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メールマーケティングでECの成果を出す秘訣とは? 極意を安藤さんに聞いてみた。

メルマガを使ったメールマーケティングは、お客様との長期的な関係構築に役立ちます。
今回は、合同会社エスプーマ代表の安藤健作さんを再びお招きして、改めてメールマーケティングの有用性やメルマガの効果的な配信方法などについてじっくり伺いました。最新の書籍についても紹介します。

安藤 健作さん
合同会社エスプーマ代表 安藤 健作さん
早稲田大学卒業後、丸井を経て、2006年にラクスに入社。同社にてCS組織の立ち上げを行ったのち、マーケティングマネージャへ。その後、16年よりメールマーケティングサービス「配配メール」の事業責任者となる。その後、WACUL 執行役員CMOを経て、24年より合同会社エスプーマ代表。メールマーケティングのエバンジェリストとして活動し、講演実績多数。22年「現場のプロが教える!BtoBマーケティングの基礎知識」(マイナビ出版/共著)、24年「メールマーケティングの教科書 誰でも成果を生み出せるメルマガの定石」(翔泳社)出版
公式サイト:合同会社エスプーマ
X(旧Twitter):https://x.com/comune1128

メールマーケティングって何?SNS主流の時代のメルマガの重要性

少しお久しぶりでございます。前回インタビューさせていただいたのが2022年でしたので2年ぶりですね。

もう、そんなにたちましたか。

はい。なので改めて、メールマーケティングについて教えていただいてもいいでしょうか。

はい、メールマーケティングは、メールマガジン(メルマガ)を活用したマーケティング手法です。SNSやLINEマーケティングが短期的な関係づくりに効果的なのに対し、メールマーケティングはKeep in touch、つまり長期的なリレーションシップを構築するのに役立ちます。

近年は、「新商品の案内はSNSやLINE」「CSRなど企業活動に関する内容はメルマガ」のように、両者の役割の違いを認識して使い分けされている企業さんが増えています

メルマガの特長についておさらいすると、メルマガはメールボックスにストックされるので、受信側の都合のよいときに過去に遡って確認できるのが利点です。一方SNSの場合は、タイムラインで何気なく見かけた投稿をあとから確認しようとしても、埋もれて見つからないことがよくあります。企業側からすると、興味のある人を取り込む機会を失うのでもったいないですよね。

また、メルマガには“押しつけがましさ”がないのも特長です。設定しない限りスマホに受信通知が届くことはなく、読むタイミングはあくまで相手次第になります。それに対し通知機能のあるLINEでは、プッシュ通知が頻繁に届くと不快感を与える心配があり、興味のないメッセージが多いとブロックされてしまいます。なので、相手をより思いやれるコミュニケーション手段としては、メルマガに軍配が上がるといえるでしょう。

それから、メルマガは記憶を呼び起こすツールとしても最適です。旅行で宿泊した旅館に好印象をもっても、記憶はだんだんと薄れていきますよね。帰宅後に、旅館から月に1回や2回のペースで「今の旅館の周りの景色はこんな感じですよ」と便りが届けば、記憶が呼び起こされてアクションにつながります。

SNSでも現地情報を発信できますが、基本的にメルマガは個人宛なので、よりプライベートに近い情報をお届けできるのもメリットです。

なるほど。たしかにメルマガは記憶を呼び起こすツールに最適ですね。以前「メールマーケティング」についてあまり認知されきってはいないというお話もありましたが、2年前と比べて、メールマーケティングに関する認知は広がったと思いますか?

そうですね、仕事柄さまざまなジャンルのメルマガを観測していますが、最近は定石を押さえたものが主流で、簡素なテキストメールなどはほぼ見かけなくなりました。前回インタビューを受けた2年前と比べても、確実に認識が広がっているのを感じます。

動かすメルマガと読ませるメルマガ

2年前よりも広がっているメールマーケティングですが、改めて、読まれているメルマガの特徴やポイントを教えてください。

ユーザーがメルマガを開封するまでの行動を辿ると、始めにメールボックスを確認し、メール一覧をざっと見ます。差出人が知っている企業名や店名だと目に留まりやすく、さらにちょっとでも惹かれる件名であれば開封に至ります。逆に、見知らぬ送信者から届いたものや興味のない件名の場合は、開封されにくくなります。

これを踏まえると、差出人名は企業名や店名をそのまま使うべきで、わざわざ「〇〇通信」のような認知されていない名前に変える必要はないとわかりますよね。

また件名については、内容はさることながら文字数も大切な要素になります。長い件名は省略されてしまうので、スマホ画面に表示される15文字以内に収め、端的に要件を伝えるようにしましょう。

パッと目に入って読める文字数でいかにひきつけるかということですね。

そのとおりです。そのあとに初めて、本文にたどり着くわけです。

本文について知っておいてほしいのですが、メルマガには「動かすメルマガ」と「読ませるメルマガ」の2種類があります。前者は行動を起こさせる(=商品を買ってもらう)ためのメルマガで、バーゲン情報やクーポン付きメルマガなどがそれにあたります。

後者はお店を知って好きになってもらうためのメルマガで、自分たちは何者で、こんな取り組みをしていて、こういう商品を扱っていますなど、お店自体をアピールする内容が該当します。

「動かすメルマガ」は態度変容を起こさせるのに役立ちますが、メルマガ内で完結できないのが弱点です。メルマガに掲載された商品をクリックすると、購入ページではなくランディングページに飛びますよね。即購入できずワンクッション挟むことになるので、離脱されやすくなります。

かといって、メルマガに商品の色や素材などを載せて、買いたい気持ちを高めればいいかというとそうではありません。詳細はランディングページに書かれているので、メルマガはシンプルな情報だけで十分。100人クリックしても購入に至るのは10人くらいだったりするので、購入率を上げたいなら、いかに多くの人にクリックさせるかを念頭においてメルマガの内容を吟味してくださいね。

「読ませるメルマガ」は、Keep in touchに有効です。ただ、店長さんの近況報告や熱い思いを語るメルマガをよく見かけますが、ほかのメンバーに引き継いでからも同じスタイルを継続させると、「なにを書いたらいいかわからない」と担当者が疲れてしまいます。なので、長文メルマガは月に1~2回程度にして、ふだんは端的な内容を配信するといいかもしれません。

ECはメールマーケティングとの相性がよく、メルマガ経由で購入に至るケースも多くあります。EC事業者さんにはぜひ積極的に取り組んでいただきたいですが、毎回毎回「バーゲンをやっていますよ」と送ると、「このお店はいつも買え買えとうるさいな」と不快に思われることもあります。

メルマガを送るなら、後者の「読ませるメルマガ」の比率を高め、できるだけ自分たちの取り組みを端的に伝えるコンテンツづくりをめざすと良いです。

メールマーケティングで覚えておくべき5つの指標

施策を実施する際にセットになるのか効果測定ですが…メールマーケティングで見るべき指標を教えてください。

見るべき指標には、不達率、開封率、クリック率、反応率、購読解除率があります。

不達率は、配信リストのなかでどのくらいエラーとして返ってきたかを表す指標です。不達の理由としては、メールアドレスが使われていない、登録ミス、一時的なエラーなどが挙げられます。一般的に不達が許容されるのはリスト中の5%まで。これを超えると迷惑メール扱いされるので、届かないメールアドレスはリストから削除してください。

開封率は、メルマガが開封された割合を示す指標です。ただ、近年では正確な数字ではない可能性があるので注意が必要です。

Apple社のiPhoneでは、個人情報保護の兼ね合いから、配信元に実際の開封情報を開示せず、全員が開封したと提示しています。2年くらい前のアップデートでそう変わったのですが、今後Gmailも追随するのではないかといわれています。

メルマガを開封した人に営業電話をかける不動産屋さんや車のディーラーさんがいますが、そもそも開封していない可能性もあるので、今後は避けたほうがいいと思います。

クリック率は、配信リストのうちどのくらいの人がクリックしたかを見る指標です。メールマーケティングでは重要な指標のひとつで、これをいかに増やすかを念頭に置いてメルマガの内容を考える必要があります。

反応率は、クリック数÷開封数×100で算出されます。メルマガを開封した人のうち、どれだけの人がクリックしたかを確認するための指標で、反応率が悪い場合はメールの件名と内容が一致していない可能性があります。コンテンツのファーストビューは、必ず件名に合わせるようにしましょう。

購読解除率は、メルマガを配信した人のうちどのくらいが購読解除したかを示す指標で、許容範囲は0.25%未満といわれています。購読解除がいちばん多いのは、初めてメルマガを受け取ったタイミング。

ウェルカムメールの開封率は約70%と高いので、継続的に配信を受け取ってもらえるように気合いを入れてつくることを強くおすすめします。その際、「会員登録ありがとうございました。あなたの会員番号はこれです」だけでは、次につながりにくいのは明白です。

ECの場合は、「売れ筋商品はこれです」「次回使えるクーポンを送ります」などと、お店の魅力やメリットも案内したほうが効果的だと思います。

ちなみに、ある有名ブランドでは、ウェルカムメールでブランドの歴史や過去のスタイルなどを紹介していました。ファンエンゲージメントを高めるのに役立つので、参考にしてみてはいかがでしょう。

なお、これら5つの指標のうち、最初はクリック率だけを注視していけばいいと思います。慣れてきたら全体を見るようにしてくださいね。

メルマガ施策の“振り返りポイント”や“効果測定のポイント”があれば教えてください。

開封率、クリック率、反応率を追う場合は、配信するたびに数字に一喜一憂するのではなく、ある程度長いスパンで推移を見て、徐々に下がってきているとわかったら対応するくらいで十分です。昨日は15%だったのに今日は10%だから改善しようとするのは、あまり意味がありません。

逆に、なるべく小まめにチェックしてほしいのは不達率と購読解除率です。とくに購読解除率が上がってきている場合は、コンテンツと読者がほしい情報の間にアンマッチが起きていることを意味するので、早めに対応すべきでしょう。とはいえ、許容範囲の0.25%を超えてからで大丈夫です。

配信後の測定タイミングについては、1時間後には成果が決まるので、基本的にはいつ見ても問題ありません。1週間後に見ても数字はほぼ変わらないと思います。

メルマガで成果を出すおすすめの型は?

メールマーケティングで成果を出すコンテンツの型があったらぜひ教えてください。

ファーストビューにCTA(コールトゥアクション)ボタンが置かれていることが、なによりも重要です。メルマガは、75%の人が7秒以内しか見ません。7秒で把握できるのは140文字程度なので、いちばん売りたいものをトップに置くのが鉄則です。

メルマガはバナー広告と一緒で、いかにクリックしてもらうかがポイントです。メルマガ作成時は、ユーザーがあまり考えずに、パッと見てクリックしたくなるつくりになっているかを意識しましょう。

それから、Yahoo!メール、Gmail、iPhoneで、届いたメルマガのCTAボタンが、スクロールせずにきちんとファーストビューに表示されているかを確認することも大切です。とくにGmailの場合、コンテンツの表示幅が狭くなったので気をつけてください。

ちなみに、送る側の人は、自分たちのメルマガが100%読まれると思っているかもしれませんが、たいていの人は流し読みしています。毎回メルマガをつくるのがたいへんという声も聞かれますが、そんなに見られていないので、手を抜けるところは抜いてもいいんじゃないかなと思います。

読まれるメルマガの配信時間や配信回数は?

メルマガの配信時間について調べるといろいろな情報がでてきますが、ベストな時間はいつなのでしょうか?

BtoCの場合、定番の配信タイミングは、通勤・通学時間、お昼休み、18時~21時の余暇時間で、配信曜日は週末の金・土・日の成果が高いといわれています。ただし、その時間を狙って配信する他社さんも多いので、大量のメルマガの中に埋もれてしまう可能性があります。

もちろんターゲットによって行動時間が異なるので、自社にとって本当に通勤・通学時間など定番の配信時間に送るのがベストかどうか、きちんと検証してください。少しタイミングをずらしたいのであれば、Googleアナリティクスを見て、アクセスがいちばん多い時間帯に配信するのがいいですね。

ちなみに、初回購入時の会員登録後に送られてくるメルマガを見ると、2回目の購入につながるような工夫はされていないことが多いです。

もし思い当たる場合は、先ほど申し上げたようなウェルカムメールやカゴ落ちメールを送るなどの対策を取ることをおすすめします。とくにカゴ落ちメールは、クリックした人の1/3が購入につながるので対応したほうがいいです。

ではメルマガの配信回数はどのくらいがいいのでしょうか?

BtoCの場合、メルマガの開封率の平均は10%くらいです。つまり配信したうちの1割の人にしか見られないということです。そのなかでクリック率を1%から2%にするのはかなり苦労しますが、メルマガの配信回数を1回から2回に増やすことはすぐにできますよね。

商品がたくさんあるなら、1通のメルマガにギュッと詰め込むのではなく数回に分けて配信するなど、配信回数を上げると売上アップにつながりやすくなります。

「配信回数が多いとクレームにつながるのでは?」と躊躇される方もいますが、クレームを入れてきた人が本来のターゲットではないこともあります。「クレームはいうけれど、商品は買わない」という人もいるので、そういう人はリストから外して、「送らないように手続きしました」と伝えたほうが成果は最大化されるはずです。

態度変容を起こさない人を残しておいても意味がないので、リストの精度を上げる意味でもそうした対応は必要でしょう。また、本来のターゲットではないけれど、たまたまプレゼントなどを購入しただけの人もいます。そういう人にメルマガを購読解除されても悲観する必要はありません。

休眠中のお客様を再び惹きつけるウィンバック(winback)メールもおすすめ

他にも何かメールマーケティングで有効な施策はありますか?

メルマガを出しても反応しない人は一定数います。そこで一定期間反応しない人たちをリスト化して、「特別なクーポンを送りました」などと書いたメルマガを送って開封を促します。このような休眠中のお客様を再び惹きつけるためのメールをウィンバックメールと呼びます。

開封した人は元のリストに戻し、反応がない人はリストから外すことで、リストの精度を上げることができます。システムを組めばかんたんなので、実施したほうがいいと思います。

なお、配信リストはキレイにしておくことが大切です。理想は、リストの全員がターゲットであること。先ほど申し上げたとおり、本来のターゲットではないお客様も含まれている可能性があるので、定期的に精査することをおすすめします。

また精度の高いリストをつくる方法として、BtoCであれば、サイト上にメルマガ登録への導線を設ける方法が挙げられます。登録に必要なのはメールアドレスのみと謳い、ショップが気になって覗きに来た人たちにメルマガ登録を促します。「クーポンを進呈しますよ」などのオファーを出せば、次につながる武器をもった見込み客リストを得られます。

ほかにも、ステップメールやシナリオメールなどがありますが、成果につながりにくいので、個人的にはやらなくてもいいと思います。リソースが十分にある場合は、取り組んでみてもいいかもしれません。

知っておくべきメールの法律

メールマーケティングで知っておくべき法律などありますか?

少し専門的な話をすると、迷惑メールにはIPレピュテーションと認証技術が関係しています。前者は配信ツール会社の領域なので個々の企業さんが気にする必要はありませんが、後者の認証技術については対応が必要です。迷惑メール扱いされないように、SPF、DKIM、DMARCの3つを必ず認証するようにしてください。

とはいえ、迷惑メールに振り分けられる理由はひとつではなく、複合的な要因が絡んでいます。IPが汚れている(IPレピュテーションのスコアが低下している)からマイナス何点、無料、副業、金儲けのような禁止用語を使っているからマイナス何点と、点数が重なって迷惑メールになるので、ひとつ欠けているからといって即迷惑メール扱いされるわけではありません。

法律の話に移ると、メルマガ配信時は「特定電子メール法」と、ECの場合は「特定商取引法」も守らなければなりません。メルマガは承諾した人にしか送ってはならない(オプトイン)、購読解除の導線をしっかり用意する(オプトアウト)という決まりがあるので、きちんと遵守するようにしましょう。

特定電子メール法では、メルマガ登録時に「ダブルオプトイン」という2段階認証を利用することを推奨しています。ダブルオプトインでは、読者がメールアドレスを登録すると会員登録用のメールが届き、URLをクリックすると会員登録が完了します。読者が自分の意思で登録したことの証拠になり、メールアドレスの登録ミスも防げます。

また、会社名を表示する義務があるのにサービス名が入っている、購読解除の導線がわかりにくいなど、大手でもルールが守られていないケースがあるので見直しが必要です。なかでも、購読解除について避けてほしいのは、ログインしなければ手続きできない仕様にすること。

読者がIDもパスワードも忘れている場合、面倒だからと迷惑メールに振り分けてブロックすることがあります。ブロック数が増えると、メーラーに迷惑メールとして判断される原因になるので注意してください。

書籍について

最後に、安藤さんの書籍についてお聞かせください。

私がメールマーケティングに携わるようになった約10年前は、メルマガを活用して売上を上げる方法、いわゆる勝ちパターンは体系化されていませんでした。ネットで検索しても、「罫線を使って装飾しましょう」というような、デザインについて語る記事しかヒットせず、ためになる情報がなくて苦労しました。

「ならば自分が」とメルマガの活用方法をX(旧Twitter)やnoteなどで情報発信するようになると、「こういうのが読みたかった」というプラスの声をいただくようになりました。評判もよくトレンドが激しく変わる情報ではないので、今回一冊の書籍にまとめて出版しました。

メールマーケティングについてより詳しく知りたい方は、ぜひ書籍にも目をとおしてみてくださいね。

安藤さんの著書の詳細はこちら 

安藤さんありがとうございました。