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働き方を変えて、和菓子作りを次の世代へ。山形の老舗「佐藤屋」が語るWeb展開の手ごたえ

いつも画面越しに見ているネットショップのむこうには、想いのつまった“モノ”とそれを届ける“”たちがいます。このコーナーでは、知られざる商品開発ストーリーやお店の裏側に迫る現場レポートをお届けします。
今回ご紹介するショップ
山形県山形市で、文政四年(1821年)に創業した老舗和菓子店。名物「乃し梅」をはじめとした伝統菓子と、8代目店主の作るモダンなお菓子が人気のお店です。新型コロナウイルスが猛威を振るう中、初めてネットショップを開店したという店主・佐藤慎太郎さんにお話を伺いました。

SNSでの呼びかけ後、開店1時間で受注100件

佐藤屋さんで販売されている「乃し梅」とはどんなお菓子ですか?

創業時から作りつづけている梅のお菓子です。当時このあたりでは「出羽三山詣で」といって神社巡りが盛んでした。その宿場町のお土産に、旅人の気つけ薬として作りはじめたのが現在の乃し梅の原型ですね。今でいうエナジードリンクみたいな存在です。

長年の歴史の中でも、ここ数カ月のコロナウイルス感染拡大で受けた影響はかなり大きかったのではないでしょうか。

そうですね。うちは実店舗での販売用の生産が大多数ですが、1/3くらいは全国の百貨店さんや飲食店、市場などにも卸していまして、その売上は4月でいうと前年対比80%以上も減りました。
ゴールデンウィークの観光や、4月の異動などのお土産として作り溜めていたぶんもすべて注文キャンセルになり、メインで卸している「乃し梅」と「梅しぐれ」の在庫が、一時期は3000袋ずつ積み上がってしまって。

ネットショップはちょうどその時期に開店されたそうですが、開店までの経緯を教えていただけますか。

Twitterを見てくださってる方に「百貨店などの休業で商品キャンセルが相次いでいる。でもセールなどの投げ売りでは社員の生活を守れない。もし僕がネットショップを作ったら買ってくれますか?」と呼びかけをしてみたのがきっかけです。そうしたら「買います」っていうポジティブな反応がすごく多かったんですよね。

かなり嬉しい後押しですね。

あくまでTwitterでのリアクションなので、正直なところ半信半疑だったんですよ。
それでも何もしないよりはとにかく動こうという気持ちで始めたんですが、開店1時間後にパッと見たら100件以上も注文がきていて! その後3~4時間で数百件の注文になって、もうびっくりしましたよ。クレジットカード決済の審査が間に合わず銀行振込だけでスタートしたのに、次の日に銀行へ行ったら通帳が繰り越してたんで。

保存性の高い乃し梅はレターパックでの発送にも対応しているそう

皆さん本当に買ってくださったんだ……。

そうなんです。こういう状況ではあったにせよ、もともとのお客さまも気軽に買える場所を求めてたのかもしれないなって。普段いくらSNSで交流していても、いざ買おうと思うと電話やFAX、メールでしか注文できないっていうのが実は大きな障壁になってたことに気付けたのは、相当大きなインパクトがありましたね。

通帳が繰り越してしまうくらいですもんね。

地元の銀行さんもびっくりしてました。「佐藤さん、何が起きたんですか?」って(笑)。
 

実店舗で自然に行っていることをネットでも実践

ネットショップの開設に「カラーミーショップ」を選んだのはなぜでしたか?

大手のモールや無料のカートサービスも検討したのですが、利益率の低さが大きな障壁になってくるんですよね。お菓子のような低価格商品を売るのに1決済あたり数十円の手数料がかかると、月商数百万とか売れたときの負担額がかなりの差になるでしょう。実際、5月以降は1,000件以上の発送になったので、そこに全部手数料がかかったらと思うと…。あとは、載せられる画像の数が多いことも決め手になりました。

ありがとうございます。開店から数カ月が経ちますが、何か気付いたことはありますか。

僕が思うに、最初から難しく考えてたくさん商品が揃ったおしゃれなショップを作るよりは、少しずつ情報発信を続けながら、だんだん形ができあがっていくほうがお客さんの反応はいいのかもしれません。リピーターさんからは「久しぶりに覗いたらすごく商品が充実してきてますね」なんてメッセージをもらえたりしたので。

バンドが売れていくのを見ているファンみたいな心境なんですかね。

そうかもしれません。もともとSNSを始めた頃はフォロワーさんも全然いなかったですが、僕の場合は東日本大震災での物資支援などを通じて、見てくださる方が増えました。

その後東京の大きな百貨店さんで実演販売をすることになったとき、平日でお客さんが少ない時間帯だったにもかかわらず、SNSのフォロワーさんがいっぱい来て拡散してくれたことで、翌年からもっといい時間帯に実演できるようになりました。ネットショップができたときも、うちの店を「推し」と呼んで紹介してくれる人がけっこういたんですよ。そういう方たちに育てていただいてる実感はすごくありますね。

佐藤屋さんの和菓子を「わたしの推し見て」って紹介してる方のツイート、見ました。

すごくありがたいですよね。中の人は40超えたオッサンなわけじゃないですか。それなのに「わたしの推しが作るお菓子はこうだ」とか「8代目頑張れ」とか。あんまり深夜まで作業してると「寝ろ」なんて言われるんですけど(笑)、そんなやりとりも楽しんでいます。

ネットショップを作るとき、SNS経由で来られる方を意識したポイントはありますか?

ブランドサイトは老舗らしく堅めの文体にしているので、ネットショップのほうはどうしようか?と考えたんですが、いつものSNSやブログのままのほうがいいですよと言われて、いつものままの文体にしましたね。
商品発送もこれまでの通販とは少し変えています。電話注文の方には従来のカッチリとしたパンフレットを同梱しますが、ネットショップからの注文には、よく僕が実演のときに配っている毛筆の手書きイラスト入りのしおりを入れたりして。アマビエさんのイラストを玄関に貼ってくれた方もいたので、ある種のキャラクター分けは大事だなと思います。

ネットショップの発送メールも、こまめに内容を見直すことで、リピーターの人が受け取ったときも毎回印象が変わるように工夫しています。実店舗で自然にやってることと同じですよね。口から出るか文面で届くかの違いでしかないですから、そこは意識しています。

すごくマメなんですね! Twitterでも「乃し梅ってどこで買えるんだろう」といった何気ないツイートにまで丁寧にご案内しているのが印象的です。

社長っていちばん便利なフリー素材なんですよ。SNSでも地元メディアでも、店の外を歩いてるときも。たとえばスーパーとかで乃し梅の話をしてる親子とかがいたら、田舎なのですぐに声かけちゃいます(笑)それと同じことをネットでもやりたくて、作業の合間にお声掛けしています。「わっ!公式からリプライがきた!」って印象に残るはずなので。
 

ネットショップを始めて一番嬉しかったこと

乃し梅以外にも、寒天菓子の美しさがとてもバズっていましたよね。受注管理や発送がかなり大変だったのではないでしょうか?

ああ、めちゃくちゃヤバかったです! どんなふうに売れていくか全然想像してなかったので、在庫設定はもちろん、発送日をずらすなどの対応が大変でした。でも、実店舗でたくさん発注があった際のオペレーションを応用することができたので、むしろ従来の大変だった部分が改善されたことのほうが大きかったなと思いますね。

Twitterで13万件のいいね!が付いたお菓子「空ノムコウ」

これまでの通販対応では、どんなところが大変でしたか?

メールや電話・FAX注文は、基本的に振込か代引きしか使えないんですよ。お客さまにこの商品をいくつ欲しいと言われたら送料まで計算してお返事するんですけど、そこから実際の注文、入金まで「待ち」の時間がとても長くなってしまいます。
ですが、ネットショップでは価格や送料にまずご納得いただいた上で注文してもらえますし、決済も先に済ませられるので、発送までのスピードが格段に速くなりました。これはかなり嬉しかったポイントですね。

ネットショップを始めてみて、一番嬉しかったことは何でしょうか?

やっぱり商圏の広がりですね。うちで販売している生菓子は実店舗だとロス率が一番高いのですが、生のままでは数日しかもたないものでも、急速冷凍でお届けすることで全国の方に食べてもらえるようになりました。今までは県内どころか市内くらいまでしかなかった商圏が、一気に九州・沖縄にまで広がっていったのが嬉しかったです。

遠方の方だけでなく、地元のお客さんに改めて喜んでいただけたこともすごくよかったなと思います。最近バズった羊羹は今でも1カ月待ちの状態ですが、実店舗では買えますよとご案内したところ、「地元だから普通に買えた!」とSNSで自慢してくれた方がいて。ネットショップの商品が拡散されて、それを見た地元の方が「SNSでバズってるから」と優越感を持ってお店に来てくれるようになったのが嬉しかったです。

近所の方にも喜んでいただけたのはすごいですね。

特に今はなかなか県外にも出られないですからね。地元で何かおもしろいものを探したくなるタイミングで、購入の間口を広げられたのは非常に大きかったなと思います。
 

「和菓子屋さんっておもしれえんだよ」と思ってもらいたい

お店として、これから目指していきたい未来について教えてください。

未来ですか。僕らは地方でお店をしているので、東京で実演しても大手さんと比較されることがよくあります。もちろん地方には地方で働く人の事情があるんですけど、その中で経営者が一番大事にしなきゃいけないのは、一度雇用した人たちがふつうに暮らしていけるようにすることだと思っています。みんな普通に暮らして、楽しんでもらいたい。

昔から、お菓子屋さんってすごく忙しそうなイメージがあります。

クリスマスは朝から夜までぶっ続け、とかね。僕も含め子育て世代のスタッフがたくさんいるので、時期によって仕事量に波があると保育園の延長料金がすごくかかったり、子供が帰ってきても家に誰もいないとか、いろんな問題が出てくるんですよね。

でも、今後ネットショップをさらに活用して、「何月何日に発送の商品です」や「日付指定は何日後から承ります」というふうに業務ボリュームを調整できれば、繁忙期と閑散期の差が生まれにくくなります。クリスマスに無理してたくさんケーキ作るのはもうやめようっていう働き方の見直しにもつながって、もしかしたら、いつかはお菓子屋さんも自宅でクリスマスを過ごせるようになるかもしれません。

そうなったら、お子さんもきっと嬉しいですよね。

僕にも息子がいますが、家に帰った両親から「疲れてんだよ」とか仕事の愚痴がこぼれてしまうと、子どもはその業界に対していいイメージを持てないと思うんですよ。
斜陽産業な和菓子屋になりたい人は今時少ないと思いますけど、「なりたい職業ランキング」のプロ野球選手とかサッカー選手なんかよりもっと下のランクでいいから、「和菓子屋さんってけっこうおもしれえんだよ」とか「継ぎてえな」と思ってもらえたら最高ですね。

今日は素敵なお話をありがとうございました!

 

動画でもインタビューをご覧いただけます