今回はオーナーの本山 珠里さん、デザイナーの大久保 淳子さん、企画ディレクションの矢嶋 友さんに、ネットショップ運営や自社印刷の強みを活かしたユニークな紙ものづくりについて伺いました。
見たことのない紙ものづくりを追求する
『Paper message』を立ち上げたきっかけを教えてください。
印刷業界の価格競争が激化し、どうやって印刷会社として生き残っていくかを考えた結果、紙や印刷のおもしろさ、可能性をよりたくさんのお客さまに伝えたくてPaper messageをオープンしました。
自社工場で印刷から仕上げまで職人の手で丁寧に行なっており、今までに見たことのない紙ものづくりを追求しています。
Paper messageのアイテムは、デザイナーの大久保淳子さんのイラストが印象的ですよね。
大久保とは高知で出会い、作品を見て一緒にものづくりをやりたいと思い私から声をかけたんです。
大久保さんとの出会いで世界観が広がったんですね。
創業82年の印刷会社で新事業を始めるのは、ご苦労もあったのではないでしょうか?
役員の説得から資金繰り、店舗の場所選定など、多くの苦労がありましたね。
説得はどのようにされたのですか?
最初は時間がかかりましたが、一人を説得できないなら誰も説得できないのと同じだと思い、話し合いを繰り返しました。
新しいことを始めるときに反対されるのは当たり前ですし、何をするにしても、一人でできることは限られています。だからこそ、周りに協力してもらうために、身近な人を説得できるプランを用意して諦めないことが大事です。
オープン後も製造業から小売業への業態変革による社員教育には試行錯誤を重ねました。
SNS運用やイベント出店、取材などで認知され始めたころから、少しずつ周りが理解してくれるようになりました。
最初から順風満帆というわけではなかったんですね。
現在は、高知・東京・大阪に実店舗を展開されていますが、それぞれどのような特徴がありますか?
全店舗、紙は一枚から買えます。高知のおびやまち店が一番大きくて、コンセプトショップのようなお店になります。店内に「tonari」という家みたいなスペースがあって、そこで企画ごとに世界観を作って販売したり、高知ならではの紙ものを土佐土産として限定販売しています。
東京の吉祥寺店は、かなり小さいです。お店の近くには糸屋さんがあったりと、クラフト好きの方が集まる場所です。そういったところに一枚売りの紙専門店は馴染みがよくて、好きな世界に浸りながら、駄菓子を買うように一枚ずつ選んでいただけるお店です。
おおさか店はオープンして一年になりました。関西のお客さまから「大阪にも実店舗が欲しい」という声をいただいての出店で、来たい人だけが来るような静かなエリアにあります。大阪ならではの虎をモチーフにした限定商品などを置いています。
地域色を活かしつつ、お客さまの要望もしっかり取り入れているんですね。
お客さまとの関係を築くときに心がけていることはありますか?
デザイナーもときどきお店に立ってお客さまとコミュニケーションをとったり、店頭スタッフがお客さまの意見をデザインの際のアイデアに加えたりと、商品開発にはお客さまの声をダイレクトに反映できるように心がけています。
次回のイベント『うちの猫博vol.7』では、お客さまアンケートから商品化につながった商品も沢山ご用意していますよ。
ネットショップの方が売れるマニアックな商品
ネットショップを開設したのはいつですか?
Paper messageを始めて2〜3年ほど経ったころです。当時のネットショップは見づらくて、2019年にカラーミーショップに引っ越しました。
カラーミーショップをお選びいただいたのはなぜですか?
事例で見たショップが見やすくて、うちの商品とも合いそうだったからです。
ありがとうございます。実店舗とネットショップに違いはありますか?
実店舗は一枚ずつ選んで自由に組み合わせていただけるのが醍醐味ですが、ネットショップではセットをおすすめしています。
セット販売はここ2、3年で始めた取り組みです。それまでは、実店舗の延長でネットショップも商品をバラ売りで載せていたんです。
でも、オンラインだと組み合わせた感じがわからないし、選ぶステップが多すぎると離脱にも繋がるので、セットにすることで買いやすくしています。そこは実店舗のコンセプトとは切り分けて考えていますね。
逆に、なぜかネットショップの方が店頭より売れる商品もあります。おそらく、店頭だとマニアック過ぎて意味がわからない商品でも、ネットショップでは写真をたくさん載せられるので使用シーンをイメージしやすいのかなと思います。最近は、そういったネットショップのよさをとても感じます。
写真はどなたが撮影しているんですか?
吉祥寺店のスタッフで得意な者がメインで撮っています。デザイナーが吉祥寺にいるので、ネットショップのデザインや商品撮影・登録は吉祥寺、発送や在庫管理は高知というふうに分かれているんです。
なるほど。発送や在庫管理を高知でしているのはなぜですか?
吉祥寺店がすごく狭いことと、高知は小回りがきくんですよね。ちょっと在庫が足りなくても、すぐ本社で作って発送することができるので。
自社印刷の強みを活かして分業されているんですね。
自分たちが一番のファンであること
実店舗とネットショップで購入者層は違いますか?
ネットショップも高知、大阪、吉祥寺のお客さまが多いですね。実店舗に来たことのある方が、ネットショップでも買ってくれているのかなと思います。
ふむふむ。それはどのような層ですか?
30代から40代の女性が多いですね。
みなさんと同年代の方が多いんですね。実は私もその一人で、節分シーズンになると鬼のお面を買っています。
えーっ! お面を使っているという話は初めて聞きました(笑)。
「本当に使ってくれている人はいるのかな? 毎年やっているけど大丈夫かな?」って言いながら作っていたんですよ(笑)。
そうだったんですね。かわいすぎて、子どもにはあまり驚かれないです(笑)。
あれはデザイナーチームのみんなで、好きなように描いているんです。
描いたものがすぐに印刷されて商品になるのは楽しそうですね!
鬼のお面以外にも「誰が買うの?」 と言いつつ商品化しちゃったものはありますか?
11周年の記念フェアで作ったUMAのモビールです。
UFOに牛が吸い込まれていくシーンをモビールにしたのですが「この光の幅をもう少し細く」とかお願いしているときに、私は何を作っているんだろうと思いました(笑)。
おもしろすぎます(笑)。光が透明な紙でできているのもにくい演出ですね!
ユニークなアイデアが形になるのは、みなさんの「おもしろがるツボ」が似ているからなんでしょうか?
オーナーの作ってみよう精神が強いからだと思いますね。
他のお店では見たことのない、Paper messageらしいものを作りたいという意識がみんな強いので、出し合うアイデアもおもしろいものが多いです。
アイデアのルーツは、チームワークで商品をつくる楽しさと喜びです。そして、自分たちがPaper messageの一番のファンであることですね。
私たちがデザインしたものを商品にすることで、印刷のおもしろさや可能性を伝えて、自分も作りたい、楽しいと思っていただきたいんです。
そういう意味で実店舗はアイデアを形にする見本としての「印刷のショールーム」の役割もあります。
確かに、1枚の紙を見ても、どのような商品が作れるのかを想像するのは難しいですもんね。
ちなみに、アイデアのルーツになっているような、みなさんが子どものころに好きだったものは何ですか?
私はシール集めです! シール帳を作って友達と交換するのが大好きでした。今でもシールや切手を集めています。
山に生えている不思議な形のきのこや木のツルや木の実などを拾ってくるのが好きでした。あとは色んなペンや文房具を買い集めて、授業の内容よりノートを作り込むことに集中していました! キャラクターではけろけろけろっぴやセーラームーンが大好きで、漫画家になるのが夢でした。
Paper messageでお買い物をしているときの、わくわく感の秘密が知れた気がします…!
布から広がる無限の可能性
今後、作ってみたいものはありますか?
紙ものに関しては自社印刷ができるので、今までいろいろな展開をしてきましたが、うちのもう一つの武器は大久保のイラストです。大久保の描くイラストには多くのファンがいるので、以前から布にしたいと話していたんです。自分たちで作るのはリスクが高いと二の足を踏んでいたところ、ご縁があってメーカーの方で作っていただけることになったんです。
また夢が広がりますね!
はい。もともと、店頭スタッフがつけているイラスト柄のエプロンの布が欲しいという要望がとても多かったので、お客さまにも喜んでもらえるんじゃないかなと思います。
布と連動した柄の紙でラッピングができるようにしたり、お手紙を添えたり。他ではできない見せ方ができると思うので、その辺りもしっかりPRできたらと思います。
うちはよく実在する物を紙もののモチーフにしていて、『ハンカチみたいな便箋』というのもその一つなんですけど、これを本物のハンカチで作るとか。連動を考えるとすごく楽しみです。
ネットショップはどのようにしていきたいですか?
ネットショップだからこそできる動画や写真を使って、見ているだけでお店にいるような気分になれるようなことができたらいいなと思います。
うちは卸をやっていないので、コロナで実店舗にお客さまが来れなくなったときにネットショップのよさを痛感しました。日本中から買い物ができるので、ネットショップの力を借りてより販路を広げていきたいです。
ありがとうございます。
最後に本山さん、Paper messageをこれからどのように展開していきたいですか?
紙だけに囚われていたところに布ができて、無限の可能性を感じています。どんどんおもしろいものを企画してデザインして、いろんなことができるチームになっていきたいと思っています!
今後の展開も楽しみにしています!