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介護で悩んだ経験が商品開発のヒントに。冷凍生パスタ専門店「コナリエ」店主がいま目指す新しい働きかたとは

いつも画面越しに見ているネットショップのむこうには、想いのつまった“モノ”とそれを届ける“”たちがいます。このコーナーでは、知られざる商品開発ストーリーやお店の裏側に迫る現場レポートをお届けします。
今回ご紹介するショップ
群馬県前橋市で自家製生パスタとソースを製造・販売。群馬産小麦を使ったパスタは評判を呼び、日本全国に多くのリピーターを抱えています。今回は、お店の成り立ちやコロナ禍での変化、今後の目標などについて、店主の中村 実紀さんにお話を伺いました。

人気グルメ番組への出演後、注文殺到

2021年3月の『満天☆青空レストラン』でコナリエさんが紹介されているのを拝見しました。あの後かなり注文が殺到したのでは……?

おかげさまで! びっくりしましたよ。放送中から翌日の夕方くらいまでずっと受注メールが届きっぱなしで、売上も通常時を大きく上回りました。ちょっと怖かったくらいです。

製造や発送も大変そうですね。

こんなにご注文いただけて、皆さんに食べてもらえると思うと嬉しかったですね。作業に夢中になって3カ月くらい毎日夜中まで立ちっぱなしだったので、足の裏の皮がむけちゃいました。

そんなにも……!? 今回のような出演オファーは、突然お店に連絡が来るものなんでしょうか?

そうですね。今回はいきなりお店に電話がかかってきて、商品サンプルを送ってもらえないか?と。私こういうのすぐ疑っちゃうんで最初は「詐欺かな?」なんて思ったんですけど、送り先が日本テレビさんだったので、これくらいの数量ならまあいいか……と商品を送って(笑)。そしたら後日改めて連絡が来ました。

テレビ局の方はネット検索でコナリエさんにたどり着いたんですかね。

きっとそうだと思います。うちはネットショップ以外にホームページ持ってないので、カラーミーショップをやっててよかったと思いました。突然だったのでびっくりでしたけどね(笑)。
びっくりといえば私、昨年カラーミーさんからいただいたご注文にもすごく驚いたんですよ。

社内で行った大規模なリモート飲み会のために、コナリエさんのパスタを注文させていただいたんですよね。その節は大変お世話になりました……!

お話を伺ったとき「みんなで同じものを食べて盛り上がる」って発想がすごくおもしろいなと思って、実はあの後アイデアをいただいて、うちでもリモートセットを販売したんですよ。

なんと、そうだったんですね。あのときのご縁が今回の取材につながって、とても嬉しいです。今日はよろしくお願いします!

 

きっかけは介護の罪悪感、そして生パスタとの出会い

中村さんが生パスタの製造・販売を始めることになったきっかけは何ですか?

高校の同級生に料理教室の先生がいまして。私の仕事が休みの日にたまたま彼女の教室へお皿洗いのバイトに行ったんですけど、その日が偶然にも生パスタを作る回だったんですよね。「せっかくだし何か作ってみれば?」と彼女に誘われるがまま作った生パスタが、もう最高においしくて……! さっきまでただの粉だったものがこんなにおいしくなるんだ!と。それが私と生パスタとの出会いでした。

当時は会社員として働いていたんですね。

そうそう、群馬県内で広告の営業をやってました。
群馬は小麦の産地なので麺文化が強く根付いてて、私も幼い頃から週2~3回はうどんを食べて育ってきました。でもパスタは洋風にも和風にも幅広くアレンジが効くし、子どもからお年寄りまでみんな大好き。しかも家にある食材をなんでも入れられるので「うどんよりも今の時代に合ってるかもしれない」と考えたのが起業のきっかけです。

せっかくなら地元の小麦を使いたかったので、先ほどの同級生とも相談しながら何度も小麦の配合を変えて、試作を繰り返しながら開店準備を進め、2013年7月に「コナリエ」を開店しました。

パスタの冷凍やパウチの技術もそのご友人から教わったのでしょうか?

そういった技法はいろんな人に聞きに行きましたね。スーパーや道の駅で商品を探して、似たような商品があればパッケージの裏に書いてあるメーカーさんに電話して「ちょっと教えてもらってもいいですか?」みたいな感じで。私はどこかのお店で修行した経験もないし、食品メーカーにいたわけでもないので、そうやって誰かに聞いてみるしか方法がなかったんです。

突然電話して教えてもらえるものなのでしょうか……。

意外とみんな親切でした(笑)。

皆さん優しいんですね……! ところで、コナリエをレストランではなくあえて「冷凍生パスタのテイクアウト専門店」という形にしたのはなぜですか?

これは自分の経験からなんですけど、おうちで食べるごはんをとにかく「楽しくて、簡単で、おいしい」ものにしたかったのが理由です。
私、学生の頃から母と二人暮らしで介護生活をしてて、具合の悪い母の代わりにいつもごはんを作ってたんですよね。就職してからは毎日ヘトヘトだったけど、家で待ってる人がいるから帰って何か作らなきゃって。そんな毎日にもだんだん疲れてきて、気付いたらコンビニやスーパーのお惣菜をレンジで温めてお皿に移すような生活になっていました。

母は文句も言わなかったけどやっぱり自分の中には罪悪感があって、でも疲れてるからしょうがない……。その「やればできるのに、やれないつらさ」みたいなものを一人で抱え込んでしまって、当時すごく苦しかったんです。
コナリエが開店以来テイクアウトにこだわっているのは、買ってきた冷凍パスタを最後におうちで茹でて仕上げるだけでも、誰かの罪悪感が拭えるかもしれないと思ったからなんですよね。私自身もあのときの罪悪感を拭いたいっていう気持ちでここまでやってきたのかなと思います。

時短・簡単がいくらでも叶う時代だからこそ、あえてのひと手間が人の気持ちを軽くすることがあるのかもしれませんね。

 

ネットショップとminne、それぞれの傾向とは

ネットでの販売は最初から始めるつもりでしたか?

そうですね。群馬はそれほど人口が多くない街ですし、生パスタの需要ってけっこうマニア向けなところもあるので。群馬にとどまらず全国に発信したい思いがあり、ネットショップは当初から始めるつもりでした。

カラーミーショップだけでなくminneにも出店していますね。

ネットショップは、どうしても先に「コナリエ」の名前を知った上で検索してもらわなきゃいけない側面が強いんですよね。人の目に多く触れるためにたくさん広告を出す方もいらっしゃるけど、やっぱりお金がかかっちゃう。そんなとき、普段使っているminneで食品販売ができるようになり、雰囲気もうちに合ってるかなと思ったのがきっかけです。

コナリエさんのminneショップはこちら

もともとminneをご存知だったんですね。購入者層に違いは感じますか?

そうですね。送料無料やセールが当たり前のECサイト・モールと違って、minneのお客さまは「作家から手作りのものを買う」ということに慣れていて、楽しんでくださっている印象があります。購入者さまとは、メッセージ上でも「少し製造にお時間いただきます」「大丈夫ですよ!」といった温かなやりとりが多いです。うちのように生産規模も資本も小さなお店にとっては、ありがたいことですよね。

一方で自社ネットショップのほうは、客単価が比較的高いように感じます。やっぱり直接うちを検索して来てくださるぶん「絶対に買いたい!」と最初から決めてこられる方が多いんだと思います。お試しで購入するというよりは、すでにおいしいとわかってくださってる方が多く、一度にたくさん購入してくれる方もいらっしゃいます。

ふむふむ。テレビ放映後はどちらの売上が多く上がりましたか?

もう圧倒的にネットショップへの検索流入が多かったですね。
カラーミーでの受注管理は、普段は会社員の夫が空き時間でこなしてくれているのですが、あのときは夫にかなり手伝ってもらいました。今では「カラーミーの店長」って呼んでます(笑)。

(笑)旦那さまはWebにお詳しいのでしょうか。

全然! ネットショップを運営した経験もないですね。私がものすごいアナログ人間なんですけど、それよりかは知識があるくらいかな。撮った写真を加工してページに載っけたりだとか、そういう作業もコツコツ調べながらやってくれてます。

コナリエが「フレキシブルな働きかた」を目指す理由

コロナ禍の中で、売上や購買に変化はありましたか。

2020年の緊急事態宣言中は、レストランやカフェへの卸の売上がほぼゼロになりました。
そのぶん実店舗とネットで売上を補わなきゃいけないので実店舗の営業は続けてましたけど、巣ごもり生活によって「おうちごはん」が改めてフィーチャーされたことで、今は世の中に求められているものを提供できている実感がありますね。実際にネットも実店舗も売上は伸びました。

こだわりの食材を買って、おうちで作るのを楽しむ方が増えましたよね。

そうですね。今までは何でもよかったけど、家でちゃんとしたものを食べたいっていう人が増えた気がします。

実店舗ではパスタに合う野菜や調味料なども取り扱ってるんですけど、安心でおいしいものを求めてそういった商品を手に取られる方が増えました。あんまり遠くへは出かけられないからと近隣の方がよく買い物に来られてて、今でも実店舗の8割のお客さまが毎週来てくれています。

コロナ禍での変化の一つとして、在宅時間の増加がきっかけで副業・起業を考える方が増えているそうです。なかなかその一歩が踏み出せない方も多いと思いますが、8年前の中村さんがコナリエを始めることを決断し、実際に動き出せたのはなぜだったのでしょうか。

やっぱり「どうしてもこれがやりたい」って思えるものと出会えたからですかね。
もちろん、全然受け入れてもらえないかもしれないっていう不安も頭の片隅にあったから、うちは創業当時から“守りの経営”。カラーミーショップを選んだのも月額費用が安かったからだし、実店舗はとっても小さいし、製造に使ってる鍋にもいただき物があったりするし(笑)。

なので「失敗しても大コケはしないだけの守りはしつつ、できる限り突っ走ってみよう」っていう感覚でやってきましたね。会社員としてお給料をもらって働いた経験があるので、いざとなればまたどこかに勤めたっていいじゃないかっていう思いもありましたし。

開店から8年間いろいろなことがあったと思いますが、コナリエを続けてきて一番嬉しかったことは何ですか。

えーっ! いっぱいあって困っちゃいますね。最近は実店舗でもネットでも「コロナ大丈夫?」とか、まるで家族みたいに声をかけてくれるお客さまがいて。逆にわたしも、たとえば災害が起こるとその地域の常連さんにメッセージを送ったり、逆に群馬で何かあるとご連絡いただいたり……そういうのってすごい関係性だなと思うんです。

生パスタが作ってくれたご縁ですね。

うん。お金出しても買えないものだから、すごくありがたいし、嬉しいですよね。

これからネットショップを始めてみたい方に、ご自身の経験から何かアドバイスをいただけますか。

何でもやってみなきゃわかんないので、やってみてほしいですね。景色がどんどん変わっていくのがおもしろいんですよ。始める前に想像してるよりもきっとおもしろい景色が見られると思うし、今は副業でもネットショップを始めやすい時代だから、ぜひおすすめしたいです。

ありがとうございます。最後に今後の目標、新たに取り組んでみたいことがあれば教えてください。

カラーミーさんが便利な機能をつけてくれてるので、少し前から定期便を始めたんです。リピーターさんも増えているし、忘れっぽい私みたいな人でも定期便なら安心だし手間もかからないので、今後はさらに頑張って展開していきたいなと。それに合わせて、今の実店舗は週2営業なんですけどいずれ週1にしようと思ってるところです。

実店舗のほうは縮小されるんですか。

うん。今よりもさらに製造のほうに時間をかけたいんですよね。これは以前から考えていたことなんですが、施設にいる母とまた一緒に暮らしながら働きたいっていう思いがあって。

母と暮らしていたときのことが「コナリエ」の発想に繋がったわけですし、ネットショップで売上が立てば、母の世話をしながら自分の時間も持てるようになる。あの頃よりもフレキシブルに働けるような体制を整えていくのが今の理想ですね。

近い将来、ぜひ夢が叶うといいですね。今日は素敵なお話をありがとうございました!