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職人さんの技と1000種類の紙から生まれる“貼箱”って? 箱の専門店「BOX&NEEDLE」の話

いつも画面越しに見ているネットショップのむこうには、想いのつまった“モノ”とそれを届ける“”たちがいます。このコーナーでは、知られざる商品開発ストーリーやお店の裏側に迫る現場レポートをお届けします。
今回ご紹介するショップ
東京・二子玉川にある世界初の箱専門店「BOX&NEEDLE(ボックス&ニードル)」さん。ヨーロッパからアジアまで、世界各国で集めた個性的な紙から作られる同店の「貼箱」は、大人の女性から高い人気を誇ります。今回はお店の成り立ちや 一点一点の箱に宿るストーリーについて、ネットショップ担当の藤井 湖弓さんから詳しく伺いました。

京都の伝統技術を今に伝えたい!
BOX&NEEDLEさんの「貼箱」ってどんなもの?

二子玉川駅・西口から歩いて5分のお店にやってきました。

わあ、かわいい箱がたくさん! このお店はいつ頃から始まったんですか?

2009年のオープンなので、もうすぐ8年になります!
京都に工房があるのですが、じつは初めて実店舗を設けたのは、ここ二子玉川なんです。

ということは、ここにある箱はすべて京都でつくられているんですね。

そうなんです。京都でもうすぐ創業100年を迎える「マルシゲ紙器」という紙器メーカーが、わたしたちのルーツでして。

紙のうつわと書いて、紙器(しき)ですか。

ええ、あまり耳慣れない言葉ですよね。
マルシゲ紙器では、厚紙を組み立てた箱にいろいろな模様の紙を貼りつけた「貼箱」とよばれる箱を製造しています。

もともと貼箱はお菓子や扇子、着物などを入れるのに欠かせない存在で、それを職人さんの手でひとつひとつ作っていたのがはじまりなんですよ。

なるほど! 京都の老舗メーカーさんがこんなカラフルな箱を手がけるようになったのはどうしてですか?

マルシゲ紙器の四代目である大西景子が、貼箱の技術を後世にも伝えていきたいという思いをきっかけに BOX&NEEDLE を起ち上げたんです。
ここでは、世界各国から買い付けてきた紙やオリジナルデザインの紙をつかって、今の人たちがインテリア感覚で使える箱を提案しています。

ふむふむ。たしかに、どれもこれもかわいくて思わず手に取りたくなっちゃいます!

ポップで親しみやすい雰囲気の店内。

 

ただかわいいだけじゃない!
日常づかいできる便利な箱が生まれる裏側。

お店にある箱は、職人さんの手でひとつ作るのにどれぐらいの時間がかかるんですか?

ものにもよるんですけど、名刺サイズのシンプルな小箱だったら、それこそ1分もかからない速さで作ってしまいます。

えっ、そんなに速いんですか!

職人さんの作業って、本当にすばやいんですよ~!
とはいえ 引き出し型のような複雑なかたちになると、ひとつ完成させるのに時間がかかるので大量に作ることはむずかしいんですけどね。

「箱」といえば「四角い入れ物」を想像しますが、ここはいろんなかたちの箱がありますね。

はい! 生活のあらゆるシーンで活躍する箱を作っているので、デザインもさまざまです。
化粧品をしまうのにぴったりなコフレボックスに、ティッシュボックスやゴミ箱なんかも。あとは…こちらにある円柱形のハットボックスも非常に人気ですね。

そうそう、以前「よむよむカラメル」のインタビューに登場した高円寺のクッキー屋さんも、最近このハットボックスを購入してくださったんですよ!

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こんなところで意外なつながりが!(笑) 新しい箱はどんなふうにして生まれるんですか?

商品開発は、京都の工房にいるデザイナーが担当しています。新しい絵柄の紙が誕生すると、なるべくきれいに見えるようにと、絵柄の幅に合わせて新しいかたちの箱を作ることもあるんですよ。

あとは、お客さまの声を参考にデザインを改良することもあります。たとえば…これはお裁縫箱なんですけど。

はじめは正方形で、小さな2段の箱を作ってもらったのですが「大きな裁ちばさみが入らない」とお客さまからご意見をいただいて。
そこからどんどん改良を加えて、今は下のスペースがゆったりしたデザインになりました。

取っ手のリボンを引き上げると、下段のモノを取り出せます。

決まった型を作るだけでなく、お客さまからアイデアをもらいながらどんどん進化させていくんですね…! それでは、次は紙についてのお話も聞かせてください!

もちろん! 世界中のかわいい紙をたくさんご紹介しますね。ぜひ2階へどうぞ~!

デザインも表情もさまざま。世界中で集めた1000種類の紙たち!

2階のワークショップスペースには、色とりどりの紙がずらり!

カラフルな紙がこんなにたくさん…! 見ているだけでテンションが上がってきます。

ありがとうございます! わたし自身も初めてここを訪れたとき、この部屋の紙たちにすっかり魅了されてしまいました。

藤井さんも、もともとはお店のファンだったんですか!

そうなんですよ。なのでここに並ぶ紙を見たお客さまのワクワクする気持ちは、すごくわかります!

一枚一枚がキラキラして見えますよね。ここには何種類ぐらいの紙があるんですか?

ええと、今はだいたい1000種類ぐらいですかね。
世界各国から買い付けた紙はもちろん、友禅和紙の工房で刷られたオリジナルの和紙などもありますよ。

鹿児島睦さんのデザインペーパー。

日本国外ですと、主にどんな国から紙を仕入れるんですか?

ヨーロッパはドイツ、イタリア、フィンランドのものが多いですね。
たとえばこのピノキオモチーフの紙はイタリア製なんですが、百貨店でのイベント時は特に人気があります。

イタリアの老舗「ROSSI(ロッシ)」社のプリントペーパー。

かわいい! ちょっと良いプレゼントはこういう絵柄の紙で包みたくなりますね。

珍しいところでは南アジアの紙もたくさんありますよ。ネパールとかバングラデシュとか。

ネパールにバングラデシュ。想像もつかない! アジアの紙にはどんな特徴があるんでしょう。

たとえば、ネパールの山岳地帯にはロクタという木が生息しています。ロクタペーパーとよばれるこの紙は、木を伐採するのではなく樹皮を剥いで作るのが特徴なんです。

木を切り倒す必要がないうえ、樹皮は時間がたてば再生するので、森の生態系に影響を与えにくいエコな紙として注目されています。

すごい! 知らなかった…。

日本にいるとよくわからないですよねえ、ネパールのことって。
じつは紙のデザインも現地の方が手がけているんですよ。ヨーロッパ風のモダンなものから、和柄っぽいもの、独特の細かな絵柄までいろいろあっておもしろいんです。

絵付けものんびりしていて、味があって素敵ですねえ。

たとえば黄色い紙をお願いするにしても、毎回おなじ濃さの黄色ができあがるとは限らないのが、ネパール紙のおもしろくて大変なところですね。
まったく違う新色が来た!と思いきや「これも黄色だよ」って言われたりするので(笑)。

すべて手づくりの紙ともなると、品質を安定させるのは難しいことなんですね。

こっちはバングラデシュの紙です。
日本の若手作家さんのデザインと言ってもわからないぐらい、かわいいデザインなんですよ。ジュートとよばれる麻素材のお洋服などをリサイクルして、紙に仕立てています。

よくみると動物がたくさん! こうして一枚一枚のストーリーを知ると箱の見え方が変わりますね。

でしょう。わたしたちも、大西が新しい紙を持って日本に帰ってくるたびに「これが一体どんな箱になるのかな?」って毎回ワクワクしながら待っているんですよ!

もともとお店のファンだった藤井さんなら、完成品をいち早く見られるなんて最高ですよね!

マニアックすぎる「ニカワ女子」まで登場!
貼箱づくりを一から楽しめるワークショップの話。

ところで、この2階のお部屋では定期的にワークショップを開いているんですよね。

そうなんです。だいたい毎回10人ぐらいの少人数制で開催してまして。
オーダーメイド感覚でお好きな紙を選んでいただいて、箱づくりに欠かせない「ニカワ」を溶かすところから、実際の組み立てまで一通り体験していただけます。

実際のワークショップの様子。

ワークショップの詳細はこちら

ニカワって、ふだんの生活にはあまりなじみがない存在ですが…。

ニカワはですね、豚の骨や皮などを溶かして作った天然の糊のことです。
ふつうの糊とは違って固まるとハリが出るんですよ。熱で溶かして接着するので、箱づくりの際に紙が浮いてしまった!なんて場合も、アイロンで上から押さえるときれいに修正できたりと、利点が多いんです。

ゼリー状のニカワを湯煎すると…右のように溶けてきます。

これを紙に塗り広げて、箱を仕立てていくんだ…。主にどんな年代の方が参加するんですか?

一番多いのは40~50代の女性ですが、70代のおばあちゃまが来ることもありますよ。
そうだ、最近は「単純にニカワが好き」っていう若い女性がワークショップにいらっしゃいましたね。自分のこと「ニカワ女子」って自称してました(笑)

ニカワ女子…!? なんとマニアックな!(笑)

中にはそんな方もいらっしゃるんですが、やっぱりご家庭でニカワを溶かしてイチから箱を作る…となると、けっこうハードルが高いみたいで。

それで最近、新しい試みとしてシール付きの制作キットを作ってみたんです! これなら貼って組み立てるだけなので、ものの数分で完成しちゃいます。

すごく手軽! 子どもの夏休み工作にもいいですね。

わたしたちとしては、ニカワが大好きなので「こだわりを捨ててシールだなんて…!」って最初は思っちゃったんですけどね(笑)
でも、これをきっかけに皆さんが箱づくりに興味を持ってくれたら嬉しいです!


商品の詳細はこちら

「箱のある生活」をもっと身近に感じてほしい。

最後に、ネットショップのお客さまに今後アピールしていきたいことを教えてください。

そうですね…京都で、職人さんの技術を注ぎこんだ高品質な箱だということが、これからもっと皆さんに伝わればいいなと思います。

お店のファンの方だけでなく、偶然ネットショップを訪れた方にも知ってもらいたいですよね。

はい! 特にネットショップでは、現状そういったところがなかなか伝わりづらいので。
商品ひとつひとつのストーリーはもちろん、より「箱のある生活」がイメージできるように見せ方を工夫していきたいんです。

ウチの店ってね、よく「ラッピングの専門店ですか?」って聞かれちゃうんですよ(笑)

ああ……! 第一印象はそう見えるかもしれません。

もちろんラッピングとして使っていただいてもいいんですが、それでもウチはインテリアや生活に活用できる「箱」のお店なので、その魅力を伝えていければと。

あくまでメインは「箱」ということですね。

そのとおりです。
この箱は「どう使えるのか」が伝わる商品紹介をすることで、具体的な活用シーンのイメージが湧きやすくなれば、もっと親切な接客につなげられると思うので。

ネットショップならではの見せ方がきっとあるはずですもんね。わたしたちも、更新を楽しみにしています。

これからもどんどん工夫していきますので、ぜひチェックしてみてください!

今日はすてきなお話をありがとうございました!