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人手が足りない!少人数でネットショップを成長させるコツを「ひとりEC」の三浦さんに聞いてみた。

少人数でのネットショップ運営ではやることがたくさん。「人手が足りない」「時間がない」と悩んでいるオーナー様も多いかもしれません。今回は、ひとりでネットショップを運営して年商1億円超えを実現している、ミウラタクヤ商店店主・三浦卓也さんに、仕事の優先順位のつけ方や、売上につながるお客様とのコミュニケーションの取り方について伺いました。

ミウラタクヤ商店店主 三浦卓也さん
大手Web広告代理店などに勤務後、2016年に独立。健康食品やハンドメイド雑貨を販売するEC店舗の運営を経て、2019年に屋号を「ミウラタクヤ商店」に変更。バターコーヒーのオンライン販売を手がける。最新著書『ひとりEC』(インプレス)好評発売中。 Twitter:@miuratakuya_hac

三浦さんについて教えてください

三浦さんのお仕事を教えてください。

「ミウラタクヤ商店」というバターコーヒーのお店の運営と、EC運営ノウハウをはじめとしたグロースハックを、EC事業者様に提供する仕事をしています。

ネットショップの運営に興味を持ったのは、もともと起業志向だったこともありますが、広告代理店で働いていたときに、小規模店主が楽天やAmazonなど大手ECサイトに出店して商品を販売する通販ビジネス(物販EC)に出会ったことがきっかけでした。当時はこのような形態のスモールビジネスが伸びていたのと、自身の経験から物販ECにインターネット広告の要素を取り入れればうまくいきそうだという感覚があり、自分でやってみることにしたのが「ひとりEC」の始まりです。屋号はインパクトのあるものにするため、自分のフルネームにしています。

商材を”バターコーヒー”にしたのはなぜですか?

独立当初からダイエットを目的とした健康食品を扱うことに決めていたのですが、日本にありがちな商品ではお客様の目は引かないと思ったんですね。ビジネスを成功させるには、差別化ポイントを作らないといけない。いろいろと考えを巡らせて、健康やダイエットのカテゴリでは、海外のトレンドが日本に入ってくる傾向があるので、まずは海外で流行している商品を取り入れることにしました。日本の健康食品会社さんに依頼して、OEMで次々と商品開発をしていったうちのひとつがバターコーヒーでした。

話は変わり、3年前くらいに私自身が太ってしまって、痩せるためにダイエットを始めたんですね。日々のダイエットの奮闘ぶりをInstagramで発信していたら、いろいろな人からDMをいただくようになり、「もしかしたらダイエットを目的とした健康食品にお客様が求めているのはコミュニケーションじゃないか」という気づきを得ました。商品を売って終わりではなく、お客様が納得いくまで説明することが大事なのではないかと。ところが、いざ自社商品を見直してみると、商品のよさをロジカルに説明できないものばかりだったんです。

自分がダイエットに取り組むにあたっては、数百冊の本を読んで必至に勉強して、実践を重ねてきました。そのとき得た知識と成功体験を踏まえて改めて原材料を確認すると、たとえばブドウ糖のようなダイエットに直接関係のない、味つけのためだけに使われている成分が入っている商品も見つかりました。これでは、「なぜ痩せるのか」という質問がきたときに明快な回答を提示できませんよね。

そのような曖昧さのある商品をすべて除外していったところ、もっとも論理的に説明しやすいのがバターコーヒーだったので、これに絞って販売することに決めて今に至ります。

三期連続で年商1億円を達成した秘訣はなんですか?

バターコーヒーを販売するにあたっての戦略面では、挫折した人にターゲットを絞ったことが功を奏したと思います。バターコーヒーダイエットでは、途中で挫折している人がたくさんいるんですよね。

バターコーヒーの関連書籍は国内でおよそ25万部流通しています。少なくとも25万人が認知していると考えられるので、そのうちの4%にあたる1万人くらいは挫折しているのではないかと推測して、この人たちだけにリーチしそうなインターネット広告を打ちました。その戦略が当たり、売上が伸びていきました。

これに加えて、店長自らがお客様と密にコミュニケーションを取る戦略も、売上に貢献していると確信しています。

少人数でネットショップを成長させるコツは「優先順位をつけること」と「お客様との密なコミュニケーション」

やらないことはどうやって決める?優先順位をつけるポイントとは

少人数でネットショップを成功させるにはどういったコツがあるのでしょうか。

EC運営ではやることがたくさんあって、売上につながらない仕事も数多くあります。それでも、売上につながる仕事を増やしていかなければ、当然売上増は見込めません。

しかしながら少人数ではリソースに限りがあります。そこで重要なのが「優先順位をつけること」です。言いかえると「やること」と「やらないこと」をはっきりと決めることですね。

自分でやること、やらないことの優先順位は何を基準に決めているのですか?

仕事の優先順位を決めるうえでひとつの判断基準になるのは、その仕事がお客様のためになることかどうかです。私の場合は、ひとりで運営していて使える時間は限られているので、徹底的に効率化を図り、手間がかかることは基本的にはやらないことにしています。できないことをできるように努力するのではなく、できないなかでどうやって結果を出すかが大事です。

ネットショップ運営で手間がかかる業務にはどういうものがあるのでしょうか。

受注からお客様に納品するまでのオペレーションと、HTMLやCMSの更新作業です。最近はノーコードが主流ですが、自分でコードを書いていたときはかなり時間を取られていました。

最近はHTMLやCMSの更新にノーコードを利用していますが、その理由はデザイン性の高いキレイなページを作ることがお客様のためになるわけではないではないからです。自分でコードを書くことにこだわるよりも、お客様に向けていい文章やいいコピーを書くことに注力したほうが売上にもつながると思うので、後者に時間を割いています。

また、ひとりや少人数でECを運営していくうえでは、業務を外注することも一案です。ただ、その業務を外注するか自社でやるかの線引きは明確にしておくべきです。私自身は、お客様にあまり関係のない受注処理から納品までのプロセスは、ネットショップのサービスや機能を活用し、お客様に直接関係することは自分の手でやることにしています。とくに、お店から発信するメッセージは売上に大きく影響するので、ここは絶対に外注せず、自分で考え抜いて、生の声を届けることを大事にしています。

お客様とコミュニケーションを取るコツは「ていねいで役に立つ友達」になること

三浦さん自らお客様と密なコミュニケーションをとられているそうですが、具体的なお話をお伺いできますか。

ミウラタクヤ商店ではLINEをメインの連絡ツールとして使っていて、1時間に5人ほどから連絡がきます。「お客様から連絡がきたら即返す」「1聞かれたら10返す」というスタンスで接客しています。お客様とのコミュニケーションに、1日3時間は使っていると思います。

ちなみにLINEを窓口に選んだのは、友達登録者数がかんたんに増える、一斉配信ができるなど、使い勝手がいいからです。LINE@の利用から始めましたが、商品もよく売れていますよ。InstagramなどでもDMをたくさんいただきますが、返信に手間がかかることもあって、完全にLINEにシフトしました。

LINEで常時やりとりするのは大変そうに思われるかもしれませんが、私のビジネスモデルでは、お客様とのコミュニケーション量に比例して売上が上がり、収益になるので、そこが頑張るモチベーションになっています。コミュニケーションを取る回数を増やしたほうが効率的なんですよね。

最近の私の結論としては、あくまで目安ですが月商500万円未満のショップさんは、私のようにお客様との距離感を縮めて、「ていねいで役に立つ友達」のような立ち位置でやりとりしたほうがうまくいきやすいと思います。

ただ、組織でECショップを運営している場合などは、必ずしもこの方法がよいとは限りません。私は運営をひとりでやっていて、オペレーションコストをかなり低く抑えているので、お客様とのコミュニケーションの時間をたっぷり取れていますが、商材や体制によっては難しいかもしれません。また、月商500万円を超えてくると、単純に個別対応が大変になるので、システマティックにしておかなければ対応しきれない部分も出てくると思います。その場合は、自社の状況に合わせてリソースをかける部分を選択すべきでしょう。

お客様とのコミュニケーション量を増やす方法を教えてください。

待ちの姿勢ではコミュニケーション量は増えません。「ダイエットについて質問してください」と唐突に聞かれても、相談事はなかなか思い浮かばないですよね。こちらから情報を投げかけないと反応は返ってこないものなので、泥臭いかもしれませんが、情報発信量を地道に増やしていくことをおすすめします。私の場合は、ダイエットのコンサルを無料でおこなったり、メルマガなどで有用な情報を提供したり、意図的にコミュニケーションが増えるような企画を実施したりしています。

情報発信用のツールとしては、LINE以外ではメルマガがもっともコミュニケーションを取りやすいですね。ネットショップの運営は、突き詰めるとリストマーケティングみたいなもの。リストをセグメント化して、クリエイティブを最適化し、反応の精度を上げていくことが重要だと考えると、メルマガは理にかなっています。また、仲のよい人たちが集まったコミュニティ内でやりとりするのが一番盛り上がるので、そういった面でもLINEとメルマガは使いやすいです。

もちろん、人によって得意・不得意がありますし、LINEとメルマガがベストというわけではありません。よく「SNSはどれがいいですか」という相談を受けるんですけど、このSNSを使えばうまくいくというセオリーはなく、選んだSNSでいかに頑張るかが大事です。TwitterにハマっているならTwitter、Instagramが好きならInstagramと、自分に合ったSNSを選択して、そこに力を注いでいけばいいのかなと思います。

メルマガをやる場合、配信回数はどのくらいがおすすめですか?

週に2~3回くらいがベターです。実際は、週5回配信しても登録者数は減らないですし、コアなお客様はメルマガ配信を解除しないので、配信頻度を上げても問題はありません。そんなに余力はないけれど、売上を上げるためにやるという場合は、やはり最低でも週2回ペースで配信したほうがいいですね。メルマガにはブックマーク機能としての側面もあるので、お客様にお店のことを思い出してもらうきっかけを作る意味でもおすすめします。

メルマガの文字数は、1000文字のメルマガを1回送るなら、300文字を3回送るほうがいいです。数年前に出た本によると、人間が集中して読める文字数はだいたい900文字だそうですが、情報量が爆発的に増えている今はもっと短くなっているはずです。それに、メルマガはリマインダーの意味合いが強いので、短い文字数のメルマガを複数回送ったほうが効果的だと思います。

文章の体裁については、近年「パーソナライズ」という言葉が流行っていますが、お客様ではなく運営側のパーソナライズというか、個性を出していくことがすごく大事だと考えています。EC事業者様のメルマガをよく読むのですが、正直な感想を述べると、おもしろいなと思うものは1割くらいで、ほとんどが興味を引かれないんですよね。それはなぜかというと、みんなが同じ言葉使いをしているからです。言葉にエンタメ性を持たせれば、振り向いてもらえるようになり、「何々さんのところだから買うんだよ」という関係性が築けます。これは、どの事業者様も意識したほうがいいかなと思います。

書籍「ひとりEC 個人でも売上を大きく伸ばせるネットショップ運営術」について

最後に、2022年3月に発売された書籍についてお伺いしてもよいですか。どういった方に一番読んでいただきたいかも併せて教えてください。

本書では、ひとりでも売上を大きく伸ばすためのネットショップ運営のコツを解説しています。
考え方やノウハウが、これからネットショップを始めようとする個人の方や小規模事業者さん、既に運営をしていて行き詰まっている方をはじめ、多くの事業者さまにとって、参考になれば幸いです。

三浦さんの著書の詳細はこちら 

三浦さん本日はありがとうございました。

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