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WordPressの魅力とは?おすすめテーマやプラグインの選び方について大串さんに聞いてみた。

WordPressは、世界中で使用されているオープンソースソフトウェアです。日本でのCMSシェアにおいては8割以上を誇り、Webサイトやブログ制作に欠かせない重要ツールとなっています。

ネットショップオーナーにも大いに役立つツールで、カラーミーショップのようなECサイト構築サービスとWordPressを連携させることで、自由にオウンドメディアを運用、情報発信できるようになるなど、コンテンツマーケティングの手法としても注目されています。

今回は、株式会社mgn代表取締役CEOの大串肇さんに、WordPressの魅力や使い方、おすすめのテーマやプラグインなどについて、詳しくお話を伺いました。

大串肇さん
株式会社mgn代表取締役CEO 大串肇さん
2005年頃よりWeb制作業に従事。Web制作会社にてデザイナー兼ディレクターとして勤務後、2012年よりフリーランスmgnとして独立し、2015年より株式会社mgn代表取締役。WordPressを利用したWebサイト制作を通して、企業がビジネスを成功させるためのお手伝いしている。
公式サイト:https://www.m-g-n.me/
X(旧Twitter):https://x.com/megane9988

大串さんについて

まず最初に、大串さんについて教えてください。

はい。株式会社mgn代表取締役CEOの大串肇です。ニックネームが“メガネ”で、よく“メガネさん”と呼ばれています。社名のmgnは「megane(メガネ)」を略したものです。

mgnは、WordPressを用いたサイト制作や運用、コンサルティングなどを展開している会社です。EC支援をすることも多く、ネットショップを運営されているお客様には、サイト制作から運用コンサル、SNSを活用した集客まで幅広くお手伝いしています。

私個人の活動としては、2008年にWordPressコミュニティに参加して以来、コントリビュート(貢献)活動を地道に続けています。

私がWordPressをビジネスで本格的に扱うようになったのは、前職の制作会社に所属していたときです。渋谷で開催された定員60名ほどのカンファレンスに参加したのが始まりで、自然とコミュニティにも関わるようになりました。

前職では、立ち上げメンバーとしてWordPressを軸としたWeb制作に携わっていましたが、明らかにお客様が増えたので、WordPressの注目度の高さと勢いを感じましたね。その後、2012年に退職してフリーランスで活動を始め、2015年10月に今の会社を立ち上げ現在に至ります。

WordPressとは?

かなり長い期間WordPressに携わっていらっしゃるんですね。かなり多くの方が知っているツールではありますが、改めてWordPressがどういったものなのか、おしえていただけますか?

WordPressは、企業のホームページから個人のブログまでさまざまなWebページを作成できるオープンソースのソフトウェアで、CMS(コンテンツマネジメントシステム)の一種です。WordPressの創始者は、米Automattic社CEOのマット・マレンウェッグ(Matt Mullenweg)氏。

先行開発されていた「b2/cafelog」というブログソフトに、イギリス人のマイク・リトル氏とともに変更を加え、2003年にWordPressとしてリリースし、同年には有志による、日本語版も登場しました。※参考 :WordPress年表

今や世界のWebサイトの4割以上がWordPressで作られているといわれ、世界ナンバーワンのシェアを誇ります。日本語のCMSサイトに限ると、約8割がWordPress製といわれています。

WordPressの魅力や活用するメリット

かなり多くのサイトに用いられているんですね。それほど多くの方が利用するにはそれ相応のメリットがあるのだと思いますが、WordPressの魅力を教えて頂けますか?

オープンソースのソフトウェアなので、誰でも無料で使用できるのが最大の魅力です。テーマ(デザインのテンプレート)が豊富に揃っていて、プラグインをインストールすればいくらでも機能を追加できるなど、カスタマイズの自由度が高く、拡張性に優れている点も多くの人に支持されるゆえんです。

テーマは、WordPress公式ディレクトリに登録されているものだけで1万2千種類以上、プラグインは5万種類以上もあり、自由に組み合わせてお好みのWebサイトを制作できます。CMSなどのシステムを自前で構築したり、導入したりするには、プログラミングに関する深い知識が必要ですが、WordPressは導入や運用が比較的かんたんで、Web制作スキルがなくても使いやすいのも魅力です。

20年の歴史のなかでノウハウがたっぷり蓄積されているので、初めての人でも使い方などの情報を収集しやすいと思います。費用は、基本的にはテーマもプラグインも無料で使えますが、なかには有料で提供されているものもあります。

WordPress自体は無料ですがインターネット上に公開するにあたっては「ドメイン」の購入費用や「サーバー」のレンタル費用などが別途必要になります。
土地(サーバー)と住所(ドメイン)の費用はかかりますが建物(WordPress)代は無料です。外装・内装(デザインや機能)は自分で手を加えるか、建築会社(制作会社やデザイナー)さんに依頼してねというイメージです。

WordPressでは、日本をはじめ世界的にもコミュニティ活動が活発で、有志メンバーが無償でオープンソースの開発などに勤しんでいます。それがWordPressの魅力を高めています。

ちなみに、カラーミーショップでネットショップを運営している方がWordPressをネットショップと連携させる場合、サーバーやドメインを別途契約することなく無料で始められますよね。ショップオーナーさんにとってかなりメリットが大きいので、使わない手はないのかなと思います。

ありがとうございます。カラーミーショップでは「WPオプション」という機能を無料で提供しているので、土地代・住所代がかからずにカラーミーショップをお使いのかたは無料でWordPressをネットショップと連携して運用いただけます。

知っておきたいWordPressのセキュリティ対策

WordPressのメリットをお伺いしましたが、逆にデメリットはありますか?

メリットの裏返しになりますが、無償提供のオープンソースソフトウェアでは品質が保証されないため、脆弱性やセキュリティ対策は使用者自身で行なう必要があります。不具合が発生しても、開発者側にサポート義務はないんです。

ですので「ログインできなくなった。」とか「脆弱性を突かれてハッキングされた」という場合も、自分たちで対応しなければなりません。業者に保守を依頼すれば、安心して使用できる環境を担保してもらえますが、基本的にオープンソースソフトウェアで制作・運用する場合は自己責任となります。

このようにお話すると、「WordPressを使うのは危険なのか」「自分たちでセキュリティ対策ができるか」と不安になるかもしれませんが、WordPressはボランティアの有志メンバー中心となって、世界中で日夜 常に開発が続けられているソフトウェアです。

2~3か月に1度くらいのペースで、メジャーバージョンアップがあります。それだけでなく、不具合の修正や脆弱性対策などは、必要に応じてアップデートされますので、定期的にチェックして必ずアップデートを実施すれば、不必要に恐れることはないと思います。

パソコンやスマホのOSのアップデートと同じように、WordPressには自動更新機能が備わっているので、「アップデートを忘れそうだな」と心配な方は自動更新を検討してみてください。
不安な場合はプロにお任せすることもできます。

セキュリティ対策として最低限行なっていただきたいのは、WordPressのログインパスワードを「Password」や「1234」のような推測されやすいものにせず、複雑なパスワードにすること。可能なら二段階認証にして、不正ログインのリスクを減らすことが大切です。またプラグインやテーマも、常に最新バージョンを保つようにしてくださいね。

WordPressの使い方

なるほど。スマホのアップデートをイメージするとわかりやすく安心感をもてますね。WordPressのメリット・デメリットがわかったので次は簡単な使いかたを教えてください。

まずWordPressを使い始める前に、Webサイトの目的を明確にしましょう。ブログを書くためのサイトと本格的なECサイトでは当然ながら作り方が違ってきますし、後者ならプロに依頼したほうが確実です。サイトの目的を決めましょう。

サイトの目的を決めたら、サーバーをレンタル。次にサーバーにWordPressをインストールします。たいていはサーバーに自動インストールできる機能がついているので、ボタンを押すだけで完了します。インストール後、WordPressの管理画面にログインすれば、Webサイトを作れる状態になります。

ブログを書く場合の手順を説明すると、最初にメニューの「新規投稿を追加」をクリックして、WordPress搭載の編集ツール「ブロックエディター」を開きます。タイトルを入力し、見出しを挿入しながら本文を書いていきます。アップロードした画像を文中に追加できるので、画像を配置しながら体裁を整えます。

記事が完成したら、カテゴリーを選択します。カテゴリーは編集可能で、「お知らせ」や「商品紹介」、「日記」などのカテゴリーを適宜追加して該当するものにチェックを入れます。プレビューで確認して、問題がなければ公開ボタンを押して終了です。

WordPressはパソコンだけでなくスマートフォンでも使えます。WordPressの公式アプリをインストールすれば、SNS感覚で操作でき、スマホで撮影した写真をWordPressで作ったブログにアップすることもできます。
手軽に記事を投稿できて便利ですよ。

ECサイト運営者にお勧めのWordPress活用術

WordPressのさまざまなサイトをコンサルティングされている大串さんがEC事業者さんにお勧めするWordPress活用術を教えていただけますか?

そうですね、aboutページやコンセプトページに加え、商品の素材やデザイン、制作工程などについて、造り手の考え方やこだわりが書かれている記事コンテンツがあると、買い手の心に響くのではないかなと思います。

自社メディアには、商品やブランドのコンセプトをしっかり書くべきだと思います。そのほうが、お客さんは納得して購入できるはずです。洋服だとしたら、どんな目的で作ったのか、どんな人が着ているのか、ブランドに対してユーザーはどんな話をしているのかなど、情報が多ければ多いほど共感を覚えて購買意欲が高まります。

考え方は人それぞれですが、一般的に工場で大量生産されているものと職人さんが一つひとつこだわって作ったものでは、同じ値段でも価値が異なると思います。後者の場合で、開発秘話などが丁寧に綴られていたらものすごく応援したくなりますし、ほしい気持ちがいっそう強くなるという人も多いのではないでしょうか。

お客さんが実際に履いて、いい具合に色落ちしたデニムの画像がライブラリで見られる、というコンテンツがあってもいいかもしれませんね。
アパレルに限らず、キッチン雑貨でも、食品でも、商品についての細かい情報がたくさんあると共感を得やすいと思います。

WordPressで作ったコンテンツは蓄積されていくので、自社の財産になります。SNSで発信したコンテンツは、SNSのプラットフォーマーの決定で削除されたり、別の場所に引っ越す際にもデータの取得が完全にできないケースがあります。

それに対して、WordPressのデータはすべて自社のものとして管理できるのが利点です。作った記事はムダにはならないので、商品に関することはもちろん、少しでも関連しそうなネタは、どんどん発信していくといいのかなと思います。

WordPressでのSEO対策のコツ

コンテンツを発信していくのであれば、やはり検索流入も意識したいところですが、WordPressでのSEO対策のコツを教えていただけますか?

WordPressでは「タイトルタグ」を設定できます。なので、Googleで行なうSEO対策と同様に、サイトタイトルや記事タイトルにキーワードを盛り込むことが重要です。

ローカルのお店なら、サイトタイトルに「何県何市の美容室」「最寄は何駅の生花店」のように、場所名を含めると効果的だと思います。商品記事なら、記事タイトルの前半に商品名を入れるのもポイントです。

記事コンテンツについては、定期的に新規投稿する以外に過去記事をリライトする方法もあります。WordPressの管理画面からアクセス解析を見られるようにプラグイン(拡張機能)を追加して、いちばんアクセス数の高い記事を探します。「平均的に5アクセスなのにこの記事は100アクセスある」というような、突出して読まれている記事があると思うので、その記事を抽出してブラッシュアップします。

2023年度版、2024年度版と最新版に更新しながら記事を育てて、サイト全体の評価を高めるテクニックも、試す価値はあると思います。

ちなみに、ショップオーナーさんの人となりを伝えてファンを獲得したい場合は、WordPressブログよりSNSのほうが向いているかもしれません。なので、SNSはSNSで運用してフォロワーをブログに誘導する、ブログ内にSNSのタイムラインやリンクを張ってSNSのフォローにつなげるなど、ブログとSNSを上手に連携させて、集客に活用してみてはいかがでしょう。

WordPressでサイトを作るならどんなデザイン・テーマがおすすめ?

WordPressでサイトを作るときにお勧めのデザインやテーマを教えて下さい。

WordPressで日本語サイトを作るなら、日本人作者が作ったテーマを選ぶのがいちばんです。海外製のテーマの場合、英語ではカッコいいデザインでも、日本語に変換すると文字の大きさやバランスが崩れて見栄えが悪くなることがあります。

おすすめのテーマはいくつかありますが、株式会社ベクトルさんが提供する「Lightning(ライトニング)」と「X-T9(エックスティーナイン)」がまず候補として挙がります。
どちらも、信頼性の高いコーポレートサイトを作るのに最適です。白を基調としたシンプルなサイトが好みなら、「Arkhe(アルケー)」も選択肢に入ると思います。いずれも基本無料で十分に利用いただけます。

それぞれ有料のプラグインもあります。合わせて利用すると、さらに活用の幅が広がります。
このほか、テーマ自体が有料になりますが、「Snow Monkey(スノーモンキー)」や「SWELL(スウェル)」も人気のプラグインでおすすめです。

無料で使えるテーマは魅力的ですが、有料版には有料版のよさがあります。先ほどオープンソースは自己責任といいましたが、有料のプラグインのなかには、専用のフォーラムで質問したら回答をもらえるなど、困ったときにサポートを受けられるサービスを提供しているものもあります。

有料版にも月額制や買い切り、サブスクリプションなどさまざまなタイプがあるので、いくつか比較して自社に合うものを選択してくださいね。

なお、今回紹介したテーマはいずれも100%GPLに準拠しています。GPL(General Public License)とはオープンソースソフトウェアのライセンスのことで、使用者にソフトウェアの使用や複製、変更、再配布などの自由を保証します。WordPressコミュニティでは、100%GPLのテーマを使用することを推奨しています。

大串さんおすすめのプラグインとプラグイン選びのコツ

最後にぜひ、大串さんおすすめのプラグインを教えてください!

WordPressで作ったホームページにお問い合わせフォームを追加したい場合は、「Contact Form 7」か「Snow Monkey Forms」を推奨します。

Contact Form 7は、世界でもっともダウンロードされている無料のプラグインです。Snow Monkey Formsは、ブロックエディターに完全対応しているプラグインです。両者ともに作成者は日本人です。

どちらも初心者でも使いやすく、定期的に更新されているので安心して使えます。

また、Googleから提供されているWordPressプラグイン、「Site Kit by Google」もおすすめです。GoogleアナリティクスやGoogleサーチコンソールを、WordPressと連携できるプラグインで、WordPress上でアクセス解析の結果を確認できるようになります。自社のアクセス数の高い過去記事を探すときにも役立ちます。

もうひとつ、WordPressの画像を最適化する「EWWW Image Optimizer」も有用なプラグインです。画像をアップロードすると自動で設定サイズに圧縮されるので、サーバーの容量を節約でき、サイトの読み込み時間が短縮されるなどのメリットを得られます。

ほかにも多種多様なプラグインがありますが、ご自身でプラグインを選ぶ際は、WordPressプラグインディレクトリにあるものから選択してください。ボランティアとはいえWordPressの有識者・開発者がきちんとテストして、安全と判断されたものだけが並んでいるので、信頼性が高くなっています。

選ぶ際に5つ星評価やレビュー、有効インストール数(Active installations)などを参考にできるのもよい点です。さらに安心を重視するなら、有効インストール数10万以上のものを選択するのがおすすめです。

よく「WordPressプラグイン10選」のようなWeb記事を見かけることがありますが、情報が古い場合もあるので、そのまま鵜呑みにするのは危険です。なかには、最終更新日(Last updated)が3年以上前のものが混じっていることがあります。

メンテナンスされていないものを導入すると、サイトの脆弱性が高まる恐れがあるので注意が必要です。導入前に必ず、WordPressプラグインディレクトリで検索して、当該プラグインがあるか、きちんと更新されているかを確認してくださいね。

WordPressへの理解が深まりました。大串さん本日はありがとうございました。

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