目次
スタッフ全員で勝ち取った「大賞」
2年ぶりのインタビューですね。まずは「カラーミーショップ大賞」大賞受賞、おめでとうございます!
二人:
ありがとうございまーす!
改めてお伺いしますが、発表の瞬間はどんなお気持ちでしたか。
晃生さん:
そうですね……絶対僕らじゃない、でももしかしたらみたいな気持ちもちょっとありつつ。実は僕、「夢ノート」というものを年始に作ってて、その中に「カラーミーショップ大賞受賞」って書いたんですよ。なのでもしかしたらこれ、あるんちゃうかと(笑)。
大也さん:
受賞の瞬間は僕らだけじゃなく、工房で財布製作してる子たちもみんなYouTube聴きながら作業してたんですよ。いざ大賞発表されたら「ワーッ!」と。急いでみんなを呼んできて。
確かにあのとき、どんどんスタッフさんが集まってきましたよね。
晃生さん:
スタッフ全員で賞をとれたような気がして、なんかすごく嬉しかったですね。それと授賞式が終わって真っ先に、僕らのネットショップの「師匠」にも報告しました。
師匠?
大也さん:
大阪府主催のネットショップ講座で出会った道端俊彦先生っていうんですけどね。僕らがまだテンプレートに写真をはめ込んだだけのネットショップを作ってた頃から数年間お世話になってた方です。
先生にはネットショップ運営だけでなく、SNSの使い方も一から教えてもらいました。まだmixiが全盛だった時代に「Facebookを知っていますか?」と。当時の僕らは何もわからなかったけど、後から始めたTwitterやInstagramは全部、先生から教わったことの応用です。
まさに言葉どおり「師匠」なんですね。受賞を知った先生の反応はいかがでしたか?
晃生さん:
「自分のことのように嬉しい」と言ってくれましたね。
先生が講座の最後に「何かで一番をとろう」とおっしゃっていたのがずっと頭に残っていたので、大賞という形で応えられたことが嬉しかったです。
クアトロガッツの強みはスピード感と継続力
今回、クアトロガッツさんの大賞受賞の決め手となったのが「継続的で質の高いコンテンツ展開」でした。日頃コンテンツを制作・更新するにあたって、何か社内で決まり事はありますか?
晃生さん:
人数が少ないからルールをガッチリ決めるようなことはしてないですね。
基本的に僕らはいつも近くで仕事してるんで、ミーティングとかもほとんどなくて。「こんなコンテンツがあったらおもしろいんじゃない?」って誰かが言い出して盛り上がったやつをまず始めてみる感じですね。
大也さん:
SNSでグループを作って、誰かが投稿したコンテンツをスタッフみんなで共有しながらそれを日替わりで投稿してます。
あとね、うちはスタッフみんなでお昼ごはんを食べてるんですよ。気持ちええ季節は会社の前でお弁当食べたりとかね。その中でアイデアが生まれてくるんかもな。
僕らの強みは、自分たちで考えたものを翌日には形にできて、自分たちの手ですぐに発信できるところやと思ってて。試しにやってみておもしろかったら残したらいいし、アカンかったらもうやらないし。
なるほど。日常会話の中から企画のネタが生まれてくるうえ、判断スピードも速いんですね。
晃生さん:
そうですね。うちで最初に作ったコンテンツは「今日のガッツ」っていうコーナーなんですけど、これは工房の写真にコメントつけてアップするっていうもので…始めた当時は今みたいにSNSやWordPressも使ってなかったので、HTMLで更新してました。
そのコーナーを始めた理由は何だったんでしょうか。
晃生さん:
僕はネットショップを始める前から「ほぼ日」が大好きで、毎日見てるんですよ。それがユーザー体験の原点になってる。クアトロガッツも毎日見に来てもらえるお店にしたかったから、毎日違うコンテンツを出すようにしました。日替わり定食みたいな考え方ですよね(笑)。それを続ける中で自然と「今日の小さいふ。」に繋がっていったんかな。
「今日の小さいふ。」といえば、毎日新作のお財布を数量限定で発売する目玉的コンテンツですよね。もうどれくらい続けているんでしょうか?
晃生さん:
2013年からなので、もう7年になりますかね。作ったお財布の数は5,000種類以上。毎日何かをしたい、見てほしいっていう考えでここまで続けることができました。
7年間で5,000個のお財布とコンテンツ。圧倒的です…!
コロナ禍でも数多くの企画で顧客コミュニケーションを
話は少し変わりますが、昨今のコロナ禍での影響はいかがでしょうか。
大也さん:
正直めちゃくちゃ大きかったです。うちはネットショップも大事にしてるんですけど、リアルのイベントやポップアップショップもすごく重要視していて。リアルのお客さまとの出会いの場であり、ネットのお客さまとの再会の場でもあったんでね。コロナ禍の直前はリアルとネットのバランスがちょうどベストな感じで、どちらもいい流れで集客できてました。
でも3月ごろから百貨店や商業施設のお客さんが減りだして、4月の緊急事態宣言を受けてついに全館閉鎖。その後夏にポップアップを再開したけどなかなかお客さんが戻らず、10月くらいにやっと盛り返してきたかと思えばまたコロナが流行ってきて……って感じですね。4~7月に関してはネットショップの売上しかなかったですよ。ネットのほうに力入れてなかったら相当危なかったんじゃないかな。
ネットショップでは、コロナ禍ならではの企画をいろいろされていましたよね。
大也さん:
リアルでコミュニケーションがとれないぶん、SNSなどを使ってコミュニケーション頻度を上げていきたかったんです。企画は何本かやりましたけど、最初にやったのは革で作ったマスクのプレゼント企画。
革っていろんな匂いがあるんで、うちで扱ってる中でも最高級で、一番いい匂いのするイタリア製フルベジタブルタンニンレザーを使いました。マスクとしての機能はあんまり果たしてないんやけど(笑)、スタッフがこんなふうにギニュー特戦隊のパロディ写真を撮って。
なるほど、このポーズは……(笑)
大也さん:
(笑)自粛ムードの中でちょっとでもおもしろがってもらえたらいいなと。
それから「#お家時間×小さいふデザインコンテスト」なんて企画もやりましたね。うちには小学1年生の息子がいるんですけど、入学式は10分くらいだったし学校での授業もない。一時期は外で遊ぶのもダメなムードだったじゃないですか。何か自宅で楽しめる企画はないかなと考えて、デザインコンテストをやってみたんです。そしたら500作品くらい集まって、そのうち10作品を実際に作ってプレゼントしました。
あとはアマビエのロゴを作ったり、マスクの型紙をダウンロードできるようにしたり、魚の皮を使って鯉のぼりを作ったり……。中止になったポップアップショップで売るつもりだった商品を「1000個祭り」としてネットで販売するために、全部新しく写真撮ったときは大変でした。
本当にたくさん企画を作られたんですね。
大也さん:
こうして振り返ると短期間のうちにいろいろできましたね。もちろんけっこう大変でしたけど、これが誰かの喜びに変わるんやったらそれが一番いいんですよね。
誰もができることを誰もできないレベルでやり続ける
こうして日々ネットショップを動かすのは本当に難しいことだと思います。クアトロガッツさんが毎日更新を続ける原動力とは何なのでしょうか。
晃生さん:
僕自身もネットをいろいろ見てて思うんですけど、たとえば今日見に行ったサイトが1週間後に見ても変わってなかったら、もう次は行かなくなっちゃうんです。毎日何かおもしろいものが出ていれば、また見に行ってみようって思えるので。
そうなると僕らの場合は、シリーズ物の日替わり企画を考えざるを得なかったですね。『天声人語』や『きょうのわんこ』みたいに、新聞・テレビにもそういう企画は絶対あるじゃないですか。僕らは「小さいふ。」を使って自分たちだけで動くことができたので。
シリーズ化することで毎日更新を続けやすくなりますね。更新業務に悩まれているショップオーナーさんも非常に多いので、参考になりそうです。
晃生さん:
師匠の道端先生がいつもおっしゃっていたのが「誰もができることを誰もできないレベルでやり続ける」という言葉です。それが一番になるための秘訣だと。僕らはその言葉を信じてコンテンツ作りを実践して、7年間で5,000種類、それぞれのお財布にスタッフが名前をつけて販売してきました。これだけのコンテンツはきっと他にないと思います。同じことをやり続けるかすぐに終わってしまうかで、やっぱり未来は全然違ってくる。
大也さん:
たとえば飲食店を経営するんだったら毎日トイレを掃除するのは当たり前。それと同じなんでしょうね。先生のこの言葉は、今後も僕らの指針になっていくと思います。
最後に、クアトロガッツさんの今後の目標を教えていただけますか。
大也さん:
もともとうちの店名の「クアトロガッツ」は、スペイン・バルセロナにあるカフェサロンが由来なんですよ。スペイン語では「4匹の猫」って意味なんですが、そこは若い頃のピカソをはじめストイックな芸術家が多く集まっていたお店で。
僕が奥さんと2人でお店を始めた当初、革の仕入れのためにスペインを訪れたとき、モノづくりを通じて彼らのストイックさを学んでいきたいと誓ってこの名前をつけたんです。ちょうど僕らも猫を4匹飼ってたっていうのも理由なんですけど(笑)。
店名にはそんな由来があったんですね。
大也さん:
なので、バルセロナのあの「クアトロガッツ」と同じように、僕らもモノづくりを志す方にとって力を発揮できる場所でありたいと思っています。今は手塚治虫さんの『ブッダ』コラボをはじめ、漫画家やイラストレーター、SNSで活躍されている個人の方とコラボを続けていますけど、今後もそういう方たちと一緒に何かできたらいいなと。
すごく素敵です。
大也さん:
たとえば「クックパッド」や「DELISH KITCHEN」が、料理を作る楽しさや喜びを多くの人に広めたみたいに、僕らもデザインをする喜び、モノを作る喜びを浸透させられたらいいですよね。CtoCとかって言葉はあんまり好きじゃないですけど、お客さんがお客さんを楽しませられるような場にもしていきたい。
僕らの仕事って超アナログですが、これからはアナログの手仕事とデジタルの領域をますます強く結びつけて、また新しい形のお店を作っていければいいなと思います。
クアトロガッツさんの今後の展開、楽しみにしています。今日は素敵なお話をありがとうございました!