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動画って取り組むべき?ネットショップにおける動画活用術をリチカさんに聞いてみた。

動画視聴が一般化して、魅力的な動画に触れる機会も増えました。動画コンテンツに熱い視線が注がれていますが、ネットショップオーナーさんが動画を集客に活用するには、どんなポイントを押さえておけばよいのでしょうか?今回は株式会社リチカの中西佑樹さんに、今動画が注目されている理由や、今日からできる動画活用術などについて伺いました。

株式会社リチカ 取締役COO 中西 佑樹さん
セブ最大級の英語学校Brighture English Academyの創業、国内大手エネルギー会社をはじめ複数の事業開発を経て当社参画。幅広いBizDev実績とマネジメント経験を活かしビジネスサイド全般を管掌。2021年、COO(最高執行責任者)に就任。
株式会社リチカ
リチカ クラウドスタジオ
Twitter:@yuuki_n613

中西 佑樹さんについて教えてください

現在のお仕事を教えていただけますか?

株式会社リチカの取締役COO(最高執行責任者)の立場で、経営戦略や事業計画の立案、執行状況のモニタリング、IR活動、資金調達など、おもに経営関連の業務に従事しています。さらに、弊社はまだ90名ほどの組織でミドルマネージャーがたくさんいるわけではないので、現場寄りの仕事にも携わっています。

ビジネス領域とクリエイティブ領域の2つを統括していまして、この2領域で約55名と、全社員の6~7割が私の管掌領域となっています。なお、ビジネス領域にはいくつかチームがあり、マーケティングやセールス、インサイドセールス、カスタマーサクセス、事業開発などが組織化されています。 弊社はこの10月に9期に入りますが、私自身は創業メンバーではないので役員として参画してからちょうど丸3年になり、12月からは4年目に突入します。

リチカさんに入る前は、どんなことをされていたのですか?

ちょっと変わったキャリアを積んでいまして、高校に入学してから20歳を過ぎるまでずっとストリートミュージシャンをやっていました。21歳のときに「歌っている場合じゃないな、そろそろ定職に就こう」と決意して、最初に就職したのがアパレル会社です。

販売員という立場で売上に貢献したのですが、成果が給料に反映されませんでした。まだ若かったこともあって解せない思いを抱いていたところ、ある日、不動産会社にお勤めのお客様から、「中西君は不動産系の会社が向いているよ」とアドバイスをいただき、その一言をきっかけに不動産業界に転職しました。

2社目に入ったのは不動産管理会社で、入社してから6年ほど、営業やクレーム対応・家賃滞納者との交渉などたくさんの経験をさせていただきました。この間に仕事をこなしながらオンラインのビジネススクールに入学。グローバル観点から経営学や経済学、ロジカルシンキングなどを学びました。ビジネススクール卒業後、さらに学びを深めたいと思い、MBAを取得するために海外の大学院をめざすことにしました。その前段階として、もっと英語力を磨く必要があったので27~28歳のころにフィリピンのセブ島に語学留学をしたんですが、あくまで私の観点ですが、セブの語学学校にはきちんとしたカリキュラムがなく、真剣に学べる環境が整っていないと感じました。

そこで、「私のように真剣に英語を勉強したいと思う社会人がビジネスで使える英語を習得できる学校を作りたい!」と一念発起して、1年後には英語学校を立ち上げていました。29歳頃の話です。 セブでは現地スタッフ含め60名ほど学校経営に邁進していました。その後、事業がひと段落したため、日本に帰国しばらくは業務委託の立場で色々な会社のサポートしていました。はそのクライアントのひとつがリチカだったんです。1~2年ほど業務を請け負って働いていた際に声をかけられまして、一旦自分の事業はお休みにすることにして、役員の立場でリチカにジョインして今に至ります。

動画が注目を集めている理由は?

非常に興味深いご経歴なのでもっと詳しくお伺いしたい気持ちもありますが、さっそく今回のインタビューの「動画」についてお話をお伺いしたいとおもいます!
近年動画が注目されていますがその理由はなぜなのでしょうか?

教科書的な回答でいくと、動画はテキストや静止画よりも伝わりやすいというのが前提にあります。それと、個人的には市場環境がようやく追いついてきたことも要因のひとつだと思っています。

リチカは制作会社として約9年前にスタートした会社ですが、毎年「動画の時代が来る、来る」といわれていたのに、動画の時代はなかなか到来しませんでした。それがインターネットの通信速度が高速化して、通信インフラが整備され、配信面も増えて、今やスマホでいつでも手軽に見られますよね。つまり動画と環境がマッチしたことが、ブームにつながったのだと分析しています。

私たちからすると、やっと動画の時代が来たかという感覚です。 もうひとつ、動画のクオリティーに対する許容範囲が広がったことだと考えています。かつては「動画=高クオリティー」という認識が強くあり、「手間暇掛けてキャスティングしてプロが撮影しないといけないものだ、だからこそお金がかかる」といった感覚を、世間一般的に持たれていたと思いますが、今はハードルが低くなっています。

TikTok動画のような素人が撮ったものが評価される時代が来たというのは大きいですよね。それに伴って、動画制作にかかるコストが許容範囲内に収まるようになったことも、動画に参入する人や企業が増えている理由だと思われます。

なぜ動画が効果的だといわれているのでしょうか?

動画はリッチコンテンツとして、ユーザーとのコミュニケーションの最大量を増やすという点で効果的だと思います。といいつつも、じつは私たちは動画だけにこだわっておらず、先ほど「動画はテキストや静止画よりも伝わりやすい」といいましたが、「本当にそうなのか?」という疑問も持っています。

「リッチなコミュニケーションとはなにか」と突き詰めて考えていくと、本来は相手に一番伝わりやすい形で伝えることがリッチだと思うんですよね。動画はリッチなコミュニケーション手段だといっても、極端な話、動画を見るのが好まない方にとっては、動画よりも音声やテキストのほうが伝わりやすいかもしれません。

なので、今は動画の注目度が高くなっていますが、今後は動画に限らず、ターゲットに一番伝わりやすいコミュニケーション手段で、クリエイティブを最適化することが求められるようになると考えています。

動画の作り方のコツは「デリバリーの最適化」

今動画を自分たちで作る場合コツなどはありますか?

一番大事なのは、誰にどの媒体を使って伝えたいのかを明確にすることです。私たちはこれを「デリバリーの最適化」と呼んでいます。

一例ですが、TikTokとYouTubeでは媒体特性もユーザーの視聴態度も異なるので、動画コンテンツの作り方が違ってきます。これをきちんと理解しておく必要があります。 また各媒体に最適化した動画を作るために確実に意識していただきたいのが、媒体ごとのルールをきちんと把握しておくべきだということです。

これはWeb上の動画に限ったことではなくて、動画を広義で捉えるならば、テレビCMやドラマ、映画などにもいえると思います。 もうひとつポイントとして押さえておきたいのが、SNSの動画広告はユーザーの視聴時間の奪い合いになっているということです。

とくに、スマホなどでスクロールしながら見るTikTokやInstagramなどの媒体では、瞬間的に伝えたいことが伝わらなければ手を止めてもらえません。よほど興味があるものなら見るかもしれませんが、そうでなければスルーしますよね?ほとんどがサムネで「見る・見ない」を判断すると思うので、個人的には動画はバナーと変わらないものだと捉えています。 SNS動画がバナーと同じだとすると、「1シーン目でなにを伝えるか」が動画制作の重要なキーになってきます。

ネットショップに促す動画であっても、まず動画の冒頭にどのような訴求メッセージをいれて、さらに興味を持って訪問してもらった先に、どんなストーリーを展開させて一貫性を持たせるかを整理することが、成果につながるポイントになると思います。

露出面の特性を理解して、それにあった動画を作ることが重要なポイントなのですね。リチカさんのサービスについて教えていただけますか?

リチカ クラウドスタジオでは、クリエイティブをなにもないところから作るのではなく、私たちが用意しているフォーマット(テンプレート)を使って配信面に最適化した動画を作成・検証・改善できるサービスを提供しています。 弊社はFacebookなどの媒体(プラットフォーム)側と一緒に、媒体ルールや、配信面ごとにどんなクリエイティブを出せば成果が出るかといったことを研究していまして、それを言語化したものをフォーマットしているんですね。

Facebookだったら1シーン目にはこういうものを出したほうがいいよね、Yahoo!だったらこのフォーマットだねと、媒体ごとにクリエイティブを最適化できるようにしています。 一般的にクリエイティブを最適化できていない企業さんが多いですが、弊社が作成したフォーマットのなかから作りたい媒体のフォーマットを選び、それに従って作っていただければ、誰でもかんたんに最適化された動画が作れます。

つまり、リチカ クラウドスタジオのサービスを使えば、デリバリーの最適化を図ることができるんです。 もうひとつ別のアングルからメリットを付け加えると、各媒体のルールは頻繁に変わるものですが、本業を持つショップオーナーさんがご自身でその都度アップデートしていくのは非常に困難です。

TikTokやPinterestなど新しい媒体も増えていますし、それらすべてを理解するのはかなり大変だと思うんですよね。その点、リチカ クラウドスタジオでは媒体側と連携して共同開発をしながらフォーマット化するフローを組んでいるので、弊社とお付き合いいただくことでトレンド情報を元に成果の出やすいマーケティングに特化したクリエイティブを誰でも制作できるようになります。

効果的な動画の長さや見せ方は?

動画の最適な長さや時間ってあるのでしょうか?

これは媒体によって異なります。Facebook広告は、15秒以内を推奨しています。 たまに3分くらいの営業用資料動画を作りたいというお話をいただくのですが、結論からいうと3分はかなり長いです。

リチカではあえて1分のサービス紹介動画を用意して、そういうお客様に見てもらっているのですが、視聴後の感想を伺うと皆さん口を揃えて「長い」と答えます。実際に見てみると耐えられないんですよね。せっかく動画を作るからと情報を詰め込みたくなる心理が働いて、1分なんて短いと思っている人も多いですが、1分でも長いですよ。 結局3分や1分などの数字は、これくらいあればいいかなという感覚的なもので、実態に合っているとはいえません。

とくに今はオンラインで別の作業をしながら流し見しているケースも多いので、3分の動画を出してもほぼ聞いてもらえていないと思ったほうがいいです。このことを踏まえて、基本的には15秒くらいで、伝えたい言葉を端的に伝えることをおすすめしています。 とはいえ、動画の長さについていうと、YouTubeに配信する場合は、なにかを見ようという姿勢でアクセスしている人が多いので、多少長くても見てもらえるのではないかと思いますね。

動画の見せ方などで効果的なものはありますか?

商品動画を撮るのであれば、食べ物ならシズル感を出すとか、筆やペンなどは実際に書いてみて書き心地を見せるとか、商品ごとの特性・価値を端的に伝える動画を用意すると効果的です。動画の尺も、媒体特性と自社の商品特性を理解したうえで動画を作ることが大事だということになります。

なので、最適化した結果長くなった、もしくは媒体側のアルゴリズムが長いものを評価するように組まれているようであれば、長めの動画でもいいと思います。

ネットショップでの動画の活用術

ネットショップ運営において、ネットショップオーナーさんが最初に動画を載せるとしたらどこがいいですか?

さまざまなケースがございますが、お客様と双方向のコミュニケーションを取りやすいLINEや、Instagramのストーリーズなどのご活用から始めるケースが多いです。LINEにはLINE VOOMなどがありますし、Instagramもショッピング連携機能もありECに向いていますよね。ストーリーズやリールなどに動画を投稿するのも有効です。

SNSに動画を出すことで炎上したらどうしようと心配で、炎上リスクを避けたいのであれば、自社サイトに載せることから始めてもいいと思いますよ。 ちなみに、Googleの検索ボックスの下に動画ボタンがありますよね。その検索結果には、自社サイトに動画がなければ当然表示されることはありません。ここに表示させたいなら、商品ページなどに動画を入れて対策するという判断になると思います。

ちなみに動画の成果を測るにはどういう数字をみたらいいのですか?

一概にインプレッション数だ、クリック率だとかはいいにくいですね。なにを成果とするかは、ショップごとの目的次第ですし、その目的も媒体によって変わると思うのでケースバイケースだと思います。

具体的な指標を挙げるのは難しいのですが、例えばSNSの投稿動画の成果を測りたいときは、マーケティングファネルの各指標を見てみるとよいかもしれません。なにも動かなければまったく効果がないことになりますが、一般的には「ここが動きそうだ」と仮説を立てて動画を投稿するので、なにかしら変動するはずなんですよね。なので、設定した指標の動きを見ながら、成果分析していくことになると思います。

いずれにせよ動画を出さないとわからないことが多いので、まずは出してみて前後の数値の動きを比較することがすごく大事です。投稿後になにか数字が動いていれば、動画の効果がでているという可能性もあるので継続的に見ていく。もしくは違うクリエイティブの動画を差し込み、その変化を検証して、よりよい方向に改善していくことなどもできると思います。

やはり今は動画を出したほうが成果を出しやすいですか?

単純に、動画を出したら成果が出るだろうという思い込みはやめたほうがいいです。極端な話、動画を入れないほうがいいということもあるんですよ。

一昔前の話ですが、SEO対策でWebサイトに動画を埋め込んだら表示速度が遅くなって、Googleの評価が下がったという事例もありました。このことからも、動画に過度な期待を持たずに、デリバリーの最適化を図ることを重視したほうがいいと考えています。

その商品の価値、バリュープロポジションを考えて、ユーザーにより伝わりやすいのは静止画なのか動画なのかと見極めることが大事ですね。 いっぽうで、動画に取り組んだほうがいいのかどうかと悩んでいるネットショップオーナーさんもいるかもしれませんが、これについては取り組まない手はないと思っています。

私たちがYahoo!さんと研究した結果を紹介すると、静止画広告と動画広告のクリック数を比較したところ、両方をクリックしたユーザーはたったの3.7%でした。この数字は、静止画を見るユーザーと動画を見るユーザーはほとんど被っていなかったということを意味します。

要するに両方に出稿したことで、片方だけではリーチできなかったユーザーまで取り込めていたということなんですよね。これは広告のケースですが、WebサイトやSNSについても静止画だけに止まっているのであれば、もったいないかもしれないですね。

今日からできる動画活用アドバイス

この記事をお読みいただいているネットショップオーナーさんが今日から取り組める動画活用についてぜひアドバイスをおねがいします!

そうですね、SNSで動画活用を考えているのなら、動画制作の前にまずSNSを使ってみることをおすすめします。

そもそも媒体がなにを求めているのかを知らないとよい動画は作れないので、TikTokやInstagram、Facebookなど各媒体の構造を理解するためにも、穴が空くくらい見て使うことが大事だと思います。ある程度使いこなせるようになって初めてわかることってあると思うんですよね。

媒体の特性がなんとなくわかってきたら、スマホで撮影したものでいいので試しに動画を投稿してみてください。出来映えなどは気にせず、まずは投稿して反応を見てみることが動画活用の大事な一歩になります。

その結果が無風であっても、次はこうしてみようという施策が生まれていくので、なにもしないで悩んでいるよりはいいと思いますよ。すでにSNSのアカウントを持っているのであれば、ぜひ気軽に1投稿してみてくださいね。もしくは、自社のショップサイトの商品ページに動画を差し込むことから始めるのもよいかもしれません。

なお、動画広告にチャレンジするのは、ひととおり慣れてきてからでも遅くはないですよ。

まずはスモールスタートでお手持ちのスマホで1動画作成1投稿からはじめてみることが大切ですね。本日は貴重なお話ありがとうございました。