を獲得できても、ECが充実していなければ購入に至りにくくなります。
そもそも商品情報は、広告を出すタイミングで整理するのではなく、自社で商品データベース化する段階で、入力ルールを決めて整理しておきたいもの。ECビジネスを展開するうえで、商品情報を整えて良質な画像を用意することは最低限必要なことだと思います。
さらにいうと、ECでは決済方法を充実させることも大事です。クレジットカード以外に、AmazonPayや楽天Pay、ペイペイなど、幅広い決済サービスに対応するだけで購入率に差が出るので、コンバージョン率向上の施策として検討してみてください。
自社で、フルスクラッチでシステム開発するのはかなりたいへんですが、カラーミーショップさんなどを利用することで、はるかにかんたんにECサイトを整備できます。商売上やるべきことをきちんとやっていれば、いざGoogleショッピングを利用したときに効果が出やすくなるので、ECサイトの作り込みにも力を入れてくださいね。
進化するGoogleショッピング。まだ挑戦していないECサイト運営者も「今が始め時」
最後にGoogleショッピングにまだ挑戦していないECサイト運営者さまにアドバイスやメッセージをおねがいします
Googleショッピングは2010年に、ショッピング広告は2012年に登場したので、すでに10年以上経っていますが、今も注目のサービスです。Googleは収益の大きなウェイトを占めるショッピング広告に力を入れていて、機能も改善されやすいんですね。
YouTubeとの連携も始まっていますし、実店舗を持っている方はオフラインとオンラインの在庫を連動させれば、ローカル在庫広告というサービスも利用できます。日本では宅配便が発達しているので、ローカル在庫広告はあまり流行らないかもしれませんが、スニーカーなどプレミアがつく商品では重宝されると思います。
また、今後のアップデートについても期待できます。2023年に、「マルチ検索」というGoogleの画像検索にキーワードを入れて絞り込む機能がローンチされたばかりですが、つい最近、アメリカで生成AIを取り入れた新たなサービスが登場しました。
機能のなかで一番注目しているのが、自分に似た体型の人が着用したときの見え方を確認できる「バーチャル試着」です。VRやARを使って、商品を訴求できるようになったんですね。
もうひとつ注目なのが、プロンプトで生成された画像のなかから自分のイメージに合うものを選択すると、条件に合う商品が表示される機能です。言葉で表現しにくいものが視覚化されることで、求めているものが探しやすくなりました。
両者ともに、おそらく日本語でも将来的には対応されるはずです。
新しい機能が次々と登場しますし、Googleショッピングに取り組んでいない中小規模のECはまだまだ多いので、未だに「今が始め時」といわれています。参入が遅れるほど先行して知見を貯めている企業に勝てなくなるので、ぜひ今すぐ試していただければと思います。
田中さんありがとうございました。