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売上ゼロの窮地から生まれた「おはぎ」が人気爆発。和三盆の老舗「服部製糖所」が挑んだ商品開発秘話

いつも画面越しに見ているネットショップのむこうには、想いのつまった“モノ”とそれを届ける“”たちがいます。このコーナーでは、知られざる商品開発ストーリーやお店の裏側に迫る現場レポートをお届けします。
今回ご紹介するショップ
1864年の創業以来、徳島県内で栽培された希少なサトウキビから和三盆を製造。最上質の「大無類和三盆」を贅沢に使用した、色鮮やかで目にも楽しいおはぎが人気を集めています。
今回は、ネットショップ運営に携わる服部 道子さんに、お花のおはぎ「花輝(はなひかり)」の誕生秘話や、サトウキビの栽培から収穫・加工まで少人数で行う運営体制、今後挑戦してみたいことなどについてお話を伺いました。

コロナ禍が新商品開発のきっかけに

服部製糖所さんが作るお花のおはぎ、本当にきれいですよね。実はカラーミーショップのスタッフにもファンが多いんです。

ありがとうございます。

天然素材で味付けした手作りのおはぎ「花輝(はなひかり)」

いつどういったきっかけで、このおはぎが誕生したのでしょうか。

私たちは創業以来、サトウキビの生産・加工と、それで作った和三盆の卸売をメインとしてきました。お菓子屋さんが主な卸先だったのですが、コロナ禍でそういったお店がすべて休業になってしまって。収入ゼロの状態で、会社をどう守っていけばいいのか?と悩んだことが一番のきっかけでした。

オーブンのような機械を新たに増やしていく余裕もない中、何ができるのかと考えた結果、たどり着いたのが「おはぎ」だったんですよね。

なるほど。コロナ禍が大きな転機に……。今は何名体制でおはぎを製造していますか。

今は社員が4名いて、4名とも作ることができます。

農作業をしながら和三盆を製造し、おはぎを作り、それを販売して、梱包・発送までして……と考えると、かなり業務の幅が広いですよね。

大変なんです(笑)。冬の収穫や仕込みの時期は手伝いに来てくれる方がいますが、それ以外の季節はすべて社員4名だけでやっています。

想像を絶する忙しさです。おはぎは1日あたりどれくらい製造できるのでしょうか。

他の業務との兼ね合いで作れない日もありますが、一日中全員で製造したら最大120個くらいは作れるでしょうか。最近は午前中におはぎを作り、午後からみんなで別の仕事をすることが多いですね。

最初の頃、メインでおはぎを作っていたのは私だけだったんですよ。三男と長男が帰ってきてくれて、今は社員がさらにもう1名増えましたけどね。
うちは「母の日」のギフト需要が特に多いので、春の売上をいかに上げられるかが重要です。とにかく人手を増やさないことには売上が上げられないので、それが悩みでもありますね。

人手を増やしても、綺麗なおはぎが作れるようになるのには相当な時間がかかりますよね……。大変そうです……!

販売開始1分で完売の人気商品に

ECサイトは、おはぎを売り出した頃から始めたのでしょうか。

ECサイト自体はもっと前から運営していました。卸の売上が下がった時期があって、一般の方にも和三盆を販売できる体制を整えることが目的でしたが、当時はあまり売上が伸びなかったですね。

そうだったんですね。当時はどんなカートサービスを使っていましたか。

大手配送会社さんのカートシステムです。コロナ禍でおはぎを売り出した頃から無料カートサービスに移行しましたが、サイト制作をお願いしたデザイナーさんに「これだけ売上があると手数料もかさむので、運用コストの低いカラーミーショップに移ったほうがいい」と助言をいただいたのがきっかけで、2022年からカラーミーショップを利用しています。

SNS投稿をきっかけに、おはぎの注文が殺到するようになったと伺いました。

とある有名人の方にたまたまお買い上げいただき、その方がSNSで紹介してくださったことが大きなきっかけでしたね。そこから徐々に売れるようになりました。

私たちはその日に作れた分しか受注しないので、「思った以上に売れた」というような変化はあまり実感できないのですが、当時はまだ私一人だったので本当に大変でした。1日30個作るのが限界なのに、販売開始したら1分も経たずに売れてしまって。

すごいですね。

10:00に販売開始したら10:01までには全部売れちゃうんですよ。一時期それが毎日続いてました。

見た目が美しいぶん非常にデリケートな商品だと思いますが、梱包で工夫しているポイントはありますか。

きれいな状態でお届けしなければいけないので、梱包は最も気を使うポイントですね。
梱包材を隙間なく詰めるなどの基本を徹底しつつ、「天地無用」や「割れ物注意」のシールを貼って、丁寧な配送をお願いしています。無事に届いたかな?っていつもドキドキしているので、お客さまからお礼のメールをいただけると本当に安心します。

配送時に偏ってしまわないよう入念に梱包

また、夏場はどうしても配送の途中で溶けてしまうことがあるので、多少溶けてしまってもデザインが崩れにくいようなお花を作る、といった工夫も欠かせないですね。

商品数と売上を増やし、ショップの実力を高めたい

服部製糖所では三男の成輝さんが19歳で社長に就任されたそうですが、今お母さまの立場から期待していることはありますか。

うちのように代々続いてきた商売は、生まれながらにして人生の道しるべが決められてしまうんですよ。私の夫もそうだったのですが、この家に生まれたからには「(たとえ他にやりたいことがあっても)継がなきゃいけない」と。

私自身はここに嫁いできた立場だから言えることかもしれませんけど、そんな重責を自分の子どもに背負わせるのは嫌だったんです。子どもたちには自分のやりたいことをやって、自分の人生を生きてほしいと今も思っています。

「カラーミーショップ大賞2023」授賞式での一枚。
壇上でトロフィーを手にしているのが三男の成輝さん(右)

では今後、息子さんたちと新たに挑戦してみたいことはありますか。

関東など遠方からわざわざ徳島まで来てくれるお客さまがたくさんいるんです。皆さん「お店を出してほしい」と言ってくださるので、全国各地のイベントに出店してみたいですね。作りたてのおはぎを提供したり、目の前でバラのお花を作ったりする実演販売にも興味があります。

ECサイトで達成したい目標はありますか。

正直どうしたらいいのか迷っている最中なのですが(苦笑)、今できるのは売上をアップさせることだけですよね。そのためには、うちの和三盆を使っておはぎ以外の商品も増やしていきたいです。

そうそう、うちの社長がね、次回もカラーミーショップ大賞に行くぞ!って今すごく意気込んでるんですよ。
「にっぽん文化奨励賞」を受賞できたのはこれまで160年続いた和三盆のおかげだろうから、次回はショップとしての本質的な力を評価される番だと思っています。また受賞できるようにコツコツ頑張らなきゃねって話しているところです。

ショップとしての実力にもぜひ自信を持ってください!
また授賞式で服部さんにお会いできるのを楽しみにしています。今日はありがとうございました!