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ネットショップ×実店舗をシームレスに運営。「びっくりカーテン」が提案する、可能性無限大のコーディネート体験

いつも画面越しに見ているネットショップのむこうには、想いのつまった“モノ”とそれを届ける“”たちがいます。このコーナーでは、知られざる商品開発ストーリーやお店の裏側に迫る現場レポートをお届けします。
今回ご紹介するショップ
100サイズ・6,000種類のカーテンを専門に取り扱うネットショップ。高いデザイン性と種類の豊富さを強みとする同店は『カラーミーショップ大賞2016』で大賞を受賞。さらに2019年・2020年には、実店舗『closet by びっくりカーテン』を東京と大阪にそれぞれオープンしました。5年ぶりのインタビューとなる今回は東京の実店舗を訪ね、代表の三橋 幸美さんと取締役の羽田 幸恵さんにお話を伺いました。

2017年のインタビューはこちら

ネットショップの機能を取り入れた実店舗

想像以上にたくさんのカーテンが……! 実店舗の商品数はどれくらいでしょうか。

三橋さん
カーテンの商品見本だけでだいたい600本くらいですかね。ネットショップの1/10くらいなんですけど、ここでは主にお客さまから特に人気の高い商品をメインに扱っています。

この吉祥寺店がびっくりカーテンさんにとっては初めての実店舗だそうですね。

三橋さん
そうなんです。本社のある大阪の高槻市内にも簡単なショールームはご用意していたのですが、今の実店舗とは違い、カーテンレールに吊られたままの商品を見るだけのスタイルで、希望されたごく一部のお客さまにだけご覧いただくものでした。

羽田さん
ショールームでは商品数も絞っていましたし、当時は完全にネットショップがメインでしたね。

そこから実店舗のオープンに至ったのはなぜですか。

三橋さん
実店舗はずっとやってみたかったんです。といっても、考えはじめた頃は独自性などの面でまだまだ力不足を感じていて。業界でも後発の私たちがネットショップから実店舗に進出するなら何か強みがないと難しいので、オリジナル商品のバリエーションを増やしながらじっくりと構想を練り、「よし」というタイミングで……。

満を持して出店されたんですね。

羽田さん
はい。「大阪にはショールームがあるのに東京にはないの?」という声はずっと東京のお客さまからいただいてたので、まずは東京に1号店を。ネットショップを利用されるお客さまの数は東京がいちばん多いので、まずは東京で試してみて、うまくいったら今度はホームの大阪でも同じことをやるつもりでオープンしました。

店内のいたるところにカーテンレールがあって、自由に着せ替えを試せるのがおもしろいですね。なんだか洋服を選んでいるような気分になります。

三橋さん
商品見本はハンガーごと取り出せるようになっています。コーディネートの体験を通じて、カーテンの自由な楽しみ方をお客さまに実感していただける空間作りにこだわりました。

この業界ではずっと「カーテンは無地しか売れない」と言われてきましたが、私たちがネットショップを通じてデザイン性を前面に出してみたところ、多くのお客さまにご好評いただけて。なのでこんなふうにカーテンを組み合わせる楽しさを、実店舗のほうにも色濃く反映したかったんですよね。

羽田さん
お気に入りの一枚をクローゼットから取り出して、鏡の前で合わせるような感覚でお買い物できるほうが楽しいんじゃないかなって。実店舗を『closet』と名付けたのも、まさにそんな空間を作りたかったからなんです。

商品にQRコードのタグがついていますが、これは……?

三橋さん
ネットショップと直結したQRコードです。たとえば店頭のコーディネートスペースが混み合っているときも、気になった商品のページにアクセスしていただければすぐにイメージ画像がたくさん出てくるので。

羽田さん
ちなみに、実店舗では購入時の決済にもネットショップを利用しています。
店頭の端末を使ってスタッフが住所情報などを代理入力し、お客さまには決済情報だけ入力していただくような形ですね。お客さまにとってはわかりやすくて安心ですし、私たちとしても他のシステムと組み合わせる手間やコストがかからないので、非常にやりやすいです。

すごい。ネットショップと実店舗が見事につながっているんですね!

他の会社が嫌がるところにあえて私たちが行く

普通はあまりカーテンに使われない素材の商品も多いですよね。このデニム地のカーテンとか。

羽田さん
業界では「ポリエステル素材の遮光カーテン」が根強く君臨しているので、新しい素材で遊び心を加えたくて、アパレルで使われる生地を取り入れたら楽しそうだなと考えたのがきっかけです。天然素材は扱い方が難しいので、他に使っている会社さんは少ないかなと思います。

三橋さん
他の会社さんが嫌がるところにあえて私たちが行く感覚ですね。ミシンに通しにくい生地も、実際カーテンになると今まで見たことのない空間ができあがる。それを一度成功させてからはつい変わった生地ばかり探しちゃいます。

羽田さん
縫製工場の人にも「これ縫うんか……縫えるかなあ……」とかしょっちゅう言われて(笑)。

三橋さん
「またこんなん仕入れてきて!」ってね(笑)。とは言いながらもやっぱりプロの方々なので、きれいに仕上げてくれるんですけどね。

フリルやニット生地などもカーテンにしてしまうのはすごいですね。

三橋さん
従来のポリエステルにこだわるのって実はメーカー側の都合も大きいんですよ。生産がしやすいとかロット管理がしやすいとか、そんな事情をわざわざ顧客にまで押し付ける必要はないですよね。お客さまにはもっと楽しんでもらいたいし。

羽田さん
そうですね。楽しんでもらいたい。実はカーテン選びを嫌がるお客さまも多いので。

えっ! なぜですか。

三橋さん
まず測り方がわからなくてつまずくみたいです。カーテンレールのどこからどこを測ればいいのかとか、普通は知らないじゃないですか。覚えることが多くて、そのうえ「これは遮光で、こっちは洗える、これは防音機能が……」って、家電を選ぶときみたいに機能性ばかりに目がいってしまったり。

羽田さん
そうこうしているうちに、だんだん選ぶのが苦痛になっちゃうんですよね。

三橋さん
カーテンって本来インテリアじゃないですか。空間の印象を大きく左右するものなのに、デザインではなくスペック表ばかり見て選んでしまうことに長年ずっと違和感がありました。洋服はウールとかリネンとかいろんな素材を楽しめるのに、カーテンがポリエステルだけなのも納得いかなくて。

たしかに、言われてみればおかしな話です。

三橋さん
私たち自身も、無地のポリエステルばかり何十種類も扱うのは正直退屈なんです。「このデザインにはこういうものが合うよね」っていろいろ試行錯誤して、世界観に合った空間を作れたときがいちばん楽しいので。

羽田さん
カラーミーさんでネットショップを始めた十数年前は、インテリアの中でもカーテンの優先順位なんて最後の最後みたいな感じでした。「こういう家具で統一してるので、それを邪魔しないベージュのカーテンを探してます」という方が圧倒的に多かったんですよね。そんな脇役を販売することへの悔しい思いをバネに、いろんな楽しいデザインのご提案を頑張ってきた感じです。

カーテンコーディネートの楽しさ、一度知ったらハマりますね。私も自宅のカーテンを無地にしておくのがなんだかもったいなく思えてきました……!

海外での仕入れは「元の元を攻めに行く」

新商品の開発は普段どのようにされていますか。

羽田さん
機屋さん(生地の製造工場)と直接打ち合わせをしながら新しいデザインを作成しています。
機屋さんにお抱えのデザイナーさんがいらっしゃる場合は、その方とアイデアを共有しながら私たちがイメージしたデザインを形にしていきます。デザイナーさんが不在の場合はこちらである程度デザインを用意しつつ、アパレルや寝装品の生地、その他参考にできそうなあらゆる材料を寄せ集めてテクスチャーの希望もお伝えします。「この生地のこの部分を取り入れたい」「この部分は起毛させたい」など、細かくやりとりを重ねて試作を上げ、再度やりとりの中で修正と試作を繰り返して……という方法で進めることが多いですね。
あと、最近はコロナ禍でまったく行けてないですが、私たち二人で海外へ仕入れに行くこともあります。

三橋さん
私がけっこう旅行好きなんですよ。特に昔ながらの手仕事が残っているようなエリアが好きで、現地で車やバイクをレンタルして乗り回すこともあります。観光客用のマーケットだと販売価格が高いので、もっと奥地にある作業場のほうまで足を伸ばして、作り手の方と直接お話させてもらったりとか。

羽田さん
私たち、元の元まで攻めに行くんだよね(笑)。
トントンカンカン作業してる現場でお話を伺いながら「日本に輸出していただけませんか」と。そこでうまくコミュニケーションがとれて話がまとまったら商品を送ってもらいます。

驚きました。お二人の雰囲気からは想像もつかないバイタリティ。

羽田さん
いつどこに行くって言い出すかわからないので、ちょっと怖いんですよ。あるときは「モロッコに行く」っていきなり言うんで(笑)。

三橋さん
アフリカはさすがに少し不安だったので、最初はFacebookで探したモロッコ在住の日本人の方にアテンドしてもらいました。3回目くらいから自分たちだけでも行けるようになったので、輸出を取りまとめてくれる現地の人を見つけて、今はその方に頼んで全部やってもらってます。

羽田さん
日本⇔モロッコは移動に25時間くらいかかるのでかなりキツくて。日本に帰ってくるたび「もう行きたくない」って思うんですけど、不思議とまた行きたくなるっていう……クセになるんですよね。

現地の方との言葉の壁はどうやってクリアしているんですか。

三橋さん
ほとんど片言の英語とジェスチャーだけですね。テレビでよく出川さんがやってるような感じで……あれよりかは多少喋れるけど(笑)結局ジェスチャーがいちばん伝わりやすいんですよ。

羽田さん
けっこう熱意で通じるものなので。

三橋さん
どんな糸を使ってるとか説明してもらっても、現地の専門用語がわからなくて困ることも多いです。訳もわからずいろんなヒツジの写真を延々と見せられたりとか(笑)特に皮革などは国際条約に引っかからないかどうかきちんと調べなきゃいけないので、最初はそのあたりの整備がけっこう大変でしたが、なんとかやりとりしています。

カーテンにとどまらず、トータルに空間を演出したい

コロナ禍でネットショップの動きに変化はありましたか。

三橋さん
おうち時間が長くなったことで皆さん通販を利用されたので、うちもネットショップの売上が一気に伸びました。在庫が一気になくなったり、マスク不足の影響で輸入生地も全然入ってこなかったり。お客さまをかなりお待たせしてしまうこともあって電話業務に追われ、業務量がたちまち通常の4倍くらいになりました。

4倍……! それは大変でしたね。

羽田さん
通常時のメンバーだけで対応するのは無理でしたが、うちは自粛期間中に実店舗のほうを閉めていたので、幸いにも実店舗のスタッフがネットショップのフォローに回ってくれたんです。これにはかなり救われましたね。

日頃の接客でもネットショップに触れているぶん、すぐフォローに回れそうですね。

三橋さん
そうですね。普段から接客もしっかりやってくれているし、ネットも実店舗も同じコンセプトで運営しているからこそ大きなギャップがなかったんですよね。もちろん大変な部分もあったと思いますが、よく頑張ってくれました。

最後に、今後の目標を教えてください。

三橋さん
うちはカーテン専門店ですが、カーテンだけでは空間を作れないのでラグの専門店を始めたり、最近はドライフラワーのお店も立ち上げたところです。暮らしにまつわるアイテムをさらに深掘りして、これまで以上に空間をトータルに演出してみたいですね。

あくまで「専門店」としてそれぞれ発信したいのでカラーミーショップでは複数店舗を運営していますが、いつかはその集大成として各ショップのコラボができたらと考えています。そのためにはまだまだショップの強化が必要ですし、まずは新しく始めたお店を軌道に乗せていきたいです。

ありがとうございます。またいずれ海外にも行ける日が来るといいですね。

羽田さん
現地の方とは写真でやりとりしながら新商品の仕入れを進めていますが、やっぱり現地で確認しないと不安な部分も多いですからね。

三橋さん
もう海外に行けないフラストレーションがすごくて。コロナ禍が明けたら一刻も早くまた行きたいです!

今日は楽しいお話をありがとうございました!