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開店から3年間お店で生活?! 1万5000点がひしめく宝箱のような雑貨店「海福雑貨」の話

いつも画面越しに見ているネットショップのむこうには、想いのつまった“モノ”とそれを届ける“”たちがいます。このコーナーでは、知られざる商品開発ストーリーやお店の裏側に迫る現場レポートをお届けします。
今回ご紹介するショップ
神奈川県・相模原市にある「海福雑貨(うみふくざっか)」さん。10年以上続くお店は、ご近所の方はもちろん遠方や海外からのお客さんも訪れるほどの人気ぶりです。今回は店主の遠藤 和海さんに、これまでの道のりやお店のこれからについてお話を伺いました。

25歳で開店、什器のソファをベッドにしてお店に寝泊まり

都心から少し離れた場所にありますが、この場所を選んだ理由は…?

僕の地元がこの街で、小学生のとき遊んでいた公園がすぐ近くにあるんです。不動産屋さんにお店を始めたいと言ってまず紹介されたのがこのアパートでした。一目見て気に入って即決です。

外壁もかなり改造されていますね。

油絵の画家さんに壁をペイントしてもらったり、店内も窓や壁や押入れを改造したり…もともとDIYするのが好きだったので、自分たちの手でお店を作っていきました。

お店はいつ開店したんですか。

25歳のときなので10年前になります。当時はまだ会社勤めをしていたので土日だけオープンするかたちでスタートしました。

土日だけオープン。

はい。ただ開店したものの生活費に困って…什器のソファをベッドにしてこの店に寝泊まりする生活を3年間続けました

もしかして…家なかったんですか。

家…なかったんですよ。(笑)
さすがに結婚を機に家に住むようになりましたけど、当時は全く苦じゃなかったんですよね。若かったからかな。

好きなものに囲まれた環境とはいえ…スゴイです。

シャーペンで描いた架空の街の地図が人気のきっかけに

お店の名前「海福雑貨」の由来は、なんでしょう。

「海」は僕の名前の「和海(かずうみ)」からとって「福」は「みんなが幸せな気持ちになるようなお店に」という願いをこめてつけました。

店名の右にある、ロゴマークはいったい…?

このマークは僕の描いた架空の街の地図です。

遠藤さんは、絵を描かれるんですか!

はい。授業中の落書きの延長みたいなものなんですけど、シャーペンで絵を描いています

シャーペン?! 架空の街…!

あ。そこの壁にかかってるのも僕が描いたものです。

お店を開店した最初のころは、この絵にけっこう救われた部分があります。「若いアーティストが、おもしろいお店を始めたぞ!」とメディアに取り上げていただけて、だんだんとお客さんも来てくれるようになって。

近くで見るとシャーペンの筆跡がしっかり見える。密度の高さに圧倒!

小さいころから何かを描いたり作ったりするのが大好きだったんです。作家さんたちの生き方とか作品のあたたかさ、それらを見にやってくる人たちの雰囲気が心地よくて「もっとこの世界を広げたい、どっぷり浸りたい」というところから、お店を始めたんです。

 

ジブリ映画に出てきそうな不思議な雰囲気、そのセレクト基準は…

ずいぶんたくさん雑貨が並んでいますが、全部でいくつあるんですか?

1万5000点くらいあります。

スゴイ数…! まるでジブリ映画に出てきそうな不思議な世界観ですね。

よく言われます。(笑)

この世界観を作っている雑貨のセレクト基準は?

まず自分たちが好きなものを集める。いわゆる「おしゃれなセレクト雑貨屋さん」にはしたくなくて、いろんなものをできるだけ集めています。そこは開店当初から変わっていません。

ジャンルもさまざまですね。

異国の空気やさまざまな時代を経てやってきたアンティークやヴィンテージ雑貨、手作りのアクセサリー…いろいろあります。2012年にはさらに「分室」を作ってジャンルを広げました。

分室は、男性の好きそうなアイテムが多いですね。

機械のパーツや鉱石などSF感の強いアイテムが多い。

輸入品はどのようにして集めているんですか。

年に1回アメリカへ買い付けに行ったり、インターネットを使って世界中から取り寄せています。

アメリカにはお一人で行かれるんですか?

最近は、妻と子どもと一緒に行きます。預けられるトランクの数って1人2個の制限があるので、子どもの分のトランクにもたくさん雑貨を詰め込んで持って帰ってくるんです。(笑)

なるほど。(笑) 何か目星をつけて、買い付けに行かれるんですか。

いえ。ほとんどが偶然の出会いですね。特に「これを買うぞ!」って気持ちで行くわけではなくて。
そこにある鹿のトロフィーもそうです。国内で仕入れたものなんですが、たまたまおすすめされて「これはお手頃な価格だな」と思って購入しました。

あとはこういったアンティークのほかにハンドメイド作家さんによるアクセサリーや雑貨も展示販売しているんですが、材料となるビーズや石も販売しているので、作家さんたちもお客さんとしてたくさん訪れます。

作家さんたちと一緒になってイベントまで手作り

そういえば、作家さんたちを集めたイベントを主催されていますね。

そうなんです。「オダサガ文化祭」といいまして、今年で11回目になります。

小田急相模原駅に隣接した「ラクアルおださが」内のホールを貸し切って開催。

11回も開催されているんですか!

はい。最初は10組くらいの作家さんを集めた展覧会をしていたんですが、だんだんと「参加したい!」という声が増えていって。30〜40組集めたイベントを主催するに至ったんです。

パンフレットや会場準備など全て手作り。

イベント運営は大変ではありませんか?

もちろん主催するのは大変です。だけどそれよりも「楽しい!」という気持ちが上回っています。もうほとんどが顔なじみなので、名前のとおり高校の文化祭のような楽しさなんです。

自分たちの好きなモノを作ったり販売したり、そんなイベントを企画できるなんてたしかに「文化祭」ですね!

好きという気持ちがもつ可能性を、さらに広げていきたい

これから挑戦したいことは?

そうですね。うちは中国とか台湾とか海外から訪れてくれるお客さんも多いんです。なので今後はWebで海外販売も挑戦したいなと考えています。

あと、こんなにたくさんヴィンテージやアンティーク雑貨に囲まれていますけど、ぼくはデジタル好きなんです。じつは妻もアメコミ好きで…。

このお店の雰囲気とは、ずいぶん違う趣味!

もちろんこのお店も大好きなんですけど、今やっているお店とはちょっと違ったかたちで、好きな世界を表現できたらいいですね。

お店をとおして自分の「好きな世界」を広げていく、遠藤さんの今後の活動を楽しみにしています!