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安売りはせず、商品力を真摯に伝える。100年続く画材店「画箋堂」の販売流儀

いつも画面越しに見ているオンラインショップのむこうには、想いのつまった“モノ”とそれを届ける“”たちがいます。このコーナーでは、知られざる商品開発ストーリーやお店の裏側に迫る現場レポートをお届けします。
京都市で画材や文具を販売している「画箋堂」さん。オンラインショップの優れたデザインや、画材の製造背景に迫ったオリジナルコンテンツのクオリティが高評価につながり「カラーミーショップ大賞2018」では地域賞を受賞されました。今回は、お店の長い歴史とオンラインショップのこだわり、そして今後の展望についてお話を伺います。

写真奥から、代表取締役の山本 祐三さん、専務取締役の山本 修三さん、デザイナーのタケウチ キヨシさん。

歴史ある画材店の前身は、意外な●●のメーカー!

画箋堂さんはいつ創業されたんですか。

修三さん
1913年(大正2年)創業です。父が3代目、私で4代目になります。

それまでも代々、画材を販売されていたんですか。

祐三さん
もともとはこの場所で茶筒を作っていたんですよ。

茶筒…ですか。

祐三さん
ここ河原町五条は、宇治の方面へとつながる街道の玄関口やったんです。京都の人が宇治へお茶を買いに行くのに茶筒が必要になるので、うちがここで茶筒を製造・商売していたんです、開化堂っていう名前でね。

開化堂…! 京都の茶筒ではとても有名なお店ですよね。

祐三さん
ええ。もともとうちで勤めていた職人さんが独立されてできたのが、今の開化堂さんです。

へえ…! どうして茶筒から画材販売へ事業転換されたんですか?

祐三さん
…話、長くなってもええかな?(笑)
油絵具や水彩絵具といった西洋の画材が日本に少しずつ広まり始めたのが明治時代。当時の京都には絵描きさんが多くて、安井曾太郎だとか梅原龍三郎だとか…のちに画家としてたいへん有名になった方たちも絵を描いていました。創業者である私の祖父は、彼ら絵描きさんたちと友達付き合いがあったんですよ。理由はわかりませんけれどもね。

その当時、まだ国内では油絵の材料がなかなか流通していなかった。絵描きさんたちが「材料を入手するのに困っている」というので、祖父はそれをきっかけに画材店を始めたと聞いています。

そんな歴史があったんですね…! 当時と今ではお店の規模も購買層も変化されたと思いますが。

祐三さん
そうですね。昔の絵描きさんっていうのは特殊な…いわば奇人変人でしたからね(笑)
創業当時の京都は、絵を学ぶ場所も市立芸大しかなかった。一般の方が絵画を嗜む機会も少なかったと思います。今は美術系の学校やカルチャーセンターもたくさんありますし、開業当時に比べたら購買層はすごく広がりましたね。


 

安売りはしない。だからこそストーリーをきちんと伝える

古くから地域に根ざした画材店としてお客様もついてきている中で、オンラインショップを始めることになったのは何かきっかけがあったんでしょうか。

修三さん
実はインターネットの普及以前からカタログでの販売をしていたので、京都近郊はもちろん全国各地にお客様がいらっしゃったんです。オンラインショップの運営はその延長線上というか。紙のカタログを作る費用もバカにならへんし。
祐三さん
始めた当初は「オンラインでやっていること」自体がステータスのような感覚やったな。

そこにデザイナーとしてタケウチさんが携わり、リニューアルをしたのはいつ頃でしたか。

タケウチさん
今から3年前くらいです。お店ではそれ以前からカラーミーショップを使っていましたね。

フリーランスデザイナーのタケウチ キヨシさん。

画箋堂さんは僕が通っていた京都精華大学にも購買部としてお店を構えているんですよ。僕はずっと陶芸を専攻していたので、Webデザイナーとして関わらせていただいたのは卒業後なんですけど。

意外なところにご縁があったんですね! リニューアルにあたってタケウチさんが特にこだわったのはどんなところですか。

タケウチさん
大きく2つありました。まず先ほどもお話があったように、とても長い歴史の中でお商売をされてきたお店なので急激にガラッと変えるのはやめようと。いきなりデザイナーがパッと入って、全部キレイにして去っていくみたいなことはしたくなかった。ゆっくり時間をかけてお付き合いできればいいなと思いました。

ただオシャレにするのではなく、お店に流れる歴史を尊重して丁寧に変えていったんですね。

タケウチさん
はい、それともうひとつ…。普通に暮らしていると画材なんてなかなか手にしないと思うんです。なので、画材やその作り手のことを発信できる機能を作ろうと。何が売れるかわからないのがオンラインショップの特徴なので、ただモノを置いて売るのではなく、お客様にストーリーを共有できるようなサイトづくりを目指しました。

オンラインショップと実店舗とでは、そんなに売れ筋商品が違うんですか。

修三さん
絵具って正直そんなに今は売れないんですよね、オンラインショップだと。

ええっ! 絵具が売れてるものだと思ってました。

修三さん
今は大手モールにも商品が溢れてますから。ホルベインの透明水彩の何色、と調べれば最安値がポンと出てくるんで、全然売れないわけではないけど…やっぱり売れにくいですね。
祐三さん
特に私どもは「安売りはしない」というスタンスなので、適正価格でいかに満足していただくかを基本にしています。だからお客様とは密にコミュニケーションをとって、私どもの商品のよさに納得して買っていただかないといけないんです。値段が安いから買おうって方はヨソで買ってちょうだい、とね。

潔い…! 画箋堂さんのサイトに掲載されている「画材図録」は、まさにお客様へ商品のよさを伝えるためのコンテンツですよね。

修三さん
はい。私も自らの足でメーカーさんへ取材しに行くんです。たとえばこの「ばれん」。

これは「菊英のばれん」といって神奈川の大磯で作られています。芯の部分は皮白竹(かしろだけ)という素材でできてて、細かく割いて縄状に編んで作られます。これ、じつは私も実習として作ってきたんですよ、竹の皮をほぐすところから。

すごい! 初めてでも作れるんですか。

修三さん
もちろん、一回やっただけでは上手くできませんね…(笑)
ばれんの他にも絵具や麻紙、胡粉などのメーカーさんを取材して、少しずつWebにアップしています。じつは最近も宮崎で取材してきたばかりなんです。
祐三さん
自分たちの肌で感じた作り手の気持ちや、現場の空気を記事として発信するのが私どものコンセプトですから。ただの商品写真とは伝わるものが違ってくると思うんですよね。今は国内のメーカーさんが中心ですけど、いつかはヨーロッパのメーカーさんにも、ね?(笑)

修三さん
そうですね、頑張ります(笑)

めざせ海外遠征、ですね(笑)これからも更新を楽しみにしています。


 

リアルイベントで「売れる循環」と「きっかけ」を作る

画箋堂さんはリアルイベントへの出展もされているんですね。

修三さん
はい、最近は市内にある5つの画材屋さんが実行委員会となって「京都アートめっせ」というイベントを実施したばかりです。それと同時開催で、美大生中心の学生団体さんを画箋堂がサポートする形で「BORDER!」というアートイベントを行いました。

BORDER!」公式サイトもタケウチさんが手がけているそう。

画家さんや作家さんに作品を展示販売していただいたり、マルシェやフードを販売したり。2日間で計1万人を動員しました。

イベントに来られるのも美大生さんとか、美術に関心の深い方が多いんですか。

修三さん
全然! ワークショップには老若男女問わず「初めて絵を描きます」って方もいらっしゃいました。

そういったイベントを主催したり後援したりするのには、何か理由があるんでしょうか。

祐三さん
作品が売れないと、次の画材を買ってもらえないんですよ。だからうちが「作品を売る場所」を提供する。作品が売れれば巡り巡って、次回また画材を買っていただけるので。

なるほど、いい循環。

祐三さん
そういう流れを自分たちから作っていかないといけないんです。みんな素敵な作品をたくさん作られるけど、なかなか今は作家だけで生活できないですし、特に若い人の作品はなかなか売れません。日本には「ギャラリーに買いに行く」って習慣もありませんからね。

たしかに、画材を買う人を増やそうとしても、使う人たちから需要がないと困りますよね。店内で絵画教室をされているのもその一環ですか。

修三さん
そうですね。今は外部から講師やメーカーの方をお呼びして開催しているのですが、絵画教室に参加されるお客様は本当に熱心な方が多くて、メーカーさんにも驚かれるぐらいです。有名な講師を呼ぶと東京からわざわざ来られる方もいらっしゃるので、お店を新しく知っていただけるきっかけになっていると思います。

絵画教室は、いわゆる「ガチ」の方が多いんですね。

修三さん
できるだけ無料じゃなくて有料でやりたいと思ってるんです。有料にすると、それだけ本気の人が多く集まってくれるから。

無料体験だと「今日は楽しかったな~」で終わってしまいますよね、どうしても。

修三さん
うん、参加費はそれこそ100円でも500円でもかまわないんですけど…次につなげるために少しでもね。別にこれで儲けようっていう狙いはないんです。

 

地域賞受賞、その先の目標は?

オンラインショップとして、これからやってみたいことはありますか。

修三さん
今、ちょうど次のシーズンに向けての準備をしているんです。
タケウチさん
デザインを変えたりするのはもちろんですが、商品写真や文章もただ載せるよりはショップ全体の方向性を決めて、それに沿って載せていくほうが迷わずにすむと思いまして。言葉づかいをどれぐらいカジュアルにしようかとか、いろいろ考えているところです。

それを次のテーマに掲げた矢先のカラーミーショップ大賞受賞だったので、驚きましたけどね(笑)

あら、そうだったんですね!(笑)

タケウチさん
「次のステップで受賞を目指そうぜ!」みたいなノリやったんですよ(笑)
修三さん
でも、授賞式に来られている方は皆さんキレイにショップを作られていたのでとても刺激になりました。帰り道でもタケウチさんと「頑張らなあかんな」って話してて。

「カラーミーショップ大賞2018」地域賞受賞の様子。

タケウチさん
今回大賞をとったわざわざさんって、商品を通じたストーリーの共有がとても上手ですよね。画箋堂の画材図録でも今はメーカーさんを中心に取材していますが、今後はカラーミーのフリーページを活用して「画材をこんなふうに使えた!」というストーリーをお客様にもっと発信できる機能が作れたらいいなと思っています。

素敵! 具体的な数字としての目標などは定めていますか。

修三さん
当面の目標としては、まずオンラインショップ専任担当がつけられるレベルまで売上を伸ばしていきたいですね。

というのも、オンラインショップにはまだ実店舗の品揃えの1%程度しか掲載しきれていないので。

1%ですか。

修三さん
たとえば絵具だけでも1メーカーあたり約120種類、それが数社分あるのでそれだけで1000以上…。絵具だけでなく額縁なんかもたくさんありますが、日々の業務に追われてなかなか載せきれていないのが実情です。
タケウチさん
画箋堂さんは実店舗も動かしていらっしゃいますからね。
修三さん
実店舗との売上構成比で見ても、オンラインショップはまだ5%程度。逆に言えば伸びしろが大きいところでもあるので、ちょっと今後は本腰を入れてやっていきたいですね。

 

時代の変化から目をそらさず、常にアンテナを張り続ける

最後に、お店としての今後の目標や課題についてお聞かせください。

祐三さん
実はね……今はロボットが気になってるんですよ。

ロボット…!?

祐三さん
今はAI技術なんかも発展してきて、子どもたちもスマートフォンでよう遊んでるし、学校でもプログラミングの授業が始まったり。そんな世の中でも絵具と筆をつかうだけが「絵画」でええんかな?と。もちろん、紙と筆をつかった絵画がこの先なくなることはないんやけど、時代の変化はきちんと理解しておかないと。

なるほど…! それってとても難しそうですね。

祐三さん
難しいな。でも今のうちに流れをよく見ておかないと、世の中が全部変わってからアタフタしていては遅いので、どっかで考えとかんとあかんなって思いますね。

初めてマッキントッシュが出てきて、もう数十年は経つんかな。あっという間に席巻されて、いわゆるデザイナーと呼ばれる人たちがみんな絵具と筆を使わなくなってしまいました。あれはすごく大きな出来事やったと思うんですよ。

今後も技術革命が起こって、大きな確変が起こるかもしれませんよね。

祐三さん
そうですね。これからどうなるかは全然わからないんやけど、やっぱりアンテナは張っておきたいところです。いろんな工夫をして残して続けていくことが「伝統」であって、ここ京都にはそういう方がたくさんいらっしゃるんでね。

100年続いた画箋堂さんが、100年先も続いていきそうな気がして、すごく楽しみになりました。今日は素敵なお話をありがとうございました!

よむよむインタビューでは恒例の正面撮影。仲良く肩を組んでくださいました!

今回ご紹介したショップ
画箋堂オンラインショップ マテリエ
画材や文具などを幅広く扱う、京都「画箋堂」直営のオンラインショップ。
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