日頃から耳にする機会のあるPR(ピー・アール)という言葉。Webメディアの記事広告などにも記載されているので、なんとなく広告や宣伝を指すものという捉え方をされている方も多いのではないでしょうか。
この記事では本来のPRの意味や役割、プロモーションや広告との違い、ネットショップにおけるPRのメリット・デメリットについて解説していきます。
PRって、てっきり広告のことだと思っていたけど違うの?
そういう使い方をされることが多いので間違いというわけではないんですが、本来の意味はちょっと違います。PRの意味について一緒に見ていきましょう!
PRとは何?意味やメリットをわかりやすく解説!
「PR」は「パブリックリレーションズ」の略
PRとは「パブリック・リレーションズ(Public Relations)」の略で、日本語に翻訳すると「広報」です。しかし本来の意味を考えるときは、単語をそれぞれ訳した「公衆(Public)」との「関わり(Relations)」の方がイメージを理解しやすいかもしれません。
公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会による説明を引用すると以下の通りです。
“パブリックリレーションズとは、組織とその組織を取り巻く人間(個人・集団)との望ましい関係を創り出すための考え方および行動のあり方である。”
近年、宣伝・広告という意味で使われることが多くなったPRという言葉ですが、実際には組織と人とをつなぐ考え方や活動のことを指すものだったんですね。
知っておきたいPRの重要性とメリット・デメリット
PRが重要なのはなぜ?
では、なぜPRは重要なのでしょうか。
企業や組織というのは、組織外のひとから見ると、個人を相手にする時よりも何を考えているのか分かりにくい面があります。特にそれが営利団体であれば、組織を維持するために利益を上げる必要があるので、利益追求のあまり周囲に悪影響を及ぼすのではないか、といった懸念を持つひとも出てくるでしょう。
こうした疑念や不和が生まれる前に、地域社会や公衆との良好な関係を築く潤滑油になるのがPRの役割のひとつです。
例えば、製品材料確保のために森林を伐採し、木材加工を行う工場を作る計画があったとします。企業側が地域に対して事前のアクションを起こさない場合、住人の方々は企業の思惑が分からず不安を抱えることになりかねません。
しかし、過度な伐採を行わないことや、植林に力を入れること、地域の林業家と連携することなどを事前に何度か説明しておけば、新たな雇用創出として歓迎されることもあり得ます。
もう一つPRには重要な役割があり、それは組織の活動に対して人々の共感を生むことです。
実際、社会貢献を意識して運営されている組織や、素晴らしい経営理念のもとに社員が集った企業はたくさん存在していますよね。
このような組織が、商品やサービスの訴求ではなく、理念や思想を打ち出した広告を出し、新しい暮らし方の提案や、従来の常識への問題提起などを行うのもPR活動です。
共感によってファンを生み出し、高単価でもエコロジカルな商品を選んでもらうなど、売上の向上と社会貢献を同時に果たすことが可能になります。
組織がどのように社会や公衆と関わっていくのかを明らかにし、時に公衆の価値観にも影響を与えたり、良好な関係を保ったりという役割を担うことから、PRは重要と考えられているのです。
PRとプロモーション・広告との違いは?
PRと混同されがちなものに、プロモーションと広告があります。この3つの違いを知るには、マーケティングの世界でよく知られる「マーケティングの4P」について知るのが近道です。
「マーケティングの4P」とはジェローム・マッカーシーという人が1960年に著書「ベーシック・マーケティング」に記した考え方で、マーケティングのあり方を下表の4つの「P」で説明しています。
Product | Price | Promotion | Place |
何を(製品) | いくらで(価格) | どのように(促進) | どこで(場所) |
ここにプロモーション(Promotion)という言葉が出てきました。プロモーションとは、物やサービスを「どのようにして売っていくか」、という部分を担う言葉だということが分かりますね。
同じくマーケティング用語として使われるものに、「プロモーションミックス」という言葉があります。文字通り、いくつかのプロモーションを組み合わせるという手法のことで、下表の4つを組み合わせて実施されます。
Advertising | Sales Promotion | PR | Personal selling |
広告 | 販売促進 | PR活動 | 人的販売 |
ここに「広告」と「PR」が登場します。つまり、「どうやって売るか(プロモーション)」の一環として費用を軸に売り込むのであれば「広告」となり、企業理念や情報提供によって認知獲得を行うのであれば「PR」と呼称するのが本来の意味通りということになります。
本来の意味が分かったところで実際の使われ方にも触れておくと、日本で「プロモーション」と呼ぶ場合は、本来の使われ方の他に、「販売促進(Sales Promotion)」の「Sales」を省略していることもあるので注意が必要です。
商品宣伝用の記事広告にPRと記載することもありますし、3つの言葉が厳密に分けられておらず、自分の所属する組織での使われ方と、他の組織での使われ方が異なるケースもあるでしょう。
そのため、重要な商談などでは念のため具体例などを挙げて認識に齟齬がないか確認しておくと安心です。
PRと広報の違いとは?
日本語の広報を英語にすると「public relations」なので、「PR=広報」です。しかし現状「広報」という言葉は、しばしば本来の意味より狭義の内容で使われることが多くなっています。
狭義では、情報の収集や発信を戦略的に行い、より良い関係性を築いていくことを広報と呼びます。ややこしいのが、同様のことをPRと呼称することもあることです。
つまり、「PR」と「広報」をどちらも本来の意味で使えばイコールですし、どちらも本来の意味とは異なる使い方をした場合もイコール。広報を狭義の意味で捉えた場合は、「PRの中に広報がある」という形になります。
言葉は変化するものと割り切って、自分の周囲がどのように使っているかに柔軟に合わせてしまい、本来の意味・役割は自分の行動指針として忘れないようにする、というのがおすすめです。
ネットショップにとってのPR
ではネットショップにとってのPRとは、どのようなものでしょうか。
ネットショップはオンライン上にありますが、製品の製造などは地域の工場で行うことも、実店舗がある場合もあるでしょう。そのため、地域社会との関係性構築のためのPR活動を行うショップも一定数あると思いますが、一般的には、商品・サービスと社会背景との関わりについての情報発信をPRと位置付けるケースが多いようです。
この場合の情報発信とは、テレビや新聞、Webメディアなどの各種媒体にショップの情報を放映・掲載してもらうことを指してます。
ネットショップがPRを行うメリットとデメリット
ネットショップがPRを行うメリットとして、ショップや運営組織の名称をはじめ、現在の取り組みや理念、商品やサービスに関する背景を広く周知し、認知度を上げられるという点があります。
また、その内容が好感されれば、ショップのファンづくりにも良い影響があるでしょう。
一方のデメリットとして、PRの内容が不適切だったり、一定の集団から理解が得られないものだったりすると、炎上によるトラブルや好感度の低下、商品の売れ行きが下がるなどのリスクにつながる可能性もあります。
また、自分たちの取り組み自体には不備がなくても、掲載媒体での伝えられ方が意図しないものになってしまい、誤解を生むというケースもあるので注意が必要です。
ショップのイメージや活動内容、商品・サービスの良さが正しく伝わるよう、折に触れてPR活動を展開し、さまざまな媒体で情報を発信することが、リスクを抑えながら効果を最大化することにつながります。
PR先の種類と掲載させる方法
最近では媒体側がSNSなどを通じて情報を集め、声を掛けてくれるケースも増えています。受動的な動きにはなりますが、自社・自店のSNSでしっかりと情報発信をしていくこともPRの手段の一つです。
一方、能動的に情報を外部メディアに掲載してもらう方法の一つに、「プレスリリース」を作成して送付するというものがあります。
プレスリリースとは、テレビや新聞などのマスコミに対し、企業や組織として新しい情報を発表するための公式文書です。事実ベースで情報が載せるのが特徴で、商品やサービスを開発した背景などが客観的に書かれています。
プレスリリース以外にも商品・サービスの資料を作成して送るということもあるでしょう。掲載して欲しい媒体や、載せて欲しい情報に合わせてアプローチする方法や手段も変わります。ここでは、各媒体に紹介してもらう方法として一般的なものをご紹介します。
テレビ番組やニュースに紹介してもらう方法
テレビ番組やニュースに紹介してもらうことが出来れば、自社や自店をまったく知らない多くのひとにも情報を届けることができます。
大元のテレビ局にアプローチするのではなく、番組の担当者やコーナー宛にプレスリリースを送るのがよいでしょう。担当者名は番組のエンドロールに、ニュースコーナーの連絡先はコーナーの終盤などに表示されていることが多いです。番組の公式サイトなどもチェックしてみましょう。また、制作会社が制作している番組であれば、その会社にプレスリリースを送るのも有効です。
なお、担当者のところには毎日多くのプレスリリースが届くので、すべてに目を通してもらえるとは限らず、目を通してもらえても取り上げてもらえるかどうかは分かりません。1回で諦めず、折を見て何度か送るようにしてみましょう。
新聞に掲載してもらう方法
新聞もテレビ同様、多くの読者を抱えるメディアなのは周知の通りですが、信用のある新聞に情報を掲載することで、企業や店舗の信頼感向上や、社会へのメッセージ性を強めることが出来るでしょう。
また地域紙の場合、地域に根差した内容であれば取り上げてもらえる確率が上がります。プレスリリースの内容に合わせてアプローチする新聞社を変えると効果的です。
新聞社は情報を常に受け付けているので、プレスリリースは歓迎されます。公益社団法人 日本パブリックリレーションズ協会が出している「広報・マスコミハンドブックPR手帳」など、マスコミの連絡先が網羅的に掲載されている本が売られているので、会社や店舗で1冊持っておくと便利ですよ。
なお、新聞社にもかなりの数のプレスリリースが届きます。メールは同じようなタイトルで埋もれていってしまうので、定期的に何度も送るか、郵送するのもひとつの手と言えます。
雑誌に掲載してもらう方法
雑誌は内容によって購読する層が世代・性別などをはじめ細かく分かれているので、自社や自店の商品・サービスとターゲットの相性がよければ、新たなファンを獲得しやすい媒体です。
こちらもテレビ同様、雑誌単位ではなくコーナー単位でプレスリリースや掲載して欲しい商品・サービスの資料を送りましょう。
雑誌には企画や特集があるので、しばらく経ってから内容の合う企画の時に声が掛かることもあります。
ラジオで紹介してもらう
ラジオはテレビや新聞に比べると情報を届けられるひとの数は絞られてしまいますが、FMの場合は地域性が高くなるので、内容によってはターゲットに効果的に訴求することができます。
ラジオもテレビ同様、番組やコーナーごとに送り先が異なるので、番組中に放送される送り先にプレスリリースや資料を送付しましょう。
Webメディア
Webメディアにはさまざまな種類のものがありますが、関連する業界のニュースを扱っているメディアにプレスリリースを送るのが効果的です。
Webメディアの場合、一つの媒体に紹介されることで拡散され、自社・自店からは直接プレスリリースを送っていないメディアでも紹介されたり、SNSでも情報が拡がっていく可能性があります。
ニュース記事を扱うポータルサイトでは、興味関心の高いユーザーに関連ニュースを配信する仕組みがあるので、自社・自店に興味がありそうな新規顧客層にアプローチできるかもしれません。
テレビや新聞などに比べるとメールの添付資料などを見てもらえる確率も高いので、プレスリリースの他に自社・自店の媒体資料なども添えて送るようにしてみましょう。
まとめ
PRとは何か、広告やプロモーションとの違い、PR先へのアプローチ方法などを解説しました。
・PRとは本来、組織と公衆をより良い関係でつなぐための概念
・狭義のPRとは、情報を戦略的に発信し関係性を構築すること
・PR活動をする時は、プレスリリースを作成して各種媒体にアプローチする
本来のPRの意味を知ったことで、マーケティングの流れや大枠も理解することが出来たのではないでしょうか。PR活動は単独で行うよりも、広告や販促と連携することで大きな成果につながりやすくなります。
情報発信を行う際には、掲載媒体のターゲットと情報のターゲットが一致していることを意識してPRを行なってみてくださいね!
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