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緊急事態宣言をきっかけにネットショップを開設。オンラインで挑戦を続ける都心の酒蔵「東京港醸造」

いつも画面越しに見ているネットショップのむこうには、想いのつまった“モノ”とそれを届ける“”たちがいます。このコーナーでは、知られざる商品開発ストーリーやお店の裏側に迫る現場レポートをお届けします。
今回ご紹介するショップ
東京都心に100年の時を経て蘇った酒蔵「東京港醸造」のネットショップ。緊急事態宣言を受けてネットショップを開設し、Zoom飲み会を開催するなど、2020年はオンラインでのさまざまな試みに挑戦されました。
今回は蔵元のご息女で広報を担当されている齊藤 かえでさんにお話を伺いました。

100年前に廃業した酒蔵が復活

東京港醸造さまについて教えてください。

1812年に創業した若松屋という酒蔵がこの土地にあったのですが、100年前に廃業したんです。それを七代目に当たる社長が復活させて現在に至ります。

齊藤 かえでさん

復活させるきっかけがあったのですか?

酒蔵を廃業したあとは小売業を営んで、この界隈で雑貨店などを手広く経営していました。しかし、ネットショップなどの通信販売が出てきたことで商品を仕入れているだけでは売れなくなってきたと感じ、自社製品を製造しようという気持ちからのスタートでした。
ただ、社長のなかには昔から先代の酒蔵を復活させたいという思いはあったようです。

お父さまのなかでやりたいという思いはあったけれども、なかなかやるに至らなかったと。

そうですね。100年間お酒を造っていなかったのでレシピもないですし、社長自身、酒造りはまったく知らなかったので。それが、寺澤杜氏と出会って一気に話が進みました。

寺澤さんとはどこでお知り合いになったんですか?

寺澤杜氏はもともと大手酒造メーカーに勤めていて、20年ほど前にお台場に醸造所をオープンさせたことがあったんですね。そこがあまりにも時代の先取りをし過ぎていて、廃業することになってしまって。
そのときに、港区の行政の繋がりで社長と寺澤杜氏が出会い、ぜひ橋を渡ってきて田町で酒蔵をやらないか?ともちかけたそうです。
当初は清酒製造免許は取れないと言われていたので、どぶろくとリキュールの製造免許を取得し、2011年にどぶろく製造から始めました。その後、税務署に通い詰めて2016年に清酒製造免許が取れました。

新規ではほぼ取れないと言われている免許が取れたのは、かなりすごいことですよね。
清酒製造免許が取れると造れる量が増えるんですか?

量が増えるというより、清酒という透明なお酒を造ることができるようになります。清酒というのはどぶろくのもろみを絞った透明なお酒で、清酒製造免許を取ることでやっと絞ることができるんです。

酒蔵を再開するにあたって一番大変だったのは、やはり免許の取得ですか?

免許の取得とビルの改装ですね。通常、酒蔵というと広い土地ときれいな水があるところを想像すると思うんですけど、弊社の酒蔵はもともと社長が住んでいた22坪の鉄筋コンクリート4階建てのビルを改装したものです。

どぶろく製造だけのときは1階から2階まで、清酒製造免許を取得するときに4階まですべてを酒蔵に改装しました。これは「マイクロブルワリー」という小さな酒蔵で、その第一人者が寺澤杜氏なんです。

齊藤さんからすると、ご実家が酒蔵に改装されたということですか?

そうです。私は留学をきっかけに一時期海外に住んでいたのですが、帰国したら生まれ育った家が酒蔵になっていました。最初は1階と2階の改装だったので上階で生活していたものの、最終的に全部酒蔵にするということで追い出されました(笑)。

実家が酒蔵に改装されたらびっくりしますよね。そのときお父さまはおいくつですか?

56歳です。

一大決心をされての開業だったんですね。現在、従業員の方は何名いらっしゃいますか?

造り手が杜氏を入れて3名、それ以外が私を入れて3名の、全部で6名です。
社長は経営の方には入ってるんですけど、実務的なところは入っていません。

意外と少人数なんですね!

そうなんです。一般的な酒蔵でも大手じゃないところはご夫婦と従業員何人か、という規模で造っていたりしますね。

お父さまの思いで時代を超えて蘇ったお酒ですが、こだわりはありますか?

杜氏がよく言っているのが「さわりなく飲め、味わいのあるお酒」を目指しているということです。
販売側としては、都会の酒蔵が造る現代的な飲みやすいお酒なので、見た目もなるべくスタイリッシュにすることを意識しています。

江戸開城 All Edo」をお取り寄せした編集部のスタッフが、ラベルがおしゃれで口当たりが柔らかいお酒だと言っていました。
ホームページもスタイリッシュで統一感がありますよね。それぞれ齊藤さんがデザインされたのですか?

そうです。もともとウェブデザインの仕事をしていたので、「ウェブデザインができるんだったら、商品のデザインもできるでしょ?」という感じでどんどん任されて、最終的にすべて私がデザインしたものになりました。
ロゴや商品を入れる箱など、あらゆる部分で日本酒の概念を覆すような都会的なイメージを心がけています。

Instagramも雑誌を見ているような世界観がすてきです。

ありがとうございます。写真に関しては青を混ぜたような色合いで統一していて、若者にも浸透していくようなお酒の世界観を作り上げようと思っています。

コロナがきっかけでネットショップを開設

昨年からコロナウイルスが猛威を振るっていますが、実店舗や卸に影響はありましたか?

実店舗はもともとそこまでお客さまが来るような感じではなかったんです。
うちは卸がメインなので、酒販店さんに卸してそこから飲食店さんに、という部分が一切動かなくなってしまいました。現在も飲食店さんが難しい状況なので、影響は続いています。

ですが、昨年の夏ごろからスーパーにも卸すようになったんです。それまでは高級志向で、デパートや地酒専門の一部の酒販店さんのみに卸していたところを変えました。その転換がよくて、全体の売上自体は大幅に落ちることがありませんでした。
ちょうどそのとき、ネットショップも始めました。

コロナがきっかけでネットショップを開設されたんですね。

そうですね。ネットショップ自体は数年前にカラーミーショップで作っていたんですが、基本料金だけ払ってキープさせている状態でした。コロナに関係なく、お酒が売れなくて悩んだ時期に作ったんですが、杜氏がどうしてもネットショップでは売りたくないということでやっていなかったんですね。
そのときは造り手の人間が営業に回って、どうにか販路を新しく作りました。

杜氏さんはなぜネットショップに反対だったのでしょうか?

東京だけで販売したいという思いからでした。ワンクリックで買えるようなものにしたくない、わざわざ買いに来てほしいという。
それが、コロナを機に説得できたという感じです。

ネットショップは齊藤さんがご自身で作成したんですか?

そうです。ウェブデザインの仕事をしていたときに、並行して雑貨のショップをオンラインモールに出店していたので、ある程度のことはわかっていました。
カラーミーショップは本当に作りやすかったです。

ありがとうございます。ネットショップの購入者はどの地域の方が多いですか?

やっぱり都内の方が多かったです。都内から地方にギフトとして送られるパターンが多いですね。自宅用も都内の方が多いですね。

都内で造っている日本酒は珍しいので、ギフト需要が高そうですよね。
ネットショップの他にも、オンラインでZoom飲み会や動画の配信をされていますが、これも齊藤さんのアイデアですか?

これは、造り手に元テレビ局のディレクターがいて、そのスタッフの発案なんです。
酒蔵を開業してから、日々新しいことに挑戦してきました。Zoom飲み会や動画配信はそうした挑戦の一部です。
コロナで製造が休止になって困っていることや、Zoom飲み会などの取り組みを動画で配信しようということで、撮影クルーに撮ってもらいました。

テレビ業界からお酒の造り手にというのは、すごい転職ですね。

「お酒を造る」こと自体に、ものすごく興味をもつ方というのがいらっしゃるんですよね。うちで働かなかったとしても、どこか別のところで働くつもりだったそうです。

奥さんは心配して、最初はお母さんを連れてうちに見学に来たんです。でも結局、その奥さんも気づいたらテイスティングカーで働いています(笑)。

Zoom飲み会や動画配信をしてみて、効果やよかったことはありますか?

弊社で実際に開催したのは第3回まででしたが、日本各地から購入してくださったお客さまとお酒や酒蔵について実際に話しながら飲み交わせる機会は本当に貴重だったと思います。その後も別のイベンターと組んで引き続きLive配信やZoom飲み会をしています。
動画配信についてはSNSなどを通じ自社発信することで、コロナ禍で私たちがどのような取り組みをしているかなど、ダイレクトにフォロワーやお客さまに伝わったと思います。大変な状況に気づきお声がけしてくださった方もいて、とても勇気づけられました。

キッチンカーを利用した角打ち「テイスティングカー」

テイスティングカーはいつごろ始めたものですか?

7年ほど前です。そのころはどぶろくとリキュールしか造っていなかったので、製造の方の仕事量に余裕があったんですね。それで、杜氏がぜひやってみたいということで、自らキッチンカーの中に入って接客をしていて、大人気でしたね。最初はそういうふうに、自分で造ったものをお客さまに出して力量を試したいという気持ちで始めたと思います。

買う方からすると造っている人から買えるのは嬉しいですし、造っている方もすぐに生の声が返ってくるというのは新鮮ですよね。
キッチンカーを始めるには、また免許が必要なんですか?

保健所で営業許可を取るんですが、キッチンカーだとトイレを用意しなくても取れるんです。移動式といっても移動はほとんどせず、蔵に隣接して車を停めています。その前にテントを建ててテーブルを置いて、小さなスペースで飲食業ができるんです。

なるほど! 飲んでそのまま隣のお店に買いに行けて、コロナ禍でも密集を避けられて、他のショップさまも真似したくなるポイントが多いですね。

こういったお店がこれから増えるかも知れないですね。
冬はすごく寒くて大変なんですが、とりあえず完全に換気はできています(笑)。

今後も杜氏さんが立たれる予定はありますか?

清酒免許が取れてからは仕事が増えて、今のところ杜氏が入る予定はないんです。たまに別の造り手が入ったり、他にも日本酒同好会の大学生など、スタッフが4人ほどいます。

そういったメンバーは、アルバイトを募集するのでしょうか?

テイスティングカーに来るお客さまに話すと、人づてに集まるという感じで、今まで特に募集はしたことがないんです。

若松屋の歴史を拝見すると、幕末の名だたる志士たちの密談の場となっていたとのことで、昔から不思議と人が集う場所だったのですね。

歴史的な偉人であったりいろいろな人々が出入りしていたようですね。
社長はその歴史をアピールするためにも酒蔵を復活させたかったのだろうと思います。

SNSは目的によって使い分ける

メディアの取材をよく受けられていますが、PRはどのようにされているんですか?

SNSのみで、広告などは何もしていないです。東京の酒蔵というのがすでに珍しいので、そういった珍しい商材を探している方々が調べて来てくださっていると思うんですけど。

SNSはどなたが担当されているんですか?

滅多に投稿しないので、私がひとりでやっています。
テイスティングカーのInstagramとTwitterは造り手の奥さんが担当していて、そちらの方が頻繁に更新されていますね。

テイスティングカーは世界観が違う感じなんですね。情報がバーンと!

そうなんです。
私の方は世界観を統一するために情報はInstagramのストーリーに流したりしているんですが、テイスティングカーの方は文字で情報をドン!と出しています。目的によって見せ方を使い分けていますね。

東京港醸造(左)とテイスティングカー(右)

東京港醸造のこれから

今後、ネットショップをどのようにしていきたいですか?

知らない方が大半とは言え、いろんな媒体に出て少しずつ知名度が上がり、最低でも1日1件はご注文いただけるようになりました。これからさらに知名度を上げて、売上を伸ばしたいと思っています。

東京港醸造のこれからの展望について教えてください。

先程もお伝えしたとおり、日々新しいことに挑戦していく事が東京港醸造のモットーだと思っています。
すでに新しい企画が待機しており、最近ではオリジナルの酒器ブランドの立ち上げや、食品製造免許を取得し味噌と醤油の製造を開始しています。酒蔵の垣根を超えた取り組みをすることで、日本酒を飲んだことのない若者であったり、そういった未開拓の層にアプローチできるのではと思っています。
まずは東京港醸造を知っていただき酒蔵や日本酒に興味をもっていただけると嬉しいです。そのような取り組みを続けることで日本酒業界の発展のお役に立てればと思っています。

お酒造りにとどまらない今後のご活躍を楽しみにしています!