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Web広告って出すべきなの?ネットショップの広告運用について川手さんに聞いてみた。

Web広告に興味があっても、実態がよくわからないから手を出せない!と悩んでいるネットショップオーナーさんもいるかもしれません。広告を出すならなにから始めたらいいのでしょうか。そもそも、自然に集客できているネットショップでも広告を出す必要があるのでしょうか?

今回は、そんな疑問を解消してくれる広告運用のプロ、川手遼一さんをお招きして、Web広告の初心者さん向けにお話を伺いました。

株式会社キーワードマーケティング 広告事業部マネージャー 川手 遼一さん
1年半ほどのインターンシップ期間を経て、2016年4月に新卒で株式会社キーワードマーケティングに入社。営業や幅広い広告運用を経験したのち、広告事業部マネージャーに就任。BtoC、 BtoB、有形、無形商材問わず50社以上の広告運用に携わっている。TwitterなどのSNSにて広告運用のノウハウなどを発信中。
Twitter:@RKawtr

川手さんについて教えてください

本日はよろしくおねがいいたします。まず川手さんについて教えてください。

はい、よろしくおねがいいたします。株式会社キーワードマーケティングに所属しており、広告事業部のマネージャーとしてWeb広告の運用代行をはじめとした広告関連業務に従事しています。また個人でも、Twitterを通じて広告運用に関するノウハウや最新情報を発信しています。

広告運用に興味を持つようになったのは、大学でマーケティング関連の勉強をしているなかでWeb広告の将来性に惹かれ、キーワードマーケティングの前身であるキーワードマーケティング研究所でインターン生として働き出したことがきっかけです。

インターンシップをしはじめた2015年は、5月にはInstagramが日本で広告配信をスタートしたころで、当時はInstagramへの広告配信が可能なFacebook広告(現Meta広告)に特に注目が集まり始めていたタイミングで、そういった媒体を扱うWeb広告会社が徐々に増え始めていて、業界がさらに盛り上がりを見せていきそうな活気に満ちていました。

2016年4月に新卒で今の会社に入社したので、Web広告業界に身を置いてから約8年になります。

Web広告ってチラシやリーフレット・看板などの「広告」とどう違うの?

広告と聞くと、テレビCMや看板広告などをイメージするのですが、Web広告とはどういうものなのですか?

広告は、看板などのオフライン広告と、インターネット上で展開するオンライン広告(Web広告)に大別されます。
オフライン広告は、露出が高く、エリアを絞り込んで多くの人に訴求したいときに効果的ですが、掲載期間が決まっていたり、ある程度予算がないと出稿できなかったり、不特定多数の目に触れるので規制が厳しかったりと制約が多くあります。

オンライン広告も近年は規制が厳しくなってきていますが、オフライン広告と比べると広告配信開始後に調整ができるほか自由度が高い点が多く、低予算でも出稿できるためシェアが拡大しています。

Web広告の種類と、それぞれの特徴効果を教えてください。

なるほど。Web広告にもいろんな種類があるのですか?

Web広告のおもな種類には、オフラインの看板広告に近い「純広告」や、弊社が運用代行している「運用型広告」などがあります。

純広告は、特定の媒体の広告枠を指定(予約)して出稿するタイプの広告です。代表的なものとしては、広告枠のなかでも一等地とされるYahoo!Japanのトップページに大きく掲載する「Yahoo!ブランドパネル(一部運用型含む)」などが挙げられます。

純広告には、あらかじめ広告表示数やクリック数が保証されているタイプがあり、多くの場合「2週間前のこの日までに入稿しなければならない」「一度広告を掲載したらかんたんには取り下げられない」「途中で修正できない」など、媒体ごとに契約形態が設定されているのが特徴です。掲載期間は月単位のものもあれば、1日単位のものや数週間単位のものもあります。広告費はケースバイケースですが、安いもので数万円~数十万円、高いものだと数千万円かかるものもあります。中小規模のEC事業者さんだと、予算的にミスマッチなケースが多いかもしれません。

いっぽうの運用型広告は、予算に合わせて掲載期間や入札額を決められたり、クリエイティブやターゲットを変更できたりと、設定をリアルタイムに書き換えられるのが特徴です。このような広告運用はインハウスでもできますが、弊社のような運用代行会社に外注するケースもあります。なお、運用型広告にはリスティング広告やSNS広告など複数種類あり、ターゲットに応じて使い分けられています。

現在主流なのは、断然運用型広告です。電通が発表した調査レポートによると、2021年時点でインターネット広告媒体費の全体に占める運用型広告の割合は約85.2%でした。日本の企業は約99.7%が中小企業なので、日本のビジネスカルチャーとマッチしやすい広告なのだと思います。

ネットショップオーナーが最低限やったほうがいい、オススメの広告はありますか?

少なくともこれだけはやったほうがいいというWeb広告はありますか?

どんな商品を取り扱っていたとしても、リスティング広告は最低限やったほうがいいですね。

リスティング広告とは、GoogleやYahoo!、MicrosoftのBingなどの検索エンジンで検索したときに、キーワードに連動して表示されるテキストや画像付き広告のことです。一般的に「リスティング広告」という場合は検索連動型広告のことを指すケースが多いです。

リスティング広告は運用型広告の一種なので、例えばリアルタイムに入札単価などの設定を変更できるほか、反応がよくない広告テキストを書き換えて改善を促すことなどもできます。また、サイト内に計測タグを設置すれば効果測定も可能となるため、例えばどの広告がクリックされてどんな商品が売れていくら売り上げが発生したのかなども、確認した上で広告配信を調整することができ、費用対効果の高いものに予算を集中させるなど、広告予算の最適化を図ることもできます。

広告運用を内製でやる場合は少し手間がかかりますが、上記したように費用対効果を良い形に調整し配信できるケースも多く、初めて広告出稿するネットショップオーナーさんにはリスティング広告を推奨しています。

リスティング広告はどこに、どのくらいの期間出すとよいですか?

リスティング広告をこれから始めようという場合は、Google広告かYahoo!広告を選ぶのがおすすめです。GoogleとYahoo!は日本の2大検索エンジンで、そのシェアは約90%を占めます。

掲載期間は、効果測定することを考えると最低でも1カ月ほどは継続したほうが良いですリスティング広告は広告ランク(またはオークションランク)と呼ばれるものによって広告掲載の有無・掲載順位が決まりますが、広告ランクの算出時には入札単価も考慮されます。競合の多い商品ほど入札単価が高いケースが多いため、すでにレッドオーシャンな業界であればあるほど、一定の費用を投下しないとそもそも広告効果検証に必要なクリック数を1ヶ月広告配信しても得られないケースが想定されます。

効果検証をしっかり行いたいネットショップオーナーさんであれば、こまめに数値の動きは確認しつつ、ある程度の予算を投下する形でまずは1カ月くらい広告配信を継続し、その上で様子をみていく形がよいのではないでしょうか。

しかし、商品がユニークすぎて、そもそもあまり検索されないものもあります。その場合は、Instagram広告やTikTok広告、Pinterestアド(Pinterest広告)などのSNS広告を利用してみてもよいかもしれません。

リスティング広告を1カ月実施したら、費用はどのくらいかかりますか?

商品によって単価が変わるので一概にはいえませんが、平均クリック単価を50円として、1日あたり100クリックほしい場合、単純に50円×100クリックで1日あたり5,000円。これに30日を掛けて試算すれば、5,000円×30日で1カ月あたりの費用は約15万円になることがわかります。

なので、試しに1~2日ほど配信して1日のおおよそのコストを掴んだら、1カ月あたりの広告費を試算してみるとよいと思います。それをもとに、自社の広告予算から逆算して、掲載期間や投下する予算配分を決めることもできます。また商材によっては土日の方が検索される、連休に入ると検索されなくなる…といったケースも多いので、試算する際はご注意ください。

Google広告とYahoo!広告について、もう少し詳しく教えてください。

GoogleとYahoo!予算的にどちらか一方しか出せない場合、どちらから始めるのがおすすめですか?

多いのは、Googleから始めるネットショップオーナーさんが多いですね。検索エンジンの利用者数はGoogleがトップだからというのも理由のひとつですが、Googleは20~30代の利用率が高いので、この世代をターゲットとした商品を扱っている場合は、必然的にGoogle広告を利用することになると思います。

またこれは広告を配信する側の事情ですが、Googleはアプリにも力を入れていて、広告のパフォーマンスをパソコンだけでなくアプリからでも柔軟にチェックできるため、個人のネットショップオーナーさんには喜ばれ、受け入れられているのではないでしょうか。

例えば一人でネットショップを運営していると、基本的に入金確認や商品のパッキングなどの作業をすべて自分の手でやらなければならないケースも多く、常に時間に追われがちです。しかし、そういった忙しい作業の合間にもスマホアプリで広告配信の結果や進捗を隙間時間にチェックできるのであれば、とても便利ですよね。

それから、Googleは新しい広告メニューの開発に意欲的で、検索連動型広告はもちろん、それ以外の広告プロダクトの改善を常に実施し続けています。そういったものの積み重ねがシンプルに他の広告媒体よりも広告成果を出しやすいといった点に繋がり評価されているといった点も、Google が選ばれる理由ではないでしょうか。

もちろんYahoo!広告も悪いわけではなく、GoogleとYahoo!に広告配信した結果、Yahoo!のほうが反応がよかったという例もあります。Yahoo!の利用者は40~50代、かつ比較的高収入の人が多い傾向にあるため(※)、ターゲットに合う商品を扱っていて広告効果が得られそうならば、Google広告に続いてYahoo!広告をやってみてもよいかもしれません。

リスティング広告は低予算でも利用できるので、両方を試してみて、より自社商品に合っているほうに出稿し続けるという判断でもいいと思います。

ちなみに、Yahoo!広告における運用型広告は、「ディスプレイ広告」と「検索広告」の2つに分かれていますが、いわゆるリスティング広告は後者になります。ディスプレイ広告では、Yahoo!が所有する広告配信面、あるいはパートナー(BuzzFeed、LINEなど)および広告配信サービス広告の配信面にテキスト・画像・動画を使った広告を掲載できます。

検索広告では、Yahoo!JAPAN の検索結果画面上だけでなくパートナーであるExciteなどにも設定次第でテキスト広告を表示できるのが特徴です。なお、Googleでも提携先への広告表示が可能ですが、Yahoo!広告とGoogle広告では提携先が異なるので、出稿時にチェックしてみてください。

ここでもうひとつ、強くおすすめしておきたいのが検索エンジン、Bingへの広告配信が可能なMicrosoft広告です。日本では今年5月31日に開始したばかりのサービスでまだほとんど知られておらず、競合が少ないのでかなり穴場だと思います。とくに参加の余地があると思われるのが、Eコマースと相性がよいショッピング広告です。ショッピング広告はリスティング広告の一種で、検索キーワードに連動して画像付きの広告が検索結果に表示されます。

Googleが力を入れていてここ数年でかなり伸びている分野なので、ブルーオーシャン戦略の一環として、Bingのショッピング広告に出稿することも、ぜひ検討してみてくださいね。

Instagram広告は比較的費用が安く手軽なイメージがあるのですがどうですか?

Instagramで商品を購入する人が増えてきているのでチャレンジしてもいいと思います。Facebookもそうですが、Instagramでは興味・関心を軸にターゲティングできるのが特徴で、商品によってはリスティング広告よりも効率的に売れることもあります。

テキストで伝えるよりも動画で見せたほうが伝わりやすい商品は、SNS広告と相性がよい可能性が高いので、TikTokやPinterestなども含めて検討してみてもよいかもしれません。ただ、少人数でECを運営している事業者さんは、ECの運営が忙しくて、広告運用にあまり時間を割けない場合もあるのではないかと思います。

SNS広告には写真や動画などいろいろなフォーマットがあるので一つひとつ試して効果を測ることもできますが、とくに動画広告は、撮影して、広告に最適な長さに編集して、そこに字幕をつけてと工数が多く、PDCAを回すことを考えるとハードルが高いと思われる方もいるはず。広告の制作実績やクリエイティブ制作の知見がない方が制作に労力をかけてもリターンが少ないことも多く、やってみたら意外と通常業務とのバランスを取るのが難しい…といったケースも多いのではないでしょうか。

その点、リスティング広告は、多少画像を取り扱うシーンはあったとしても基本的にはテキストだけの広告なので、変更も比較的スムーズにでき運用しやすいと思います。費用対効果の面でも優れているので、ひとつに絞って投資しようとなったときに最終的に残りやすいのもリスティング広告です。

(※)実は経営層や主婦層のユーザーが多い? リーチ獲得におけるYahoo! JAPANのメディア価値

おすすめの広告の効果測定の方法とは?

広告を出した後、効果はどのように判断をすればいいですか?

ROAS(ロアス)を指標にすることをおすすめします。ROASは「Return On Advertising Spend」の略で、ROASを見れば広告の費用対効果(広告費の回収率)がわかります。

ROASを求める計算式は「売上÷広告費×100(%)」なので、広告費を10万円投下して売上が40万円だとすると「40÷10×100」でROASは400%。つまり、広告費の4倍の売上が発生しているということになります。そこから人件費などの諸経費を差し引き、投資に見合うリターンを得られているかどうかなど判断し、広告運用を進めていきます。

コンバージョン1件あたりの費用を示すCPA(顧客獲得単価)を指標にすることもできますが、複数の商品を扱うECでは商品によって粗利が異なりますし、粗利が低いものが売れすぎても困ると思うので、ROASで見ることをおすすめしています。とはいえ単品の場合は、CPAを指標にしても問題ないと思います。

ネットショップの売上がどのくらいになったら、広告を出したほうがよいなどの基準はありますか?

月商いくらなどの基準はありません。運用型広告は、前述のとおり1日1,000円や2,000円から始められるので「とりあえずやってみてどうなるか検証してみよう」というふうに、投資的な感覚で始める方もいます。

リスティング広告を実施するタイミングはネットショップオーナーさんによってさまざまですが「ECの運営が軌道に乗ってきてある程度売上が伸びてきたから」とか、「オーガニック検索(SEO)の対策をしてきたけれど売上が伸び悩んでいるから」などの理由で始めるケースが多いようです。

また広告を利用すると、自社商品の情報を届けたい人に対して比較的短期間でリーチできるので、新商品の販売にあたってテストマーケティング的に実施するケースもよく見られます。

継続的な売上のあるネットショップでも、オーガニック検索や特定のSNSからの収益だけに依存している場合、そこでなにかがあったときに一気に売上が落ちることもあります。そんなときでも広告出稿していれば、とりあえず一定数サイトへの流入数は維持できますし、広告効果に関しては例え速効性が感じられなくても、前述した通り運用し日々改善を積み重ねていく中であとから効果を実感できるケースも多いので、結果的に安定的にネットショップ運営がしやすくなるのではないかと思います。

Web広告をやるうえで、注意すべきことはありますか?

広告を運営するうえで、注意すべきことを教えてください。

リスティング広告では、キャンペーンごとに1日の予算を設定することができます。なかには、設定の最大2倍まで広告掲載を許容する仕組みになっているものもありますが、基本的には1日の予算を設定していれば「1日1,000円の予算なのに10万円使っていた」ということは起こりません。

ただし、予算を入力し間違えたり、誤設定してしまうことがあり得るので注意が必要です。一例を挙げると、Meta広告のキャンペーン予算設定は1カ月分の予算を設定し広告配信する通算予算と、1日ごとに予算を設定し広告配信できる日予算設定の2つがあります。

仮に、本来通算予算設定で10万円と指定するところを日予算で10万円と誤設定してしまった場合、そのまま1ヶ月気がつかなければ、1カ月後に広告費が300万円を超えてしまうといった事態に発展することもあり得ます。

こういったミスを避けるためにも、とくに一人でECを運営していて、これからWeb広告を始めようという方に対しては、広告の数値、特に予算はこまめに確認したほうがいいですよ」とアドバイスしています。

Web広告初心者の方はとくに、新しい広告を追加したりキャンペーンの設定を変更したりとなにかしらの操作をしたなら、1日に最低でも2~3回は設定内容を確認するようにしてください。仮に間違っていたとしても、気づいたときにすぐに修正すれば、大きな問題にはならないと思います。

この記事を読んで広告運用に興味を持った方はまずなにを始めたらいいですか?

初めて運用型広告を実施するなら、これまでお話してきたとおり、リスティング広告を強く推奨します。リスティング広告は特定のキーワードを検索した人に配信するタイプの広告ですが、そもそも特定の語句を検索している時点でその人は十分顕在層(見込み客)にあたります。そのためWeb広告の中でも、優先的にリスティング広告に予算を割いたほうが獲得効率面でも、結果として良いケースが多いんです。

リスティング広告はGoogleから始めるのがおすすめなので、まずは「Google広告」で検索して、手順に沿って広告アカウントを発行するなど順次手続きを進めていってください。Google広告に慣れたら、Yahoo!やBingでもリスティング広告を試す、SNS広告に手を広げるなどして、自社に合う広告の打ち出し方を見つけてみてくださいね。