Instagramを集客に活用しているネットショップオーナーさんが増えていますが、上手く活用しきれていないという声も聞こえてきます。Instagramで売上UPにつなげるには、どうしたらいいのでしょうか?
今回は、株式会社ハピラフ 代表取締役CEOの富田竜介さんに、Instagramアカウントの運用術を詳しく伺いました。
Twitter:@tommy_output
目次
富田さんの自己紹介をお願いします!
富田さんのプロフィールをお聞かせいただけますか。
新卒で広告代理店の株式会社マイクロアド(旧マイクロアドプラス)に入社してアカウントプランナーとして勤務したのち、D2C系の化粧品会社、フィットネスのスタートアップ、ブライダルのスタートアップ、クックパッド株式会社を渡り歩き、それぞれの会社でマーケティング職を経験。企業に勤務する傍ら、2019年10月にハピラフ合同会社を設立、2020年12月に株式会社ハピラフの登記を実現しました。
現在は完全に独立して、ハピラフの代表としてInstagramに特化した事業を展開しています。弊社は約100のInstagramアカウントを運用、自社累計およそ300万フォロワーを抱えており、D2Cをメインに通販系事業、メディア事業を進めつつ、そこで得たノウハウを基に、クライアント様のマーケティング支援やコンサルティング、運用代行サービスなども提供しています。
そもそも富田さんがInstagramに興味を持ったきっかけを教えてください。
3社目に入社したフィットネスの会社でInstagramアカウントのグロース(成長)を一任され、10カ月で約10万フォロワーのグロースを達成させたことが、興味を持ったきっかけです。成功体験をもとにプライベートでもいくつかアカウントを立ち上げたところ、それらのフォロワー数も伸びたことから、Instagram運用が自分の強みになっていきました。
富田さんが運営されているInstagramにはどんなアカウントがありますか?
料理、暮らし、美容、ダイエット、金融など多岐にわたり、それぞれのアカウントを社員10名と業務委託スタッフで運用しています。ハピラフでは基本的に得意なことを仕事にしてほしいという方針を取っているので、撮影、編集、投稿を一人でこなす人もいれば、ひとつの得意な業務に特化して担当している人もいます。
私たちがアカウントをたくさん運用している理由は、ある企業が提唱していた「複数のSEOメディアを立ち上げて、それを基軸に成果を出す」という戦略にインスパイアされたからです。ハピラフではこの戦略をInstagramで展開して、toC向け(個人向け)のサービスにつなげています。
Instagramってどういうサービス?ネットショップでも取り組むべき?
Instagramを利用している人も多いとはおもいますが、改めてInstagramとはどういうサービスなのでしょうか。
Instagramは2010年10月にローンチされたプラットフォームで、日本語版は2014年2月にリリースされました。もともとは瞬間を切り取って共有するという、いわゆる画像共有のプラットフォームでしたが、Facebook(現Meta)の傘下に入ってストーリーズやショッピング、リールなどの機能がつき、直近ではデュアル撮影機能というスマートフォンの前面・背面のカメラで撮影できる機能がリリースされるなど、サービス面が絶えず進化しています。それに伴って、Instagramの役割も変わってきています。
近年Instagramは「発見のプラットフォーム」と呼ばれていますが、それは若い世代ほどものを買うときにまずInstagramで検索して、実際の体験談(口コミ)を見たうえで買うか買わないかを判断している傾向があるからです。つまりこれは、Instagramがなにかを共有するための場所から、情報を取得するための場所に変化していることを意味します。さらに今はもう一段階進んで、情報体験のプラットフォームになってきているなとも感じています。
Instagramを利用されている方は、なにを目的にInstagramを見たり、投稿したりしているのですか?
Instagramが自分たちのビジネスの価値を「好きと欲しいをつくる」ことと定義しているように、新しい出会いを創出するプラットフォームとして、ユーザー行動に基づく関心度の高い投稿をリコメンドすることで、好きな人・欲しいモノにどんどんつながれるようなアルゴリズムを組んでいます。
「利用者が好きな人やモノに出会うまたは出会いを求める場所」なので、アカウントを開設している人の多くは、好きな人や趣味に関連する投稿との出会いを求めて使い始めていると思います。好きな人たちとつながるために積極的にコミュニケーションを取ったり、見る専門で好きな人・モノの情報を取得したりと、ユーザーそれぞれの使い方で活用されています。
また企業も続々と参入していますが、その理由は、MAU(月間アクティブユーザー数)が多いことと、ほかのプラットフォームにもさまざまな形で貢献するからだと考えられます。ですのでネットショップオーナーさんも、Instagramの運用はやるべきでしょう。
「フィード」「リール」「ストーリーズ」と、いろんな投稿方法がありますが、なにをいつどのように投稿するのがいいのですか?
Instagramはアルゴリズムに合わせて運用するのがベターです。「フィード」は基本的にフォロワーのフィードに表示されるので、既存フォロワーとの関係性を深めたり商材をしっかり紹介したいときに使います。「リール」はおもにフォロワーではない人に表示されるので、商品の認知を広げたいときに活用します。「ストーリーズ」は、既存のフォロワーと熱量の高いコミュニケーションを取りたいときに使う機能なので、「今ある商品はどう思いますか?」などと質問しながら関係性を深めていくのに役立ちます。
また、ユーザーのなかには、「まとめ機能」を活用している人もいます。自社商品がある場合は、フィード、リール、ストーリーズの各投稿にショッピングタグをつけておけば、サイトに誘導・購買につなげることが見込めます。
これからInstagramを始めるなら何をすればいいの?おすすめの投稿数やネタ集めの方法を伝授!
Instagramのアカウント運用が初めてのネットショップオーナーさんは、なにから始めたらいいですか?
Instagramをこれから始めるなら、まずは練習がてら9投稿してみてください。プロフィールページに表示される画像をプロフィールグリッドといいますが、9枚の画像を投稿することで初めて、正方形状に表示されて体裁が整います。
9投稿を終えたら、10投稿目からはいよいよ本番です。1日の投稿数はフィード2投稿(1投稿リールのシェア、フィード向け1投稿)とストーリーズ5投稿くらいが理想なので、この2つは毎日投稿してください。難しい場合はリールは週2~3回でもいいと思います。投稿内容は、Instagramのアルゴリズムではオリジナルコンテンツが優遇されるので、基本的には新しい投稿を出し続けるのが望ましいです。
具体的な投稿数などがあるとすごくイメージしやすいですね!ちなみに投稿するネタなどに結構悩まれているネットショップオーナーさんもいらっしゃるのですが、何かコツなどはありますか?
投稿ネタに関しては、Instagram内でもヒントを得ることができます。自社商品に近いジャンルのアカウントを50~100ほどピックアップして、どんな投稿をしているかをスプレッドシートなどに洗い出し、いいね数などが伸びている投稿を深掘りします。
表紙にどんな文言をつけているか、2枚目以降はどんな構成か、文章量はどうかと確認していけば、なにかしらのヒントが見つかるでしょう。ただし、他ショップの投稿に引っ張られすぎると、自分たちのよさや押したいことを見失う可能性もあるので、ほどほどにチェックしつつ、アピールしたいことを発信していくほうがいいと思います。
なお、Instagramはジャンルで一番強いコンテンツでないとなかなか伸びづらくなってきているので、いくつかの要素を掛け合わせて新しいジャンルを作るとか、SEOツールで選定したキーワードをコンテンツ作りに活かすなどしてアプローチしてみてください。
これからアカウントを育てる上で押さえてほしい!Instagram運用のポイント
アカウントを育てる上でここだけは絶対に押さえておくべきポイントがあったら教えていただきたいです。
2021年11月から、Instagram内で複数のキーワードを並べて検索できるようになりました。投稿文中にヒットしやすいキーワードが入っているか否かでユーザーの目にとまる機会が違ってくるため、ハッシュタグ検索がメインだったころよりも、投稿文の重要性が増していることは押さえておくべきです。
Googleの上級副社長がカンファレンスで、「若者はGoogle MapやGoogle検索の代わりに、TikTok やInstagramで検索する」と発言していることも踏まえ、キーワード検索に備えて、Instagram内でのSEO対策や投稿内容を充実させることを強く推奨します。
また、キーワード検索が可能になったことで、ハッシュタグの役割も変わっています。昔は「ハッシュタグは最大限度の30個つけるべき」などといわれていましたが、今は「投稿内容がどのジャンルに分類されるかをInstagram側が認識できるようにつけるもの」という位置づけになっています。なので、関連性の高いものを3つくらいつけておけば十分ですし、頻繁に変える必要もありません。
Instagram開催のセミナーなどでも、「ハッシュタグはつけなくてもいい」と公言するほど重要度が低下しているため、ハッシュタグを考えるのに時間を割くのであれば、投稿文章や画像に力を入れたほうがいいですよ。
ハッシュタグを意識しがちでしたのでそれは意外です!フォロワー数はやはり多い方がいいのでしょうか?増やすべきですか?
フォロワーを増やすことを先行して考えがちですが、フォロワーは本来、ある程度の時間をかけて増やしていくものです。いいコンテンツを作り続けて、結果的に興味を持ったユーザーがフォローするという流れで増えていくものなので、これを間違えるとよい成果が出にくくなります。
一例ですが、プレゼントキャンペーンでプレゼント目的のフォロワーが増えても、キャンペーンが終われば投稿に反応されなくなるということはよくあります。こうなるとエンゲージメント率が下がって、Instagramのアルゴリズムに評価されなくなるので、見せかけのフォロワーを増やすのは一番よくないですね。
おすすめの投稿方法はありますか?
PRでインフルエンサーなどに依頼して、商品を手に持った写真を投稿しているものを見かけますが、これは一昔前のやり方です。よく「自分ごと化」が大事だと話しているのですが、ユーザーが知りたいのは「商品が自分の生活に与えるメリット」についてなので、実際に商品を使っている様子やテクスチャーなど、ユーザーがイメージを膨らませて疑似体験できるような動画・静止画を投稿したほうがいいと思います。そうすれば、「いいね」だけでなく保存数も増えていくはずです。
またInstagramでは滞在・滞留時間も重視していて、可処分時間を延ばしてくれるようなアカウントの投稿を優遇しています。SNSではTikTokとYouTubeショートがかなり強く、この2つにユーザーの可処分時間が取られています。Instagramは当然、Instagramに時間を使ってほしいと考えているはずなので、投稿する際はユーザーに長く滞在してもらえるような設計にすると評価されやすくなりますよ。
ちなみに、Instagramのアルゴリズムって意識すべきですか?
アルゴリズムについては、知っておくに越したことはありませんが、結局はどれだけよいコンテンツを供給してユーザーとコミュニケーションを取れたかが大切になります。
Instagramのアルゴリズムはよく変わるので、「アルゴリズムに左右されずに成果を出す方法はなんですか」と聞かれることが多いですが、対策方法は2つしかありません。ひとつはコンセプトを決めてぶらさないこと。もうひとつはコンテンツを磨き続けて投稿し続けることです。
Instagramではアカウントごとにジャンル別に区分けしているので、1アカウント1コンセプトで運用するのが鉄則です。コンセプトから外れたものを投稿すると、アルゴリズムが停止して、リーチも止まってしまうことがあります。またエンゲージメント率が重視されている点も、1アカウント1コンセプトを徹底すべき理由です。仮に1万人フォロワーがいたとしても、3ジャンルの投稿をしていればフォロワーの反応が3分割されてエンゲージメント率が分散されてしまいます。それならば、1アカウントで1万人のフォロワーをめざしたほうが得策でしょう。
コンテンツを磨き続けることが大事な理由は、Instagramがコンテンツマーケティング型のプラットフォームに変化したからです。上手に運用している企業は、コンテンツの見せ方を定期的にガラッと変えて新鮮さを出すなどの工夫もしています。同じやり方をしていたら後発のアカウントに追い抜かれる恐れがあるので、コンテンツを刷新しつつ、クオリティーの高い投稿を出し続けるように意識してください。
一貫したコンセプトでいいコンテンツを投稿していれば、Instagram内でのエンゲージメント率が必然的に高まり、LINEなどInstagram以外のSNSでもシェアされるようになります。発見タブで認知が広がり、またどこからかInstagramのアカウントに流入してくるという好循環が生まれれば、グロースを実現しやすくなるでしょう。
実は重要!Instagram運用で把握しておくべき、売り上げ貢献の範囲
ネットショップオーナーさんがInstagram運用で他に気をつけるべきことはありますか?
企業の場合、経営陣と現場担当者の間でコンセンサスを取っておくことが大事です。経営陣がInstagramを運用する意味や効果を理解せず丸投げ状態でも、経営陣だけが熱量が高くても成果に結びつかないので、経営陣と現場、双方の熱量や足並みを揃えておく必要があります。
そこで重要なのが、Instagram運用において、直接的な売り上げだけを評価するのではなく、間接的な効果もあることを把握することです。例えばInstagram経由の売り上げだけを見て費用対効果が少なかったため、経営陣の判断で運用を止めてしまうケースもありますが、実は指名検索などの認知の増加やファンづくりに寄与していた場合もあります。
そういった点も踏まえて、経営陣と現場担当者の間でInstagramをする意味や目的をすり合わせておくことが重要です。
また、先ほどお話ししたように、コンセプトをぶらさずに継続すること以外にはInstagramでの「勝ち筋」は見出せません。そのため、継続的にいいコンテンツを作り出せるようなリソースを用意して人員配置することが、企業が勝つためのセオリーになります。
ちなみに、複数人で運用する場合の注意点として、Instagramに複数のデバイスからログインするとアカウントにロックがかかったり、ロックされたままアカウントが飛んだりするケースもあります。それを避けるためにも、ログインするのは1アカウントにつき多くても4~5デバイス程度に抑えたほうが安心です。また安全性を考えて、必ず二段階認証にしてください。
Instagramの成果を図る指標には何がある?
ネットショップオーナーさんがInstagram運用をするにあたって成果を図る指標や判断基準はありますか?どこからどんな数字をみたらいいのでしょうか?
見るべき指標としては、以下のようなものが挙げられます。
1)サイト遷移数
Webサイトへの遷移数は見るべき指標のひとつです。結局のところ、Webサイト(ショッピングサイト)に来てもらえなければ成果は上がりません。最終目標であるKGI(重要目標達成指標)には、プロフィールページに張ったリンクのタップ数や、ストーリーズにつけたショップタブ経由での遷移数などを設定することになると思います。
2)リーチ
ハピラフではリーチ(投稿を見た人の数)をもっとも重要な指標としています。リーチを伸ばすために必要なのは発見タブに載ってバズること。発見タブに載るには、投稿後1~2時間以内に既存フォロワーからいいねなどの反応があることが肝心です。どんなにいいコンテンツを作っても、既存フォロワーが反応しないものは発見タブには載りません。
3)ホーム率、ストーリーズ閲覧率
ホーム率(既存フォロワーの閲覧率)とストーリーズ閲覧率も見るべき数値です。この2つの数値が高いということは、投稿後に既存フォロワーに反応されていることを意味するので、初速のエンゲージメントを獲得しやすいアカウントであることがわかります。
4)保存数、滞在時間
保存数も重視すべき指標です。とくに繰り返し動画が視聴されると、滞在時間が延びてリーチも伸びやすくなるので、動画が保存されることを目標にしたほうがよいでしょう。ただ、InstagramではTikTokのように総再生時間や視聴完了率などは一切わからないため、肌感覚で運用しなければならないのが難しいところです。
5)プロフィールアクセス数、フォロー率
フォロワーがどれくらい増えたかについては、プロフィールアクセス数とフォロー率を見ればわかります。プロフィールアクセス数が少ない場合は、遷移につながるように導線を整え、フォロー率が低い場合は、コンテンツとプロフィールに相違があるので調整してください。
見るべき指標はたくさんありますが、以上のことをまとめると、Webサイト遷移数とそれに基づくリーチ、ホーム率、ストーリーズ閲覧率、保存数、滞在時間を指標にして、それぞれの数値を上げるための対策をとれば、結果としてプロフィールアクセス数が生まれてフォロワーが増えると思いますよ。
継続に意外と大事なモチベーション管理と、成果を出すためのInstagram運用に必要な時間の目安とは
富田さんからネットショップオーナーさんへ向けて、ここもInstagram運用では大事だよ!というアドバイスなどはありますか?
企業の方以上に、個人のネットショップオーナーさんの場合は特にモチベーション管理が重要です。急に売上が伸びなくなったとか酷いクレームが発生したなど、壁にぶつかったときにも一人で対処しなければなりません。精神的なダメージを受けることは結構あるので、自分自身の息抜きの方法や克服する術を持っておくべきでしょう。
走り出したら止められない、止めちゃいけないのがInstagramです。一度運用を止めてしまうと、それを戻すまでにものすごく時間がかかるので、持続できるような手段を用意しておいてくださいね。
確かにInstagramをずっと続けるために、モチベーションをいかに持続させるかを工夫するって大事ですね…!最後の質問になるのですが、今までお話いただいた方法を実践するとなると、かなりの時間を必要とすると思ったのですが、Instagramの運用ってどれくらいの時間を割けばよいですか?
企業でも個人でも同じで、Instagramのアカウント運用には最低でも1日3時間くらいかかります。なので、ざっと見積もって月に100時間くらいは、コンテンツ作りや投稿、分析に充ててInstagramに向き合ってください。とはいえ、かなりパワーがいるため、個人経営の方だとInstagram以外のSNS運用やほかの施策がほとんどできなくなるかもしれません。それでも、やったらやった分だけのリターンが望めます。ハピラフでは、時間をかけるだけの価値があると判断して1日3時間を実践しています。
月に100時間!時間だけを聞くと大変に感じるかもしれませんが、それだけInstagramに力を入れる価値があるということなんですね…!本日はありがとうございました!