物流で売上は伸びる。失敗しない物流代行サービスの選び方
かつて「コストを抑える場所」とされていた物流が、いまや「利益を生み出す現場」に変わりつつあります。ECと物流は切っても切れない関係、これからのEC運営では、物流を単なるコストではなく、売上とリピートを生む「プロフィットセンター」として捉えることが欠かせません。
本記事は、年間200件以上の物流相談を受けている株式会社清長 営業部次長の中川学氏の寄稿です。物流品質の改善がどのように売上アップにつながるのかを解説します。
株式会社清長の中川です。2017年に「完全従量課金制」の物流代行サービスを立ち上げ、現在はその統括責任者を務めています。
今回は、以下3つをメインに、現場の視点から物流代行サービスについてお伝えします。
・物流品質の改善が売上アップにつながる理由
・物流代行サービスの選び方
・小ロットでも始められる従量課金型サービスの活用法
目次
1.届け方で売上が変わる。EC運営における「物流」の本当の価値とは?
近年、EC運営において「物流」の重要性がこれまでになく高まっています。
その理由は、物流が顧客との直接的な接点だからです。ECで購入した商品は、受け取った瞬間や開封の体験によって、ショップの印象が決まります。注文した商品が希望日にちゃんと届き、丁寧な梱包がされていれば「このショップさんは信頼できる」と感じてもらえ、レビュー評価やリピートにつながります。
逆に商品が予定通りに届かなかったり、雑に梱包されていた場合はどうでしょうか。場合によっては、クレームにつながったり、SNSなどでネガティブな情報を発信されてしまう可能性もあります。
たとえ直接的な発信がなかったとしても、リピート購入の可能性は大きく下がってしまうでしょう。物流品質の向上は、競合優位性を築くためにも大変重要と言えます。
「物流コストはとにかく低く抑えよう。人件費も削ってなんとか頑張ろう。」という方針で運営を続けた場合、利益率は一時的に改善されるかもしれません。しかし、物流トラブルが増えてショップの評価が下がれば、中長期的には売上減少という形でマイナスが返ってきます。
もちろん、自社で高品質な物流を維持しているショップもありますが、受注の増加に耐えうる体制を保つのは容易ではありません。無理を続けて現場の負担が増せば、結果的に品質低下を招くリスクもあります。
これらの問題を解決する有効な手段の1つが「物流代行サービス」の活用です。
2.物流代行サービスの主な種類
「物流代行サービス」には大きく分けて3つのタイプがあります。ここではそれぞれのタイプの特徴について解説いたします。
2-1.モール直系型
代表的なものとしては、Amazonが提供するFBA(Fulfillment by Amazon)、楽天が提供する楽天スーパーロジスティクス(RSL)などが挙げられます。
これらは大手モールが自社出店者向けに提供している物流代行サービスであり、当然のことながらモールに出店することが物流代行サービスの利用条件となっています。つまり、FBAを利用する場合はAmazonに、RSLを利用する場合は楽天市場に出店している必要があります。
また、大手だからこそ実現できる広範な配送ネットワークにより、低コストでの運用が可能であることも特徴です。さらに、FBAやRSLはマルチチャネル販売にも対応しており、他のモールや自社ECサイトで受けた注文についても、同様に物流業務を委託することができます。
一方で、倉庫への納品ルールが複雑で柔軟性に欠ける点はデメリットといえるでしょう。
梱包仕様や同梱物など、ショップごとの細かな要望には対応してもらえないケースも多く、ブランド体験にこだわりたいショップにはやや不向きな側面があります。
2-2.カスタマイズ型3PL
特定のモールやカートシステムに依存しない物流会社が提供する物流代行サービスです。EC事業者の要望に応じて、柔軟に物流業務を構築できる点が大きな特徴です。
なお、3PLとはThird Party Logistics(サードパーティーロジスティクス)の略で、EC事業者様に代わって第三者の企業が物流業務を請け負う業務形態のことを指します。
カスタマイズが可能な物流代行サービスでは、たとえば以下のような対応が可能です。
- ・自社オリジナルの段ボールでの梱包
- ・多様なギフトラッピングへの対応
- ・購入回数や顧客属性に応じたノベルティ同梱
こうした柔軟なオペレーションは、モール直系の物流サービスでは実現が難しい領域です。そのため、物流を通じてブランド体験や付加価値を高めたいショップにとって非常に有効な選択肢といえるでしょう。
一方で、大手モール系サービスと比較するとコストがやや高くなる傾向があります。また契約期間の縛りや固定経費が発生するケースがあり、導入の際は、自社の規模や成長フェーズに合わせて慎重に検討することが重要です。
2-3.パッケージ型3PL
カスタマイズ型に対して、パッケージ型の3PLも存在します。
こちらは後述する「完全従量課金制の物流代行サービス」に多く見られる形態です。
特徴としては、EC物流に必要な一連の業務があらかじめセット化されている点にあります。たとえば、以下のような標準業務がパッケージとして提供されます。
- ・入荷&検品
- ・商品保管
- ・ピッキング
- ・梱包作業
- ・伝票貼付&出荷

サービス内容としてはFBA(フルフィルメント by Amazon) や RSL(楽天スーパーロジスティクス)とほぼ同様ですが、これらのように特定のモールやカートに依存しないため、販路を問わず利用できるのが大きな特徴です。
一方で、パッケージ型であるがゆえに、物流オペレーションの細かなカスタマイズには対応しにくい場合があります。そのため、自社独自の梱包仕様や配送体験など、物流に強いこだわりを持ちたい場合にはあまり向かない形態といえるでしょう。
3.物流代行サービスを選ぶときのチェックポイント
どの物流代行サービスを選択するべきかは、取り扱う商材・事業規模・運営しているモールやカートの種類など、条件によって異なります。
ここでは選定時に確認しておきたい主なチェックポイントをご紹介いたします。
3-1.物流実績
まず確認したいのは、物流会社の実績です。特に注目すべきポイントは以下の2つです。
・取り扱いの商材
自社の取り扱う商品と同ジャンルの商材を取り扱った実績があるか、また現在も継続的に取り扱っているかを確認しましょう。実績が豊富なほど商材への理解度も高くスムーズにやり取りができるため、より発展的な提案をもらえる可能性も高くなります。
・キャパシティ(出荷規模)
1日あたり・1か月あたりの出荷上限数の目安についても確認しておきましょう。
出荷件数を伸ばしたかったのに、「委託先のキャパシティが狭く実現できなかった…」という失敗は避けたいところです。
3-2.倉庫の立地
倉庫の立地は配送リードタイムやコストに関わりますので、併せて確認しておくべきポイントです。一般的には、関東近郊など都市部に近いほどコストが高くなる傾向にありますが、コスト重視で交通の便が悪かったり天候の影響を受けやすいエリアを選ぶと、配送遅延による信頼低下といったリスクも生まれます。
コストとリードタイムはトレードオフの関係にあることを意識しておきましょう。
3-3.サービスの内容
カスタマイズ型の物流サービスであっても、すべての業務に対応できるわけではありません。そのため、「自社が物流で実現したいこと」を作業内容も含めて明確にしておき、対応可否を確認しておきましょう。
また、自社が出店しているモールや、導入しているECカート、受注管理システムと連携実績あるか?という点も確認が必要です。
連携できれば出荷依頼の工数も大幅に削減できるため、大きなメリットになります。
3-4.サポート体制
ネットショップの運営では、注文後の変更やキャンセルなど、イレギュラー対応が避けられない場面も多く発生します。そうした際に「すぐに連絡が取れるか」「担当者と直接やり取りができるか」は非常に重要です。
メールのみの対応か、専任担当制かなど、サポート体制の充実度も事前に確認しておきましょう。
4.完全従量課金の物流代行サービスとは?
「まだまだ規模は小さいけど、少人数で忙しいから物流業務を外注したい…」
そんなニーズに応えるため、昨今は小ロットからでも利用可能な初期費用・月額固定費0円の”完全従量課金制”の物流代行サービスが増えてきました。
ここでは完全従量課金制物流代行サービスの特徴を解説します。
4-1.完全従量課金で使える理由(サービスの仕組み)
一般的な物流代行サービスでは倉庫料が坪、パレットといった単位で課金されるため、契約するスペースに応じて固定費が発生します。
一方で、完全従量課金の物流代行サービスは倉庫内のスペースを複数のショップ様でシェアする仕組みとなっており、保管料は「商品1点あたり」「1日あたり」で課金される形となります。倉庫側としては既に稼働している物流業務の中に新しい商品を追加するだけなので、少ない商品であっても外注化できるのです。
4-2.メリット・留意点
完全従量課金制の最大のメリットは、固定費がかからず“使った分だけ”料金が発生することです。そのため、必要なときに必要な分だけ利用でき、繁忙期やキャンペーン期間、クラウドファンディングなどのスポット利用にも最適です。
また、初期段階のECショップでも、物流業務をアウトソーシングすることで本業に集中しやすくなり、成長スピードを高められることも魅力です。
一方で、いくつかの留意点もあります。業務のカスタマイズが制限される場合があることです。まず、複数のショップが同一現場で物流業務を共有するため、作業内容のカスタマイズには制限がある点です。
「自社オリジナルのパッケージを使いたい」など、ブランド体験にこだわりたい場合には、ある程度の妥協が必要になります。
さらに、従量課金制の特性上、商品を預けすぎると保管コストが割高になることにも注意が必要です。少量・短期利用には非常に向いていますが、一定以上の在庫を長期間保管する場合は、コストバランスを慎重に見極めることが大切です。
5.完全従量課金で使える物流サービス3選
5-1.オープンロジ
株式会社オープンロジが提供する物流プラットフォームです。70拠点の倉庫ネットワークを持ち、冷凍・冷蔵や大型品など様々な商材のお取り扱いが可能です。
5-2.ロジモプロ
株式会社清長が提供する物流代行サービスです。物流倉庫を自社で運営しており、スピード感のある対応を実現しています。カラーミーショップとAPI連携が可能で、自動出荷にも対応します。
5-3.セカイロジ
株式会社Tokyo Otaku Modeが展開する物流代行サービスです。名前の通り「全世界対応型」を謳っており、日本国内はもちろん、海外発送への対応も強みです。
まとめ
物流品質の向上は、ショップの信頼性を高めるだけでなく、リピート率の向上にもつながり、ネットショップ全体の成長を後押しします。
そのうえで、物流代行サービスの活用は、忙しいEC事業者が効率的に物流を改善するための非常に有効な手段といえるでしょう。
物流代行サービスにはさまざまな種類がありますが、どのサービスを選ぶべきかは、取り扱う商材や事業規模、運営しているモール・カートの環境によって異なります。近年では、小ロットからでも利用できる完全従量課金型の物流代行サービスも登場しています。
本記事の内容を参考に、自社に最適な物流体制やアウトソーシングの活用について、ぜひ検討してみてください。