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Web広告でショップの売上をもっとあげたい!広告運用で成果を出す極意について川手さんに聞いてみた。

前回の川手さんのインタビューでは、広告の種類やその特徴をお伺いし、「初めて広告を出すならGoogleやYahoo!のリスティング広告がおすすめです」というアドバイスをいただきました。

今回の記事では広告運営を実際にやっているショップオーナーさんに向けて、広告運用の成果を出すためのヒントや押さえるべき広告指標、運用に行き詰まったときにやるべきことについて川手さんに聞いてみました。

株式会社キーワードマーケティング 広告事業部マネージャー 川手 遼一さん
1年半ほどのインターンシップ期間を経て、2016年4月に新卒で株式会社キーワードマーケティングに入社。営業や幅広い広告運用を経験したのち、広告事業部マネージャーに就任。BtoC、 BtoB、有形、無形商材問わず50社以上の広告運用に携わっている。TwitterなどのSNSにて広告運用のノウハウなどを発信中。
Twitter:@RKawtr

どうやったら広告で上手く成果(売上)を出すことができるのでしょうか。

川手さんなりのポイントやコツ、極意を教えてください。

パフォーマンスの高いキーワードでリスティング広告をやっていたとしても、競合が多ければ単価が上がり、ユーザーを獲得できる広告主も限られてきます。成果が出にくくなったときは、新しい広告にチャレンジしてみるのも手です。

運用型広告は、前編でもお話したとおり1日1,000円や2,000円といった低コストで始められるのが大きなメリットです。すでに配信している広告の内容を変えて改善していくやり方もありますが、Googleのショッピング広告だけしかやっていないならMicrosoftのショッピング広告もやってみるなど、違う媒体に出稿して反応を見てみるとよいと思います。

また今年前半に日本で初めてサービスを開始したものに、Microsoft広告とPinterestアド(Pinterest広告)がありますが、こういった情報を知ったらまずはやってみる。試してみたら反応がよくて、じつは穴場だったということもあります。

新規参入の広告をやるメリットはなんでしょうか?

少し話はそれますが、一昔前のAmazonは本を売るサイトという印象でしたが、今や巨大ECサイトと化しています。Googleも巨大IT企業ということもあって、成功のイメージしかないかもしれないですが、じつはトライ&エラーを繰り返しながら大きな成功を手にしているんですよね。

一例を挙げると、GoogleのYouTube広告は今でこそ巨大な収益をもたらす事業としてテレビ広告に迫る勢いですが、まだ成長過程にあった時代には、その裏で「Google TV Ads」という、全米テレビチャンネルなどのテレビCMへの配信仲介サービスを提供していたのですが、そのことを知っている人はほとんどいないと思います。

近年はご存じのとおりテレビ本体の中に機能として加わり、インターネットを通じて広告を含めた動画を配信するコネクテッドTV事業で成果を上げています。

広告でも同じように、新しい媒体で今は注目度が低くても、数年後には大きく成長して、いつの間にか生活の中に溶け込んでいるということは十分あり得ます。先んじて広告出稿していれば、競合他社より一歩リードできるかもしれません。

成果が出る広告について教えてください。

成果が出る広告があるとしたら、どういったものを指すのでしょうか。

なにを成果とするかは事業者さんごとに異なるので、大前提のところだけお話しますね。

GoogleやYahoo!などの各広告媒体はユーザーの行動に関する詳細なデータを持っているので、それに合わせて最適化すればそれなりの広告を作れます。各媒体の自動最適化精度も高いので、任せておけばそれなりの成果を上げられるケースもあると思います。

ただし、それらの条件は競合他社も同じはずなので、「成果が出る」状態にはなったとしても、半永久的に「成果が出続けるか」と言われるとかなり疑わしいですよね。やはり人間がエンドユーザーのことを考え抜いて作り込んだ上で、オリジナリティー(独自性)が高い広告でないと成果面では頭ひとつ抜けることは中々ないんですよね。

ただ良い広告を作ったとしても、競合他社に真似されてしまうこともあります。そうなると差別化を図れないので成果が出にくくなってしまいます。そのために自社固有の、オリジナリティー(独自性)の高さがもとめられるわけです。

つまり、独自性が高くて真似できない上で、エンドユーザーの心に刺さる訴求につながる広告そのものが、成果が出やすい広告ということになります。

成果を出す広告運用で押さえるべき指標ってなんですか?

ROAS以外にも押さえるべき指標はありますか?

広告運用では、初心者も中・上級者も、ROASで広告の費用対効果をチェックするのが基本です。このとき1カ月ごとの成果を見るだけでなく、3カ月や半年、1年などの長期スパンで数値を追っていくことが大事なポイントになります。

すでに広告運用中のネットショップオーナーさんは、ぜひ過去を振り返って媒体ごとや施策ごとに成果の推移を確認してみてください。毎月広告費を投下していたものが、いつの間にか効果が落ちていたということが意外とありますよ。

広告運用を運用代行会社に依頼している場合も、月に1回くらいのペースでレポートが送られてくると思いますが、1カ月単位ではなく長期的に見ることをおすすめします。

もっと早いスパンで成果を判断したいときは、どのくらいの出稿期間を考えておけばいいですか?

前回でもお話しましたが、大前提としてまず1カ月は見ていただきたいです。同時進行で、Yahoo!の検索広告もGoogleのショッピング広告もFacebook広告もやりますという場合は、広告費が分散されますので、各媒体で一定のクリック数が貯まるまでは続けるべきです。ひとつの媒体に絞って短期集中的に多めに予算を投下する場合は、2~3週間で判断してもいいケースもあるとは思います。ただ基本的には1カ月程度は見てほしいです。

広告のパフォーマンスがよくないときはどうしたらいいですか?

ROASを見て効果の落ちている広告があれば、前後の広告配信に関する調整履歴、そもそもの広告の訴求内容、クリック率、クリック単価、コンバージョン率などの各重要指標を見直し、なぜパフォーマンスが落ちたのかを確認していきます。

数値の推移などを見て、仮に「画像が陳腐化し結果クリック率、コンバージョン率が下がっている」と仮説を立てた場合、もしかすると画像を変更することで成果を改善させることができるかもしれません。そうした改善を繰り返していくのが広告運用です。

感染者数の増減で売上が落ちたとか、そういった危機的状況に陥ったときは、早めにテストマーケティングとして広告を大きく変更してみて、反応がよさそうであれば少しずつそちらに予算をシフトしていくといった調整も検討してみてください。

広告上の訴求を変える場合は、ランディングページ(LP)も変えたほうがいいですか?

広告上の訴求を変えるときは、ランディングページはそのままで、先に広告だけを変えて反応を見たほうがいいです。というのも、ランディングページまで一緒に変えてしまうと、例えばパフォーマンスが落ちた際に要因がランディングページなのか広告なのかが不明瞭になるからです。

どちらに要因があるのかはわかるようにしておく必要があるので、順番としてはまず広告のクリエイティブを変えて1~2週間ほど様子を見る。クリック率が上がったとかコンバージョン率が上がったといったデータが出てきて数値を確認し、ランディングページ(LP)を変更し問題なさそうであれば、広告内容に合わせてランディングページを変更するという流れで進めたほうがリスクが少ないでしょう。

広告とショッピングサイトやランディングページの訴求が異なるとCVRが下がるという話も聞きますが、気にしなくてもいいですか?

もちろんランディングページと広告内容が乖離しすぎるのはよくないので、無理のない範囲で最大限に広告の訴求を変えるという方向性がいいですね。

また最初から全面的に広告を変えるのはリスクが大きいので、まずはテスト的にひとつの媒体の特定のキャンペーンでのみ広告を追加してみるとか、クリエイティブを変えてみるとか、小規模に実施し反応を見ることから始めることをおすすめします。

なにをしても数字に動きが見えないなど、運用に行き詰まった時はどうしたらいいですか?

ショップオーナーさんの中には広告運用の改善を頑張っても結果につながらず行き詰ったと悩まれている方もいらっしゃると思いますが、そういう時の解決法はありますか?

運用に行き詰まっているからデータを細かく見てみようと考えるネットショップオーナーさんもいるかもしれませんが、そもそも訓練を受けてない、知見のない人が深いデータ数値分析を個人でやるのは極めて困難です。

分析したとしても、間違った結論を導き出し、より事態を混乱させてしまうことも珍しくないため、データ分析に注力するよりも、例えば実店舗を持つネットショップオーナーさんであれば、来店したお客様に話しかけるなどしたほうが広告に役立つヒントを得られる可能性が高いのではないでしょうか。

これは実際に数年前に自分が担当していた、カラーミーショップさんを利用されているクライアント様のお話ですが、担当者の方が店頭でお客様にいつも「どんなSNSを使っているんですか」と聞いているなかで、「TikTokを使っている人が多い」という事が感覚的にわかったそうです。

そこでかなり早い段階からこのクライアントさんはTikTok広告を利用し集客をされていたのですが、そのお陰で早期からTikTok広告経由でかなりよい成果を出すことができました。なので、お客様の生の声に耳を傾けてみると、意外な発見があるかもしれませんよ。

なるほど。実際にお客様の声を聞くことが広告の改善に活かせるかも、という考えはありませんでした。


もうひとつ、私が直接手がけた、とある売れ筋商品を持つクライアント様の例もお話しすると、価格が高くても人気のあった商品が、コロナ禍で需要が減って売上が立たなくなってしまったんですね。

先方はコロナ禍に加え、ITPの影響でトラッキングできなくなったから売上が落ちたんじゃないかと分析されていましたが、仮にITPの影響が大きければ他のケースでも同様の数値の動きがあってもおかしくないものの、そのような動きはなかったため自分は「コロナ禍に伴う生活環境の変化」にポイントを絞り、「コロナ禍に伴う生活スタイルの変化にあわせる形で商品の見せ方や広告の切り口を変えること」を提案し広告を作り替えたところ、読みが当たって、売上が一気に上昇したというケースがありました。

実際にエンドユーザーの方の話を伺っていると「コロナ禍の影響で買いたいけどなかなか一歩を踏み出せない」という人が多そうだなと思ったので、コロナ禍に伴う生活スタイルの変化に合う広告に作り替えましょうと提案し行動できたのですが、こうした閃きは残念ながらデータを見ているだけでは生まれてきません。

あくまで直接エンドユーザーの方と向き合ってヒアリングしているからこそ生まれた発想であり、データを一生懸命分析してもそういった切り口には辿り着かなかっただろうなと思っています。私自身はデータ分析にあまり重きを置いていないのですが、その理由はこういった点にあります。

カラーミーショップさんのインタビュー記事に登場した「ひとりEC」の三浦卓也さん も、実店舗は持っていなくてもLINEで1対1のコミュニケーションを密に取っているからこそ、リアルにお客様の実態を感じて、今なにが求められているのかがわかるんだろうなと思うんですよね。販売戦略や広告戦略を立てるうえでは、現場の肌感覚も極めて重要だと感じています。

データ分析だけじゃなく、お客様と実際にコミュニケーションをとることも広告運用にとっては重要なんですね。

もちろん、データ分析をしても意味がないわけではなく、傾向を掴むとか、ある程度の予測を立てるとか、そういったものには使えると思います。ただ、Googleアナリティクスなどの分析結果には表れないものがたくさんあるのも事実です。

データ分析に注力すれば効果の高い広告を作れるかといったら必ずしもそうではないので、データ分析はほどほどにして、お客様に直接会ったりコミュニケーションを取ったりしたほうが、成果につながりやすいのではないかなと思います。

情報収集のやり方や、押さえておいたほうがいい広告を教えてください。

川手さんはどこで広告に関する情報収集をしているのですか?

私自身はオンラインでもオフラインでも情報収集しています。あまり参考にならないかもしれませんが、オンライン上ではよく各媒体のヘルプをチェックしています。そこに変更が入ったら、例えば何がどう書きかわったのか、何が書き加えられたのかなどを確認することで思わぬヒントを得られることもあります。それから業務上、各広告媒体の関係者とつながることが多いので、直接情報を入手できたりもします。

ネットショップオーナー さんが情報収集するなら、Twitterのトピック機能で気になるものをフォローして、表示される内容を見てみるといいと思います。例えば「広告」のトピックをフォローしておくと「広告」に関する人気のツイートなども自動で出てくるので、トレンドを掴めるかもしれません。

また、興味があるようでしたら、少しマニアックな内容かもしれませんが、私がTwitter で発信している情報も参考にしてみてください。

それから弊社では、運用代行以外にWeb広告のノウハウを伝える「養成講座」 を開催していています。こちらを受講していただければトレンドを把握できると思いますよ。

今、押さえておくべき広告ってなにかありますか?

GoogleやYahoo!などのリスティング広告と、GoogleおよびMicrosoftのショッピング広告のほかに挙げるとするなら、GoogleやYahoo!が提供しているディスプレイ広告や、Googleのファインド広告、余力があればSNS広告、動画広告を押さえておくとよいと思います。

ただ、広告運用における最適なルートは、集客効果の高いリスティング広告やショッピング広告を作り、収益を上げてEC運営に余裕ができたら、広告予算を増やしてSNS広告などの新しいフィールドに手を広げていくという流れになると思うので、まずはリスティング広告やショッピング広告のパフォーマンスを上げることを重視したほうがいいですね。

広告運用で悩んでいるネットショップオーナーさんにメッセージやアドバイスをお願いいたします。

ある程度売上があるのであれば、毎月一定金額を新しい取り組みに使うことに決めて、いろいろと試してみるといいと思います。固定で毎月50万円の広告費を確保していて、40万円は使い道が決まっているなら、残りの10万円は新しい広告媒体やメニュー、広告形式に投下する。こうした広告費の使い方を続けていると、盲点に気づくこともあります。

また広告そのものについていうなら、結局のところ「誰がその広告を見るのか」を考えて、お客様のニーズを突き詰めて考え続け改善させ続けることが大事です。

これを徹底的に追求していけば、パフォーマンスが落ちている広告は適切なものに改善できるでしょうし、成果の出る広告も続々と作れると思います。そうして前述した通り、独自の切り口で他社が複製できないような、魅力的な広告を作ることができれば、半永久的に集客し続けられるようになります。

イタリアのスイーツ「マリトッツォ」は日本で突然ブームになりましたが、ブームが落ち着いた今も検索ボリュームはほとんど落ちずに一定水準を維持しています。このように新しい言葉は生み出され一度検索されるようになると、検索ボリュームはなかなか落ちないんですよね。

リスティング広告の表示回数は如実に関連語句の検索ボリュームと連動しますから、検索ボリュームがなかなか落ちないことを逆手に取り、ある程度よいパフォーマンスの広告を1度作り込み継続して配信することができれば、多少のブレはあっても売上は一定水準を維持し続けるはずです。

そういった盤石なものがある状態だと追加で挑戦的な広告戦略や戦術にも取り組みやすくなるので、挑戦的な施策を複数展開し、そういったものの中から何か1つ、2つでも当たりの施策を引き当てられれば…といったような形で継続して挑戦し続けられれば、好循環が生まれ続けるのではないでしょうか。

今広告で悩んでいる方はぜひ違った視点から自身の広告をみてみると、改善のヒントがみつかるかもしれませんね!川手さんありがとうございました。