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祖父から受け継いだ会社で初の挑戦。創業114年「神藤タオル」が自社ブランド&ネットショップを立ち上げるまで

いつも画面越しに見ているネットショップのむこうには、想いのつまった“モノ”とそれを届ける“”たちがいます。このコーナーでは、知られざる商品開発ストーリーやお店の裏側に迫る現場レポートをお届けします。
今回ご紹介するショップ
「泉州タオル」の一大産地、大阪府泉佐野市で110年以上の歴史をもつタオルメーカー。長年にわたってOEM生産を中心としながらも、2017年には自社ブランド「SHINTO TOWEL」を立ち上げ、国内外のセレクトショップで好評を博しています。今回は代表取締役の神藤 貴志さんに自社ブランド立ち上げまでの経緯と変化、今後の展開などについて伺いました。

大学3年生で、祖父の会社を継ぐことを「即決」

泉佐野市は「泉州タオル」の産地として今治タオルと並び有名ですよね。もともとはなぜこの地でタオル製造が始まったのでしょうか?

このあたりは古くから綿栽培が非常に盛んな土地だったそうです。そこから派生して、いわゆる手ぬぐいのような平織りの綿織物が徐々に作られるようになりました。

そこに海外からタオルが輸入されてきたのがおよそ150年前。「日本でも同じものを作れるかもしれない」と、国産タオルの生みの親と呼ばれる里井圓治郎さんという方を中心に研究が重ねられ、やがて泉佐野でタオルが作られ始めたと聞いています。

なるほど、昔から綿の栽培が行われていたんですね。神藤タオルさんはその中でも歴史は古いほうなのでしょうか?

そうですね。現存する泉州タオルメーカーの中ではおそらく一番目か二番目に古いはずです。もともとは僕の高祖父が創業した会社なのですが、親族の間で何代か引き継がれ、数年前に祖父から僕へとバトンが渡されました。

かつての工場周辺は田園風景が広がっていた

おじいさまからお孫さんへと引き継がれるのはちょっと珍しいですよね。いずれは会社を継ぐつもりでしたか?

よく聞かれますが、その意識は正直ほとんどなかったんです(笑)。
父方の実家がタオル屋さんだということは認識していましたが、僕と両親は東京のほうに住んでいて、せいぜい正月に遊びに行くくらい。会社の中には入ったこともなかったし、実際どんなことしてるかもさっぱりわからない状態でした。

転機となったのは僕が大学3年生になってすぐの頃です。就職活動を始めるタイミングで祖父が東京にやってきて、父から「どうやらお前に話があるらしいぞ」と聞かされて。

そこでおじいさまから跡継ぎの話を?

そうです。「お前、将来どうすんねん」と。もし継ぐと言ってくれるならその準備をするし、継がへんなら会社を畳む支度をするから、って。

ほとんど即答で「わかった、大阪行くわ」と返事をしました。当時の僕はやりたいことも特になかったし、自分の名字がついた歴史のある会社を僕の返事ひとつで畳んでしまうのはもったいないなと思ったので……というのは正直なところ半分美談で(笑)、実際は何も考えずにOKしちゃっただけなんですけど。

住み慣れた東京から大阪に移って仕事をするのに不安はなかったですか。

実際に入ってみると、想像以上にいろんな問題に直面しましたね。もちろん現地に知り合いも誰もいないですし。
本当はもっと慎重に調べた上で返事をするべきだったんでしょうけど、自分がのんきな性格で本当によかったなと思います。中途半端に知ってたら断ってたかもしれませんから。

ちなみに、継ぐと決めたときのお父さまの反応は……?

終始「俺は一切口出ししないからお前が決めろ」って感じでしたね。僕が即決したのにはさすがに驚いてましたけど、それに対してもどうこう言うことはなかったです。
父は景気のいい時代に就職し、上の役職にもついていたので、祖父の立場からすると呼び戻すタイミングを失っていたんじゃないかなと思います。

デザインの力を実感! 自社ブランド立ち上げ秘話

そんな神藤さんが自社でブランドを立ち上げる最初のきっかけは何だったのでしょうか。

いま僕たちが自社ブランドで展開している「2.5重ガーゼ」や「インナーパイル」という特殊な織り方は、ずっと前から商品として存在していたものでした。お付き合いのある問屋さんにもご提案はしていたものの、当時の商売ルートでは棚のスペースや価格帯など、ある程度決まったところへ当てに行かなきゃならなかったんです。変わった商品を持っていっても話がうまく決まらないことがけっこう多くて。

そんなとき、大阪のとあるデザイン事務所さんで「made in west」というプロジェクトが動きだしたのを知りました。クリエイター視点で関西のものづくりをブラッシュアップして紹介するという取り組みなのですが、ちょうどプロジェクトが始まるタイミングで「ぜひ協力してもらえませんか?」と偶然うちにお声掛けいただき、それが自社ブランド立ち上げを意識するきっかけになったんですよね。

自社ブランドを立ち上げたいという思いは、それ以前からありましたか?

そうですね。先代である祖父が亡くなり、僕が代表になった頃から漠然と考えていました。
祖父たちが作り上げてきたこれまでの事業をバサッと切るのではなく、もちろんそれは継続しながら、並行して新しいブランドラインを作れないかなと。

プロジェクトに参加してみて、タオルのデザインはどんなふうに変わったのでしょうか。

僕らが新商品のサンプルを問屋さんに持っていくときって、いわゆる白無地で仕上げるんです。何の特徴もない真っ白なタオルを初めてプロジェクトでお見せしたとき、素材や品質をすごく褒めてもらえたんですよね。「この素材を一番活かせるデザインにしましょう」と。

それで、英字入りのタグをポンと配置して「これで完成品です」と。
たったそれだけなのに、無地のサンプルが商品として一気に生まれ変わり、しかも急激に評価が上がっていきました。商品のよさをわかった上でダイレクトによさを伝える、今まで見たことがないものづくりのアプローチ……あのとき初めて、デザインの力を体感しましたね。

いまでは海外のお店でも取り扱いがあるそうですね。

そうなんです。ブランドの立ち上げ後初めて出展した東京のギフトショーで、たまたま近くのブースにいたのが香港でハンドメイドソープを作っている方でした。その方がふらっとうちのブースを訪ねてくれて「香港でぜひ売らせてほしい」と言われたのが始まりです。その後、香港でうちのタオルを見た方がお問い合わせをくれたり、ジェトロさんの支援などで徐々に広がっているところです。ネットショップでも、海外の方からよくお問い合わせが入りますよ。

海外の方から見て日本のタオルってどういう使い心地なんでしょうか?

概ね好評だと聞いています。
海外だとトルコやアメリカ、中国製などのタオルが主流ですが、特にヨーロッパで使われているタオルは非常にがっしりしていて、日本人の感覚ではバスマットのような手触りのものが多いんです。日本製タオルはそういったものとは違った軽さ・柔らかさが特徴ですから、今までのタオルとは別物だと捉えられている気がします。

日本のタオル、これからますます広まるかもしれませんね。

ギフトショー出展時の一枚

受け皿として始めたネットショップが大幅成長

ブランドの立ち上げと同じタイミングで、ネットショップの開設を?

そうですね。厳密に言うと、以前も別のECパッケージを利用して、ホームページ内にちょっとしたショッピングカート機能をつけていました。当時は月に一度注文が入るかどうか…という感じだったので、本格的なネットショップ運営に乗り出したのはカラーミーショップが初めてです。

他のネットショップ作成サービスと比較検討もされましたか。

カラーミーを含む3つのサービスが最終候補でした。商品からWebまですべてお願いしているデザイン会社さんとの話し合いの中で、デザインの自由度が決め手になりました。ブランドの表現手段として、ネットショップのデザインは絶対に欠かせない部分だったので、うちにはカラーミーが合っているという結論に至りました。

ネットショップもホームページも写真が非常にきれいで、シンプルで洗練された世界観ができあがっていますね。こだわったポイントがあれば教えてください。

ブランドとしては「本当にいいタオルとは何か」を常に考え続けるというコンセプトを掲げています。それを噛み砕いて自社のものづくりに当てはめると、我々の一番の強みはやはり機能性なんですよね。でも、いま世の中で大量に出回っている泉州タオルはポップなデザインが中心。僕自身が普段使うなら、シンプルで飽きがこなくて、存在感はありながらも何気ない日常に溶け込むようなタオルを選びたかった。そんな漠然としたイメージをデザイナーさんになんとか言葉で伝えて、共通認識を作り上げていきました。

本格的にネットショップを始めてみての手応えはいかがでしょうか。

基本的には実店舗でのお取り扱いを前提としたブランディングを考えていたので、ネットショップは取扱店舗が近隣にない方、外でお買い物をしない方のための受け皿としてスタートしたのが正直なところでした。
ですが、実際にお客さまとのコミュニケーションの広がりが実感できましたし、今こういう状況になってみて、やっぱり始めてよかったなとすごく感じています。

コロナ禍による影響はやはり大きかったですか?

そうですね。自社ブランドのほうは堅調ですが、もともとの本業であるOEMはけっこう影響を受けたので、ネットショップをやっていて助かった実感はかなりあります。自社ブランドの取扱店舗は地方のお店が多いので首都圏ほどの影響は出ませんでしたけど、それ以上にオンラインでのお買い物がかなり普及したというか……以前から当たり前だったものがさらに加速した印象です。

ちなみに、ネットショップは売上でいうとどれくらい伸びたのでしょうか。

だいたい600~700%くらいです。

すごいですね……!

品質を守り、ブレないものづくりを

自社ブランドの展開やネットショップ運営を通じて、お客さまと直接繋がれる機会が以前より格段に増えたかと思います。新たに得られた気付きなどはありましたか?

たくさんありますよ。僕自身も外から来たとはいえ入社して十数年経ちますから、もう“タオル屋さんの考え方”に染まっちゃってる部分も正直多くて。そんな中でお客さまと商品を介して直接やりとりするうちに、「こんな使い方もあるんだ!」とか、自分たちとお客さまとでは商品の見え方がずいぶん違うとか、勉強になることがとても多かったです。そのフィードバックをまた商品や提案内容に反映させたりもできますし。

OEMを長くやっていたメーカーさんは「自分たちでは気付かなかったことを教えてもらえる」と皆さんおっしゃいます。

そうですね、本当にそう思います。
自分たちで新商品を一から考えるのも、お客さまのニーズに合う商品を作るのも非常に難しい作業ですが、そんな中でお客さまからいただく「この生地でこんなアイテムがあればいいのに」といった声が次の新商品のヒントになることもあるので、お客さまとの距離の近さはすごく大事だと感じました。

会社とネットショップ、それぞれ今後の目標を教えてください。

うちは生産体制的にも、ガンガン作って拡販していくタイプの会社ではないので、祖父が作り上げた路線を急激に変えていくつもりは今のところありません。長年大切にしてきた品質を引き続き守り、ブレることなくものづくりをしていきたいです。自社ブランドは立ち上げから4年目、まだまだこれから認知してもらう段階ですからね。
ネットショップも同様で、どんどんPRして規模拡大を狙うつもりはなく、会社としてのブランディングの方向性にきっちり沿って運営していくつもりです。今後も確実に伸びる領域だと思うので。

最後に……まだネットショップを始めていない製造業の方に、ぜひアドバイスをお願いします。

もう当たり前の世界になってきているので、ネットショップは早めに始めたほうがいいと思います。
僕らも同業の方から「ようそこまで顧客対応してるな」なんて言われるんですけどね。問屋さんとのお商売だけだとそういう発想になるのも当たり前なんですけど、始めてみればそう難しくはありませんでした。「そんなん、しんどいんちゃうん?」という思い込みや食わず嫌いは一度取っぱらってスタートしてみてください。

始めてみてすぐに売上が上がらなくても高い料金がかかるわけじゃないですし、自分で試行錯誤するのは勉強にもなります。実際にそれで売上が上がってくると本当に楽しいですからね。なんとなくで敬遠してしまうのはもったいないので、ぜひ始めてみてはいかがでしょう……っていう感じです(笑)。

本日は素敵なお話をありがとうございました!