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ネットショップと直接取引のみ!販路を絞ってブランド価値を上げるキッチンツールブランド「4w1h」

いつも画面越しに見ているネットショップのむこうには、想いのつまった“モノ”とそれを届ける“”たちがいます。このコーナーでは、知られざる商品開発ストーリーやお店の裏側に迫る現場レポートをお届けします。
今回ご紹介するショップ
クリエイターと製造メーカーのコラボチーム「燕三条キッチン研究所」が立ち上げたキッチンツールブランド「4w1h(ヨンダブリューイチエイチ)」のネットショップ。「当たり前」を問い直すことで、キッチンツールの新しい使いやすさを提案しています。今回は、4w1hの立ち上げと運営に携わっている杉山金属株式会社の小川 陽介さんにお話を伺いました。

4w1hのホットサンドソロ誕生秘話

キッチンツールブランド「4w1h」を立ち上げたきっかけについて教えてください。

きっかけは「そうだ、やろう!」という私の完全な思いつきです。

小川 陽介さん

思いつきというのは、会社として何か新しいことを始めようという流れがあってのことですか?

そうですね。杉山金属のある新潟県燕三条地区は、メーカーや工場、商社などが集まっている非常にものづくりが盛んな街です。すでにデザイナーさんと組んでブランドを展開している会社さんもありましたので、我々にもできるのではないかという謎の自信で、顔見知りのデザイン会社さんに声をかけました。
最初は杉山金属をリブランディングしたほうがいいのか、新ブランドを立ち上げたほうがいいのかも決まっていませんでしたが、打ち合わせをしていくなかで、新ブランドとして商品開発をすることになりました。

印象的なブランド名ですが「4w1h」の由来というのは?

4w1hを立ち上げた燕三条キッチン研究所は、私ども製造メーカーとデザイン会社、プロダクトデザイナーさん、コピーライターさんの4社からなるチームです。そのデザイン会社さんとコピーライターさんの車の中での会話から出た案だと聞いています。
ブランドコンセプトを固めるために、どういった方にどのように使っていただきたいかを話していて「それって、なんだか5w1hっぽいよね」ということから、キッチン(where)を抜いた4w1hになったそうです。

車中の会話から決まったというのはユニークですね!
昨年は4w1hから最初にリリースされた「ホットサンドソロ」がグッドデザイン賞を受賞されました。ホットサンドソロはどのようにして生まれたのでしょうか?

私の実体験がきっかけです。我が家では子どもの朝食に食パン2枚を使ったホットサンドを作っていました。食べやすいように半分に切って出すのですが、子どもは片方を食べただけでお腹がいっぱいになってしまうんです。
それで、私が子どもの残したぶんと自分用のぶん、合計パン3枚分のホットサンドを食べていたんです。

朝から食パン3枚ぶんはお腹が苦しい量ですね。

はい(笑)。そんなわけで、子どもや少食の方のためにパン1枚で作れるホットサンドメーカーがあったらおもしろいのではないかと話したら、「それいいね!」とチームのメンバーに乗っていただけました。

アイデアが出てから完成まで、どのくらいかかりましたか?

2年ほどかかったと思います。

ホットサンドソロ

ということは、かなり試行錯誤されたのでは?

そうですね。フライパンや鍋のように、すでにベースのあるものは、基本の形を元に持ち手や色を決めて新しいものが作れるんです。しかし、ホットサンドソロにはベースがなかったので、食パン1枚でも焼ける「形」を考えるのに時間がかかりました。サンプル品を作って検証して、を繰り返しましたね。

写真のように、パンの耳がしっかり閉じる構造にたどり着くまでが大変でした。

耳同士がしっかり閉じる「波形」がポイントなんですね。

そうです。さらに、折ったパンのもう片側を切らないままにするのも苦労しました。
なかなかうまくいかないので、パンを半分に切って重ねればいいのではないかという意見も出たのですが、それだと2枚のパンを使うのと同じになって意味がない。他にも、ロールケーキのように巻くという案も出ましたが、そちらも苦戦しましたね。

苦戦した甲斐があって、手のひらサイズの食べやすい形に焼き上がりますよね。

1枚のパンを切らずに耳を閉じることができて、ホットサンドとしても本当においしい食べ物を作ることができたと思います。
ちょうどいいサイズなので、胸ポケットへの収まりもいいんです。小腹が減ったらポケットから出して食べる、そんな時代も遠くないのかな?(笑)。

この独特の構造を活かして、意外な使い方をされている方もいそうです。

パンを焼く製品と謳っておりますので、我々からするとパン以外を焼くアイデアはすべて意外です。
SNSを使ったレシピコンテストを開催したときは、いろいろなレシピが集まりました。餃子を何個か敷き詰めて1つの大きな餃子にしたり、肉まんをむりやり押し込めたりと、基本的にパワープレイが多かった印象です(笑)。

かなりおもしろいですね(笑)。

バズって人気に火がついた

ホットサンドソロは最初から売れ行きは好調でしたか?

2019年10月に発表して、半年くらいはわりと静かな日々でした。ロフトさんや蔦屋家電さんから声はかけていただきましたが、取り扱い開始までにタイムラグがありますので。

2020年の4月にTwitterでバズったのが大きかったですね。それまでは月に100個も売れてなかったのが、数分間のあいだに連続で注文が入って、抱えていた在庫がすべてなくなりました。テレビに出たのか?ネットで紹介されたのか?と、ソース元を調べましたが見つからなくて。誰かが「見つけました、これだと思います」と辿り着いたのが、購入された方のツイートだったんですね。これがきっかけで人気に火がつきました。

当時は買えなかった方からもたくさんの問い合わせをいただいて、慌てて予約の受付を開始しました。それでも、用意していた枠が一瞬で埋まってしまって、クレームも多かったですね。

現在も大人気で売り切れが続いていますよね。

ありがたい話ですが、買えない方には申し訳ないです。杉山金属では4w1hシリーズ以外の家庭用調理器具も作っていますので、コロナの影響で家庭用調理器具全般が売れて製造が間に合っていない状況なんです。

予約販売をされているとのことですが、予約販売機能がないカラーミーショップで、どのような工夫をされているのでしょうか?

予約販売の開始時は商品ページに「予約専用」の画像を出現させてクリックしていただき、予約完了できた方に対して商品完成後に順番に発送しています。予約販売であること、出荷はまだ先であることを記載しています。だいたい発送までに2〜3か月の幅を設けて、その間に順番に発送完了メールを送らせていただいています。

ネットショップを作成する際に、カラーミーショップをお選びいただいた理由は何ですか?

デザイン会社さんに3、4社の候補を出していただいて、使いやすさとコスト面で選びました。

ブランド価値を上げるための自社ネットショップ

ネットショップでの販売は、4w1hの立ち上げ当初から決められていましたか?

そうですね。私どもの取引先は基本的に商社さんと問屋さんでしたので、新しいブランドを立ち上げるからには、直販をしてみたいというのがありました。販路も今までと同じにはせず、店舗さんと直接やり取りしようと決めていました。ネットショップと店舗さんへの直接の卸、この二本立てでいこうと。

ふむふむ。

それまでは、オンラインモールの普及で新商品を出してもすぐに値崩れしていたんですね。購入する側にとってはいい傾向ですが、メーカーとしては商品の寿命が一気に縮んでしまう状況でした。
ですので、よい商品であることをご理解いただいて定価で買ってもらう、そのためにブランド価値を上げる努力をしたという感じですね。

自社のネットショップをもつことで、ブランド価値の向上を図られたんですね。
卸とネットショップでは、どちらの売上が多いですか?

同じくらいです。

同じくらいということは、ネットショップはリピーターの方も多いですか?

そうですね。ホットサンドソロは売り切れ状態ですが、他のアイテムを全種類購入されたお客さまもいらっしゃいました。

リピーターを得るための工夫などはされていますか?

ホットサンドソロという商品が1つ生まれたことで、ホットサンドソロをコンロの上に安定して置けるアタッチメントの「コンロサポーター」を販売しています。また、ネットショップ限定でホットサンドソロの収納ケースも販売しておりまして、アウトドアでホットサンドソロを利用している方が追加注文されています。
こういった商品はリピーターの獲得に繋がりますね。

かゆいところに手が届くオプションですよね。

オリジナルのホットサンドメーカー

コロナの影響で家庭用調理器具全般が売れているということですが、一番売れている商品はどれですか?

ジャンルで言うとホットサンドメーカーです。弊社はホットサンドメーカーを30年以上前から作っておりまして、4w1hのプロジェクトと同時期に開発したのが、焼き目の部分をオリジナルの模様にできる商品です。ご希望のロゴやキャラクター、デザインで1つからご注文いただけます。

オリジナル商品を1つから! それなら個人の方でも買えますね。

実際、個人の方からの注文がわりと多いです。オンリーワンが売りなので、プレゼント用にというお客さまも多くいらっしゃいますね。

ちなみに、ご注文いただいたなかで印象的な焼き目はありますか?

ありすぎて選べないほどですけど、たとえばこれです。

あ、QRコード!

これは食品サンプルですが、焼き目がQRコードになるんです。読み込むと、ちゃんと杉山金属のホームページに飛びますよ。
ホットサンドのいいところは、自分のさじ加減で焼き目が変わるところ。きれいに焼けると写真を撮りたくなりますよね。

なりますね!

写真を撮ってSNSに載せると、それが自然と宣伝になったり、キャラクターやブランドロゴの認知につながる。そういったことを考えて、ホットサンドソロも焼き目にロゴを入れています。

SNSでシェアされるところまで想定されているんですね。

今後の展望について

今後、4h1h、そしてネットショップをどのように展開していきたいですか?

現在、リリース予定のアイテムが2つあって、2021年中に発表できるように急ピッチで準備を進めています。ただ、コロナの状況もありますので、展示会以外での発表方法も考えないといけないところです。
また、取り扱い店舗についてもトータルでは100店舗を越えているのですが、当初目指していた「各都道府県に1店舗」という目標にはあと8県となっていますので、そこを押し進めたいなと思っています。

ネットショップは、事前に会員登録をしていただけると予約販売の際スムーズに購入いただけるのですが、まだまだ会員でない方も多いので、会員登録でメリットを感じられるような企画を考えたいです。
予約販売についても今はメルマガでアナウンスしていますが、ネットショップを活用して双方にとって便利にしていきたいと思います。

おまけ:小川家の4w1hシリーズ

実際に1枚用のホットサンドソロができて、お子さまの食事は変わりましたか?

長女はお腹が減ったら自分で作ったりしていますよ。マシュマロと板チョコを入れてみたり。

おいしそうですね!

ホットサンドは身近な食材がごちそうになる食べ物なんですよね。ハムとチーズを挟んだだけで、こんなにおいしい食べ物ができるっていうのがホットサンドのいいところなので。意外となんでも合います。
他にも、韓国のチーズハットグが流行ったときは、4w1hシリーズの「コンパクトフライヤー」という角型の天ぷら鍋を使って揚げていましたね。

少ない油で深さが出るコンパクトフライヤー

次女はチャーハンを作るのが大好きで、4w1hシリーズの「ひし形フライパン」で作っているのをよく見ます。炒め物に使いやすい構造になっているので、作りやすいのでしょうね。

炒めやすく、汁物を器に移しやすいひし形フライパン

子ども向けに作っているつもりはまったくないのですが、我が家ではそんな感じで喜ばれています。

食べるだけでなく、お子さまたちも使っているというのはすてきですね!

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