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成功の鍵は1日1%の改善を毎日続けること。ニッチ商材の強みを生かした「卒塔婆屋さん」のネット販売術

いつも画面越しに見ているネットショップのむこうには、想いのつまった“モノ”とそれを届ける“”たちがいます。このコーナーでは、知られざる商品開発ストーリーやお店の裏側に迫る現場レポートをお届けします。
今回ご紹介するショップ
東京都西多摩郡日の出町にある明治15年創業の有限会社谷治新太郎商店。自社の工場で製造した卒塔婆・角塔婆・墓標・経木塔婆を販売しています。2013年に始めたネットショップはカラーミーショップ大賞2020で優秀賞を受賞。今回は6代目にあたる代表取締役の谷治 大典さんに、ネットショップを大きく成長させた施策や取り組みについて伺いました。

日の出町と卒塔婆

明治15年創業とのことですが、卒塔婆を販売するきっかけは何だったんでしょうか?

日の出町には羽生文右衛門商店さんという卒塔婆の会社があるんですが、その創業者である文右衛門という人が旅先で行き倒れていたお坊さんを助けたのが始まりです。
介抱したお礼としてお寺でもてなしを受けていたときに、日の出町は林業が盛んだけど、山に自生しているもみの木は柔らかくて耐久性がないから使い道がないという話をお坊さんにしたところ「もみの木で卒塔婆を作って、江戸の町に売り込んだらどうでしょう?」と作り方を教えてくれたそうです。
それがすごく売れたということで、周りも林業の傍ら卒塔婆を作り始めたんです。

代表取締役の谷治 大典さん

なるほど! 卒塔婆を製造・販売されている事業者さんは全国に何件ぐらいあるんですか?

日の出町だけでも30件ぐらいと言われているので、全国だと4〜50件はあるんじゃないでしょうか。ただ、表だって見えてこない部分がある業界なので、実際の同業他社の件数は把握できていないです。

卒塔婆は値段も公表されていない印象ですが、公表しないことがよしとされているんですか?

BtoBに近い製造業なので、うちがお寺に卸している値段とお寺が檀家さんに売っている値段に差があると、よく思われないことがあるからですね。インターネットで値段を出したのはうちが初めてです。
最初は値段を出さず、お問い合わせをいただいてから見積もりを出すというやり方をしていましたが、それだとお互いに手間だし売れなかったんです。
ネットショップですぐに購入できるというのは、やっぱり全然違いますね。

斜陽産業だからこそ目を向けたネットショップ

「卒塔婆屋さん」というお名前はどのように決めたんですか?

格好つけた名前は絶対にだめだと思って、そのまんまをつけました。「卒塔婆屋」というキーワードで検索している人も多く、名前にすれば誰もが一発で覚えられるなと。商標登録の関係で後から「」をつけました。他社が真似できないぶんSEO的にも最強な名前だなと思っています。

カラーミーショップ大賞2020では優秀賞を受賞されました。周囲の方の反応はいかがですか?

最近は何人かの知人に、ネットショップのコンサルというと大げさなんですけれども、いろいろなノウハウを教えたりしているので、そういう方たちからは「さすがです」というようなコメントをいただきました。

そういった活動もされているんですね。どういったアドバイスをしているんですか?

品揃えに関するところから相談を受けるので、どういったストーリーでどんな商品を見せていくかまでお話しています。
例えば、はんこ屋さんは今、非常に厳しいですよね。世の中の流れ的に「はんこの廃止に反対!」と言ったところで無駄なので、実務用のはんこで勝負せずに、芸術作品や文化的な趣味のはんこを扱うような独自路線にした方がいいといったようなアドバイスをしています。

ニッチな商材で成功されているからこそ、いろいろな業種の方が相談に来るんですね。

そうですね。「卒塔婆屋さん」を見て「こんなものがネットで売れるんですか!」と思われる方は多いので、商材的に目立つというのもあると思います。ただ、これほどネットショップと相性がいい商材ってないと思っているんです。

売り上げ規模でいえばアパレルなど一般大衆向けの商材が強いかもしれないけど、競合が多くて差別化も難しいじゃないですか。その点、卒塔婆は非常にニッチで作っている会社も少ないですので。
また、卒塔婆は一回買ったら終わりじゃなくて、短いスパンで繰り返し購入するものです。リピート率は8割、客単価も3万円を超える点でも、なかなかここまでの商材はないと思います。

確かにそうですよね!
代替りされた2013年にネットショップをオープンされましたが、ネットショップの開設を考えたのはいつごろだったんですか?

この業界は斜陽産業に分類されるところがあるので、私が代表になる前から売上は下がってきていたんです。原因を調べたところ、お客さまの数は減っていないけど買われる数が減っていました。
飛び込み営業もしてみましたが、昔からの業者とお寺の繋がりが強くてなかなか入り込む余地がなかったので、他に売るとしたら選択肢がネットしかなかったんです。売れないだろうけど、とりあえずやるしかないだろうという、どちらかというと後ろ向きな理由で始めることにしました。ネットショップはイニシャルコストもランニングコストも安くて、やろうと思えば数千円で始められたので。

カラーミーショップをお選びいただいた理由は何だったんでしょうか?

ショップを始めるにあたって、本屋さんで初心者用のネットショップの入門書を買ったんですが、それの事例に出ていたのがカラーミーショップだったんです。設定の仕方が全部書いてあって、知識がなくてもできるということで選びました。カラーミーショップは月額費用も安くて、作って放置したとしても1ヶ月に1,000円でも利益が出れば少しはプラスになるなという気持ちでした。

ありがとうございます。ネットショップの集客はどうされましたか?

価格設定を低くしていたので既存のお客さまに教えるわけにもいかず、1年ほど何もしていませんでした。とりあえずGoogleに登録しただけでしたが、1年後には年間20万ほどだけ売れるようになりました。それで、Google広告から始めて、Yahoo!広告、あとは地方の新聞広告なども出しました。
あとは、SNSをFacebookページから始めた感じです。

お客さまはお寺さんが多いのでしょうか?

そうですね、多いのはお寺の住職ですね。

コロナウイルスの影響はありましたか?

ネットショップは去年よりも売上が伸びているので、コロナの影響はまったくないです。ただ、ネットショップが上がったぶん、既存のところがちょっと減ったかなという印象で、会社全体だと去年と同じぐらいですね。
今年は同業他社の廃業や倒産が多かったので、代わりにどこで買おうかとネットで検索したお客さまの流入が増えたのかなと思います。
あとは、表には出していませんが、ドラマ撮影のセットやお化け屋敷用の注文も毎月あります。

意外なところにも需要があるんですね(笑)。

成功の鍵は1日1%の改善。「卒塔婆屋さん」流ネットショップ運営ノウハウ

ネットショップが成功した要因として、考えられることはありますか?

1日1%の改善を毎日続けていることですね。こうすれば確実に売れるという施策なんてないので、私たちぐらいの中小企業は、社長がネットショップの責任者になって、片手間ではなく本気でネットショップにのめり込まないとだめです。

1日1%を毎日というと非常に大変なことだと感じるのですが、具体的にどのようなことをされているんですか?

例えば、ネットショップを毎日更新すること。売れないと言う人のショップを見ると、新着情報が2年前で止まっていたり、Facebookの更新を半年もしていなかったりということが多いんです。スマホで見るとデザインが崩れているのに放置しているとか。

あとは、お客さまから問い合わせがきたときに「ネットショップのここに書いてあるのでご覧ください」で終わらせるのではなく、なぜその情報を見つけることができなかったのかを探ること。作った側はどこになにがあるか把握しているのでわかりやすいショップだと自負してしてしまいがちですが、初めてのお客さまにも情報をスムーズに伝えるというのは存外難しいことです。

数値の分析にしても、Google アナリティクスを見て「直帰率を改善しよう」など課題を決めて、一つ一つ潰していくしかないです。

とっておきの秘策があるわけでなく、当たり前のことからコツコツやっていくしかないんですね。

そうですね。いいなと思うネットショップがあったら、まったく違う商材でもいいのでベンチマークにして実際に買ってみるんです。
そうすると、同梱物がどんなふうに梱包されてくるかとか、こんなふうに入れてるんだとか、アイデアをたくさんもらえますよね。メールマガジンも登録してみれば、どういう頻度・タイミングで届くか、タイトルの付け方、HTMLメールだったらどんな画像を貼っているかなど、とにかくヒントになります。

また、決済方法は豊富にしておくべきです。うちはAmazon Payの導入で売上が一気に3割ぐらい上がったので、この辺のオンライン決済は絶対に入れるべきだと思います。
相談に来る人に「決済方法は何を入れているの?」と聞くと、前払いの銀行振込だけっていうことがあるんですけど、それだと面倒くさくて買われないです。せめてクレジットカード決済は入れた方がいいですし、Amazon Payや楽天ペイなど他のサービスアカウントが使えるのであれば、お客さま情報のカート入力がないぶん、熱が冷めないうちに購入ボタンを押してもらうことができますよね。

なるほど、勉強になります。数字分析などものすごく勉強をされていると感じますが、もともとお得意だったんでしょうか?

前職でそういった分析をしていたというのはあるんですが、ネットの分析に関してはやったことがありませんでした。今はYouTubeやGoogleで検索すれば、無料でGoogle アナリティクスの見方についていくらでも出てきますよね。アナリティクスの画面のどこを見ていいのかわからないってよく言われるんですけど、漫然と見るのではなく、どの指標を見るか決めることです。ただ、分析したところで結局、原因ってわからなかったりするので、難しいですよね。
あとは、ネットショップについて書いてあるいろんな記事を呼んだり、セミナーに行ってひたすら先生に質問したりもしましたね。

かなりの努力をされているんですね。改善ポイントを見つけられない場合は、どういったことをするとよいですか?

ヒートマップツールを入れたり、自分のネットショップでユーザーテストをしてもらえるサービスもあるので、そういったものを使ってみることです。「うちのショップでこの商品を買ってください」とお願いして、ユーザーの動きを撮影することでどこがボトルネックになってるのかを探ることができます。
改善ポイントが見えてきたら、ABテストを繰り返します。一度にいろんなところをいじると、どの変更に効果があったのかがわからなくなるので、1ヶ所ずつ変えます。ボタンの色を変えて2週間でコンバージョンがどうなるかというのを何回もやって、じゃあ今のところカートのボタンはこれが一番かなとなったら、次は文字の大きさを変えてみるとか。それを細かく調整していって、ベストじゃないけどよりベターな方にしていくんです。ちょっとでも数値が上がると売り上げも変わってきます。

超大手と言われているAmazonやZOZOTOWNでさえ、年がら年中、デザインや機能を細かく変えています。これ以上売上を上げなくてもいいんじゃないかっていうほどの大企業がUI/UXを常にアップデートしているのに、中小企業ならもっと頑張って改善していかないと。「サイトができました、公開しました、終わり」では絶対に売上って伸びないと思います。

トライアンドエラーの一環として、カラーミーショップのアプリストアもかなりご利用いただいていますよね。

基本的にすべてのアプリをとりあえず一回、導入してみています。アプリを入れる前に、うちのショップにこれは必要かって考えていても時間がもったいないから、まずは入れてみるというのは一つの手だと思うんですよね。無料お試し期間もありますし、登録してからPDCAを回すのがいいんじゃないかと思います。3ヶ月ぐらい使ってみて、効果がなかった切る、なかったら切る、を繰り返して今は効果が立証されたものだけ入れています。

毎日投稿で情報発信を続ける理由

Instagramやブログ、noteにYouTubeなど、たくさんのコンテンツがありますが、これはおひとりで運営されているんですか?

1人でやっています。

なんと! ブログは毎日更新されていますよね。

SEO対策というのもあるんですけど、情報発信を続けて多くの人の目に触れることが、いろいろなきっかけに繋がるんです。この取材もそうですし、昨日は卒塔婆について調べている大学の先生が来てくれました。種まきみたいなものですよね。とにかくInstagramもブログも毎日投稿すると決めています。

どういう発信をすれば効果が出るんだろうって考えちゃって動けない人が多いですが、考えずにとにかく数を打つんです。いろんな投稿をしていけば、反応がいいパターンというのが見えてくるので。点をたくさん打てばそれが絵になると言われるように、最初は何になるかわからないけど、発信していくことでさまざまな形になっていきます。

ブログのネタはどうやって決めているんですか?

夕方のウォーキングやジョギング中に考えます。仕事中に考えるよりも、体を動かしてリラックスしている状態のときにふっと降りてくるんです。
早く降りてきたらバーッと書いちゃうし、23時半になっても書けていないときは、筋トレを10分ぐらいすると降りてくるんでギリギリに書き上げたり。とりあえず記事をあげておいて、次の日にこっそり直したりもしますよ。

漫画で卒塔婆について説明をするコンテンツもありますが、外注しているんですか?

そうですね。あれはネットショップのコンサル会社に漫画家さんを紹介してもらいました。
どうやったら卒塔婆に興味をもってもらえるかを考えて、導入部分を漫画にしたんです。その先の記事はかなりマニアックな内容になっていて、おそらくネット上の卒塔婆に関する記事のなかでは一番深堀りしていると思います。

本当に奥が深くて、おもしろいなと感じました。卒塔婆を見ていると、どこの事業者の卒塔婆かを見抜けるようになると書かれていましたよね(笑)。

そうですね。日の出町の塔婆ならわかるようになりました。ぱっと見は同じなんですけど、頭のとんがり具合や角度が違うので結構わかります。

今後の展望について

会社自体とネットショップ、それぞれ1年後、5年後の目標はありますか?

会社的には経営計画書のなかで数値目標を立てますが、実際には目の前のことをやっていくだけなので意外と目標ってわからないんです。

ネットショップは5年前に今の状況が想像できなかったように、こうありたいと思ってそこに向かったわけじゃなくて、毎日毎日1%の改善運動をやっていたら、5年間ですごい高みにきていたような感じなんです。
今は、これ以上、売上を上げるというのもどうなのかなというところがあります。コンテンツも充実してきたので、毎日1%改善と言っても頭打ちなところがあるんで。

今後はショップ運営のノウハウを得たので、他の商材を探してもう1店舗作りたいというのがあります。食品か雑貨か何になるかわからないですけれど、競争が厳しい業界でも勝てるのか試してみたいですね。今はニッチな業界でお山の大将じゃないですけど、ある程度やれば売れちゃうところがあるのかなと思うので、市場規模の大きな商品にチャレンジしてみたいですね。

あとは、ネットショップのコンサルティング方面にも力を入れてみたいです。今はお金をいただいてないので、さらに販売実績を立てて説得力を磨いて有料にできればいいなと考えています。

現状に満足せずにさらなる高みを目指す卒塔婆屋さんさま、2021年のご活躍も楽しみにしています!