これからは、本当に必要な人にこそ届けたい。“新しいふんどし”のお店「sharefun®」リニューアルの裏側
誰でも作れるものを作るのは、僕じゃなくてもいい
前回のインタビューからちょうど3年が経ちましたが、ネットショップの雰囲気が大きく変わりましたね。以前はポップでカラフルなイメージだったので驚きました。
これまでのブランドイメージを転換するに至った理由を教えていただけますか。
テレビに紹介されてバーンと売れ始めたことで、誰かが「儲かってる」と勘違いしたらしく、同じようなものがどんどん増えてきて。
決定的なきっかけが2017年の秋ごろです。生地から縫製、紐の長さまでまったく同じデッドコピー品が出ていることがわかって……しかもそれをやっていたのが、ちょっとした知り合いだったんですよ。
それはショックですね…。
もうひとつは、第二子が生まれたことによる僕自身の育休期間です。夜中に何度も何度も起きてミルク当番をやっていると、睡眠時間が本当にコマ切れ状態。これではどうしてもイライラしてしまうし、世の中のママはこれをみんなやってるの?っていうことが初めて身にしみたんですよね。
土日も関係なく、体力的にしんどい時間がずっと続く。自分をいたわれる時間も少ない。その課題をどうにかふんどしで解決できないかな?って。
そこで、大人の女性を意識したリブランディングに踏み切ったというわけですね。
毎日食べる「主食」のような存在にはしたくなかった
細川さんは商品デザインに携わられたそうですが、中川さんからは今回どういった経緯でふんどしのデザインを任されたのでしょうか。
「先生」…?
ふむふむ。商品デザインをするにあたり、細川さんが特に気をつかったのはどんな部分ですか。
はき心地のすばらしさはリニューアル前に自分で試して実感していたので、わたしが行ったのは主に「気持ち」の部分を左右する微調整です。機能的で快適に着けられて、その上で自分らしくいられたり、自分を好きになれたり… いろいろな意味での気持ちよさを作りたいな、と。
“着けるには恥ずかしい”というイメージが付きまとうふんどしだからこそ、いっそう重要なポイントになりそうですね。
大人の女性に納得してもらうためには、ただ暖かくて気持ちよければそれでいいってことはないので…毎日食べる主食みたいな存在じゃなくて、どこか気分が上がるようなアイテムを目指してつくりました。
ちょっとした特別感や、身に着ける人のテンションを上げることにこだわったんですね。
作り手・送り手の顔が見えるネットショップにした理由
商品デザインと並行して、Webやロゴなどのデザインはどのように進められましたか。
TRUNKさんのサイトを拝見しましたが、素敵なブランドを数多く手がけていますね。
彼らはデザインの仕事だけにとどまらず、僕たちの作った商品を見て「これはターゲット層よりもガーリーすぎじゃない?」という意見も正直に伝えてくれました。本当はふんどしとセットでキャミソールも売り出す予定だったんですけど中止したんですよ。納得できるものが作れるまではやめようって。
遠慮なく意見が言い合える、良いチームワークが作れたんですね。
リブランディング後のサイトを見ていると、デザイナーさんや縫製会社さんなどいろいろな方の顔が見えるのがすごく印象的です。
一度パクリが出た時点で、どれだけ新しくしても同じようなものはまた出てくるだろうなと思いました。それはもう防ぎようがない。だとしたら「どんな素材で作られていて、誰の手を経由して、どういう思いでお届けするのか」をきちんと発信しないと…そこだけは誰にも真似できないと思うので。
独自のストーリーを伝えて、商品の差別化をするということですね。
今回リニューアルした「しゃれふん」、これからどのように展開していきたいですか。他店への卸しを広げるとか、あるいは実店舗を構えるとか。
今までは百貨店や大手雑貨店さんに置いてもらうこともありましたが、そこには商品のよさをきちんと説明してくれる人がいませんでした。素材や縫製にこだわって作った商品だからこそ、これからは本当に必要な人たちが納得して買っていただけるようにしたいです。
ブランドにそぐわない販売方法を見直して、より必要な人に届けるということですね。
ふんどしを本当に必要としている人は、それが必要だってことをまだ知らない人たちなんですよ。困っているのに自覚がないことも多い。だからWeb上にお医者さん向けのコンテンツを増やすことで、病院関係者の方を通じて新しく気付いてもらえるような取り組みをしていきたいです。
大切な家族との時間をとるための決断
先ほど「茨城に住んでいる」とおっしゃっていましたが、ご家族で移り住んだんですか。
中川さんのnoteのプロフィールにも「週一で東京に通う働き方実践中」とありますが、まさに今も継続しているんですか。
カラーミーショップでの受注管理や発送周りについては、外部にテトテトさんというパートナーがいて、彼らが毎日すべてチェックしてくれています。生産量などを決めて福島県の工場に発注するのは僕の仕事ですが、できたものはテトテトさんに直接送られるようになっています。
外部のパートナーを巻き込んだ運営の仕組みが確立されているんですね。
テトテトさんは、注文したときの喜びがそのまま再現されるような梱包の工夫とか、緩衝材やテープをできるだけ使わないとか、そういうのを僕ら以上にきちんと考えて作業してくれるんですよ。
先ほどのTRUNKさんといい、「しゃれふん」に関わる皆さんの信頼関係がとても素敵です…! でも、どうして作業の外部委託に踏み切ったんでしょうか。
なので、それを最優先したうえでどうやって働くかを考えた結果、やっぱりそれぞれの道のプロに頼んでしまうのがいいだろうと決断しました。「プロに頼んだから自分の時間がとれた」んじゃなくて「自分の時間をとろうと決めたからプロに頼んだ」というか。
自分が100才まで生きるとしたら、今の時期はできるだけ家族で過ごすことが大切だと思っています。なので僕は午後6時以降は一切仕事をしないと決めていて、携帯の電源も切ってしまうぐらいです。
やることとやらないことを上手に切り分けているんですね! 最後に、そんな中川さんが今後注力していきたい活動があれば教えてください。
運営業務と情報発信でどうしても手一杯になってしまう店長さんも多くいらっしゃる中で、今回伺った中川さんのスタイルはまさに「新しい働きかた」の体現だと感じました。今日は貴重なお話をありがとうございました!